- ビジネスに応用する方法ってどうやる?
- ランチェスター戦略ってどうやって使うの?
- ランチェスター戦略を実施するステップを知りたい…
ランチェスター戦略は企業がシェアを拡大するために必要な考え方です。
しかし、ランチェスター戦略を活用しても上手くいかないと考えている人も多いようです。
ランチェスター戦略は必ずしも万能ではありませんが、正しく理解することで、自社がすべき行動がわかります。
この記事では、ランチェスター戦略が難しくて使えないと考えている経営者に向けて、ランチェスター戦略の欠点や自社が取るべき戦略について説明します。
ランチェスター戦略の元となる法則
ランチェスター戦略は、第一次世界大戦の時にイギリス人の航空エンジニアであるフレデリック・W・ランチェスターにより提唱された「ランチェスターの法則」が元となっています。
第二次世界大戦後、ビジネスコンサルタントの田岡信夫が戦争理論だったランチェスターの法則を販売戦略としてビジネスに使えるように体系化したものがランチェスター戦略です。
ランチェスターの法則は2種類の法則に分けられます。どちらの戦略をとっても、両者とも同じ武器を持っていれば、兵士の人数で勝敗が決まります。
ランチェスターの第一法則
ランチェスターの第一法則とは弱者の戦略といわれています。以下のような1対1の戦闘をイメージしてください。
一騎打ち | 弱い競合との差を広げる |
接近戦 | 近隣エリアに1件1件営業をかける SNSで1人1人とコミュニケーションをとる |
局地戦 | ニッチな市場を見つける |
一転集中型 | ピンポイントに自社資源を投下する |
陽動作戦 | 有利な条件の下のみで事業を展開する |
一騎打ちや狭い場所での戦闘の場合、兵士の数が多い方が勝利します。しかし、戦い方を変えると兵士の数が少なくても勝機が生まれます。
例えば、強力な武器を使ったり、大勢いる敵軍を分断して少人数にしたりする戦い方です。
これをビジネスシーンに置き換えましょう。
中小企業は大企業よりも兵士(社員)が少ないです。普通に戦っていては大企業に勝てません。そのため、武器(自社の強み)を磨くのです。
ターゲットや販売場所を狭めてそこだけに自社の資源を集中投下することで、大企業との差別化を図り、勝つことができます。
ランチェスターの第二法則
ランチェスターの第二法則は強者の戦略と言われています。第二法則でイメージする戦闘は近代の戦闘です。
広域戦 | 全国区に展開する |
確率戦 | 新規商品をどんどん展開し、反応の良いものを残す |
遠隔戦 | マスメディアを利用した宣伝で認知を獲得する |
総合戦 | 幅広いエリアに自社資源を投下する |
誘導作戦 | 自社の有利な場所に競合を囲い込む |
広い土地を舞台にした戦闘の場合、広範囲に多くの兵士を投下する必要があります。そのため、武器の質よりも兵士の数が重要です。
ビジネスで言えば、マスメディアに露出して全国規模で消費者に商品を認知してもらうことなどが挙げられます。中小企業には難しいマーケティング戦略と言えるでしょう。
ビジネスにおけるランチェスター戦略の強者と弱者とは
ランチェスター戦略の強者はマーケットシェア1位の企業のことで、弱者は2位以下のすべての企業です。
会社の規模で立場が決まるわけではないため、強者は大企業とは限りません。マーケットシェア1位を取れれば、中小企業でも強者となることができます。
ランチェスター戦略は戦争から生まれた法則が元となっています。戦争は言わば自分の土地を広げるための陣取り合戦です。
同じようにビジネスでは、自社のシェアを広げなければなりません。ランチェスター戦略はいかに多くの顧客に自社の商品を購入してもらえるかに焦点を置いています。
ランチェスター戦略の4つの欠点と解決策
ランチェスター戦略は、シェア1位になればどんな企業でも強者になれるというものです。それでも中小企業がシェア1位になるのは難しく感じるのではないでしょうか。
ここでは、ランチェスター戦略の4つの欠点を説明します。
- 戦争とビジネスを結び付けにくい
- シェアの測定方法が難しい
- 強者と弱者を間違って当てはめると結果が出ない
- ランチェスター戦略だけでは成果が出ない
欠点があることを知るだけでも、自社にランチェスター戦略を当てはめる際に意識することができます。
1. 戦争とビジネスを結び付けにくい
戦争とビジネスはまったく別のものであるため、戦争の法則がビジネス戦略になると結び付けにくく感じる人が多いです。特に、戦争を知らない世代にはイメージがしづらいでしょう。
ランチェスター戦略に戦争という負のイメージを持ってしまい、ビジネスに関係づけるのがより難しくなっています。
ランチェスター戦略を学ぶ際には、必ずと言っていいほど戦争の理論から入りますが、それよりも自社のビジネスでどう使えば良いのかを考える方が大事です。
自社は弱者と強者のどちらなのかを把握し、正しい戦略を選択できるようになりましょう。
2. 市場シェアの測定方法が難しい
市場シェアは数字で測ることが難しいため、自社がシェア1位なのかそうでないのかの判断が困難です。
ランチェスター戦略では、市場シェア1位を取ることが最大目標のため、自社の市場シェアがわからなければランチェスター戦略を実践することができません。
市場シェアの測定には統計情報が必要です。日本経済新聞社は毎年市場シェアの調査を実施しています。調査結果は日経産業新聞に毎年7月に発表され、『日経業界地図』という書籍にまとめられています。
調査されていない業界は日本経済新聞の記事で取り上げられる可能性もあるので、日ごろから新聞に目を通しておくと良いでしょう。
以下のような市場調査会社の調査結果を確認する方法もあります。
自社の業種の市場規模や年間売り上げを把握し、自社の売り上げと比較することで、自社の市場シェアを知ることができます。
中小企業の場合は、日本全体の統計ではなく特定の自治体の統情報計や、特定のキーワードの検索結果など、市場の範囲を狭めてシェアを測定することで市場での占有率がわかります。
3. 強者と弱者を間違って当てはめると結果が出ない
自社が市場のシェア1位を獲得していないのに、間違って強者と考えて強者の戦略を取ってしまうと、自社の強みを発揮できないばかりか、競合にシェアを奪われてしまう可能性もあります。
自社の市場シェアがわからない場合や、強者と弱者で迷う場合は弱者の戦略を取りましょう。弱者は強者の戦略をとってもうまくいきませんが、強者が弱者の戦略をとってもある程度の成果が出るからです。
自社の強みをしっかりと把握し、自社の得意とするフィールドでシェア1位を取ることが重要です。
4. ランチェスター戦略だけでは成果が出ない
ランチェスター戦略を正しく実践したとしても、必ず強者になれるとは限りません。市場シェアが増えるかどうかも保証されていません。
結果を出すには、経営やマーケティングの知識と市場動向を正確に把握するためのノウハウなどが必要です。
実践するのは難しいですが、間違った戦略をとって失敗することを防げるため、結果がすぐに出なくても諦めずに取り組んでいきましょう。
ランチェスター戦略で中小企業が成功する方法
ランチェスター戦略で強者になるためには、シェア1位にならなければなりません。中小企業が強者になる戦略には4種類あります。
- 地域戦略論
- 流通戦略
- 営業戦略
- 市場参入戦略
狭い分野でも圧倒的なシェア1位を獲得することができれば、その範囲を広げていき、ビジネスを成長させます。
1. 地域戦略論
地域戦略論とは、自社の資源を投入するエリアを狭めて、ある特定の地域だけでシェア1位をとる戦略です。地域戦略がうまくいくと、特定の地域だけで「○○といえば××」という状態を作れます。
例えば、スーパー玉出は全国区で知られている店ではありませんが、大阪府だけでは圧倒的な知名度を誇ります。
また、関西に弱かったセブンイレブンは、大阪に集中して大量出店し「関西のコンビニはローソン」というイメージを覆しました。
2. 流通チャネル戦略
流通チャネル戦略は、マーケティングミックスの4Pの1つであるPlaceを指し、自社商品・サービスの流通経路からシェアを広げていく戦略です。
実店舗やECサイト、テレビショッピングなどの販売方法から、競合が弱いチャネルに力を入れることで市場シェアの拡大を狙えます。
文房具メーカーのアスクルは、通信販売の販路を開拓した企業です。業界最大手のコクヨは実店舗での販売に重きを置いていたので、うまく流通チャネルで差別化することができました。
3. 営業戦略
営業戦略は、売上アップや顧客数の増加などの目標を達成するための戦略です。自社だけの強みを活かして顧客に最大限の価値提供をすることが重要です。
SNSを運用して顧客との接点を増やし、丁寧に対応することで自社の見込み顧客に繋げたり、ターゲット層を競合とずらしたりしてシェアを増やすなどの施策が挙げられます。
ファミリーレストランのロイヤルホストでは、一般的なファミリーレストランよりも高単価に設定し、素材にこだわったメニュー展開をしています。
家族向けの低価格ではなく、家では味わえないクオリティや健康志向の料理を提供することで、他との差別化に成功しました。
4. 市場参入戦略
市場参入戦略は商品企画や新規事業への参入の際に、どのように市場に参入するかを検討します。
先発で商品を出しても40%以上が失敗をしてしまいますが、後発の商品は先発の失敗を見ることができるため失敗の確立が低く、先発商品を応用してより良いものを生み出しやすいメリットがあります。
ハンバーガー業界の弱者であるモスバーガーは、他の企業が商品の作り置きをしていたのに対し、注文を受けてから作るシステムを採用しました。
出来立ての料理を提供し、素材の良さなどを売りにして高価格のハンバーガーというブランディングを確立することに成功しています。
ランチェスター戦略を実践するための3ステップ
弱者の戦略では、強者のフィールドで戦わないことが重要です。そのためには強者と徹底した差別化が必要となります。
ここでは、ランチェスター戦略の実践方法を3ステップにまとめました。
- 自社を分析する
- 自社の強みを活かせる市場を分析する
- 自社のブランディングを確立する
分析に便利なフレームワークもありますので、合わせて活用してください。
1. 自社を分析する
弱者の戦略を活用するには、自社の強みや弱みの把握が不可欠です。市場での立ち位置や競合との関係性などを踏まえて客観的に分析します。
分析するためのフレームワークとして、SWOT分析や3C分析、STP分析などが役立ちます。
SWOT分析
SWOT分析は以下の4つの要素を分析するフレームワークです。
- Strength(強み)
- Weakness(弱み)
- Opportunity(機会)
- Threat(脅威)
強みと弱みは自社の内部要因で、機会と脅威は環境などの外部要因です。これら4つを分析することで、自社の強みを活かせる機会を把握することができます。
市場で差別化を図り、シェアを広げていく上で必要な項目が揃っています。
3C分析
3C分析の項目は以下の3つです。顧客と自社、競合の関係性を把握することで、自社の強みを活かしたマーケティング施策を打てます。
- Customer(顧客・市場)
- Company(自社)
- Competitor(競合)
3C分析では、自社の強みと顧客のニーズが合致し、競合がいない分野を見つけます。3C分析で競合がまだ進出していない市場を見つけ出せば、自社のシェアを伸ばし差別化をすることができるのです。
STP分析
STP分析は詳細なターゲティングのもと、競合との差別化を図ります。
- Segmentation(市場細分化)
- Targeting(市場の決定)
- Positioning(自社の立ち位置の明確化)
細かくセグメントを分けることで顧客のニーズに沿った戦略を取ることができます。STP分析で競合のいない場所に自社の立ち位置を定められるため、結果を出しやすいです。
2. 自社の強みを活かせる市場を分析する
弱者の戦略では強者がいる市場には手を出さないことが重要です。誤った市場を選んでしまうとシェアを獲得できず、他の企業にシェアを奪われてしまう可能性があります。
市場分析ができる分析には先述した3C分析やSWOT分析の他に、PEST分析やファイブフォース分析があります。
PEST分析
PEST分析はマクロ環境の4項目を分析するフレームワークです。
- Politics(政治)
- Economy(経済)
- Society(社会)
- Technology(技術)
外部環境は長期的な視点で見る必要があり、自分ではコントロールすることが難しいものです。PEST分析をすることで、トレンドを押さえたビジネスチャンスを掴みやすくなるでしょう。
ファイブフォース分析
ファイブフォース分析は、5つの脅威を分析することで自社が参入するべき市場を把握できます。
- 競合他社
- 買い手の交渉力
- 売り手の交渉力
- 代替品の脅威
- 新規参入の障壁
ファイブフォース分析で予想される利益を立てられるため、損失が多ければ撤退することを考えます。市場は常に変化しているため、脅威の少ないところを常に狙っていくことが大事です。
3. 自社のブランディングを確立する
自社の強みと選ぶべき市場が分析できれば、他にはない自社のブランディングを確立します。ブランディングが他社との差別化となります。
自社そのものや商品に対して、顧客にどのようなイメージを持ってもらいたいかを明確にすることが大切です。
例えば、スターバックスは「会社でも自宅でもない第三の場所」を提供するブランディングを確立していますが、スターバックスが現れるまでは喫茶店は男性の会社員が行く所という場所でした。
顧客に自社のブランディングを浸透させていくことで、自社の立ち位置が盤石になります。
ランチェスター戦略の欠点を把握してシェア1位を狙いましょう
この記事では、ランチェスター戦略の欠点と解決策、自社がすべき戦略などについて説明しました。
ランチェスター戦略を活用するためには、経営やマーケティングの知識や分析が必要です。自社の立ち位置が明確になれば、弱者としての戦略がとりやすくなります。
ランチェスター戦略が難しいと思う人は、自社と市場の分析を行い、競合の弱い部分で自社の強みを活かせないかを考えてみましょう。
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