心理ゲームとは?交流分析で不快なコミュニケーションを改善

最終更新日: 2024/09/18 公開日: 2022/12/08

「なぜかいつも同じことで、人とぶつかってしまう。」
「なぜか特定の人と話すとお互いにモヤモヤとした気持ちになってしまう。」

このような経験は、誰しも一度はしたことがあるのではないでしょうか。

日常会話で私たちは知らない間に、他人と心理的な「ゲーム」、いわゆる心理ゲームをしていることがあるのです。

このような状況でイライラしてしまう人は、自分の中で繰り広げられている心理ゲームに気づくことで、この状況を改善できます。

その不安や疑問は、心理学のTA(交流分析)の「ゲーム」という概念を知ることで、解決できます。

今回は、心理学の交流分析を参考にしながら、自分の中で心理ゲームをしてしまう理由や考えてしまいがちな心理ゲームの種類、またこれらに陥らない方法を紹介します。

TAとは?│心理ゲームの基礎

TA(Transactional Analysis)とは精神科医であるエリック・バーンが提唱した理論です。別名交流分析とも呼ばれます。

TAでは、みながありのままに生きてそれぞれの存在を肯定しながら、各々の考えを尊重する考え方です。

TAは、下記のような考えをベースにしています。

TAの考え方1:人はみなOKである

TAでは、人はみな尊重されるべき存在のものと考えます。

大人も子供もどんな人も、それぞれに優劣はありません。

皆が平等に幸せになる権利を持っていて、それは実現されるべきというベースからさまざまな心理手法を確立させています。

TAの考え方2:誰もが考える能力を持っている

誰もが心の中に考えをもっていているため、まずは自分の考えや気持ちに目を向け、それを尊重することを大事にします。

多くの人とのコミュニケーションの中で、なぜ相手がその発言をするのか、その考えをもつのか理解できないこともあるでしょう。

TAを学び、さまざまな手段を使うことでお互いに気持ちのよい意思疎通をはかることが可能になります。

皆が幸せになる経営の考え方に、三方よしを基礎とした絆徳経営の考え方があります。従業員や、顧客、社会が幸せになる、経営手法を知りたい方はこちらの記事もぜひご覧ください。

心理ゲームとは?

心理ゲームとは、TAの発案者エリック・バーンによって発見されました。

いつも特定の相手と会話がかみ合わずに、お互いの心のモヤモヤだけが残ってしまうことはないでしょうか。

またいつも同じようなことがきっかけで、意見がぶつかり、心が傷ついた経験のある方もいるでしょう。


エリック・バーンは、このような事象を「ゲーム」と名付けました。

私たちは、知らない間に、人との会話の中で自分なりの「心理ゲーム」を繰り広げていることがあるのです。

この現象は、友達、カップルや夫婦、仕事などどのような関係性の相手にでも起こります。

  • 心理ゲームにはどのような種類があるのか
  • なぜ起こるのか

これらについて知ることで、自分や相手の会話が予測可能なものとなり、正しい対処法を身につけられます。

心理ゲームの種類とは

心理ゲームにはどのような種類があるか、具体例を交えながらご紹介しましょう。

また、ゲームが起こりそうな際の、対処の工夫についても解説します。

うん、でもゲーム

自分がよかれと思って提案したことに対して、肯定の言葉がなくすべて否定されて、うんざりした気持ちになることです。

Bさん:「Aさん聞いてください。この案件がどうもうまくいかなくて。」
Aさん:「○○をやってみたらいいんじゃないですか?」
Bさん:「でも、○○このような理由で難しいです。」
Aさん:「では、B案はどうですか?」
Bさん:「B案は、○○の理由で厳しいです。」
Aさん:「(すべて却下されてしまう…。」

対応のヒント

この場合は、相手が悩んでいることの気持ちに寄り添ってまずは理解を示しましょう。

相手は話をただ聞いてほしいだけのこともあります。

その事象に対し、現状で相手が感じていることを聞き出して、そこからどのようなことをするべきか主体的に考えてもらいましょう。

主体的に考えることで、その人自身で解決の糸口が見つけられる可能性があります。

世話焼きゲーム

相手が望んでいるか分からないにもかかわらず、期待に応えようとして、必要以上にさまざまなことをやってしまう心理ゲームです。

Aさん:「この仕事をやっておきました!ついでにこれも、それからこの仕事も着手しました!」
Bさん:「これはやらなくてもいいですよ。(本当は望んでいないんだけどなあ。)」
Aさん:「(こんなに一生懸命頑張っているのに。)」

対応のヒント

Aさんは、もっと頑張らないと認めてもらえないのではないかという恐れにとらわれているのかもしれません。

まずは、Aさんは十分に頑張っていることを伝えて、感謝の気持ちを述べましょう。

そして、Aさんのやるべき仕事をはっきりと線引きしてあげて、あるところまでやれば十分にできていることを示すとよいでしょう。

キックミーゲーム

相手がわざと自分を拒絶させるような言動をとる心理ゲームのことです。

Aさん:「予定時間に遅れます。」
Bさん:「分かりました。」
Aさん:「今日も予定時間に遅れます。」
Bさん:「分かりました(前もあったなあ)。」
Aさん:「今日も遅れます。」
Bさん:「なぜ、何度も遅刻するのですか?(何回も同じことをしているなあ)」

対応のヒント

Aさんは、無意識に相手に嫌われるような言動をしています。これは過去に相手から、嫌われることで注目を集めた経験が関係している場合があるのでしょう。

キックミーゲームをされた側は、むきになって怒ることはせず、なるべく距離を取ることが大切です。

もし自分がキックミーをする傾向があるなら、行動に隠れた自分の気持ちを素直に相手に打ち明けることで良好な関係が築けます。

心理ゲームが起こる際の特徴

ギスギスした人間関係をまーるくする心理学―エリック・バーンのTA」(著者:安部 朋子 )によると、心理ゲームが起こる際の特徴には以下の6つがあると言います。

特徴を知ることで、心理ゲームに入っている状況をすぐに感じ取り、状況を改善する準備ができるので覚えておきましょう。

  • くり返し起こる出来事である
    (同じ内容で起こる場合と同じ人で複数回起こる場合があります)
  • A(アダルト)の気づきなしで始まる
  • 常にプレイヤーがラケット感情を体験して終わる
    (ラケット感情とは、偽りの感情のことで、本来の感情に蓋をして偽の感情を持つこと)
  • プレイヤー間に裏面交流が始まる
    (裏面交流とは、言葉に出さないけれど心の中で思っていること)
  • いつでも驚きや混乱の瞬間を含んでいる
    (いきなり怒ったり、大声を上げるなど相手にとって理解できない行動が起こる)

心理ゲームをしてしまう理由とは

心理ゲームをしてしまう理由が分かれば、自分がしそうなときに意図的に止めたり、相手のゲームを止めることが可能です。

ギスギスした人間関係をまーるくする心理学―エリック・バーンのTA」によると、心理ゲームをしてしまう理由は以下の8つであると言います。

  • 人生脚本の強化
    (人生脚本とは、幼少期に決められる自分らしさのこと)
  • ラケット感情を得る
  • 幼いころに決断した信条・思い込みを強化する
  • 人生の立場を再確認する
  • 相手とのシンビオシスの関係を構築あるいは強化する
    (シンビオシスとは、相手を思い通りにしたいとか面倒を見てもらいたいと思う健全でない人間関係のこと)
  • 準拠枠を守る
    (自分の信じている価値観を守ること)
  • ストロークを得る
    (ストロークとは、対話から生まれる精神的な刺激のこと)
  • ゲームの6つの利点を得るため

参考【ゲームの6つの利点】
エリック・バーンは私達がゲームをし続ける理由として、6つの利点をあげています。
「利点」といっても、ゲームは本来、人間関係にお勧めするものではありません。うまくいかないと知っていながら回数を重ねたり、内容的にエスカレートしたりするには、心理的に「利点」があると信じているからであろうという観点から、ここでもエリック・バーンの皮肉が効いています。利点は次の6つです。

①信条の強化(内面的心理的利益)
②準拠枠を守る(外面的心理的利益)
③見せ掛けの親密性(内面的社会的利益)
④話題の提供(外面的社会的利益)
⑤(否定的)ストロークの交換(生物的利益)
⑥人生の立場の確認(存在的利益)

ギスギスした人間関係をまーるくする心理学―エリック・バーンのTA(著者:安部 朋子 ) P141より引用

心理ゲームにのらない人になるには

心理ゲームにのらないために、どのようなことに心がければよいか解説します。

最低限の関わりに努める

相手に心理ゲームを仕掛けられないように、最低限の関わりに努めましょう。

心理ゲームに乗ってしまったことがあるなら、

  • ゲームに乗ってしまった過程
  • どのような会話をしたか
  • 最終的にどのような結末を迎えたか、どのような気持ちになったのか

などを振り返りましょう。

そして、次回相手がそのゲームを仕掛けてこないように、過去の事象からその場面を回避する、または最低限の関わりに努めます。

心理ゲームが始まってしまったら別の話題にすり替えるか、なるべく反応しないようにしましょう。

ほかの人の対応を参考にする見直す

相手が心理ゲームを仕掛けた時に、ほかの人はその人に対してどのように対応していたのでしょうか。

ゲームをする側は無意識に相手を選んでいると言います。

自分がいつも心理ゲームに乗ってしまうときは、他の人がどのような対応を行っているか観察し、それを真似てみるのもよいでしょう。

自分や相手の弱みを把握する

弱みを刺激されると、心理ゲームをしてしまったり、反対に相手からされることもあります。

例えば、幼いころに経験した出来事からある信念や価値観が生まれて、年を経てもそのまま変化しない場合があるでしょう。

ほかの人から見るとその信念に共感できない人もいます。譲れない価値観がくずれそうなときや、それを正当化したいときに無意識にゲームをしかけていることもあるでしょう。

自分の弱みや、どのようなときにゲームを仕掛けやすいかのパターンを知っておくことは大切です。

交流分析について勉強する

TAについて専門知識をつけると、無意識に心理ゲームをしてしまう心理状態や、言動がどのような深層心理から来るのかを理解できます。

俯瞰して物事を見られるようになるので、思わず感情的になってゲームに乗ることがなくなり正しい対処をとれます。

心理ゲームに関するおすすめ本

心理ゲームについて詳しく知りたい向けにおすすめ本をご紹介します。

ギスギスした人間関係をまーるくする心理学―エリック・バーンのTA

出典元:Amazon

この記事にも参考にさせていただいた書籍で、TAを用いた様々な心理手法が記載されている本。

特にワークシートを用いて考えや思いを書くことで、本当の感情を整理し、その後実例を見ながら心理学の手法を体系的に学べます。

くり返し読むことで新たな気づきがあるでしょう。

一度目を通してから生活で実践し、その後時間をおいて読むと心構えや価値観が変化していることに気づくかもしれません。

この本は以下の方におすすめします。

  • TAを学ぶことで幸福度が増す理由について知りたい人
  • ストロークや時間の構造化などのTAの概念を知って、モチベーションを上げたい
  • イライラや不安を感じている心の原因を突き止めて穏やかな気持ちで毎日を過ごしたい人(ラケット感情、ライフポジションなどの概念が学べます)

あなたが演じるゲームと脚本―交流分析で探る心のうら・おもて

出典元:Amazon

幼少期や思春期などに知らないに植え付けられた価値観は、やがてあなたの人生脚本となる場合があります。

無意識のうちに自分を脚本に当てはめようとするかもしれません。

ゲームをしたり、「~しなければならない」という観念にとらわれ自分を縛りつけたりすることにもなりかねません。

この本では、なぜ同じ失敗繰り返すのかをテーマに、ゲームと脚本が関係していることを解説しています。

自分の知らない間に刷り込まれていた信念や価値観に気づきたい方におすすめです。

この本は以下の方におすすめします。

  • 有名人も陥ったゲームや脚本の具体例を知りたい人
  • 自分自身で知らぬ間に陥っている思考に気づきたい方

まとめ

今回は、交流分析の考え方である心理ゲームについて、その種類や起こってしまう原因や回避する方法を解説しました。

心理ゲームとは、人との会話の中で繰り広げられる自分の頭の中で自動的に考えてしまう心理的なゲームのことです。

その種類や起こる原因を知ることで、自分の考え方の癖に気付き、心理ゲームから抜け出せます。

まずは周囲の人との会話の中で、無意識に心理ゲームを起こしていないか気付くことから始めてみてください。

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最終更新日: 2024/09/18 公開日: 2022/12/08