- 複雑なフロイトの精神分析をわかりやすく理解したい
- 精神分析療法のやり方が知りたい
フロイトが提唱した精神分析は、現代でも精神分析療法として精神疾患の治療に用いられています。
この記事では、フロイトが提唱した精神分析の考え方や手順をわかりやすく解説します。
フロイトの精神分析とは
オーストリアの精神科医であるジークムント・フロイトは、人間の心が「意識」と「無意識」の2種類から構成されていると考えました。
その無意識の部分を明らかにして、抱えている問題の原因を探り、精神疾患の治療を目指すのが精神分析です。
では、フロイトが提唱した精神分析はどのような手法を用いるのか、また、フロイトの人物像やフロイトと同様に無意識を提唱したユングの精神分析との違いを解説します。
精神分析の手法とは?
精神分析の手法としてもっとも一般的なのは、リラックスした状態で頭に浮かんだ単語やイメージを発言する「自由連想法」です。
夢も無意識が反映されるといわれているため、自由連想法とあわせて夢分析を行うこともあります。
フロイトが始めた精神分析療法は時代の流れによって変化し、多くの弟子や研究者が最適な実践方法を模索してきました。
週に4回以上の治療を実施する場合は「精神分析療法」と呼ばれ、それ以下の場合は「精神分析的心理療法」と呼ばれています。
精神分析を提唱したフロイトとは?
ジークムント・フロイトは、19世紀から20世紀にかけて活躍した精神科医です。
脳性麻痺や失語症の研究の論文を発表したり、ヒステリーの研究を行ったりなど、精神に関する研究に精力的に取り組みました。
フロイトのもっとも大きな功績ともいわれているのが、「無意識」の発見です。
人間には自分では認識できていない「無意識」があり、PTSDやトラウマの原因は無意識の記憶にあると提唱しました。
精神分析によって「無意識」を分析すれば、精神疾患の治療につながると考えたのです。
フロイトという人物についてくわしく知りたい方は、こちらの記事も参考にしてみてください。
ユングの精神分析との違いは?
心理学者のユングは、精神科医であり心理学に精通したフロイトの「無意識」という考えに賛同していました。
しかし、無意識の範囲に対する考え方の違いによって決別したといわれています。
ユングとフロイトの考え方の違いは、精神分析にも用いられる夢分析の手法にも現れています。
- フロイトの夢分析:人間は無意識下に押し込めた欲求を、夢で実現しようとしているため、夢の内容をもとに無意識領域を分析する
- ユングの夢分析:意識と無意識が相互的に作用し夢に現れるため、現実の出来事や考えごとの内容をもとに夢と無意識領域との関連性を判断する
無意識下の欲求が夢となって現れるというフロイトの考えには、一部から批判も生まれています。
そのため、現在の精神分析では、夢分析はあくまでも精神分析を行うための参考として考えられているケースが多いです。
ユング心理学をマーケティングに活用する方法が知りたい方は、こちらの記事も参考にしてみてください。
フロイトの精神分析理論とは
フロイトは人間の心が「意識」と「無意識」から成り立っていると考えました。なかでも注目したのが無意識の領域です。
というのも、フロイトは人間の意識は氷山の一角にしかすぎず、無意識が大部分を占めていると考えたからです。
フロイトが大きな影響を与えた心理学をビジネスに活かす方法が知りたい方は、こちらの記事も参考にしてみてください。
局所論
フロイトは、人間の心は3つの領域で成り立っていると考えました。
- 意識:経験や記憶、感情など自分のものとして自覚し、コントロールできる部分
- 前意識:意識はしていなくても、思い出そうとすれば自覚できる経験や記憶、感情
- 無意識:意識しようと試みても意識できない部分
たとえば、「あなたの嫌いな食べ物はなんですか?」という質問に対して「カレーライスです」と答えた人がいるとします。
この回答はすぐに答えられるので、意識にあたります。
次に「いつからカレーライスが嫌いなのですか?」という質問に対して、少し考えてから中学に入学する頃には嫌いだったと思い出したとします。
これが前意識にあたります。
では、「なぜカレーライスが嫌いなのですか?」という質問に対して、答えられなかったとします。これが無意識にあたります。
しかし、何かに嫌悪感を抱くのには必ず理由があるはずです。
たとえば質問の回答者が、小学生の頃に母が外出する日の献立がカレーライスだったとしましょう。
そのときの寂しい記憶が無意識の領域に蓄積し、カレーライス=寂しい気分になる=嫌いという感情として意識に現れている可能性があります。
構造論
フロイトは意識と無意識の間に自我があり、自我が意識と無意識を調整していると考えました。
何か嫌な出来事が起こったとき、ダメージを抑えるために自我が嫌な記憶や感情を無意識下に押し込んでいると定義づけたのです。
そこでフロイトは心の機能を次の3つに分類し、このバランスが崩れると精神疾患を引き起こすと考えました。
- エス(無意識):人間的な欲求のこと。快楽を追求するため、非論理的な考えや衝動的な行動をもたらす。
- 自我:幼少期の生活や受けた教育によって形成される。欲求(無意識)を抑制する役割を果たすと言われている。
- 超自我: 幼少期に身につけた道徳がもとになっていて、無意識を抑圧する役割を果たす。「〜すべき」といったように理想を追求する。
たとえば、明日は大事なテストなのに漫画が読みたくなったとき、「漫画が読みたい!」という欲求がエス(無意識)です。
しかし、勉強をしないと明日のテストの結果に悪影響を及ぼす可能性があります。
そこで「漫画はいつでも読めるから、テスト勉強をしよう」と自分の理想を追求するのが超自我です。
このエス(無意識)と超自我のバランスをとり、決断を下すのが自我です。
現在用いられる精神分析療法とは
精神分析療法は必ずしもPTSDやトラウマの治療に用いられるとは限りませんが、精神分析療法は現在の心理学に大きな影響を与えているといわれています。
また、現在でも精神分析療法は行われており、精神分析家という専門家が存在します。
では、精神分析家はどんな職業なのか、精神分析療法はどこで受けられるのか解説します。
精神分析家という専門家が存在する
精神分析を専門的に行う職業を「精神分析家」と呼びます。
精神分析家の資格を取得するためには、医師や臨床心理士の資格が必要になるほか、豊富な臨床経験や精神分析の訓練など、実務経験も積まなくてはいけません。
精神分析家の資格を得る条件は国際精神分析協会と日本精神分析協会が定めており、厳しい条件が多いため、日本国内の精神分析家はわずか40人ほどしか存在しないといわれています。
精神分析が必要と診断されると精神分析療法を受けることができる
精神分析は精神疾患を持つ患者に限らず、不安や悩みを抱えている人で精神分析が適していると判断された人が受けることができます。
また、アーティストをはじめ、クリエイティブな職業に就いている人が自分自身の無意識の領域を深く知るために、精神分析を受けるケースもあります。
しかし、フロイトの考えによると、無意識下には抑圧された負の感情や記憶が詰め込まれているため、自分の無意識領域を把握することによって、さらにマイナスな感情が生まれる可能性もあります。
精神分析療法はすぐに効果が実感できるものではなく、数年間にわたって行われるのが一般的なので、治療費もかかります。
そのため、精神分析療法を行う前には面接が実施され、本当に精神分析が適していることを確認してから治療を進めます。
精神分析療法の手順
精神分析療法は1回につき40分〜50分ほどの治療を週に4〜5回程度行うのが一般的です。
治療の期間は症状の程度によりますが、おもに次の6ステップで進められます。
自由連想法
フロイトが考案した自由連想法は、無防備な状態で頭に浮かんだことを自由に発言する方法です。
まずはソファなどに腰かけ、リラックスした状態で思い浮かんだ単語を発言します。
発言した単語について連想できる単語があれば、自由に発言します。
ここで重要なのは、何も考えずに思いついたことを素直に発言することです。
人間は誰かと会話するとき、「これは言ってもいい」「これは言わない方がいい」と無意識に発言の可否を判断しています。
自由連想法では、関係ないことや恥ずかしいことなど、意識せずに発言します。
この作業によって、無意識領域に抑圧されている記憶や感情の断片を見つけていきます。
転移
人間は幼少期の親との関わりを通して、人間関係のもととなるテンプレートを形成するといわれています。
この親子間の関係性がカウンセラー(精神分析家)との間に起こる現象を「転移」といいます。
転移によって患者がカウンセラー(精神分析家)に対して、どんな態度や感情を向けているのかを分析すると、患者の人間関係のテンプレートが見えてきます。
転移によって見えたテンプレートが歪んでいたり、極端になっていたりする場合、カウンセラー(精神分析家)はテンプレートの修正を目指して治療を行います。
夢分析(夢診断)
フロイトは睡眠時に見る夢が無意識と関連していると考え、夢の内容をもとに無意識下の感情を探る方法である「夢診断」を提唱しました。
同じ夢ばかり見たり、悪夢ばかり見たりする場合は、無意識下で抑圧された感情がメッセージを送っているのかもしれません。
夢に隠れた無意識領域からのサインを読み解くためには、おもにステップ1で紹介した「自由連想法」が用いられます。
リラックスした状態で夢の内容で覚えていることを発言し、無意識領域を探るための手がかりにします。
ただし、夢は日常の出来事や考え事など、意識的な部分が反映されているケースも少なくありません。
あくまで参考程度に捉えたり、情報の取捨選択を行ったりするのがおすすめです。
解釈
精神分析療法における「解釈」は、カウンセラー(精神分析家)が患者を理解し、言語化して患者に伝えることを指します。
精神分析療法は何度も解釈を繰り返し、患者は解釈の良し悪しに関わらず、すべての解釈を受け止めます。
というのも、カウンセラー(精神分析家)が伝えた解釈を患者が「これは違う」「これは合っている」と判断していては、現状が変わることはないからです。
必ずしも解釈をすべて受け入れる必要はありませんが、1つの意見として受け止めて理解することが自分を理解するきっかけになるでしょう。
防衛と抵抗
解釈をくり返すと、患者が受け入れる解釈と受け入れたくない解釈が生まれます。
無意識下にある感情や記憶は心の安定を保つために、無意識領域にとどまっています。
そのため、受け入れたくない解釈は無意識領域にある感情や記憶と大きく結びついている可能性が高いと考えられます。
たとえば、カウンセラー(精神分析家)が提示した解釈について、ごまかしたり、不機嫌になったり、話をそらしたりする様子が見られた場合、そういった行動や心の動きの理由を探ります。
ワークスルー
自由連想の発言をもとにカウンセラー(精神分析家)が解釈を提示し、防衛と抵抗をくり返すことによって、少しずつ自己理解が深まります。
この一連の流れを「ワークスルー」といいます。
解釈がたとえ事実だったとしても、無意識下で抑圧された感情や記憶と向き合うことは痛みを伴います。
無意識下の感情や記憶を理解したとしても、日々の行動や考え方をすぐに変えるのは難しいものです。
そのため、前進と後退を繰り返しながらも少しずつ前進していくことを目指すワークスルーが重要なのです。
まとめ
無意識の領域を発見したフロイトの精神分析療法は形を変え、現在でも精神疾患の治療に用いられています。
専門家である精神分析家をはじめ、医療機関で精神分析を行なっているケースもあるので、自身の無意識領域と深く向き合いたい方は相談してみるのも一つの方法といえます。
自由連想法などの精神分析は自分でも行うことができるので、定期的に実践して自己理解を深めてみてください。
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