アイドルやキャラクター、芸能人など、好きな人物を応援する活動が「推し活」です。
推し活における経済効果は計り知れず、日本の作品はどれも世界トップクラスのクオリティであり市場規模であると言われています。
時代の流れや社会情勢の変化によって、推し活する人は年々増加し、現在では大きな経済効果を生んでおり、自社でも何か取り入れたいと考える経営者・リーダー層が増加傾向です。
この記事では、推し活の経済効果や市場規模の推移をはじめ、推し活を自社のマーケティング活動に上手に取り入れて成功させる方法や事例を解説します。
推し活が世の中に浸透しつつある
「推し」という言葉はもともと一部のアイドルのファンのなかで広まった用語です。
現在ではアニメやゲームのキャラクターや俳優、アイドルなど、ジャンルを問わず「応援したい人」を「推し」と呼び、推しのグッズを購入したりライブに行ったりすることを「推し活」と呼ぶようになりました。
では、推し活はどの世代でニーズがあるのか、どのように変化を遂げて現在の推し活文化が生まれたのかを紹介します。
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推し活は世代を問わず行っている人が多い
さまざまな分野で拡大する推し活はここ数年さらに盛り上がりを見せ、2021年の新語・流行語大賞に「推し活」という言葉がノミネートされるなど、一般的な認知度も高まっています。
とくに10代〜20代の若年層であるZ世代の間で、推し活文化は大きな広がりを見せ、2021年の「日経リサーチ」の調査によると、Z世代の3人に1人は推し活を行っているというデータが出ているほどです。
また、推し活をしてみたい人や推し活に興味がある人の割合と合わせると、実に6割もの人が推し活に関心を持っていることがわかっています。
参考:日経クロストレンド
推し活文化はZ世代からシニア世代まで広がりを見せています。
消費者庁が公表している情報によると若年層と比較すると割合は減るものの、70代のシニア層においても有名人やキャラクターを応援するためにお金を使っている人は一定数存在しています。
参考:第1部 第2章 第2節 (1)若者の消費行動/消費者庁
「オタク」から推し活へ
もともとアニメやアイドルなどのグッズを収集したり、ライブに足繁く通ったりする人は「オタク」と呼ばれていました。
「オタク」というと「内向的な性格」「ファッションに疎い」など、以前はマイナスイメージがつきまとっていましたが、アニメやアイドルに興味のある人がカジュアルに自身を「オタク」と呼ぶようになりました。
そうしてオタクのイメージが少しずつ薄れるようになったと言われています。
しかしながら、アニメやアイドルの知識や動向を熟知し、熱狂的に応援する「オタク」にとって、にわかの知識で「オタク」と自称する人を白い目で見る人も少なくありませんでした。
そこで登場したのが、「興味がある」「応援したい」というフランクな意味合いで使用できる「推し」だったと言われています。
性格や見た目、年齢を問わず気軽に使える「推し」という言葉はどんどん普及し、現在の推し活の広がりにつながったと言えるでしょう。
推し活が及ぼす経済効果とは
推し活はアイドルやアニメなどの特定分野だけでなく、さまざまな業種にまで経済効果を及ぼしています。
たとえばアイドルのコンサートに行く場合、推し活の服屋グッズを購入すればアパレルなどの小売業に経済効果をもたらします。
遠方からコンサート会場に行く場合、交通費や宿泊費、食事代なども発生するでしょう。
このように、推し活は大きな経済効果を生んでいるのです。
推し活の市場規模の推移
矢野経済研究所が発表した2022年の「オタク」市場に関する調査によると、「オタク」の主要14分野において、2021年度は10市場で成長を遂げたという結果が出ています。
2018年度と比較すると金額が下がった分野もありますが、推し活の市場規模の大きさがわかります。
分野 | 算出ベース | 2018年度 | 2021年度 |
アニメ | 制作事業者売上高ベース | 2,900億円 | 2,650億円 |
同人誌 | 小売金額ベース | 820億円 | 800億円 |
プラモデル | 国内出荷金額ベース | 278億円 | 415億円 |
フィギュア | 国内出荷金額ベース | 310億円 | 346億円 |
アイドル | ユーザー消費金額ベース | 2,400億円 | 1,500億円 |
コスプレ衣装 | 国内出荷金額ベース | 355億円 | 250億円 |
参考:「オタク」市場に関する調査を実施(2022年)/矢野経済研究所
分野ごとの市場規模を見てみると、市場規模がもっとも大きいアニメでは2,650億円、次いでアイドルでは1,500億円と大きな経済効果を生んでいるのがわかります。
また、同人誌では800億円、コスプレ衣装では250億円と、各コンテンツから似通った分野にも好影響を及ぼしていることがわかります。
聖地巡礼が観光活性化に
アニメやドラマで舞台になった実際のスポットを巡る「聖地巡礼」を行うファンが増えたことで、推し活が観光業の経済にも影響を及ぼしています。
とくにアニメには国内外を問わず熱狂的なファンが多く、インバウンドの獲得にも大きな影響を与えています。
アニメやドラマの舞台になった土地では自治体が「聖地巡礼」としてマップを制作したり、聖地なった場所にプレートを設置したりなど、地方創生のいいキッカケとなっているケースもあるようです。
「在宅」が広がったことで推し活を後押し
推し活がここまで普及した要因として、新型コロナウイルス感染症の影響による「おうち時間」の増加が大きいと考えられます。
動画配信サービスなど、サブスクリプションで気軽にアニメやドラマ、映画を楽しむのが一般的になったこともあり、新たに「推し」を見つける人が増えました。
また、オンラインイベントやライブ配信は自宅にいながら楽しめることから、今までライブ会場などに足を運べなかった人たちが推し活にかける金額が増えたのも、推し活の市場規模が拡大した要因と言えるでしょう。
一方で推し活による社会問題が深刻に
推し活の普及による経済効果が大きくなる一方、推し活が社会問題に発展しているのも事実です。
いい面だけでなく悪い面も把握し、推し活が及ぼす影響を理解しておきましょう。
推し活によって経済問題が深刻になる人も
CDだけでなくデジタルコンテンツや投げ銭など、推しに課金する方法が多岐に渡ったことによって推し活にお金をかける人が増えました。
推し活による経済効果が大きくなっていることからも、推し活にかける金額が増えているのは明らかです。
たとえば握手やオンラインで推しと交流できる抽選に応募したり、推しの人気を上げるためにCDを大量に購入し、日常生活が立ち行かなくなる人もいると言われています。
とくに投げ銭など、オンライン上の課金は実際に現金を動かしていないため、気づいたら課金額が膨らんでいたということもあるようです。
推し活を行っている人は若年層のZ世代が多いため、収入よりも支出が上回り経済的に困窮することが社会問題になりつつあります。
同担拒否によるコミュニケーション問題
「推しを独占したい」という熱い思いから、推しが被っている人を拒否する「同担拒否」も推し活における問題の一つとも言えます。
とくにライブや握手会の抽選など、推しと交流できるイベントの定員が限られている場合、同担拒否が起こりやすいと言われています。
たとえば推しが被っている人をSNS上で攻撃したり、いじめに発展したりなど、同担拒否は人間関係において大きな問題になりつつあります。
推し活のマーケティング成功事例
自社の商品と推し活をうまく結びつけたり、コラボを行ったりして「推し活マーケティング」を成功に導いた事例を紹介します。
SNSマーケティングの成功事例が知りたい方は、こちらの記事も参考にしてみてください。
エスビー食品
エスビー食品では「キミの推しスパは!?」キャンペーンとして、人気ボーイズグループの「INI」を起用しています。
INIの各メンバーがエスビー食品の人気商品である「まぜるだけのスパゲッティーソース」シリーズのなかから「推しスパ」を紹介するCM放映を行いました。
またCM放映と並行してブランドサイトの公開やTwitter上のキャンペーンも実施されています。
Twitterではキャンペーン開始前から関連キーワードのハッシュタグがトレンド入りするなど、大きなプロモーション効果を得ることができました。
カラオケパセラ
カラオケチェーン「カラオケパセラ」では、推し活専用のプランを設けることで新規ユーザーの取り込みに成功しました。
「推し会パック」は推しカラーのドリンクやハニートーストなど、オフ会や推しのための誕生日パーティにピッタリなメニューを楽しめます。
また、「動画堪能パック」は長時間の動画鑑賞が可能な部屋を優先的に借りることができるため、同じ推しを持つ人同士が集まってライブ鑑賞するのに最適です。
推し活を行う人のニーズと自社の強みを融合させた戦略が成功をおさめた事例と言えるでしょう。
TOWER RECORDS
CDショップチェーン「TOWER RECORDS」では、うちわなどの推し活グッズやデコレーションするためのグッズ、うちわを収納するグッズなど、推しのライブやイベントで活用できるグッズ販売を行っています。
推し活グッズの作成方法や活用方法をTwitterで発信したり、毎月4日を「タワレコ推しの日」としてグッズの割引やハッシュタグキャンペーンを行うなど、CDやDVDと一緒に楽しめる推し活グッズの販売に力を入れています。
SEA BREEZE
デオドラント製品のブランドである「SEA BREEZE」では、香りごとにカラーが分かれた「デオ&ウォーター」を販売しています。
カラーバリエーションの豊富さを活かし、「推し活グッズ」として商品をPRしました。
「SEA BREEZE」はもともと学生生活をテーマにしたCMを放映するなど、部活や学生生活を送る若年層をターゲットとしており、推し活をする割合が多い若年層のニーズにマッチしたマーケティング成功事例と言えるでしょう。
推し活マーケティングを成功させるコツ
推し活マーケティングを成功させるためにはコツがあります。
次の2点に気をつけて、効率的に自社の売り上げアップにつなげていきましょう。
中小企業がSNSで集客を行うときのコツを知りたい方は、こちらの記事もチェックしてみてください。
SNSの発信を意識する
いまやSNSは推しが同じ人たちと交流したり、情報交換する場として定着しています、
推し活を行っている人はSNSを日常的に利用するZ世代の若年層が多いことから、推し活マーケティングにおいてSNSの存在は欠かせないツールと言えるでしょう。
ハッシュタグを設定し、インスタグラムでの投稿を促すハッシュタグキャンペーンを実施したり、TikTokで音楽やフィルターを作成してチャレンジキャンペーンを実施したりなど、拡散してもらいやすいイベントを行うのがおすすめです。
推し活の世界観を大切にする
推し活を行っている人にとって、推しへのリスペクトは何より大切にしたいことだと言えます。
いくら人気のあるコンテンツとコラボしても、世界観を無視していたり、まったく関係のないコンテンツだったりすると、消費者は商品やサービスを購入するどころか、ブランドイメージを損なう結果になる危険性もあります。
そのため、推し活をマーケティング活動に利用するときは、コラボする作品や人物の世界観を活かす企画にする、作品や人物の世界観との相性を考えるなどしましょう。
加えて、推し活を行う消費者にとって魅力的だと感じてもらえるように最新の注意を払う必要があります。
まとめ
新型コロナウイルス感染症による「ステイホーム」の影響や、気軽に「好き」をアピールできる「推し」という言葉の出現によって、推し活は年々広がりを見せています。
アニメやアイドルなどの分野だけでなく、小売業や観光業など、いまや推し活は多大な経済効果を生み出すようになりました。
自社のサービスや商品とうまく融合させることで、マーケティングを成功させている事例は多数あるので、ぜひ推し活をビジネスに有効活用してみてください。