- 感情に訴えかけるマーケティングとは、どんな手法なのだろう?
- 従来のマーケティング手法とどう違うのか?
- どうすれば顧客の心を動かすことができる?
上記のような疑問を感じていませんか?
今回は「感情マーケティング(エモーショナルマーケティング)」について、基本から具体的な手法までわかりやすく解説します。
感情マーケティングが活用されている身近な例も紹介していますので、ぜひ参考にしてください。
感情マーケティングとは
そもそも感情マーケティングとは、どのようなマーケティング手法なのでしょうか。
感情マーケティングの基本的な考え方を押さえておきましょう。
顧客の感情に訴えかけるマーケティング手法
感情マーケティングとは、顧客の「感情」に訴えることで購買意欲を刺激するマーケティング手法のことです。
例えば、皆さんは生命保険に加入しているでしょうか?
経営者の方々は、何らかの生命保険に加入しているケースが多いでしょう。
なぜ生命保険に加入しているのですか?と聞かれた場合を想定して、より近い答えは次のどちらかを選んでみてください。
2. 自分に何かあった時、家族に苦労をさせたくないから
おそらく多くの方は「2」に近い感覚で死亡保障に加入しているのではないでしょうか。
実際、生命保険のCMの多くは商品内容の説明ではなく、家族と健康に過ごす日々の素晴らしさなどを描写しています。
私たちは、商品自体を詳しく知ることによって「必要だ」「欲しい」と感じているとは限らないのです。
感情に訴えかけるとは?
顧客の感情に訴えると聞いても、いまいち実感が湧かないという方もいるはずです。
感情マーケティングの提唱者である神田昌典氏は、次のキャッチコピーを例として挙げています。
2. まだ、ムダ金を航空券に使いますか?
どちらも事業者向けに航空券を訴求している点では同じですが、2は1と比べて10倍もの問い合わせにつながりました。
航空券を手配する総務担当者が、表面的に必要としているのは「なるべく安い航空券」でしょう。
安い航空券が手配できれば、経費を削減できるからです。
一方、総務担当者の本音はどうでしょうか?
総務担当者としては「ムダな経費を使いたくない」と思っているはずです。
「ムダ金」というフレーズは、総務担当者の心を大きく揺さぶったと考えられます。
感情に訴えかけるとは、相手が本音で「欲しい」と思っているものをピンポイントで言い当てることなのです。
ニーズとウォンツの違い
感情マーケティングにおいて重要な考え方として「ニーズ」と「ウォンツ」の違いが挙げられます。
ニーズとは「必要性」、ウォンツとは「欲求」のことです。
人はモノやサービスにお金を払う時、多くは「ニーズ」ではなく「ウォンツ」に突き動かされて行動しています。
前出の事業者向け航空券のケースで考えてみましょう。
- 1→経費節減に役立ちます。もっと安い航空券がありますよ!
- 2→航空券をいつも通りに手配したらムダ金を払うことになりますよ!
1は総務担当者の「ニーズ」に訴えるキャッチコピー、2は「ウォンツ」に訴えるキャッチコピーといえます。
人はモノやサービスについて、理屈の上で長所やメリットを理解したがっているとは限らないのです。
自分の欲求を満たしてくれるように感じられれば、「つい買ってしまう」というのが本音でしょう。
感情マーケティングとは、ニーズではなくウォンツを満たす手法といえます。
感情マーケティングのメリット
感情マーケティングを取り入れることによって、具体的にどのようなメリットを得られるのでしょうか。
主なメリット3点を紹介します。
購買意欲を奥深くから引き出せる
感情マーケティングとは、顧客の「欲しい」をピンポイントで言い当てることです。
理屈の上では「今すぐに必要なモノではない」「やや高いかもしれない」など、数々の要因が購買行動を妨げています。
たとえ10の「買わなくてもいい理屈」があったとしても、たった1つの「欲しい理由」があれば買ってしまうのが人間です。
数多くの阻害要因を払いのけ、強力な「欲しい」に訴えられることが感情マーケティングの大きなメリットといえます。
「買ったほうがいい」ではなく「今すぐ手に入れたい」を引き出すマーケティング手法といえるでしょう。
ネガティブ訴求とは異なるアプローチができる
マーケティング領域で長らく活用されてきた訴求法の1つに「ネガティブ訴求」があります。
ネガティブ訴求とは、商品やサービスを購入しない決断をした場合に、どのような不利益や不都合が生じるかを伝える手法です。
不利益や不都合を突きつけられた顧客は、不安な気持ちを解消しようと商品やサービスに興味を示します。
「最近、保険を見直していますか?」といったキャッチコピーは、ネガティブ訴求の典型といえるでしょう。
一方で、ネガティブ訴求があまりにも増えたために、消費者はやや食傷気味になっているのも事実です。
ネガティブ訴求とは異なる角度からアプローチできることは、感情マーケティングのメリットの1つといえます。
リピーターの創出に寄与する
感情は本能と深くつながっています。
感情を揺さぶられて商品やサービスを購入した顧客は、購入した時点で非常に高い満足感を味わうでしょう。
自身の「今すぐ手に入れたい」という欲求が満たされているからです。
購入した商品と似たデザインや機能、価格帯の他社商品を見かけたとしても、最初に購入した商品への思い入れは簡単に消えません。
直感的に「欲しい」と感じ、直感にもとづいて購入した体験が記憶に強く焼き付いているからです。
結果として、感情マーケティングによって購入に至った顧客はリピート購入する可能性が高いと考えられます。
感情マーケティングはリピーターの創出にも寄与するのです。
感情マーケティングの3つの手法
感情マーケティングの手法として、3つの例を紹介します。
顧客の感情を揺さぶるアプローチとして、自社の商材と親和性の高いものを用いるとよいでしょう。
苦痛への共感
普段はあまり人に言えないような苦痛や悩みに共感してもらえると、多くの人は感情を動かされます。
自身の苦痛について理解してくれる相手が「解決策がある」と言ってくれるなら、「試してみたい」と感じるでしょう。
人から「メガネ」と呼ばれることを内心苦痛に感じている人は、メガネをかけていることがあだ名の由来と捉えているはずです。
メガネが似合っていればからかわれることはない → 似合うメガネに変えませんか?という訴求になっています。
人が内心苦痛に感じていることは表面化しにくいため、苦痛の本当の理由を深掘りしていくことが重要です。
達成への期待
顧客が思い描いている願望を叶えられるかもしれない、という期待を抱いてもらうことも1つの方法です。
長年実現できていないことや、諦めかけていたことであれば、なおさら達成への期待が高まるでしょう。
痩せたいと思いながらも、ダイエットに失敗してしまう・リバウンドしてしまうという経験を持つ人は少なくありません。
すでに失敗の体験がある人ほど、「〇〇で痩せる」と言われても響かない可能性が高いと考えられます。
「結果」を前面に出すことで、「今度こそやり切ってみせる」という感情を引き出している好例です。
正しさの希求
正しくありたい・良いことをしたいという感情に訴えるのも、感情マーケティングの効果的な手法といえます。
社会貢献や環境保護などに対する企業のスタンスを発信することは、顧客の「正しさの希求」と共鳴する可能性があるのです。
未来の視点から今を捉え、環境に良い暮らしの重要性を訴えているキャッチコピーです。
今の一瞬一瞬を少しでも良いものにしていこう、というメッセージは顧客1人ひとりの人生にも重なります。
「正しさ」が普遍的であればあるほど、説得力を持つ手法といえるでしょう。
感情マーケティングの身近な活用例
感情マーケティングを活用している事例を紹介します。
身近なところで感情マーケティングは活用されていると知ることで、よりイメージが湧きやすくなるでしょう。
心当たりがある・気になるキャッチコピー
キャッチコピーには感情マーケティングはよく使われています。
商品自体を説明するのではなく、顧客にとって「自分にも心当たりがある」「何か気になる」と感じてもらうことが重要です。
有名な「かっぱえびせん」のキャッチコピーです。
絶妙な塩加減と軽い食感で、つい口に運ぶ手が止まらなくなってしまう経験をした人は多いのではないでしょうか。
もし「かっぱえびせん」のキャッチコピーが次のようなものだったとしたら、顧客の心には響かないはずです。
商品の特徴を伝えているだけで、「心当たりがある」「気になってしまう」といった印象は受けません。
キャッチコピーを考案する際には顧客の深層心理を探究し、欲求や願望の本質を見極めることが重要です。
つい話してしまう営業担当者
営業担当者の中には、決してトークがずば抜けてうまいわけではないにも関わらず「売れる」タイプの人がいます。
なぜか顧客との距離が縮まる・信頼を獲得する営業担当者の多くは、顧客に「話をさせる」のが上手です。
自社の商品を売り込むわけでもなく、接点を持った企業や担当者について知りたがります。
企業側としても、自社に興味を持ってもらえるのは悪い気はしないでしょう。
結果として、自社のことを課題や悩み事も含めて「つい話してしまう」のです。
感情マーケティングは営業プロセスにおいても有効な手法といえます。
想像を掻き立てるパッケージ
商品パッケージのデザインにも、感情マーケティングが活用されていることがあります。
たとえば、Apple社の製品パッケージには必要最小限の製品名以外、ほとんど文字が書かれていません。
前面に印刷されているのは、中に入っているiPadやMacbookなど製品そのものの写真です。
パッケージは製品がちょうど入るサイズになっているため、顧客は中身を容易に想像することができます。
今まさに箱を開封するという顧客の喜びやワクワクする気持ちにフォーカスしているのです。
顧客の感情の動きや捉え方に着目することは、パッケージを改良するヒントになるかもしれません。
まとめ
顧客の「心」に着目する感情マーケティングは、いわば究極の「顧客目線」にもとづく手法といえます。
顧客が何を思い、どのように感じ、何に心を動かされるのかを突き詰めることが、感情マーケティングにおいて必須となるからです。
感情マーケティングは、顧客との向き合い方を問い直す上でも重要な示唆を与えてくれるでしょう。
モノやサービスを提供する相手が「人」である以上、人の感情について突き詰めて考えることには重要な意味があるはずです。
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