心理学の巨匠フロイトとは|経歴や思想をわかりやすく解説

最終更新日: 2023/03/24 公開日: 2023/04/13

フロイトは精神分析学や心理学に多大な影響を与えたといわれています。

心理学者として有名なフロイトですが、精神科医としても大きな功績を残してきました。

今回は、そんなフロイトの人格や思想、名言などから、人物像や生涯を振り返っていきます。

フロイトの思想はビジネスシーンやコーチングにも役立つので、ぜひ参考にしてみてください。

ジークムント・フロイトはどんな人か

「ジークムント・フロイト」は、1856年にオーストリアで誕生した精神科医、心理学者です。

17歳でウィーン大学に入学したフロイトは、物理を2年間学んだ後、医学部の生理学研究所に入り、両生類・魚類の脊髄神経細胞を研究しました。

脳性麻痺や失語症の研究をするなど、この頃から脳に関する論文で大きな功績を残しています。

ここからは、フロイトという人物がどんな人生を歩んだのかを簡単に解説していきます。

麻酔剤としてのコカイン研究

今となっては違法な薬物というイメージが強い「コカイン」ですが、1880年代は兵士の疲労回復薬として合法的にコカインが処方されていました。

「コカイン」に注目したフロイトは、局所麻酔剤としてコカインが使用できるのではないかと考え、友人の眼科医とともにコカインを使用した手術を成功させます。

その後、フロイトは臨床研究にコカインを使用し始めますが、コカインの常習性や中毒性が世界各地から報告されるようになったのです。

「不当な治療を行っている」とされたフロイトは、いつしか医学界から嫌煙されるようになります。

コカインを推奨していたフロイトですが、モルヒネを常用していた友人にコカインを与えたところ、今度はコカイン中毒になった姿を目の当たりにし、コカインを推奨することはなくなりました。

PTSDに通じるヒステリーの研究

フロイトはヒステリーの研究にも力を入れていたと言われています。

当時ヒステリー研究の第一人者と言われていた神経学者「ジャン=マルタン・シャルコー」のもとで、催眠を用いたヒステリーの治療法を学んだのです。

シャルコーはヒステリーを細胞や組織の破壊が原因で起こる器質的疾患ではなく、神経の伝達が原因で起こる機能的疾患と考えていました。

シャルコーの考えに大きく感銘を受けたフロイトは、精神分析によって根治を目指すよりも一時的な症状緩和を目指す治療法を行うようになります。

そして「ヒステリーは幼少期に受けた性的虐待によって引き起こされる」という理論を発表しました。

この考えは後に無意識の発見や、PTSDの概念確立に通ずることとなります。

ヒステリー患者が無意識レベルに隠しているトラウマや経験を言語化し、症状改善を目指す治療法は当時、お話療法と呼ばれました。

フロイトとユングの決別

フロイトと同様に、心理学に大きな影響を与えたと言われるのがユングです。

2人は無意識の存在において共通の考え方を持っていたため、ユングはフロイトを尊敬していたと言われています。

フロイトもユングを信頼しており、「国際精神分析学会」の創立時にはユングを初代会長に就任させるほどでした。

しかし、無意識の範囲などの見解の違いが次第に大きくなり、不和が決定的なものになると、ユングは国際精神分析学会を脱退してしまいます。

「嫌われる勇気」などの書籍が大ブームを起こした心理学者のアドラーも、フロイトの協力者の一人でしたが、ユング同様にフロイトのもとから離れています。

その後、フロイトは「精神分析運動の歴史について」でユングの見解に反論するなど、2人の関係は完全に対立してしまいました。

フロイトやユングとともに心理学に大きな影響をもたらしたアドラーについて知りたい人は、こちらの記事もおすすめです。

心理学に大きな影響を与えたフロイトの思想

精神科医として画期的な方法で治療を行っていたフロイトの思想は、心理学の進歩に大きく貢献しました。

なかでも無意識の発見は心理学界をはじめ、さまざまな分野に影響を与えたと言われています。

ではフロイトの思想を詳しく見ていきましょう。

「無意識」の発見

フロイトはヒステリーの研究などを経て、人間は自分で認識している「意識」のほかに、自分では認識できていない「無意識」があると唱えました。

ヒステリーやPTSDなどの精神疾患の原因は、無意識の記憶の蓄積だと考えたのです。

フロイトが無意識の理論を提唱する以前にも、無意識の存在を主張する学者はいましたが、無意識という概念を明確にしたのはフロイトだと言われています。

フロイトは意識と無意識の間に自我があり、自我が意識と無意識を調整していると考えました。

たとえば日常生活で嫌なことがあると、自我が嫌な記憶や感情を無意識下に抑えこもうと作用すると考えられます。

無意識の存在は心理学の分野だけでなく、人文学にも大きな影響を与えたと言われています。

構造論と神経症論

ヒステリーの研究から心的外傷の研究に精進していたフロイトは、無意識という概念をより細かく定義づけています。

人の心には「エス(無意識)」「自我」「超自我」の3つの機能が存在し、バランスが崩れると精神疾患が起こると考えました。

3つの機能の概要は次のとおりです。

  • エス(無意識):人間的な欲求のこと。快楽を追求するため、非論理的な考えや衝動的な行動をもたらす。
  • 自我:幼少期の生活や受けた教育によって形成される。欲求(無意識)を抑制する役割を果たすと言われている。
  • 超自我: 幼少期に身につけた道徳がもとになっていて、無意識を抑圧する役割を果たす。「〜すべき」といったように理想を追求する。

フロイトの思想を詳しく知りたい人は、こちらの記事もチェックしてみてください。

フロイトの夢診断とは

フロイトは睡眠時に見る夢が無意識と関連していると考えていました。

夢の内容をもとに無意識下の感情を探る方法である「夢診断」を提唱し、書籍も出版しています。

フロイトは睡眠という無防備な状態で見ている夢は、無意識下の願望や感情が意識に訴えかけているのだと考えました。

たとえば普段、抑圧されている無意識が夢という形として具体的に現れていると提唱しています。

夢の内容から無意識下の感情や記憶を分析するためには、夢で見たことを自由に発言する「自由連想法」を使います。

夢に対する分析についてはユングも無意識との関連性を唱えていますが、フロイトとの見解はここでも大きな差が出ました。

ユングは意識と無意識が相互的に作用し、夢に現れると考えたため、意識の状態を知ったうえで分析するのが大事だと唱えています。

フロイトとユングの思想の違いについて詳しく知りたい人は、こちらの記事もチェックしてみてください。

フロイトの精神分析とは

フロイトは、無意識下の感情や記憶を引き出す「精神分析」が精神疾患の治療に役立つと考えていました。

精神分析の方法である「自由連想法」の手順は次のとおりです。

  1. リラックスした状態でソファやベッドに横になる
  2. 思い浮かんだ単語を挙げる
  3. 連想できる単語もあわせて自由に発言する

この手法を繰り返すことで、無意識下で抑圧された感情や記憶が引き出せるとフロイトは言います。

一つ一つ質問をしていくよりも、自由に発言するほうが自我が無意識にアクセスしやすいためです。

本来、精神分析は精神疾患の治療に使用されていましたが、現在ではマーケティングにも活用されることも増えてきました。

自由連想法でユーザーの無意識下にある欲求や感情をあぶり出すことで、商品やサービス、ブランドの課題を見出したり、方向性を決定したりするのに役立つのです。

フロイトの名言

新しい着眼点を持って心理学を研究していたフロイトは、さまざまな名言を残しています。

日常の生活はもちろん、ビジネスにおいても役立つフレーズがたくさんあるので、ぜひ参考にしてみてください。

人は不快な記憶を忘れることによって防衛する

無意識という概念を明確にしたフロイトだからこそ言える言葉です。

心的外傷には、ほとんどの場合、無意識下で抑圧された感情や記憶が潜んでいます。

嫌な気持ちや悲しみを無意識下で抑え込むことでその瞬間の苦痛を軽減しているのです。

しかし抑圧された感情や記憶は、完全に消えるわけではありません。

無意識下で蓄積された感情や記憶が、心的外傷となって現れるていると言えます。

恋に落ちているときほど、苦痛に対して無防備であることはない

相手に好意を向けるほど、恋には苦痛という感情がつきまといます。

嫉妬心や独占欲など、フロイトの言う構造論のエス(無意識)が、恋愛では露わになるのです。

とはいえ、無意識下の感情を引き出すのは、決して悪いわけではありません。

苦痛と向き合うことが、正直な自分と向き合うことにつながるのかもしれません。

あなたの強さは、あなたの弱さから生まれる

悲しみや苦しみなどの感情や記憶は、無意識下にしまっておきたいと考える人もいるかもしれません。

しかし、自分の弱さと向き合って努力すれば、弱さを強さに変えることができるでしょう。

自分の弱さと向き合える人は、他人の弱さに気づける優しい人です。

弱さゆえの辛さを経験したからこそ、本当に強い人になれるのだともいいます。

あらゆる生が目指すところは死である

生きる意味が分からずに人生が辛くなってしまうときがあるかもしれません。

しかし、フロイトは生きる意味などないと提唱しています。

「生きる意味や価値を考え始めると、我々は、気がおかしくなってしまう。生きる意味など、存在しないのだから」

人間は死に向かって生きているのであって、無理に生きる意味を見出して辛さを感じる必要はないのかもしれません。

夢は現実の投影であり、現実は夢の投影である

フロイトは、夢は無意識下の感情や記憶が意識下に現れたものだと考えました。

反対に夢もまた現実に影響していると考えたのです。

無意識と意識は密接につながっているため、夢は単なる理想や妄想が反映されているのではなく、無意識下の感情や記憶が表面化していると言えるでしょう。

自分にひたすら正直でいることは、よい修練になる

無意識下に蓄積した辛い記憶や感情は、精神疾患の原因になる可能性があります。

社会で生きていくためには、自分自身を抑圧しなければいけない場面も増えてきます。

しかし、自分に対して正直になることは、健康的な生活を送るためにいい影響を及ぼします。

ストレスを溜め込まないためにも、定期的に自分に正直になる機会を作るといいでしょう。

愛されていると確信している人間はどれほど大胆になれることか

フロイトは、健康的に生きていくために「愛すること」と「働くこと」が重要だと考えました。

愛されていると確信している人は、自信を持って行動できます。

「自分を認めてくれる人がいる」「自分には帰る場所がある」という安心感は自信につながるでしょう。

まとめ

フロイトが確立した「無意識」の概念は、心理学界のみならず、幅広い業界に多大な影響を与えました。

フロイトは無意識と意識は自我がコントロールしていると提唱しています。

フロイトの理論を知ることで、自分の感情と向き合ったりコントロールしたりするのに役立つでしょう。

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