- リーダーシップを身につけたい・伸ばしたい
- アドラー心理学を仕事にも活かしていきたい
- 時代情勢に合ったリーダー像を知りたい
上記のようなことを考えたことはありませんか?
今回は、アドラー心理学からヒントを得たリーダーシップ論について解説します。
アドラー心理学に関する基本的な知識から、リーダーシップを伸ばすためのコツまで紹介していますので、ぜひ参考にしてください。
なぜ「リーダーシップにアドラー心理学」なのか?
そもそもリーダーシップとアドラー心理学に何の関係があるのか、疑問に感じた方もいるでしょう。
はじめに、アドラー心理学とは何か、リーダーシップとは何かを改めて振り返っていきます。
アドラー心理学とは
アドラー心理学の提唱者は、オーストリアの精神科医アルフレッド・アドラーです。
「人は目的のもと生きている」「幸せになるには勇気を持つ」という思考が源流となり、アドラー心理学は誕生しました。
アドラー心理学の大きな特徴として、原因と結果の因果関係を定義し直している点が挙げられます。
1. 過去にいじめられた経験があるので、人とうまく話せなくなった
2. 人とうまく話せない理由を、昔いじめられた経験に見出している
一般的な因果関係としては、上記の1のほうが自然に感じる人が多いでしょう。
アドラー心理学では、人は目的を果たすために生きており、あらゆる判断は自分自身が好んで選択していると捉えます。
「なぜ自分はうまく人と話せないのだろう?」「昔いじめられた経験があるからだ」と結論づけているのは自分自身です。
思考を司っているのは自分自身であり、考え方しだいで現実を変えることも決して不可能ではないことを説いた心理学といえます。
リーダーシップの種類
リーダーシップは、1940年代まで先天的な性質に過ぎないと考えられていました(特性理論)。
一方で、特性理論では説明のつかないリーダーが次々と誕生するにつれ、新たなリーダーシップ論が提唱されていきます。
- リーダーシップは行動レベルで捉えるべきである(行動理論・1940年代後半〜)
- 普遍的なリーダーシップは存在せず、状況に応じて変わるものである(条件適合型理論・1960年代〜)
- 環境や組織に応じてリーダーシップのあり方は細分化されるべきである(コンセプト理論・1980年代〜)
コンセプト理論では、さまざまなリーダーシップのあり方が提唱されています。
代表的なリーダーシップは次の通りです。
種類 | 概要 |
変革型リーダーシップ | ビジョンを掲げ、組織の変革を促すスタイル |
カリスマ型リーダーシップ | リーダー自身が実務能力と発想力、行動力を発揮してチームを率いるスタイル |
EQ型リーダーシップ | チーム内の良好な人間関係や就業環境の構築を重視するスタイル |
ファシリテーション型リーダーシップ | 情報や意見を引き出す「傾聴」を重視するスタイル |
サーバントリーダーシップ | リーダーがチームのフォロー役に回るスタイル |
リーダーシップ論は今もなお進化を続けており、決定打となるような「完成版リーダーシップ論」は存在しません。
リーダーシップについて考える際に、心理学をはじめとする多方面の知見を取り入れるのは決して特殊な試みではないのです。
リーダーシップの醸成にアドラー心理学が有効な理由
リーダーシップ論が多様化するにつれて、「そもそもリーダーシップとは何か」が分かりにくくなった側面があります。
良きリーダーでありたいという素朴な願いが、複雑に入り組んだリーダーシップ論に埋もれてしまうようでは本末転倒です。
アドラー心理学は人の思考によく見られる因果関係の特徴に注目しており、物事をシンプルに捉えるのに適した心理学といえます。
チームの課題やリーダーとして抱えている悩みに対して、本質的に向き合うためのヒントとなるでしょう。
リーダーシップ論が多様化・複雑化の一途を辿っているからこそ、物事をシンプルに捉えるアドラー心理学が役立つのです。
アドラー心理学における「4つのE」
アドラー心理学をリーダーシップに活かす上で重要な要素として「4つのE」が挙げられます。
4つのEとは次のものです。
- Encourage(勇気づけ)
- Excitement(興奮)
- Enthusiasm(感激)
- Enrichment(心の豊かさ)
それぞれが表している意味を確認していきましょう。
Encourage:勇気づけ
勇気づけとは、「対人関係で発生する困難を克服する力を与えること」と定義されている要素のことです。
人が集まって仕事をしている以上、対人関係に関わる何らかの困難やトラブルはほぼ確実に発生するでしょう。
困難が立ちはだかったことをネガティブに捉えるのではなく、克服すべき課題と捉えるよう促していくことが大切です。
アドラーは目的論と呼ばれる思想を次のように説明しています。
個人の悩みは、過去に起因するのではなく、未来をどうしたいという目的に起因して行動を選択している。
対人関係に悩むのは、悩まざるを得ない状況が先にあり、結果的に悩まされているのではないのかもしれません。
「相手を受け入れたくない」「解決したいと思わない」という思考が先にあり、状況を複雑化させている可能性もあるのです。
Excitement:興奮
職場における「興奮」を端的に表すとすれば「仕事を純粋に楽しむこと」といえます。
リーダーシップを発揮しなければならないと焦るあまり、メンバーを管理しようとしていませんか?
人が集中力を発揮し、イメージ通りの結果を導くには「楽しめるかどうか」が非常に重要な要素を占めています。
リーダーから口うるさく注意されたり、「あれはダメ、これもダメ」と言われていたりすれば、仕事を楽しめないのは必然です。
メンバーを信頼し、思い切って仕事を任せることにより、メンバーは担当業務を自分事として捉えやすくなるでしょう。
Enthusiasm:感激
仕事を通して、人はどのような場面で「感激」するでしょうか。
「テレアポで新規アポイント5件を取得する」という目標を掲げた場合のことを考えてみましょう。
- Aさん:リーダーから「ノルマ」としてアポイント5件を言い渡され、必死に達成を目指した
- Bさん:自分で「今週中に新規5件を獲得する」という目標を立て、自発的に達成を目指した
結果的にAさん・Bさんが2人とも「新規5件」を達成できたとします。
より強く「感激」するのは、どちらだと思いますか?
Aさんにとって、ノルマはあくまでも「与えられた目標」であり、達成するのはリーダーの評価を下げたくないからに過ぎません。
Bさんにとって、新規5件獲得は自分自身で決めた目標であり、いわば「自分との約束」です。
仕事を通して「感激」する経験は、メンバーが自ら見つけるしかありません。
リーダーは、メンバーが感激する体験を得られるようサポートする必要があるのです。
Enrichment:心の豊かさ
従業員が心の底から貢献したいと感じ、実際に行動する職場にできるかどうかは「心の豊かさ」が鍵を握っています。
リーダーが効率や生産性を重視するあまり、メンバーに成果を競わせたとしましょう。
メンバーは他の人を出し抜き、自身の優秀さを誇示することをモチベーションの源泉とすることでしょう。
チームの雰囲気は殺伐としたものになり、場合によっては他人の足を引っ張ろうとするメンバーが現れるかもしれません。
たとえごく一握りのエース社員が誕生したとしても、チームとしての結束は失われてしまうでしょう。
メンバーが互いに信頼し合い、助け合っていけるチームを築くには、1人ひとりを認め応援するリーダーの存在が欠かせないのです。
メンバーの意欲を引き出す「勇気づけ」と「興奮」
アドラー心理学の「4つのE」をリーダーシップに応用するには、どのような考え方が必要になるのでしょうか。
リーダーに求められる役割と照らし合わせながら、アドラー心理学の活用方法を見ていきましょう。
リーダーシップにおける「勇気づけ」とは
リーダーシップにおける「勇気づけ」とは、「もっと頑張れ」などと精神論を振りかざすことではありません。
メンバーが抱えている課題や直面している問題に対して、自ら解決・克服できるよう促すことを指します。
人は困難に直面した時、物事のネガティブな側面に注目しがちです。
一方で、物事には必ず良い面・悪い面が両方あるため、良い面に注目することで解決の糸口が見つかるケースも多いでしょう。
メンバーが物事の良い側面に気づき、自発的に解決に向けて行動できるよう、サポートしていくのがリーダーの役割といえます。
職場における「興奮」を醸成するには
メンバーが心から仕事を楽しみ、達成感をもって仕事に取り組むことで「興奮」が醸成されていきます。
メンバー1人ひとりが何を期待され、どのような役割を担うのかを明確に伝えておくことが「興奮」の醸成につながるでしょう。
「勇気づけ」と同様、職場における興奮は各メンバーが自発的に取り組む過程でもたらされます。
1人ひとりが自律的に仕事を進められるよう、「任せたからには信頼する」スタンスが求められるはずです。
メンバーが働きやすい環境を提供できているか、逐一管理しようとしていないか、リーダーは常に自問自答していく必要があります。
メンバーの意欲を引き出すリーダーシップの理想像
メンバーの意欲を引き出すリーダーシップを発揮するには、チームを「プロデュース」する視点を持つことが大切です。
チーム全体の方向性を示し、具体的なアクションはメンバーに委ねていくのがプロデューサーとしてのあり方といえます。
委ねると言っても、単に業務を丸投げしたり、メンバーの苦境を見て見ぬふりをするべきではありません。
最終的に判断するのはメンバー自身であることを尊重しつつ、「導く」スタンスでリーダーシップを発揮していくことが大切です。
リーダーシップの結果がもたらす「感激」と「心の豊かさ」
アドラー心理学の「4つのE」のうち、「感激」と「心の豊かさ」はリーダーシップの結果としてもたらされる作用といえます。
メンバーがどのような場面で「感激」するのか、「心の豊かさ」を感じられる職場とは何かを考えていきましょう。
メンバーはどんな場面で「感激」するのか?
目標を掲げて仕事を進めていく時、メンバーの内的な動機にはいくつかの段階が想定できます。
- 主語が「あなた」:リーダーや上司のために目標を達成する
- 主語が「私」:目標を自分で決め、自らが掲げた目標を達成する
- 主語が「私たち」:チームで目標を共有し、力を合わせて達成する
内的な動機の主語が自分以外に設定されているうちは、目標を達成しても心から喜べないでしょう。
主語が「私」になることで目標が自分事になるものの、ともすれば他人を出し抜くことに意識が向きかねません。
主語が「私たち」になった時、周囲との協調がより大きな成果をもたらすのです。
チームワークをたとえる際に「1+1が2とは限らない」といわれることがあります。
力を合わせて目標達成に取り組むことで、1+1が5にも10にもなる体験を通して人は「感激」するのです。
主語が「私たち」になるチームを築いていくためにも、メンバー間の信頼関係を醸成するリーダーシップが求められるでしょう。
「心の豊かさ」を感じられるチームとは
メンバー間の信頼関係が築かれ、協調によって優れた成果を得られることを実感したチームには強い絆が生まれます。
メンバーは「自分だけが成果を挙げる」ことを目指すのではなく、チーム全体で成功したいと考えるようになるからです。
お互いを尊重し合い、困っているメンバーを助け合う風土が根づくことで、業績もメンバーの成長も自然と達成されていくでしょう。
- 自身の成長がチームの発展につながると確信できること
- チームの発展が自身をさらに成長させてくれると思えること
上記のような思いを抱けるチームこそが、「心の豊かさ」を感じられるチームといえるのではないでしょうか。
「感激」と「心の豊かさ」がリーダーシップの成績表となる
メンバーが「感激」や「心の豊かさ」を感じられるチームになるかどうかは、リーダーシップの成績表といえます。
「私たちの目標」を達成するために各メンバーがベストを尽くすチームでは、リーダーは目立たない存在となるでしょう。
すでに成長と発展を自律的に志向するチームとなっており、リーダーが取り立てて指示・管理する必要がないからです。
優れたチームのリーダーが次のように話すのを耳にしたことはないでしょうか。
「メンバーに助けられた」
決して謙遜しているのではなく、心から「助けられた」と思っているのです。
「感激」と「心の豊かさ」をメンバーが実感できるチームを目指すことが、リーダーシップの重要な指標になるのかもしれません。
まとめ
リーダーシップのスタイルには「正解」が存在しません。
過去80年にわたり議論されてきたリーダシップ論は、これからも進化・発展し続け、細分化と多様化が加速していくでしょう。
複雑化するリーダーシップ論に振り回されるのではなく、リーダーシップの本質を掘り下げていく思考が求められるはずです。
アドラー心理学の「4つのE」は、見れば見るほどシンプルな要素から成り立っています。
シンプルな理論だからこそ、現代のリーダーシップをじっくりと掘り下げるポテンシャルを秘めているのではないでしょうか。
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