アンケートの回答率と精度を高める|行動経済学の活用方法

最終更新日: 2024/09/25 公開日: 2024/03/28
  • 顧客にアンケートを実施しても回答率がなかなか上がらない……
  • アンケートの回答が偏っていて、あまり参考にならない……
  • どうすれば効果的にアンケートを実施できるのかが分からない……

上記のような悩みを抱えていませんか?

今回は、行動経済学のフレームワークを活用した効果的なアンケートの実施方法を紹介します。

アンケートの作り方や質問例について分かりやすく解説した関連記事も紹介していますので、ぜひ参考にしてください。

アンケートの回答率が低くなる原因

そもそも、なぜアンケートの回答率が低くなってしまうのでしょうか。

回答者の視点に立って、アンケートに回答したくないと感じる理由を考えてみましょう。

アンケートへの回答が面倒に感じる

企業が実施するアンケートは、多くの顧客や消費者にとって「面倒なもの」と感じられるケースが少なくありません。

わざわざ時間を割いてアンケート調査に協力したくないと考える人も多いものです。

アンケートの質問項目を確認した時点で回答を断念する人もいます。

質問の項目数が想定よりも多かったり、複雑な質問が散見されたりすると、回答したくないと感じる人もいるでしょう。

アンケートの回答は少なからず顧客や消費者に負担を強いるものであることを十分に認識しておく必要があります。

協力する必要性を感じない

アンケートに協力すると自分にどのようなメリットがあるのか分からないことも、回答率を下げる原因となります。

よほど思い入れのあるブランドや商品でもない限り、顧客や消費者はあえて意見を述べようとはしません。

「他の人がすでに回答しているだろう」など、自分自身ができるだけ労力を使わずに済む捉え方をしがちです。

協力することによって明確なメリットを得られるかどうかは、アンケートの回答率を高める上で重要な観点といえるでしょう。

タイミングが良くない

アンケートを依頼するタイミングが適切でないことも、回答率を下げる大きな要因となり得ます。

一例として、次に挙げるようなタイミングでアンケートを依頼された場合、多くの人は積極的に回答したいとは思わないでしょう。

  • 対象物(商品・サービスなど)を購入してから時間が経ちすぎている
  • 対象物を購入したばかりで、とくに感想や意見を持っていない
  • 他の用事で忙しい時にアンケートを依頼している

たとえば、飲食店でスタッフの接客に関するアンケートを実施する際、食事の提供と同時に依頼するのは適切ではありません。

お客様は食事をするために来店しているのであって、アンケートへの回答は来店の目的に含まれていないからです。

タイミングしだいではアンケート自体が大きな負担になりかねないことを認識しておく必要があります。

アンケートの精度が低くなる原因

次に、アンケートの精度が低くなる原因について考えてみましょう。

アンケートの実施方法によって、回答の精度が大きく左右される可能性がある点を押さえておく必要があります。

誘導的な質問になっている

特定の回答に誘導する質問内容になっていると、回答に偏りが生じがちです。

回答者は必ずしも意見を明確に持っているとは限らないため、質問の仕方によってはより自然な回答を選びやすくなります。

たとえば次のような質問をした場合を考えてみましょう。

Q. 次回も必ず当社製品を購入しますか?
A. 購入すると思う・わからない

「必ず」と断定できるかどうかは回答する時点で判断できないため、大半の回答者は「わからない」を選びます。

結果として「わからない」という回答が大半を占めることになります。

知らず知らずのうちに誘導的な質問をしていないか、質問項目を検討する際には客観的にチェックすることが大切です。

回答者の状況を想定できていない

回答者がどのような状況でアンケートに協力するのか、十分に想定できていないことも回答の精度を下げる一因です。

よくあるケースとして、回答した選択肢によって以降の回答がしづらくなるケースが挙げられます。

たとえば次のような質問をした場合、どのような不具合が生じる可能性があるでしょうか。

Q1. 当社製品の購入は初めてですか?(はい・いいえ)
Q2. 購入の決め手として最も近いのは次のどれですか?(価格・機能・デザイン)

上記の例では、製品をすでに購入済みであることが前提になっています。

仮に回答者が一度も購入経験のない人だった場合、最初の質問から選ぶべき回答が見当たらないことになるでしょう。

結果として「アンケートに協力しない・協力したくない」といった判断を下してしまいがちです。

回答者の感情の動きを想定できていない

アンケートの回答者は、回答中も常に感情が揺れ動いていることを踏まえる必要があります。

回答者の感情がどのように変化するのか想定できていないと、回答の精度が下がる原因になりかねません。

たとえば、「当社製品はどのような点が優れていると感じますか?」という質問項目を設けたとします。

製品の欠点を尋ねる質問が見当たらなければ、「当社の製品は優れている」という前提で質問しているように映るでしょう。

アンケートを通じて自社に対する印象が悪くなり、実際以上に厳しい評価をつける回答者が増加する可能性があります。

回答者が質問の意図をどのように解釈するか、感情の動きにも配慮して質問項目を考えることが大切です。

アンケートの回答率を高める「EAST」の活用方法

行動経済学を活用してアンケートの回答率を高める方法を紹介します。

活用するフレームワークは「EAST」です。

  • E:Easy(簡単・手軽)
  • A:Attarctive(魅力的)
  • S:Social(社会性)
  • T:Timely(適切なタイミング)

それぞれの要素をアンケートに取り入れる方法を見ていきましょう。

1. Easy(簡単・手軽)

Easyとは、要する手間が少ないほど抵抗なく受け入れられやすいことを指しています。

アンケートを作る際には、できるだけ簡単・手軽に回答できる印象を与えることが大切です。

具体的なポイントとして、次の3点が挙げられます。

  • 質問項目を増やし過ぎず適度な分量に留める
  • 難解な質問や回答に手間がかかる質問は避ける
  • 回答はできるだけ選択式にし、最小限の選択肢数に絞る

回答にかかる時間も重要なポイントの1つです。

アンケートの冒頭に回答時間の目安を記載するなど、ごく短時間で済むことをあらかじめ伝えておくとよいでしょう

2. Attractive(魅力的)

Attarctiveは、相手が得られるメリットを実感してもらうことが行動を促す原動力になることを表しています。

アンケートの回答者は「協力すると自分にとって何の得があるのか」を確認しておきたいと考えているものです。

「より良い商品づくりのためにご協力ください」と一言記載されているだけでも、アンケートに協力する意義を伝えられます。

協力してもらえて当然というスタンスではなく、回答者の視点に立って「なぜ協力してもらう必要があるのか」を記載しましょう

3. Social(社会性)

Socialとは、周囲の人から受ける影響が行動を促すきっかけになることを表しています。

アンケートにおいては、回答に協力するのが自然だと思えるような仕組みを構築しておくとよいでしょう。

たとえば、会計時に注文伝票とアンケートをセットで提示してもらう方法などが考えられます。

未記入のまま手渡すのは気が引けると感じる人が多いため、自ずと回答率を高まることでしょう

4. Timely(適切なタイミング)

Timelyは、タイミングよく提示されたものは受け入れやすいことを表しています。

アンケートを実施するタイミングが早すぎたり遅すぎたりすることのないよう、適切な時期を見極めることが大切です。

一例として、購入日から起算して〇日後にアンケートが送信されるよう、仕組み化しておくといった方法が考えられます。

MAなどのツールには、アンケート作成機能やアンケート送信機能を備えたものも少なくありません。

顧客ごとに適切なタイミングでアンケートを実施することで、回答率を高められるでしょう

アンケートの精度を高める「MINDSCAPE」の活用方法

次に、アンケートの精度を高める方法を紹介します。

活用するフレームワークは「NUDGES」です。

  • iNcentive(インセンティブ)
  • Understand mappings(マッピングの理解)
  • Defalts(デフォルト)
  • Give feedback(フィードバックの実施)
  • Expect error(エラーの予測)
  • Structure complex choices(複雑名選択の構造化)

それぞれの要素をアンケートに取り入れる方法を見ていきましょう。

1. iNcentive(インセンティブ)

iNcentiveは、回答者が得られる報酬を指しています。

アンケートを実施する際には、回答者に対して何らかの謝礼や特典を用意しておくとよいでしょう

一方で、謝礼や特典のみが目当ての回答者が続出しないよう注意する必要があります。

インセンティブは必ずしも金銭やモノの提供でなくても構いません。

アンケートに協力すると会員ランクが1段階上がるなど、リピーター創出につながる施策を組み合わせるのもおすすめです。

2. Understand mappings(マッピングの理解)

Understand mappingとは、対象者の選択と選択によってもたらされる結果を紐付けることを指します。

アンケートでは、回答に応じて質問が分岐するケースが少なくありません。

次に回答すべき質問が分かりづらいと、未回答の項目が頻発する原因となるため注意が必要です。

【良い例】 Q. 当店のご利用は初めてですか?(初めて・2回目以降)

(初めての方)
→当店を知ったきっかけを教えてください(Webサイト・チラシ・店舗を通りかかって・知人や家族の紹介)

(2回目以降の方)
→当店のお気に入りポイントを教えてください(自宅から近い・品揃えが豊富・充実したサービス・その他)

【悪い例】
Q1. 当店のご利用は初めてですか?(初めて・2回目以降)
Q2. 前回のご利用頻度を教えてください(週2〜3回・月2〜3回・年に数回程度)

上記の【悪い例】では、初回の来店客にとって「利用頻度」は答えようのない質問として映るでしょう。

【良い例】のように回答内容に応じて質問を変え、それぞれの回答者に適した質問を設定することが大切です

3. Defalts(デフォルト)

Defaltは初期状態を表す言葉です。

Webサイトやアプリ内でアンケートを実施する際には、回答者が何も操作しなかった場合のことを想定しておく必要があります。

たとえば「はい」「いいえ」を選ぶ質問で、回答者の操作有無に関わらず初期状態が「はい」になっていたとしましょう。

質問内容をよく読まずに送信ボタンを押した回答者のアンケート結果は、多くの場合「はい」になってしまいやすいです。

初期状態では未選択の状態にしておき、送信ボタンが押された場合は「未回答の項目があります」と表示する必要があります。

Defaltの設定はアンケート結果の精度に直結する重要なポイントのため、必ず確認しておくことが大切です

4. Give feedback(フィードバックの実施)

Give feedbackは、選択や行動の結果に対して適切な反応を示すことの重要性を表しています。

アンケートでは、残りの質問数や進捗状況が回答者に分かる仕組みを提供するとよいでしょう。

回答者は、アンケートに回答している間も「途中でやめるべきか」「最後まで回答すべきか」を考えています。

途中段階での離脱を防ぐには「せっかくここまで回答したのだから、途中でやめたくない」と感じてもらうことが大切です

5. Expect error(エラーの予測)

Expect errorとは、誤った選択や行動をしやすい条件を予測し、未然に対策を講じておくことを指します。

アンケートにおいては、回答者が見落としや勘違いによって回答を誤ることがないよう、分かりやすく表示することが大切です。

たとえば質問が10項目ある場合、冒頭に「質問は全部で10項目あります」などと記載しておくとよいでしょう。

「質問1」「質問2」といった文字を太字にして目立たせることで、質問を飛ばしてしまうミスを防ぐ効果が期待できます。

回答者の視点に立ち、回答ミスが起こりにくいレイアウトや表記を工夫してください

6. Structure complex choices(複雑な情報の構造化)

Structure complex choiceは、多くの複雑な情報を構造化することにより、整理して伝えることの重要性を表しています。

アンケートにおいては、関連する質問は隣り合うように配置したほうが回答しやすいものです

たとえば、商品に関する質問と店舗のサービス全般に関わる質問が混在していると、分かりにくい印象を与えやすくなります。

【商品について】【店舗でのサービスについて】とカテゴリ分けすることで、何についての質問かが分かりやすくなるでしょう。

質問項目がやや多くなってしまった場合には、とくに注意しておきたいポイントといえます。

まとめ

アンケートの回答率や回答の精度は工夫しだいで改善できます。

質問の仕方やアンケートの構成を検討する際には、ぜひ今回紹介した行動経済学のフレームワークを活用してください。

回答者の負担が少なく、協力するメリットを実感できるアンケートにすることで、回答率や回答の精度は着実に向上することでしょう。

セミナーズ通信

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最終更新日: 2024/09/25 公開日: 2024/03/28