- バリューチェーン分析に役立つテンプレートはないだろうか?
- テンプレートだけでなく、具体的な使い方も併せて知りたい
- 他社はどのようにバリューチェーン分析を行っているのだろう?
上記のような疑問を抱えていませんか?
今回は、バリューチェーン分析に役立つテンプレートと活用方法を紹介します。
バリューチェーン分析を行う際の注意点にも触れていますので、ぜひ参考にしてください。
バリューチェーン分析とは
そもそもバリューチェーン分析とは、何をどのように分析することを指しているのでしょうか。
バリューチェーン分析でできることや、サプライチェーンとの違いについて押さえておきましょう。
バリューチェーンとは?
バリューチェーン(Value Chain)とは、事業活動で創出される価値を一連の流れとして捉える概念です。
商品やサービスが生み出され、顧客に供給されるまでにはいくつかのプロセスを踏むことになります。
原材料の調達から製造、物流、販売といった各プロセスで生み出される付加価値を「価値のつながり」として捉える考え方です。
バリューチェーンという言葉は、アメリカの経済学者マイケル・E・ポーターが著書『競争優位の戦略』の中で初めて用いました。
現代においても、付加価値の構造を把握する方法としてバリューチェーン分析は広く活用されています。
バリューチェーン分析でできること
バリューチェーン分析を通じて実現できることは、大きく3点に分けられます。
・自社の強みや欠点の洗い出し
・費用対効果の改善
・競合他社の戦略分析
たとえば、ある家電製品を製造して販売しているメーカーをイメージしてください。
製品の性能面が他社に見劣りしないからといって、顧客が必ず満足してくれるとは限りません。
顧客体験は製品自体の性能だけで決まるものではないからです。
物流の工程に問題があれば、顧客の手元に製品が届くのが遅れてしまうでしょう。
販売店での説明が不十分だったり、接客が好ましくなかったりすればメーカー自体の印象が悪くなる可能性もあります。
バリューチェーン分析は商品が顧客に届くまでの全工程を総合的に分析し、付加価値を高める上で重要な役割を果たしているのです。
サプライチェーンとはどう違う?
バリューチェーンとよく似た用語に「サプライチェーン」が挙げられます。
バリューチェーンとサプライチェーンの最大の違いは、各工程に着目する際の観点です。
- サプライチェーン:商品・サービスが供給されるまでの活動に着目。お金の流れを重視する。
- バリューチェーン:各工程で生み出される付加価値に着目。顧客にとっての価値を重視する。
バリューチェーン分析を行うには、サプライチェーンを含む各活動を分析する必要があります。
サプライチェーンは、バリューチェーンの一環に組み込まれている工程の1つと捉えてよいでしょう。
バリューチェーン分析の要素と分析ポイント
バリューチェーン分析は、大きく「主活動」と「支援活動」に分けられます。
それぞれの活動領域と、分析のポイントを押さえておきましょう。
主活動
主活動とは、商品が消費者に供給されるまでの流れに直接関わる活動を指します。
・購買物流
・製造
・出荷物流
・販売・マーケティング
・サービス
上記は一般的な要素であり、実際には業種によって主活動の領域は異なります。
バリューチェーン分析はもともと製造業を中心に考案された分析手法のため、業種によっては当てはまらないものもあるでしょう。
サービス業や農業を例に挙げると、主活動は次のようにまとめることができます。
・事業企画
・営業活動
・サービス提供
・料金請求
・カスタマーサポート
【農業における主活動の例】
・投入財の供給
・農業生産
・加工・保管
・輸送・流通
・マーケティング・販売
主活動を分析する際には、自社にとって商品を提供する上で欠かせない「骨組み」に相当する流れを可視化しておくことが大切です。
支援活動
主活動をサポートする役割を果たすのが支援活動です。
消費者に直接関わらないものの、主活動を進める上で欠かせない活動をイメージするとよいでしょう。
一般的な支援活動の要素は次の通りです。
・調達
・技術開発
・人事・労務
・会計、財務、法務、品質管理など
主活動と同様、業種によって支援活動の内容は異なります。
一例として、ソフトウェア開発会社であれば技術開発は支援活動ではなく主活動に含めたほうが適切でしょう。
企業では間接部門に属する業務が多く、バリューチェーンを支える裏方の役割を果たすのが支援活動です。
分析のポイントは「付加価値」
主活動・支援活動を抽出しただけでは、バリューチェーン分析としての役割を果たしていません。
重要なポイントは「どの工程で付加価値を生み出せるのか」を分析することです。
付加価値が高い工程は自社にとって強みとなり、反対に付加価値が低い工程は弱みとなり得ます。
付加価値を分析する際には売上やコストといった定量的な尺度だけでなく、定性的な面も含めて分析することが重要です。
顧客の視点から見た場合に、自社のブランド価値を高めるポイントはどこにあるかを客観的な視点で分析していきましょう。
バリューチェーン分析に活用できるテンプレートと活用方法
バリューチェーン分析に活用できるテンプレートを紹介します。
主活動・支援活動に分けて、それぞれの記載方法と分析方法について見ていきましょう。
主活動の分析テンプレート
主活動の分析テンプレートには、以下の書式を使用します。
購買物流 | 製造 | 出荷物流 | 販売・マーケティング | サービス | |
強み | |||||
弱み | |||||
コスト |
主活動を可視化していく際の手順は次の通りです。
- 自社の業務のうち、主活動の各工程に相当するものを抜き出す
- 自社の強み・弱みを工程ごとに分類する
- 工程ごとにかかっているコストを割り出す
- とくに付加価値が高い工程を割り出す
上記の手順を踏む中で想定外にコストがかかっている工程が見つかった場合は、コストが高い原因も併せて分析しましょう。
注意点として、単純に「コストが高い=自社の弱み」とは限りません。
定量的・定性的な視点の双方から、顧客にとって付加価値を生み出している工程を割り出すことが大切です。
支援活動の分析テンプレート
次に、主活動の分析を元に支援活動についても可視化していきましょう。
支援活動の分析テンプレートには、以下の書式を使用します。
調達 | 技術開発 | 人事・労務 | 会計、財務、法務、品質管理 | |
強み | ||||
弱み | ||||
コスト |
営業部門や間接部門など、できるだけ多方面の意見をヒアリングしながら自社の強み・弱みを書き出していくことが重要です。
支援活動についても付加価値の高い要素を割り出し、自社の強みとなっている工程を明らかにしておきましょう。
書き出した強みについてVRIO分析を行う
主活動・支援活動の分析結果から、付加価値が高いと判断された工程を詳しく評価するために行うのが「VRIO分析」です。
次の4つの質問に答えていくことにより、自社の競合他社に対する優位性が浮き彫りになります。
・Value(経済価値):経営資源として価値があるか?
・Rarity(希少価値):経営資源として希少性があるか?
・Inimitability(模倣可能性):競合他社が同様の経営資源を獲得・開発可能か?
・Organization(組織):経営資源を活用する組織体制が整っているか?
次のテンプレートを活用して、自社の強みをスコアリングしていきましょう。
バリューチェーン | 自社の経営資源の特徴 | V | R | I | O | 競争状態 | |
購買物流 | |||||||
製造 | |||||||
出荷物流 | |||||||
販売・マーケティング | |||||||
サービス |
一例として「◎(3点)・○(2点)・▲(1点)・×(0点)」のように4種類ほど記号とスコアを決めておくと便利です。
算出したスコアから、各工程の競争状態を算出しましょう。
競争状態は、次の4段階で評価します。
- 経営資源の最大活用:競争優位性が確立されており、経営資源を有効活用できている(例:12点)
- 持続的な競争優位:今後も安定して競争優位性が維持できると予測できる(例:10〜11点)
- 一時的な競争優位:現状は競争優位性があるが、今後の見通しは不透明(例:6〜9点)
- 競争均衡:経済価値はあるものの競合が多く、優位性の確立には至っていない(例:3〜5点)
- 競争劣位:経済的価値・競争優位性ともに弱い(例:2点以下)
下表は、製造業でのVRIO分析を行った一例です。
バリューチェーン | 自社の経営資源の特徴 | V | R | I | O | 競争状態 |
購買物流 | 海外の製造拠点から安価に材料を調達 | ◎ | ◎ | ◎ | 〇 | 11点(持続的な競争優位) |
製造 | 自社工場での製造体制が整っている | ◎ | ◎ | ▲ | × | 7点(一時的な競争優位) |
出荷物流 | 効率的なロジスティクスが構築できている | 〇 | ▲ | × | × | 3点(競争均衡) |
販売・マーケティング | 小売店に委ねている部分が多い | 〇 | ▲ | × | × | 3点(競争均衡) |
サービス | 購入後のアフターフォローが充実している | ◎ | ◎ | 〇 | 〇 | 9点(持続的な競争優位) |
VRIOの4要素に全て「◎」が付いた状態(=経営資源の最大活用)が理想です。
上記の例では、購買物流とサービスに関しては模倣可能性や組織体制を改善することで、さらに強みにできる可能性があります。
出荷物流と販売・マーケティングについては不足している要素を分析し、弱みを補うための施策を検討する必要があるでしょう。
バリューチェーン分析を行うことによって自社の課題を可視化し、費用対効果の改善余地がある要素を明らかにできるのです。
バリューチェーン分析を行う際の注意点
バリューチェーン分析を行う際に、注意しておきたいポイントをまとめました。
テンプレートを活用するにあたって、次の点を押さえておきましょう。
期限を決めて分析を進める
バリューチェーン分析を行うには、多方面から情報を収集する必要があります。
情報を集める部署が複数にまたがるケースも少なくないため、分析に時間がかかりがちです。
できるだけ多くの情報を集めることは重要ですが、分析自体が目的化しないように注意しましょう。
バリューチェーン分析の目的は、あくまでも自社の強みの把握と費用対効果の改善です。
分析のために確保する期間をあらかじめ決めておき、期限内に分析を終えられるよう計画的に進めてください。
複数の部門から意見を募る
バリューチェーン分析では、定量データだけでなく定性的な情報も重要な手がかりとなります。
担当業務や競合他社に関する既知の情報量などによって、意見が分かれるケースも多々あるのが実情です。
たとえば、営業部門と間接部門では担当者の見解に大きな差が生じることも想定されます。
特定の部門だけで分析を進めず、複数の部門から意見を募るようにしましょう。
複合的な視点から分析を進めるためにも、情報を収集する部門が偏ることのないよう注意する必要があります。
他社が担う工程の分析には適さない
バリューチェーン分析は、自社で完結している工程の分析に適した手法です。
調達や製造を他社に委託している場合など、自社のリソースとはいえない工程の分析には向かないことがあります。
他社が担っている工程に関しては、自社以外でも付加価値を生み出せる確率が高いからです。
自社で完結していない工程が多数含まれる場合は、5フォース分析など別の分析手法を活用することをおすすめします。
まとめ
バリューチェーン分析は、自社の強み・欠点を洗い出し、費用対効果を改善する上で役立つ分析手法です。
自社の分析を適切に行うことができれば、競合他社の戦略分析にも応用できるでしょう。
今回紹介したテンプレートを活用して、ぜひバリューチェーン分析に取り組んでみてください。
自社の戦略をブラッシュアップしていくためのヒントが、分析結果から見つかるはずです。
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