リテールメディアのビジネスモデルとは?事例と併せて解説

最終更新日: 2024/04/05 公開日: 2024/04/05
  • リテールメディアとは、どのようなビジネスモデルなのか?
  • リテールメディアのビジネスモデルがもたらす効果とは?
  • 具体的な事例からリテールメディアを活用するメリットを知りたい

上記のような疑問を抱えていませんか?

今回は、リテールメディアのビジネスモデルの概要と活用することで得られる効果についてわかりやすく解説します。

リテールメディアを活用した具体的な事例も併せて紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

リテールメディアのビジネスモデル

はじめにリテールメディアとは何か、ビジネスモデルの骨子を確認しておきましょう。

オムニチャネルやOMOとの違いを押さえておくことが大切です。

リテールメディアとは

リテールメディアとは、小売事業者が自ら提供・運営する媒体のことを指します。

従来、小売事業者の広告施策には広告代理店などが関与するのが一般的でした。

リテールメディアでは、小売事業者が保有するファーストパーティデータ(自社が収集したデータ)を活用する点が大きな特徴です

小売事業者は自ら収集した信頼性の高いデータを元に、広告主であるメーカーと共同で広告施策を講じることができます。

リテールメディアの活用により、小売事業者は広告収益を新たな収益基盤として確立することも可能です。

小売事業者・広告主・消費者の関係

リテールメディアのビジネスモデルには、小売事業者・広告主・消費者の三者が関わっています。

大枠の仕組みとしては次の通りです。

  1. 小売事業者が自社で収集した顧客データと広告スペースを広告主へ提供する
  2. 広告主は小売事業者の広告スペースに出稿し、広告料を支払う
  3. 消費者が広告を見て商品を購入する
  4. 小売事業者は購買行動などのデータを広告主へ提供する
  5. 広告主はデータを元に新たな広告戦略を検討する

小売事業者が保有する顧客データを提供し、広告収入を得られる点がリテールメディアのポイントです。

商品を実際に販売する小売事業者は、エンドユーザーである消費者と最も距離が近い位置にいます。

小売事業者が顧客データを提供し、広告を運用することによって得られるメリットは次の通りです。

  • 広告主:自社の商品が消費者にどのように受容されているのかを詳細に把握しやすくなる
  • 小売事業者:広告収益を新たな事業の柱として確立できる
  • 消費者:ニーズに合った情報を得やすくなり、購買体験が向上する

リテールメディアは、小売事業者・広告主・消費者の三者がいずれもメリットを得られる「三方よし」のビジネスモデルといえます

リテールメディアとオムニチャネルの違い

オムニチャネルとは、Web広告・SNS・メルマガ・DMといった複数のチャネルを統合する手法のことです。

購買行動を促すチャネルの多様化に伴い、別々に運用されていた媒体を統合して訴求力を高めることが主な狙いといえます。

あくまでも事業者視点にもとづく施策であり、顧客接点をいかに増やすかに重きが置かれている点が特徴です

オンラインとオフラインを統合する点は共通しているものの、オムニチャネルは広告モデルを根底から覆す施策ではありません。

小売事業者が自ら広告を提供・運用するリテールメディアは、オムニチャネルとは大きく異なります。

リテールメディアとOMOの違い

OMOとは、オンラインとオフライン(実店舗)を統合するマーケティング手法のことです。

消費者ごとにデータを一元化することにより、顧客体験の向上を図ることが主な狙いといえます。

たとえば、すでに実店舗で購入済みの商品が、店舗アプリ上で「おすすめ商品」として表示され続けていたとしましょう。

消費者としては「購入したばかりの商品を『おすすめ』されても困る」と感じるはずです。

OMOを推進することにより、購買行動をオンライン・オフラインの両面で把握し、パーソナライズされた広告を表示できます

オムニチャネルと同様、小売事業者が自ら広告を提供・運用するリテールメディアとは大きく異なる施策です。

リテールメディアのビジネスモデルがもたらす効果

リテールメディアのビジネスモデルを導入することで、具体的にどのような効果を得られるのでしょうか。

小売事業者・広告主(メーカーなど)の双方から見た場合の効果について解説します。

顧客データを統合できる

従来、小売店で消費者が商品を購入した際の動機や購買行動は推測の域を出ない部分が多くを占めていました。

たとえば、複数の商品が陳列されている棚から特定のメーカーのシャンプーを選んで購入した場合を考えてみましょう。

【想定される消費者の購入動機】
・新聞の折込チラシで値引き情報を見たから
・店頭でPOPを見ておすすめ商品と知ったから
・店頭でデジタルサイネージを見て興味を持ったから
・単にいつも使っているシャンプーだから
・たまたま店頭で商品を見かけたから

小売店・メーカーの双方は、同商品をどのように訴求すればより売れるようになるのか、経験や勘を頼りに判断するしかありません。

そもそもチラシやPOP、デジタルサイネージを見てもらえたのかどうか、確認する方法さえなかったのです。

リテールメディア施策においては、次のような訴求が可能になります。

【リテールメディアの施策例】
・店舗アプリにおすすめ商品をプッシュ通知
・プッシュ通知から商品ページへ遷移したことを確認
・対象商品のセール時に店舗アプリで通知
・店頭のデジタルサイネージで対象商品の情報を表示

小売店・メーカーの双方は、どの広告が効果的に購買行動を後押ししたのか分析・検証しやすくなるでしょう。

顧客データを統合し、実際の購買行動に即した施策を検討・実践していくことができるのです

消費者の認知拡大を図ることができる

メーカーなどの広告主としては、リテールメディアを通して自社商品の認知拡大を図ることができます。

従来は営業担当者を通じて、店舗での陳列場所や陳列方法を相談しながら決めていくしかありませんでした。

広告施策としては、自社でテレビCMを打つなどマスを対象とした施策に頼らざるを得なかったのが実情です。

リテールメディアを活用することにより、デジタルサイネージや店舗アプリなどの広告枠で積極的に自社商品をアピールできます。

消費者の購買行動を分析し、広告クリエイティブなど訴求方法を改善していくことも可能になったのです。

自社商品を「知ってもらう」ための機会が増えることは、メーカーにとって大きなメリットといえます

消費者の購買行動に即したアプローチができる

スマートフォンの普及率が高く、都市部であれば生活圏内に実店舗が複数あるのは、人口密度の高い日本特有の環境といえます。

日本においては、Web広告やSNSで商品に興味を持った際、実店舗に出向いて実物を確認する消費者が少なくありません。

オンラインで見た商品のイメージと、実店舗で目にした商品のイメージが大きく異なることは、購買行動を妨げる要因となります。

オンライン広告と実店舗のデジタルサイネージ広告を統一することで、「Webで見た商品」と認知されやすくなるのです。

多様化する消費者行動に対応し、実態に即したアプローチができることも、リテールメディアを取り入れる効果の1つといえます

リテールメディアのビジネスモデルを活用した事例7選

リテールメディアのビジネスモデルを活用した事例として、国内外の具体例を紹介します。

リテールメディアがどのように小売業のビジネスモデルを変革するのか、イメージする上で役立ててください。

事例1:Walmart

米国の小売大手Walmartは、リテールメディアをいち早く導入して成功を収めた事例として知られています。

5,000店以上にのぼる各店舗に17万台のデジタルサイネージを設置し、自社の顧客データを活かした広告施策を講じてきました。

アプリにおいてもスポンサー商品の広告枠を設け、配送サービスと組み合わせることで独自の経済圏を築いたのです。

セルフレジでは決済画面に商品広告を表示し、次回来店を促すといった施策も講じています。

同社のリテールメディアは、全米のデジタル広告費の8%以上を占めるとされるほど巨大な事業へと成長しました

事例2:Amazon

米国でリテールメディア最大規模のシェアを誇るAmazonでは、早期からスポンサー広告枠を設けてきました。

ユーザーが商品を検索すると、検索結果とは別にスポンサー広告枠が優先表示されるという仕組みです。

膨大なユーザー数を擁する同社の訴求力が、メーカーにとって大いに魅力的であることは想像に難くありません。

2022年における同社の年間広告売上高は377億3,900ドル(対前年21%増)となっています。

日本円に換算すると5兆円を超える規模の事業となっていることから、リテールメディアの可能性を示唆する事例といえるでしょう

事例3:ファミリーマート

ファミリーマートでは、レジ上部にデジタルサイネージを設置し、消費者が広告に触れる機会を創出しています。

配信される広告はエリアごとに異なり、地域の企業から広告出稿を募るなど、地域性に合わせた施策を講じてきました。

とくに昼間の時間帯は消費者が広告に触れる機会が少ないことから、直前に目にした広告が購買行動に多くの影響を与えます

会計時にホットスナックの「ついで買い」を促すといったように、小売店でのリテールメディア活用は多くの可能性を秘めています。

事例4:エブリー

レシピを紹介するアプリ「DELISH KITCHEN」を運営する同社では、ユーザーデータを実店舗でも活用しています。

店頭デジタルサイネージでDELISH KITCHENとのタイアップ動画を配信し、オンラインとオフラインをつなげているのです。

同社では小売アプリも提供しており、店舗の付近を通りかかったユーザーに来店を促すプッシュ通知を配信する施策も講じています。

実際に来店したユーザーにはクーポンを配信するなどして、購買行動を促す施策を展開しているのです。

自社が保有する顧客データを活用し、オンラインとオフラインをシームレスにつなげた事例といえるでしょう

事例5:トラアルホールディングス

スーパーマーケットを展開するトライアルホールディングスでは、消費者の購買行動の解析に力を入れています。

店舗の天井にAIカメラ、ショッピングカートにはタブレット端末とスキャナーを搭載することで行動データを収集しているのです。

消費者1人1人の購買行動に合わせて、タブレット端末にクーポンなどの情報が表示されます。

消費者の嗜好に合ったクーポンを配信することにより、消費者の購買体験の向上を実現している点が大きな特徴です

事例6:マツモトキヨシ

ドラッグストアチェーンを展開するマツモトキヨシでは、広告配信だけでなく結果の検証にも注力しています。

メーカーが出稿した広告を配信後、実際に店舗で購入したユーザーの割合を分析しているのです。

カスタマージャーニーを詳細に分析できるようになり、メーカーとしても値下げに頼らない販促施策を講じやすくなりました

リテールメディアの活用が、小売事業者・広告主の双方にメリットをもたらした事例といえるでしょう。

事例7:ヤマダデンキ

ヤマダデンキでは、店頭のデジタルサイネージ広告と店舗アプリを連動させる施策を展開しています。

購買体験を向上させる取り組みのイメージは下記の通りです。

  • 店前サイネージ+プッシュ通知:入店促進
  • 棚前サイネージ:購買促進
  • 購入後:店舗・エリアなどの分析・可視化
  • モバイル広告:来店・再来店の促進

店内にIoT端末を設置することにより、店舗アプリとの連携を可能にしている点が特徴です。

消費者は、チラシ情報と連携させたクーポンやお買い得情報、季節ごとの目玉商品に関する情報などをタイムリーに受け取れます。

メーカーとしても、商品認知から購買行動までのプロセスの分析にデータを活用し、訴求方法を改善していくことができるでしょう。

店舗・メーカー・消費者の「三方よし」を実現したリテールメディアのビジネスモデルといえるのはないでしょうか

まとめ

リテールメディアは、小売事業者・広告主・消費者がいずれもメリットを得られるビジネスモデルといえます。

小売事業者としては、小売事業に加えて広告事業を経営の柱となる事業へと育てられる可能性を秘めたビジネスモデルです。

今回紹介したポイントを参考に、ぜひリテールメディアのビジネスモデルを活用した事業展開を検討してみてください。

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最終更新日: 2024/04/05 公開日: 2024/04/05