リーダーシップは、組織として成果を上げる上で非常に重要な要素です。
しかしリーダーシップのイメージや定義は、人それぞれ違います。
- 「リーダーシップを発揮するにはどうしたらよいのか」
- 「そもそもリーダーシップとは何なのか?」
- 「組織が成果を上げるために自分に何ができるのか」
このように考える方も多いのではないでしょうか。
この記事では「マネジメントの父」とも呼ばれるピーター・ドラッカーのリーダーシップ論を基に、リーダーシップを発揮している人の特徴をご紹介します。
リーダーシップを高める行動についても触れていますので、ぜひ参考にしてください。
ドラッカーが定義するリーダーシップとは
ドラッカーはリーダーシップを次のように定義しています。
つまり、リーダーに求められるのは成果を上げるだけではなく、周囲の人の能力を高めることなのです。
リーダーシップは才能のように思われがちです。
しかし、生まれながらのリーダーは非常にまれで、リーダーシップは後天的に学べるとドラッカーは述べています。
そして、リーダーシップは、経営者層だけに求められるものではなく、すべての人に求められる非常に重要なスキルです。
なお、ドラッカーは、リーダーシップに大切なことを次の4つを挙げています。
- 従う者がいること
- 人気や賞賛ではなく正しいことをしているかどうかの「結果」が重要
- 周りに模範を示していること
- リーダーシップは地位・肩書・特権・金銭ではなく「責任」である
リーダーシップとマネジメントの違い
リーダーシップとマネジメントは同じものと考えられますが、ドラッカーはそれぞれを違うものとして定義しています。
「マネジメントは物事を正しく行うこと、リーダーシップは正しい行いをすることである」
マネジメントもリーダーシップも、組織の成果を上げるための要素です。
マネジメントが成果を上げるための方法であることに対し、リーダーシップは組織のメンバーが正しい行いをするよう導くことなのです。
【ドラッカー流】リーダーシップがある経営者の特徴10選
ドラッカー研究所のリック・ウォルツマン所長は、ドラッカーの思想を活かし、リーダーシップを発揮する経営者の特徴を10個挙げています。
- 個人とチームの目標が企業のミッションと一致している
- 優先順位が明確になっている
- 時間を無駄にしない
- 過去よりも未来に目を向けている
- 適切な人材を選ぶ視点を持っている
- 反対意見を受け入れる
- 自身の決断の影響力を理解している
- 自責思考が強い
- 社員貢献を重視している
- 有言実行している
それぞれ解説していきます。
個人とチームの目標が企業のミッションと一致している
ドラッカーは、社員が年に2回上司に向けて書く「マネジャーズ・レター」の活用を勧めていました。
マネージャーズ・レターを活用すると、上司と部下の認識のズレをなくすことが可能です。
そこに書く項目には、次のことがあります。
- 組織の目標に対する自分の認識
- 自分の目標
- 自分のパフォーマンスがどのように評価されるかの理解
- 目標達成のために何をすべきか
- 克服しなければならない障害
- 組織自体がどのような助けになり、または邪魔をする可能性があるか
自分たちがどのようなビジネスをしていて、そのために自分が何をなすべきなのかを明確にすることが重要です。
「なぜそれが我々の目的だと思うのか」「なぜ追求するのか」を、組織内で一致させることがリーダーの役割です。
優先順位が明確になっている
ドラッカーはマネジャーやリーダーに対して、時間や労力を費やす価値のないプロセスや活動を放棄するように促しました。
新しいことを始めたければ、古いことをやめなければならないと述べ、「やらないこと」と「始めないこと」のリスト化が重要としています。
やることの数を増やさず、一つずつ取り組むことで、集中力が高まりやり遂げられる確率が高くなるのです。
やることだけではなく、やらないことも明確にして、必要なことだけに注力する必要があります。
時間を無駄にしない
リーダーは自分と他人の時間も浪費しないようにしなくてはいけません。
たとえば、会議のし過ぎや的外れで理解しにくい情報発信などは時間を無駄にすることになります。
自分の時間を無駄にする以上に悪いのは、他人の時間を奪うことです。ドラッカーはリーダーが組織にとって最悪のボトルネックになりかねないとも言っています。
また「組織においてリーダーの受信ボックスにメールが2週間滞留していたら、工場でラインが2週間止まっているようなものだ」とウォルツマン所長は例えています。
自分の行動を1時間ごとにチェックしてみると、大半を成果のないことに費やしているかもしれません。
リーダーシップを発揮しているリーダーは時間管理を的確に行っています。
過去よりも未来に目を向けている
能力のあるリーダーは、未来に目を向けチャンスに焦点を当てています。
「ピンチはチャンス」という言葉にもあるように、問題をチャンスに変える考え方が組織のモチベーションアップにもつながります。
しかし、チャンスも時間をかけすぎると「問題」になることがあるでしょう。
状況を的確に判断し成果を上げられる可能性の高いものに集中することが大切です。
適切な人材を選ぶ視点を持っている
人材採用や昇進・昇格では、組織の目的・目標と、メンバーの強みをマッチさせることが重要です。
ドラッカーは、能力のある人材を選ぶのではなく、特定の仕事に対して適切なスキルと経験を持つ人材を選ぶべきだと考えていました。
ドラッカーの思想を用いて人材配置をするならば「誰を」ではなく「何をするか」をまず考える必要があります。
ミッションのためにスタッフを配置するのです。
反対意見を受け入れる
重要な決定こそ、賛否両論ある意見を俯瞰しながら議論することが重要です。
「誰もが拍手喝采で賛成することは、誰も宿題をやっていないことを意味する。賢い人たちに話をさせれば、自然と自分の意見を持ち、様々な角度から問題に取り組むようになる」
ドラッカーはこのように述べています。
相手の意見に合意すると、争いが生まれないため楽です。
しかし、意見を交わし合うことで、双方の関係が悪くなるのではと気にする方もいるでしょう。
リーダーは、誰もが自由に意見を言い合えるような信頼関係を築くことも非常に重要です。
反対意見を容認するだけではなく、受け入れる姿勢を見せることがリーダーにとって必要なことです。
自身の決断の影響力を理解している
リーダーが大きな決断をすると組織全体に影響を与えます。
たとえリーダーにとっては小さな決断でも、メンバーからは大きな決断と認識され、影響が大きくなることもあります。
リーダーにとっての重要な仕事のひとつは的確な意思決定です。
しかし、その決定が組織に与える影響が大きいことを認識しなくてはいけません。
決断を下す前に、最も影響を受ける可能性のある人を特定し、事前に相談することも必要でしょう。
自責思考が強い
人は、物事がうまくいかないとき他人のせいにしがちです。
とくに組織が大きくなるにつれてその傾向は顕著になる傾向があります。
ドラッカー研究所のウォルツマン所長は「トップの人間でさえ部下を犠牲にして自分を守ろうとする」と述べています。
ドラッカーは「説明責任」と「行動責任」という言葉を使い、リーダーの責任の重要性を語っています。
「誰もが企業や組織の成功に対して何らかの形で責任を負い、関係者全員が自分の行動に責任を負わなければいけない」と述べているのです。
社会貢献を重視している
仕事をする上で重要な問いは「どうすれば達成できるか?」ではなく「何に貢献できるか?」だと言います。
ビジネスにおいて大切なのは、顧客、従業員、地域社会、そして世界に対していかに貢献できるかを考えること。
ドラッカーは企業を社会の器官の一つと捉え、世界に対して有意義な貢献をするべきだと考えていました。
有言実行している
リーダーは称号ではありません。リーダーは模範を示して、他の人を導く必要があります。
ドラッカーは「口先だけではなく物事をきちんと実行する」人だったと言います。
そして、これこそがリーダーに求められることなのですが、では具体的にどうしたらいいのか?どうやって身につけたらいいのか?強い組織を作るためにはどうしたらいいのか?具体的な方法をこちらのページからダウンロードできますので、ぜひお受け取りください。
ドラッカーから学ぶリーダーシップを高める具体的な行動
リーダーシップはリーダーだけが身に着けるべきスキルではありません。誰もが高める必要があります。
ここではドラッカーの教えを基に、組織においてどのようにリーダーシップを高めるとよいかについてご紹介します。
チームメンバーと信頼関係を構築する
ドラッカーはリーダーシップについて次のような言葉を残しています。
「第一が、人のいうことを聞く意欲、能力、姿勢である。
聞くことは、スキルではなく姿勢である。誰にもできる。
そのために必要なことは、自らの口を閉ざすことだけである。」
リーダーはメンバーの話を聞く意思を持ち、お互いの意見を尊重することが非常に重要なのです。
さらにドラッカーは、以下のようにも述べています。
つまり、周囲からの信頼と、共に前進できる人を集めることこそリーダーシップなのです。
「何をすべきか」に集中する
ドラッカーは自身の経験から、多くの経営者が「変化をもたらすために何ができるか、何をすべきか」を常に問いていたと言います。
リーダーシップを高めるには、今何をしなくてはいけないかを常に確認し、集中する必要があるのです。
組織の使命やビジョンを明確にし、そこから逆算してやるべきことを決めましょう。
メンバーの多様性を受け入れる
ドラッカーは、多くの才能ある経営者は「人の多様性に対してきわめて寛容であり、その人が好きか嫌いかを考えることはほとんどしない」と述べています。
そして、メンバーの強さや才能を恐れず賞賛することも大切だと言っています。
メンバーの個性やそれぞれが持つ価値観を認め、受け入れることが良いリーダーに求められるでしょう。
的確な意思決定を行う
意思決定はリーダーにとって非常に重要な仕事です。
何をするべきかが明確になっていれば、確固たる根拠を持って決断できるでしょう。
ドラッカーは次のようにも述べています。
「何が受け入れられやすいかではなく、何が正しいかを考えなければならない。そもそも、何が正しいかを知らずして、正しい妥協と間違った妥協を見分けることはできない。その結果間違った妥協をしてしまう。」
前述したようにリーダーシップとは「正しい行いをすること」です。妥協して決定するのではなく、人として企業として正しい決断を下す必要があるでしょう。
リーダーシップについてさらに深めたい方はこちらの記事もおすすめです。
誰もがリーダーシップを発揮する組織へ
リーダーシップは役職や立場によって求められるものではありません。ビジネスマンとして働くすべての人が身に着けるべき非常に重要なスキルです。
リーダーシップが発揮されている組織は、チームのパフォーマンスが向上し、個人の能力も最大限に発揮されます。
企業としての目標やビジョンを達成することにも繋がります。
ドラッカーのリーダーシップ定義を基に、一人一人がリーダーシップを高めていきましょう。
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