自社の商品やサービスを効果的に販売するためには、マーケティング施策が欠かせません。
しかし、マーケティングと一言で言っても、分析の幅が広く、すぐに結果が出るものでもないため、次のようなお悩みを抱えている方も多いでしょう。
- マーケティングは複雑で初心者には難しい
- 何からマーケティングを学べばいいのかわからない
- マーケティングの基礎知識が知りたい
この記事では、そんなマーケティングをこれから学ぶ人に向けて、主要なマーケティング理論をまとめました。
自社の状況に合ったマーケティング理論を選択し、ビジネスの拡大に役立てましょう。
マーケティング理論とは
マーケケティングが学問の分野として確立されてから、さまざまな学者が独自の研究をもとにマーケティング理論を提唱してきました。
マーケティング理論について学ぶ前に、まずマーケティングという分野や、マーケティング理論について理解しておきましょう。
そもそもマーケティングとは?
そもそも、マーケティングとは「売れるための仕組みづくり」です。
集客活動や販促活動がマーケティングだと考える人もいるかもしれませんが、企業が商品やサービスを売るために関わるすべての活動がマーケティングに含まれます。
たとえば、市場調査やターゲット調査、商品やサービスの企画・開発、プロモーションなどもマーケティング活動の一環です。
マーケティング理論はマーケティングにおけるフレームワーク
マーケティング理論とは、マーケティングにおけるフレームワークです。
分野を問わず、企業が商品やサービスを売り上げるための再現性のある仕組みがマーケティング理論なのです。
マーケティング理論は心理学や行動経済学のように、エビデンスのある研究であるため、自社のマーケティング活動に取り入れることで、商品やサービスの売上拡大が見込めます。
マーケティングが重要視される背景
一度マーケティングの知識や技術を身につけたからといって、ビジネスが成功し続けるとは限りません。
トレンドや世界情勢、人々の価値観や暮らし、地球環境などの人々を取り巻く環境は常に変化しています。
そのため、マーケティングの知識は日々ブラッシュアップする必要があるのです。
マーケティング理論の種類
ここでは8つのマーケティング理論を紹介します。
マーケッターはもちろん、経営者にも個人事業主にも、またチームを牽引する人には有名で有効な理論ばかりですので、しっかりと理解しておきましょう。
別の記事で紹介しているマーケティングのフレームワークと共に、市場分析などに活用してください。
サイバネティクス理論
サイバネティクス理論は、アメリカの科学者ノーバート・ウィナー博士によって提唱されたマーケティング理論です。
動物学者でもあったウィナー博士は、渡り鳥がどうして1分の狂いもなく目的地にたどり着けるのかという疑問からサイバネティクス理論に考えいたりました。
渡り鳥が方向を1°でも間違えてしまうと、何千kmも離れた目的地へはたどり着くことができません。
でも、飛んでいる中で強風に流されてしまったり、とまる場所がなかったりして、目的地への直線距離から外れてしまうこともあるでしょう。
それでも目的地にたどり着ける渡り鳥は、目的地への方向からずれてしまうと、その都度修正を加えているとウィナー博士は考えました。
「サイバネティクス」は日本語で「操舵」という意味です。
目標達成のために最短距離をとるのではなく、目標達成への道筋の中でずれが生じた場合、そのずれを修正し、最終的に目標にたどり着くという考え方がサイバネティクス理論です。
サイコ・サイバネティクス理論
サイコ・サイバネティクス理論は、サイバネティクス理論を応用した考え方で、整形外科医のマクスウェル・マルツ博士が提唱しました。
整形手術をした人は、手術によって自分に対するポジティブなイメージを持つことができたため、自信を取り戻し、人生が好転したという事例が多く報告されています。
マルツ博士は人間の脳にもサイバネティクス理論のように、目標を設定するとその目標を達成しようとする働きがあると考えました。
つまり、自分の成功イメージを具体的にイメージし続けると、脳が現実の状態をイメージに近づけようとするため自らに行動を起こさせるということです。
イノベーター理論
イノベーター理論は、スタンフォード大学のエベレット・M・ロジャーズ教授が提唱したマーケティング理論です。
イノベーター理論では、新しい商品やサービスが市場でどれくらい普及しているかを5つの層に分類しています。
その5つとは「イノベーター(革新者)」「アーリーアダプター(初期採用者)」「アーリーマジョリティー(前期追随者)」「レイトマジョリティ(後期追随者)」「ラガード(遅滞者)」です。
イノベーター(革新者)
イノベーターは新しい商品への好奇心が高く、素早く情報をつかむことができる層で、最初に新しい商品を購入します。
「新しい」ことが価値と感じ、自分の興味や嗜好に合う商品であれば、価格が高くても購入します。
イノベーターは市場全体の約2.5%存在します。
アーリー・アダプター(初期採用者)
アーリー・アダプターも新しい商品に目を付けて購入します。
トレンドに敏感で、これから流行しそうなものを先に手に入れる層で、インフルエンサーやオピニオンリーダーになる人も多いです。
よって、業界を攻略するなら、アーリー・アダプターに購入してもらうことが重要です。
アーリー・アダプターは市場全体の約13.5%と言われています。
アーリー・マジョリティー(前期追随者)
アーリー・マジョリティーは新しい情報を積極的に取りに行きますが、購入するのは慎重派という層です。
「追随者」という言葉通り、アーリー・アダプターの影響力を最も受けているため、アーリー・マジョリティーに購入を促すなら、まずアーリー・アダプターへのアプローチが必要となります。
また、自分が納得してから新しい商品を購入するので、その商品を選ぶ合理的な理由が必要です。
市場全体の約34%がアーリー・マジョリティです。
レイト・マジョリティー(後期追随者)
レイト・マジョリティーは、新しい商品やサービスを購入することに消極的な層です。
大多数の人々が商品やサービスを購入してから、自分も買いたいと思う人たちで、市場全体の約34%います。
レイト・マジョリティーに購入してもらうには普及率を高める必要があります。
ラガード(遅滞者)
ラガードは商品やサービスが普及しているだけでは購入に繋がらない保守的な人々です。
生活に密接に結びつき、伝統や文化になるレベルまで一般的にならないと商品やサービスを購入しません。
ラガードに訴求するには、商品やサービスが世の中の定番であり、他の商品よりも安心できるものであるというアプローチが必要です。
ラガードは市場全体の約16%存在します。
キャズム理論
キャズム理論は、経営コンサルタントのジェフリー・ムーアにより提唱された理論です。
キャズムとは日本語で「溝」のことを指します。
イノベーター理論の「アーリー・アダプター」と「アーリー・マジョリティー」の間には溝があり、それを越えられないと新しい商品やサービスは普及しないとジェフリー・ムーアは言っています。
イノベーター理論でいう「イノベーター」と「アーリー・アダプター」は初期市場で、「新しい」ということが価値となります。
反して「アーリー・マジョリティー」「レイト・マジョリティー」「ラガード」のメインストリーム市場は「新しい」ことだけでは商品は売れません。
商品そのものの価値に加えて信頼や安心を提供する必要があります。
ゲーム理論
ゲーム理論は、数学者ジョン・フォン・ノイマンと経済学者オスカー・モルゲンシュテルンの共同著作『ゲームの理論と経済行動』で提唱されました。
利害関係がある複数の相手がいるなかで、自分と相手の利益を考えて行動するための最適解を求める思考法です。
ゲーム理論は「協力ゲーム」と「非協力ゲーム」の2つにわけられます。
協力ゲーム
協力ゲームは、参加者が協力する方が最大限の利益を得られる状態のことです。
参加者同士で話し合い、その合意には拘束力があります。
企業の業務提携でシェアを広げるなどは協力ゲームの1つです。
協力ゲームでは、合意をしてもなお、お互いに確実に利益を得られる状態でないと完成することはありません。
非協力ゲーム
非協力ゲームは、参加者全員が同じ利益を得られない場合、参加者同士が争う状況を言います。
大学受験、就職や転職も非協力ゲームの1つです。
企業の例で言えば、同じ業界の企業同士が同じような価格設定をしている場合、ある1つの会社が顧客を増やそうと値段を下げても、他の会社も追随して値段を下げてしまい、結果として業界全体の価格が下がってしまいます。
会社同士が話し合って価格を決定しているわけではないですが、それぞれがお互いの利益を考えた結果の価格設定ということになります。
非協力ゲームで有名なモデルとして囚人のジレンマがあります。
囚人のジレンマ
互いにコミュニケーションが取れないように別々の部屋で尋問される2人の容疑者がいます。容疑者は自白するか、黙秘するかの選択を迫られています。
- 1人が自白し、片方が黙秘した場合、自白した方は無罪、黙秘した方は懲役10年
- 両方が黙秘した場合、両方懲役2年
- 両方が自白した場合、両方懲役5年
容疑者にとって両方が黙秘すれば懲役が2年で済みますが、意思疎通できないため、相手が裏切るかもしれないと考え、2人ともが自白すれば懲役が5年になります。
このように、それぞれが自分の利益を求めた結果、協力する時よりも悪い結果になってしまう状態を囚人のジレンマと言います。
ハフ理論
ハフ理論とは、アメリカの経済学者デービッド・ハフ博士が考案した理論です。
消費者がある店舗に買い物に行く確立を他の店舗と比較して予測するというもので、店舗の売り場面積や家からの距離、商品の価格、営業時間など多くの要素を基に分析をします。
ある店舗に買い物に来る消費者が住んでいる地域を「商圏」と言いますが、商圏分析にハフ理論が役立ちます。
4P理論
4P理論は、マーケティング学者のエドモンド・ジェローム・マッカーシーが提唱したマーケティング理論です。
「Product(製品)」「Price(価格)」「Place(流通)」「Promotion(プロモーション)」の4つの頭文字をとり、名づけられました。
これらの4Pは、企業が商品やサービスを販売するために必要なマーケティング要素で特に重要なもので、マーケティングミックスとも呼ばれています。
Product(製品) | デザイン、特長、ブランディング、保証、サービスなど |
Price(価格) | コスト、競合の価格、市場の需要など |
Place(流通) | 待ち時間、経路、販売ロット、品ぞろえ、検索のしやすさなど |
Promotion(プロモーション) | マス広告、インターネット、イベント、営業、インセンティブ付与など |
4C理論
4C理論はアメリカの経済学者、ロバート・F・ラウターボーンが提唱しました。
4Cは「Customer Value(顧客価値)」「Cost(コスト)」「Convenience(利便性)」「Communication(コミュニケーション)」を指しており、これらは顧客が商品を選ぶうえで重要な条件となっています。
4P理論をより顧客目線にしたものが4C理論です。
Customer Value(顧客価値) | 消費者にとっての商品の価値 使いやすさ、サポートの充実度など |
Cost(コスト) | 商品の価格、購入までの時間・手間など |
Convenience(利便性) | シンプルな購入までの導線、わかりやすさなど |
Communication(コミュニケーション) | 消費者に対する継続的なフォロー体制 SNSでの発信、コールセンターなど |
複数のマーケティング理論を活用して自社の状況を把握しよう
マーケティング理論は、時代や環境、消費者のニーズなどに合わせて変化しています。
そのため、様々なマーケティング理論が提唱されていますが、1つをとって分析をするのではなく、複数の理論を用いて自社の内部環境や外部環境などを分析すると良いでしょう。
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