心理学におけるストーリーテリングとは？ビジネスで活用するためのポイント

• 心理学のストーリーテリングとは？
• 心理学のストーリーテリングをビジネスに活かすメリットは？

ビジネスでは物事を分かりやすく伝えるための例え話や物語を用いることがあります。

ビジネスに応用すれば、顧客の購買意欲を向上させたり企業の採用活動に有効に働いたりなどさまざまに効果があるのです。

今回は、心理学のストーリーテリングの概要とビジネスで役立つ理由や具体的活用シーンを紹介しますのでご覧ください。

心理学のストーリーテリングとは？

心理学のストーリーテリングとは、特定の物事を強く印象付けるために有効な手法です。具体的にはある対象に対して物語形式で伝えることで、相手の共感を呼び起こし対象への興味を促します。

ストーリーテリングが有効な理由は、受け取り手がありありとその情景を想像できるからです。物語を見聞きすることで実際にその世界に没入している気分になります。

例えば、Appleのサイトに掲載されているApple Watch Ultraの製品説明の一部分を見てみましょう。以下は、バッテリーの持ち時間についての魅力を伝える文章です。

　2日以上使えるバッテリー。 バックパック旅行の2日目。トライアスロンのレース終盤。サンゴ礁が美しい海でのダイビング。そんな時に心配なのがバッテリー切れ。Apple Watch Ultraのバッテリーはこれまで以上に長時間持続するので、余裕を持ちながら好きなだけ挑めます。

https://www.apple.com/jp/apple-watch-ultra/　より引用

この文章を読むと、まるで商品を使用しながら生活をしているように感じるのではないでしょうか。

私たちはこの商品を購入すれば、安心して充実した生活を楽しめることをありありと想像することができます。

ストーリーテリングは、まるで商品を手に取ったかのように感じて使用したときに起こる変化をリアルに感じさせるのです。

このように聞き手に伝えたいことがあるときや何かの行動を起こさせたいときにこの手法を活用できます。

心理学のストーリーテリングが活用される具体的領域

心理学のストーリーテリングが活用される領域はビジネス以外にも様々です。具体的には、以下の領域で使用されています。

• マーケティング
• 経営
• 教育
• 医療

特にマーケティングや経営の分野では、近年ストーリーテリングに力を入れる企業が増えています。

ストーリーテリングの効果とは

次に、ストーリーテリングの具体的な3つの効果について見ていきましょう。

自分ごととして認識してその後の行動を促す

一つ目は、対象を自分ごととして認識できることです。

ストーリーテリングによって私たちは対象の出来事に入り込み、その事実に強い共感を覚えます。

対象に共感することで、その出来事を自分ごととして認識するようになるのです。そのため、相手にその商品やサービスを利用したいと感じさせて購買行動を促すことができます。

記憶に留めておきやすくなる

二つ目は、物語を聞くことでその対象の知識が脳に定着しやすくなることです。

世の中は多くのコンテンツや情報に溢れています。そのとき、訴求したい商品についてただ価格や機能といった商品性能の事実を流すだけでは人々の記憶に留めてもらうのは困難です。

この時に商品や企業の魅力を伝える際に物語性を持って伝えれば、それを強く印象付けることができます。なぜなら、それを見聞きした人が感情を揺り動かされるためです。

そして、さらにそのストーリーについて繰り返し見聞きすれば、それは強く記憶に定着していきます。CMやメディアが何度も同じものを流すのはこのためです。

物事の理解がスムーズになる

三つ目は、伝えたい商品に物語性をもたせることでその対象への物事の理解がスムーズになることです。

私たちはある商品について理解するとき、ただ性能や機能の説明をするより物語性を持たせる方がインプットしやすくなります。

例えばある商品について性能をただ見るよりも、その機能がどんな場面で役立つのかを物語形式で見る方が理解しやすいです。

何かを説明するときに、具体例を用いて説明する方が聞き手の理解がスムーズになります。

心理学のストーリーテリングをビジネスで活用するメリット

次に、心理学のストーリーテリングをビジネスで活用するメリットについて見ていきましょう。

顧客の購買意欲の向上

顧客の購買意欲を高めることができます。

なぜなら、商品を手に取った感覚や手にした後に起こる喜びを具体的成果を顧客にストーリーとして見せられるからです。

その商品を手に取ったときの感覚的な喜びや使用感、また生活でどのように使用するのかというシーンまでを鮮やかに想像できます。

商品にストーリー性を持たせることで、より商品の使用感を感じられ強い訴求力につながるのです。

企業のブランド力の向上

企業のブランド力を高めることで企業の認知力を高められます。

なぜなら、ストーリー性を持ったものは人々の脳に強く残り共感を呼ぶからです。これらは、企業の価値観に共感して顧客の根強いファンを作ることができるため、既存顧客の継続的な獲得につながります。

他にも、その効果は顧客のみでなく他企業にも波及するのです。ストーリーの価値観に共感した企業が集まり、新たなビジネスの協同や取引につながる可能性があります。

例えば、商品作りに込めた思いや、企業が誕生した話などをストーリーテリングの形式で述べることができるのです。

社員教育の強化

社員教育の強化に効果があります。

ストーリーテリングの実践で、経営理念に応用することで社員がより明確な意識や目的をもって仕事をすることにつながるからです。

ストーリーに共感して印象に強く残すことで、社員同士の結束力を高めることができます。

ほかにも個人がより目的意識を持って仕事に取り組んだりモチベーションを上げたりして、生産性向上につながる可能性があります。

採用活動の活性化

採用活用の活性化につながります。

なぜなら、企業が経営理念や歴史などに物語性を加えることで、その話に共感した社員の応募が増えるからです。

価値観に共感した社員の応募が見込めるため、入社後のギャップが生じにくくなります。また、あらかじめ同じ目的や価値を持った社員が集まると考えられるため、スムーズに仕事を進められるメリットがあるのです。

採用活動のストーリーテリングを用いた例には、企業の社員インタビュー記事があります。入社したきっかけや入社前後のギャップ、業務内容などをストーリーで見れば自分がその職場で働いていることが想像できます。

働いている社員の姿を見聞きすることで、実際に自分が働いている姿についても浮かべやすくなるのです。

ストーリーテリングを使用した成功企業事例

次に、ストーリーテリングを利用して、経営やマーケティングを成功させている企業事例を紹介します。

スターバックス

スターバックスは、企業の成長物語や企業が目指す場所やビジョンを繰り返し発信しています。その対象は顧客や社員であり、その価値観への共感がスターバックスの成長へとつながっているのです。

ここでスターバックスの誕生物語を紹介しましょう。スターバックスは、この誕生エピソードから生まれたコンセプトに向かって絶えず歩みを進めているのです。

顧客は商品の裏にあるストーリーを知ることで、高品質な製品を形作っている正体を掴むことができるのです。

その物語は顧客に感動をあたえその企業をさらに好きになることを促します。

また同時に社員に対してもこの理念を掲げることで、全員が一つの目的達成に向かって皆で強く進むことができます。個々の働くモチベーションを上げることができるのです。

RedBull

オーストラリアの企業であるRedBullは、エナジードリンクを販売する企業です。宣伝広告では一貫して「翼をさずける」というキャッチフレーズを打ち出しています。

これは、ストーリーテリングの一種であり、見聞きした人はRedBullを飲むことによって力がみなぎることを想像できます。

実際にRedBullはストーリーテリングに力を入れており、そこから「挑戦や冒険、闘争心」などの気持ちを思い起こさせます。

例えば、F1、スノーボード、スキーといったアスリートとのコラボや、スポーツやゲームのイベントを実施しています。

ストーリーテリングは、RedBullを飲むことでそれらの挑戦を助けることを思い起こさせる効果があるのです。

実際に公式ホームページで確認してみてください。

心理学のストーリーテリング実践のポイント

最後に、ストーリーテリング実践時のポイントを解説しますのでご覧ください。

ペルソナを設定する

一つ目に、顧客の購買意欲を強めるストーリーテリングを行う前提として、ペルソナを設定してください。

ターゲットの性別や年代、職業、生活スタイルなど詳しく設定しましょう。ペルソナを設定すると顧客の潜在ニーズが明らかになります。

潜在ニーズとは、顧客すらも気付いていない心の奥で欲していることです。

顧客の潜在ニーズに訴えかけるストーリーテリングを実施すれば、見た人は自分が求めていたものを発見した気持ちになるでしょう。それが、購買行動へとつながります。

感情に訴えかける（合理的な訴求をしない）

二つ目に、機能やスペックなどを説明して合理的な訴えをするのではなく、感情に訴えかけることです。

心理学のストーリーテリングをビジネス領域で活用する重要性は、人の深い心理を突いているからです。

『シュガーマンのマーケティング30の法則』によると、私たちには物事を感情で良いと思い、それを論理で納得させる性質があるといいます。詳しい内容についてはこちらの記事でご覧ください。

つまり企業のブランド力を向上させたり商品を利用したいと感じたりしてもらうために、感覚的な部分に訴えかける必要があります。

そのため、その商品やサービスを使用することでどのような感情を得られるのかに焦点を当てて物語を作ることが有効です。

その他には、例えばデザインやコピーライティングに力を入れて感情に訴えかける要素を強化することもできます。

まとめ

今回は、心理学のストーリーテリングの概要やその効果やビジネスで活用するメリット、その企業事例について紹介しました。

ストーリーテリングは、物語を用いて対象を説明することで人々にそれを深く印象付けることができる心理学的手法です。

ここで、ストーリーテリングの効果についてまとめます。

• 自分ごととして認識してその後の行動を促す
• 記憶に留めておきやすくなる
• 物事の理解がスムーズになる

ストーリーテリングをビジネスで活用するポイントは以下の通りです。

• 顧客の購買意欲の向上
• 企業のブランド力の向上
• 社員教育の強化
• 採用活動の活性化

また、実践には以下のポイントを意識してみてください。

• ペルソナを設定する
• 感情に訴えかける（合理的な訴求をしない）

さまざまな企業が用いているストーリーテリングを見ていただきながら、自社の物語作りの参考にしてみてください。

ストーリーテリングを有効に活用して、自社の企業経営やマーケティングにお役立ちできれば幸いです。

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