- リーダーシップスタイルには、どのようなタイプがあるのだろう?
- そもそもリーダーシップとは何?
- タイプごとのメリット・デメリットとは?
上記のような疑問を抱えている経営者の方は、決して少なくないでしょう。
今回は、主要なリーダーシップスタイル10選とそれぞれの特徴、メリット・デメリットについて解説します。
リーダーシップスタイルを実践していく際のポイントもまとめていますので、ぜひ参考にしてください。
リーダーシップスタイルとは
はじめに、そもそもリーダーシップとは何か、歴史的な変遷とあわせて整理しておきます。
リーダーシップスタイルが複数存在する理由とあわせて理解しておくことが大切です。
そもそもリーダーシップとは
リーダーシップとは、組織やチームをまとめ、目的に向かって導いていく統率力・指導力のことを指します。
リーダーという言葉が使われているものの、必ずしも組織の「長」や役職者のことを指しているわけではありません。
一般社員であっても、リーダーシップを発揮してチームやプロジェクトをまとめていく能力が問われるケースは多々あります。
裏を返すと、チームやプロジェクトをまとめられるのであれば、リーダーシップのスタイルは問いません。
組織やチームをまとめ、目的の達成に向けて導いていけるかどうかが重要なポイントです。
リーダーシップスタイルの変遷
リーダーシップを対象とした研究の歴史は古く、1940年代ごろから「リーダーシップとは何か」が議論されてきました。
リーダーシップに関する主な理論として、下記のものが挙げられます。
- 特性論:リーダーの資質や素養を論じた
- 類型論:リーダーとしての典型的なパターンを類型化した
- 行動論:リーダーの機能や行動を研究対象とした
- 状況適合理論:状況ごとにリーダーシップのあり方を論じた
- 変革型リーダーシップ論:絶えず変化する状況下で求められるリーダーシップを論じた
古くは、リーダーシップとは持って生まれた資質によって発揮されるものとされていました。
近年はリーダーシップ論の細分化が進み、特定の型にこだわらない多様なリーダーシップが存在しています。
リーダーシップ=特別な才能のある人だけが発揮すべきもの、といった先入観に囚われないことが重要です。
なぜ複数のリーダーシップスタイルが存在するのか
リーダーシップのあり方が多様化した要因として、主体性をもって業務に取り組む人材が求められている点が挙げられます。
かつて人口が増え続けていた時代には、与えられた役割をいかに正確にこなし、規律正しく働くかが問われていました。
労働人口が減少に転じた昨今、多くの業界で人手不足が深刻化しつつあり、かつてのような働き方が通用しにくくなっています。
戦略や戦術を主体的に考えることは、もはや経営者や管理職だけが果たすべき役割ではなくなっているのです。
各従業員が強みを活かし、リーダーシップを発揮していくことは、限られた人員で強い組織を築いていくための必須条件といえます。
代表的なリーダーシップスタイル10選
リーダーシップに決まった型や「正解」はなく、多種多様なリーダーシップのあり方が存在するのが自然な状態といえます。
一方で、広く知られているリーダーシップスタイルが存在するのも事実です。
代表的なリーダーシップ10選と、それぞれの特徴、メリット・デメリットについて見ていきましょう。
1. 専制型リーダーシップ
専制型リーダーシップとは、結果と効率を重視するリーダーシップスタイルのことです。
リーダーが単独もしくはごく限られた側近などと協議して意思決定をし、決定事項を忠実に実行してもらうスタイルを指します。
例えば、軍隊の司令官などは典型的な専制型リーダーシップといえるでしょう。
- 特徴:リーダーが決定した方針どおりにメンバーが行動することを重視する
- メリット:ガイドラインやコンプライアンスの遵守が高いレベルで求められる場合に効果を発揮する
- デメリット:メンバーの創造性や自由な議論の場が失われてしまうおそれがある
2. 官僚型リーダーシップ
官僚型リーダーシップとは、規則や手順の正確性を重視するリーダーシップのスタイルのことです。
あらかじめ決定した規則や手順に従って実行することを重んじる点では、専制型リーダーシップとも重なる面があります。
厳格な規制が設けられている業界や、ルールの遵守が厳しく求められる業界において、よく見られるリーダーシップスタイルです。
- 特徴:定められた規則や手順に従うことを重視する
- メリット:メンバーの役割が明確化されるため、ルールに則って業務を遂行しやすい
- デメリット:メンバーの創造性が培われなかったり、ビジネス環境の変化に適応できなかったりするおそれがある
3. ビジョン型リーダーシップ
ビジョン型リーダーシップは、大きな目標や方針を示し、共有することでメンバーを鼓舞するリーダーシップのスタイルです。
環境がめまぐるしく変化するスタートアップや、組織改革が求められている大規模組織において有効なスタイルといえます。
一方で、現在起きている問題を詳細に検証したり、細部に潜む問題点を丁寧に洗い出したりするのにはあまり向いていません。
- 特徴:進むべき方向性や目標の理解・共有を重視する
- メリット:慣習やしきたりに囚われず、未来志向で組織を牽引できる
- デメリット:現状抱えている課題や問題点の検証・解決には向かない場合がある
4. コーチ型リーダーシップ
コーチ型リーダーシップとは、名称のとおりコーチングを軸とするリーダーシップのスタイルのことです。
メンバーの能力向上に焦点を当て、必要に応じて成長をサポートすることにより、組織全体の強化を目指します。
多くの組織において有効なスタイルではあるものの、具体的な成果が出るまでには時間がかかることが難点です。
- 特徴:メンバー1人ひとりの能力向上を重視する
- メリット:組織全体のモチーションアップやスキル向上に寄与する
- デメリット:実際にスキルが向上し、成果を挙げるまでには相応の時間を要する
5. 奉仕型(サーバント)リーダーシップ
メンバーが成果を挙げられるよう環境を整え、必要に応じてサポートするスタイルのリーダーシップです。
個々の役割やチームとして目指すべき方向性が明確になっている場合には、高い成果を挙げられる可能性があります。
一方で、個々のメンバーのニーズに応える必要があるため、リーダー自身の負担が大きくなりがちです。
- 特徴:メンバーのサポートに徹し、仕事を進めやすい環境の整備に専念する
- メリット:事業モデルや各自の役割が明確になっている場合には、高い成果が期待できる
- デメリット:あらゆるタイプのメンバーのニーズに対応する必要があり、負担が大きい
6. 放任型リーダーシップ
放任型リーダーシップとは、メンバーの自主性や自発的な判断・行動を尊重するタイプのリーダーシップです。
マネジメントに投じるリソースを必要最小限に抑えられるため、複数のプロジェクトやチームを兼任することもできます。
注意点として、メンバーがすでに業務に精通しており、経験豊富な人材がそろっているチームでなければ成立しません。
- 特徴:メンバーの自主性を尊重し、各自に任せることを重視する
- メリット:メンバーはリラックスして業務に取り組めるため、創造性を発揮しやすい
- デメリット:メンバーに一定以上の熟達が求められるため、経験が浅いメンバーが放置されやすい
7. 民主型リーダーシップ
民主型リーダーシップは、メンバーの意見を集約して決定を下すことを重視するリーダーシップのスタイルです。
参加型リーダーシップとも呼ばれるとおり、メンバー全員が議論に参加し、意見を述べるよう促します。
メンバーにとって納得感のある決定が下せる反面、意思決定に時間がかかりやすいことが難点です。
- 特徴:議論と参加を促し、メンバーに意思表示を求める
- メリット:メンバーが各自の意見を尊重されていることを実感できる
- デメリット:1つひとつの意思決定のために議論を交わすため、時間がかかる
8. ペースセッター型リーダーシップ
ペースセッター型リーダーシップとは、高い目標を掲げた上で、達成するためのパフォーマンスを重視するスタイルのことです。
メンバー各自のパフォーマンスを最大限に引き出せる可能性があるため、高い成果を挙げることも少なくありません。
一方で、常にメンバーを駆り立てることにより、疲弊するメンバーが現れるリスクを孕んでいます。
- 特徴:高い目標設定と達成の責任を重視する
- メリット:メンバーのパフォーマンスを高いレベルで引き出せる可能性がある
- デメリット:必然的にスピードや効率を重視するため、ついていけないメンバーが現れる場合がある
9. 変革型リーダーシップ
変革型リーダーシップとは、メンバーのマインドを重視し、行動変容を促すリーダーシップのスタイルです。
強い信念や価値観に根差しているため、カリスマ型リーダーシップとも呼ばれます。
判断軸が明確に定まっているため、ビジネス環境の変化が激しい状況でも適応しやすいリーダーシップのあり方の1つです。
- 特徴:メンバーの思考や行動の変容を促す
- メリット:変化が激しい環境下でもブレることなく判断を下せる
- デメリット:メンバーを惹きつける魅力やカリスマ性が求められる
10. 取引型リーダーシップ
取引型リーダーシップとは、成功を称賛し、失敗に対してペナルティなどを与えるタイプのリーダーシップのことです。
インセンティブの根拠や基準が明確に示されるため、具体的な成果が求められるチームに適しています。
一方で、既存の仕組みにはない新しい価値を生み出したり、創造性の高い仕事を成し遂げたりするのには適していません。
- 特徴:インセンティブとペナルティの条件を明確に設定する
- メリット:短期的な目標達成を着実に成し遂げることで、長期的な成功も実現できる
- デメリット:インセンティブを得ることが目的のメンバーが現れるおそれがある
リーダーシップスタイルを実践するポイント
リーダーシップスタイルにはさまざまな種類がありますが、効果的に実践するにはどのような点に留意すればよいのでしょうか。
リーダーシップスタイルを実践する上で重視しておきたい3つのポイントを紹介します。
リーダーシップスタイルに優劣はない
リーダーシップには多くのスタイルがあるものの、どのスタイルが優れている・劣っているというものではありません。
数多くのリーダーシップスタイルが考案されてきたのは、状況に応じて多様なリーダーシップが求められているからです。
重要なことは、状況に合ったリーダーシップを発揮することに他なりません。
さまざまなリーダーシップのスタイルがあることを知り、柔軟に使い分けていくのが理想です。
経営者の方であれば、従業員の性格や思考の傾向を注意深く観察し、適材適所を実現していく必要があるでしょう。
自分の強みを活かせるリーダーシップスタイルを見つける
あらゆるリーダーシップのスタイルを柔軟に使い分けられるのが理想ですが、実際には人によって向き不向きがあります。
自分の強みを最大限に活かせるリーダーシップスタイルを見つけ、伸ばしていくことが大切です。
リーダーシップは、必ずしも役職者や経営層だけが発揮すべきものではありません。
自身の強みを活かし、主体的に業務を推進するためにも、ポジションを問わずリーダーシップを意識していく必要があるでしょう。
組織やチームのフェーズに合ったリーダーシップスタイルを選択する
求められるリーダーシップのスタイルは、組織やチームのフェーズ(成熟度合い)によって異なります。
立ち上がった直後のプロジェクトでは、達成すべき目標を共有するためにビジョン型のリーダーシップが求められるでしょう。
反対に、業務に精通したメンバーが多勢を占めているようなら、奉仕型や放任型リーダーシップが適しています。
組織やチームが成長するにつれて、必要とされるリーダーシップも変化していくものです。
特定のリーダーシップスタイルに囚われず、フェーズに合ったリーダーシップのあり方を客観的に判断していく必要があります。
まとめ
リーダーシップと一口に言っても、スタイルは多種多様です。
裏を返せば、特定のリーダーシップスタイルでは通用しない場面が多々あり、新しいスタイルが求められてきた結果ともいえます。
多様なリーダーシップスタイルの存在を知ることは、従業員の多様性を尊重することにもつながるでしょう。
今回紹介した10種類のリーダーシップスタイルを参考に、自社に合ったリーダーシップスタイルを模索してみてはいかがでしょうか。
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