1989年に94歳で永眠した松下幸之助氏。
日本を代表する経営者であり、「経営の神様」とも称される松下氏のことを知らない方はいないでしょう。
松下幸之助氏の没後20年を経て刊行された『リーダーになる人に知っておいてほしいこと』という書籍をご存知でしょうか。
管理職やリーダーを志す若手向けのように思えるタイトルですが、実は経営者の方にこそ読んでいただきたい書籍です。
とくに次のように考えている経営者の方におすすめです。
- 経営者としての経営思想の「軸」が欲しい
- 事業をさらに拡大していきたい
- 人がついてくるリーダーでありたい
本記事では、松下幸之助氏の言葉から経営者の方々に知っておいてほしいエッセンスを紹介していきます。
ぜひ参考にしてください。
松下幸之助の『リーダーになる人に知っておいてほしいこと』とは?
はじめに『リーダーになる人に知っておいてほしいこと』とは、どのような書籍なのかを解説します。
具体的な内容は以下の3つです。
- 松下政経塾所蔵の未公開テープから厳選された名言集
- 松下幸之助とは?
- 松下政経塾とは?
松下幸之助氏の没後20年を経て刊行された背景と併せて理解を深めておきましょう。
松下政経塾所蔵の未公開テープから厳選された名言集
『リーダーになる人に知っておいてほしいこと』は、松下政経塾所蔵の未公開テープから書き起こされた書籍です。
松下幸之助氏が生前、松下政経塾で行った累計約100時間もの講話から厳選された名言を収録しています。
没後20年を経て、次世代のリーダーに先人の叡智を伝えるべく刊行されました。
松下幸之助氏が塾生に向けて語った言葉を、あたかも直接聞いているかのように追体験できます。
リーダーを志す若手の方々はもちろんのこと、経営者にとっても経営哲学に関する深い学びを得られる書籍となっています。
松下幸之助とは?
松下幸之助氏は、パナソニック(旧松下電器)グループの創業者です。
9歳で火鉢店や自転車店で奉公したのち、大阪電灯株式会社での勤務を経て23歳のときに松下電器を創業しました。
創業当時の松下電器は、松下氏が自ら考案した「電球ソケット」の製造・販売を行う会社でした。
二灯用差込みプラグ、自転車用電池ランプといったヒット商品を生み出した同社は、事業を拡大していきます。
以降、20世紀を代表する大企業であるパナソニックグループへと成長していったことは誰もが知るところです。
松下政経塾とは?
80歳で現役を引退した松下幸之助氏は、次代の国家指導者を育成するべく松下政経塾を設立します。
松下政経塾は、松下幸之助氏が私財により設立した財団法人です。
4年間にわたる入寮生活を通じて、次世代のリーダーになるための研修・実践活動が行われるのが特徴です。
卒塾生は政財界や研究・教育、マスコミなど幅広い分野で活躍しています。
松下幸之助氏も生前自ら講話をし、企業人として培った信念や指導者としての心得を塾生に説きました。
『リーダーになる人に知っておいてほしいこと』は、松下政経塾に保管されていた講話の音源を元に編集・刊行されています。
松下幸之助が説く「道を切りひらくために必要なこと」とは?
企業経営では、困難な事態に遭遇したり解決が難しいと感じられる場面に立ち会ったりすることはよくあります。
幾多の困難を乗り越えてきた松下幸之助氏は、道を切りひらくためにどのような哲学を培ってきたのでしょうか。
ここでは以下の2つのポイントを紹介します。
- 初志を貫く
- やるべきことを確実に実行する
それぞれ順番にご覧ください。
初志を貫く
松下幸之助氏は道を切りひらくための哲学として、初志を貫くことを述べています。
(『リーダーになる人に知っておいてほしいこと』より)
経営者として取り組むべき課題は多岐にわたります。
時には自分にとって不向きと思える事態に遭遇するかもしれません。
本書では、このような自分にとって適していないと感じた場合でも、押し切って取り組んでみることの重要性を説いています。
初志を簡単に変えるのではなく、貫くことに集中する。
初志を貫くことは一見すると困難です。
しかし、初志を貫くことは「取り組みを続けることにより大きなものを得られる効率の良い考え方」だと説いているのです。
やるべきことを確実に実行する
松下幸之助氏は道を切りひらくための哲学として、やるべきことを確実に実行することが重要と述べています。
(『リーダーになる人に知っておいてほしいこと』より)
ビジネスが日々勝負の連続であることは、経営者の方であれば骨身に染みて感じているはずです。
よく「リスクを取る」という言い方をしますが、勝算があるか分からないことに対して無謀な挑戦をするのは、経営者の役割ではありません。
勝つか負けるか分からないことに賭けるのではなく、勝算のあることを確実に実行し、着実に勝ちを重ねていくことが重要です。
「やるからには”必ずやるべきだ”と信じ、前に進むために必要な勉強をしていけばよい」と松下幸之助氏は説いています。
現場を重視し、絵空事ではない着実な経営を続けてきた松下幸之助氏の言葉だからこそ、重みをもって響く名言といえるでしょう。
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松下幸之助が説く「知恵と力を集めるために必要なこと」とは?
事業が軌道に乗り、安定的に採算が取れるようになるまでは、時間がかかることもあります。
自主自立した組織を作っていくために、経営者はどのようなマインドで臨めばよいのでしょうか。
具体的には以下の2つを意識してみてください。
- 熱意を持つこと
- 失敗さえも「縁」と捉える
順番に解説します
熱意を持つこと
松下幸之助氏は知恵と力を集めるために、熱意を持つことが重要と述べています。
(『リーダーになる人に知っておいてほしいこと』より)
知識や小手先ではなく、根底に熱意がなければ経営はうまくいかないと松下幸之助氏は説いています。
創業当時はゆっくりと食事を味わうことなく、就寝時にも枕元にアイデアを書き留めるための紙と鉛筆を置いていたという松下幸之助氏。
並々ならぬ情熱こそが、事業を軌道に乗せ一大グループを築いていく原動力となっていたのです。
松下幸之助氏は常に頭をフル回転させ、事業の成功に向けて熱意を持ち続けることの重要性を伝えています。
失敗さえも「縁」と捉える
松下幸之助氏は『リーダーになる人に知っておいてほしいこと』で、失敗さえも「縁」と捉えることが、知恵と力を集めるために重要と述べています。
(『リーダーになる人に知っておいてほしいこと』より)
企業経営において、しばしば「ピンチこそがチャンス」と言われることがあります。
クレームをつける顧客は、企業に対する期待があるからこそ憤慨し、製品やサービスの欠陥を指摘しているのです。
実際に不良品を納品して叱られたことが、松下電器の成功のもとになったと松下幸之助氏は説いています。
失敗さえも「縁」と捉え、チャンスに変えていくことが成功への道をよりたしかなものにしてくれるのです。
松下幸之助が説く「すべてに学ぶ人となる」ためには?
経営者として成長し続けていくには、学び続ける姿勢を保っていくことが欠かせません。
事業が軌道に乗り、一定の成功を収めてもなお学び続けるには、どのようなことを意識すればよいのでしょうか。
ここでは以下の2つを紹介します。
- 基本を忘れない
- つまらない仕事などない
順番に見ていきましょう。
基本を忘れない
松下幸之助氏は『リーダーになる人に知っておいてほしいこと』で、学び続けるためには基本を忘れないことが大切だと述べています。
(『リーダーになる人に知っておいてほしいこと』より)
服装や身のまわりの整理整頓といった基本を大切にすることの重要性を、松下幸之助氏は説いています。
業績と直接関係ないからと基本をおざなりにすれば、あらゆる面で組織の緩みが生じる原因となっていくのです。
基本は簡単ですが、忙しいときでも身のまわりのことをきちんとしておくことは容易ではありません。
常に基本に立ち返り、一つひとつの原理原則を重視しているからこそ、自信を持って大きな仕事に取り組めるのです。
つまらない仕事などない
松下幸之助氏は『リーダーになる人に知っておいてほしいこと』で、つまらない仕事などないと説いています。
(『リーダーになる人に知っておいてほしいこと』より)
形式的に仕事をこなしたり、単純作業だからと手を抜いたりしていれば、身につくものや学べるものはありません。
丁寧に掃除をしていれば植木の落ち葉が以前よりも増えたことに気づき、水やりの量を増やしたほうが良いと判断できるものです。
大きな仕事に取り組むからといって、小さな仕事を軽視してもよいことはないでしょう。
経営に関係ない仕事などなく、あらゆる仕事に意味や目的を見いだすことが重要であると松下幸之助氏は説いているのです。
松下幸之助が説く「新たな歴史の扉を開く」ためには?
他社との競争に打ち勝ち、自社をいっそう成長させていくには他社に先駆けた試みが必要になることもあります。
先駆開拓を実現するには、経営者としてどのような点を心がけていけばよいのでしょうか。
ここでは松下幸之助氏が述べる「新たな歴史の扉を開く」ために重要なポイントを、以下の2つ紹介します。
- 知識にとらわれないこと
- 一歩先の現実を見ること
それぞれ順番に見ていきましょう。
知識にとらわれないこと
松下幸之助氏は、他社との競争に勝つために知識にとらわれないことが重要と述べています。
(『リーダーになる人に知っておいてほしいこと』より)
身につけてきた知識やこれまでの経験を活かすことは、経営者として成功していく上で重要な要素と思われがちです。
しかし、既知の情報や経験則にとらわれてしまうと新たな思考へと踏み出せなくなることも少なくありません。
近年、アンラーン(学習棄却)の重要性が論じられていますが、松下幸之助氏は当時からアンラーンの重要性に気づいていたのです。
知識は一見すると忘れたようでも、本当に重要なことであればきちんと記憶に刻まれています。
とらわれるよりも一からやり直すつもりで取り組むこと。
常に挑戦を続けてきた松下幸之助氏の金言といえるでしょう。
一歩先の現実を見ること
松下幸之助氏は『リーダーになる人に知っておいてほしいこと』で、競争に勝つためには一歩先の現実を見ることが重要と説いています。
(『リーダーになる人に知っておいてほしいこと』より)
経営者として事業を発展させるには、遠くの目標やビジョンに向かって進んでいくことが大切です。
一方で、足元をしっかりと固めておくことも、組織を着実に成長させていく上で欠かせない視点といえます。
遠い先にある目標を見据えつつ、足元を確実に固めていくことの重要性を松下幸之助氏は説いています。
事業が成長するにつれて見落としがちになりますが、「今」の積み重ねが企業の未来につながっていくことを忘れてはなりません。
松下幸之助が説く「真の発展を目指せる人になる」ためには?
100年以上続く企業もあれば、ものの数年で存続が危ぶまれてしまう企業もあります。
長きにわたって発展し続ける企業をつくっていくには、何を重視していけばよいのでしょうか。
ここでは以下の2つのポイントについてまとめました。
- 部下や社員と本音で向き合う
- 誠実な奉仕の心を持つ
それでは解説していきます。
部下や社員と本音で向き合う
松下幸之助氏は長きにわたって発展し続ける企業を作るためには、部下や社員と本音で向き合うことが大切と言っています。
(『リーダーになる人に知っておいてほしいこと』より)
経営者のあなたに対して、部下や社員は本音で意見を述べてくれるでしょうか?
社員を指導・教育しなければならないと一生懸命になるあまり、教える一方になっている方も多いでしょう。
経営者自身も社員の良い面を学び、吸収すると成長していくことが可能です。
他者から学ぶ経営者の姿勢が組織全体に伝播することで、学び合い成長を促し合う風土が醸成されていくのです。
誠実な奉仕の心を持つ
松下幸之助氏は『リーダーになる人に知っておいてほしいこと』で、企業が発展するためには誠実な奉仕の心を持つことが大切と説いています。
(『リーダーになる人に知っておいてほしいこと』より)
企業組織は「人」によって構成されています。
従業員同志の尊重する気持ちが損なわれてしまうようでは、強い組織をつくり上げることはできません。
ポーズやテクニックではなく、誠実な奉仕の心を持つことの大切さを松下幸之助氏は説いています。
経営者もまた、社員に対して「仕える」という側面を持っていることを忘れるべきではありません。
»組織力を高める5つの方法|チーム力の向上に成功した企業事例を紹介
まとめ
『リーダーになる人に知っておいてほしいこと』に収められている松下幸之助氏の言葉は、決して難解なものではありません。
一つひとつの名言は非常にシンプルで、淀みなくストレートに語られています。
若手の人材のみならず、経営者が初心に戻るために役立つ名言の数々があるといえるでしょう。
経営者の方々こそ、常に手の届く場所に置いておきたい1冊といえます。
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