- リジェネラティブという言葉を聞くようになったが、どういう意味だろう?
- サステナブルとどう違うのか?
- 自社のビジネスにリジェネラティブを取り入れられないだろうか?
上記のような疑問を抱えていませんか?
今回は、リジェネラティブの基本的な定義や注目される理由についてわかりやすく解説します。
企業がリジェネラティブに取り組む際の注意点や、業界別の事例も挙げていますので、ぜひ参考にしてください。
リジェネラティブとは
はじめに、リジェネラティブの基本的な定義や「サステナブル」との違いについて解説します。
リジェネラティブへの取り組みが活発な分野とあわせて見てきましょう。
既存の仕組みを見直し、より前向きなものに変えていくこと
リジェネラティブ(regenerative)とは、「再生させる」という意味の英語に由来する言葉です。
環境分野においては「環境再生」と訳されていますが、近年はより広い意味で使われるケースが少なくありません。
ビジネスにおいては、下記に挙げるような意味で用いられることがあります。
- 事業のシステムや環境を改善すること
- 事業を活発化させたり成功確度を高めたりすること
- 人がより幸せな気分でいられるようにすること
リジェネラティブの言葉の定義は統一されていないものの、一般的には「生産・消費活動を見直すこと」を表しています。
既存のシステムを見直すことに加え、より良いものに変えていくというニュアンスが込められている言葉です。
サステナブルとの違い
地球環境の保全に向けた持続可能性を表す言葉として「サステナブル(sustainable)」が挙げられます。
環境への配慮を志向する点はリジェネラティブと共有しているものの、両者の大きな違いは目指している地点です。
サステナブルは「持続可能性」と訳されるように、基本的な仕組みは維持しつつ、環境負荷を減らしていくことを目指しています。
一方、リジェネラティブは問題の根本解決を目指し、現状をより良くしていくための取り組みを表す言葉です。
より未来志向に重きを置いているという点で、リジェネラティブはサステナブルのさらに先を行く概念といえるでしょう。
リジェネラティブへの取り組みが活発な分野
リジェネラティブの取り組みは幅広い業界・分野に広がりつつあります。
特に活発な取り組みが見られる分野の多くは、原材料や生産過程が自然や環境と密接に関わっている点が特徴です。
例えば、農業や漁業、水産業は、いち早くリジェネラティブに取り組んできた分野として知られています。
ほかにも観光業界やファッション業界、建築業界などにもリジェネラティブに積極的に取り組んでいる企業が少なくありません。
後述するように、リジェネラティブへの取り組みが事業モデルに大きな変化をもたらすことも十分にあり得ます。
リジェネラティブが注目される理由
リジェネラティブが注目されている背景には、複数の要因があります。
主な要因として挙げられるのは次の3点です。
社会全体で環境への意識が高まっている
サステナビリティやSDGsに代表されるように、昨今は社会全体で環境に対する意識が高まりつつあります。
環境に悪影響を及ぼす可能性の高い事業モデルを放置している企業には、厳しい目が向けられるケースが増えているのです。
一方で、環境に配慮するために事業を縮小したり、商品の質を低下させたりする選択には重大なリスクが伴います。
従来の仕組みを維持しながら、サステナビリティやSDGsの目標を達成するのは決して容易ではありません。
仕組み自体を見直すことで、より良い方向性を模索する動きがリジェネラティブにつながっているのです。
新たな人材の獲得につながる
リジェネラティブへの取り組みが、新たな人材の獲得につながることも大きな要因の1つです。
リジェネラティブの推進によって、自社の事業モデルを根本的に見直す必要に迫られることもめずらしくありません。
従来とは異なる事業方針を掲げることによって、現状社内にはないノウハウが必要になるケースもあるでしょう。
特に若年層を中心に、環境問題に高い関心を寄せている人材が多く見られます。
経営方針や事業方針にリジェネラティブを掲げることは、優秀な人材を獲得する上でも重要な要素となり得るのです。
ビジネスチャンスの創出に結びつく
リジェネラティブへの取り組みが、新たなビジネスチャンスの創出に結びつくこともあります。
一例として、北海道上川町ではスマートフォンアプリを活用して大雪山の生態系を観察する観光企画が打ち出されました。
観光客はゲーム感覚で生態系を観察し、収集した情報は研究機関へと提供されます。
観光客は旅行先で不便を強いられるのではなく、楽しみながら環境保全に協力できる仕組みになっていることが重要なポイントです。
消費を前提とした従来の観光業では、決して発案されることのなかった体験型プログラムといえます。
企業がリジェネラティブを経営方針に組み込むことによって、新たなビジネスチャンスが生まれる可能性は十分にあるでしょう。
企業がリジェネラティブに取り組む際の注意点
企業がリジェネラティブに取り組む際には、いくつか注意しておきたいポイントがあります。
特に下記の3点については、事前に十分な検討を重ねておく必要があるでしょう。
リジェネラティブの定義や概念を統一しておく
リジェネラティブには統一された定義が存在しないため、企業内での定義や概念を統一しておく必要があります。
人によっては「サステナブルと同じようなもの」といった、短絡的な解釈をしている可能性も否定できません。
自社のビジネスにおける生産・消費のあり方を問い直し、ゼロベースで再検討していく姿勢が求められるでしょう。
リジェネラティブに対する知識を深めるための研修会や勉強会を開催し、従業員の理解を促していくことが大切です。
短期間で収益化するのは現実的ではない
リジェネラティブをビジネスに取り入れたからといって、短期的に収益へとつながるわけではありません。
従来のビジネスモデルや供給・消費のあり方を根本的に見直すとすれば、むしろマイナスに作用する可能性もあります。
設備のリプレイスが必要になったり、原材料を変更したりする必要に迫られる場合もあるからです。
リジェネラティブの実現に向けた取り組みは、中長期的な視点に立って推進していくべきものといえるでしょう。
中長期の経営計画や事業戦略にリジェネラティブを組み込み、じっくりと推進していくことが大切です。
持続可能な仕組みにする
リジェネラティブの実現に向けた取り組みは、持続可能な仕組みになっている必要があります。
例えば、製品の原材料を自然由来のものに切り替えたことによって仕入れ原価が増加したとしましょう。
結果として利益が圧迫され続ければ、いずれは安価な原材料に戻さざるを得なくなる可能性が高いと考えられます。
一過性の戦略や施策ではなく、長年にわたって無理なく継続できるビジネスモデルを構築しなければなりません。
現実的な仕組みとして成立しているか、十分にシミュレーションを行った上で検証しておくことが重要です。
リジェネラティブの取り組み事例
リジェネラティブの取り組み事例を紹介します。
3つの異なる業界の事例を元に、自社のビジネスにリジェネラティブを取り入れるヒントを探ってみてはいかがでしょうか。
農業分野
農業分野においては、リジェネラティブ農業(環境再生型農業)の取り組みが積極的に推進されています。
土壌を健康な状態に保つことにより、多くのCO2を吸収しやすくすることがリジェネラティブ農業の主な狙いです。
具体例として、下記の取り組みが挙げられます。
- 不耕起栽培:土を耕さずに農作物を栽培することで、土壌侵食を軽減し有機物を多く含む土壌へと戻す
- 輪作:異なる作物を同じ土地で周期的に栽培することにより、土の栄養素や微生物生態系のバランスを維持する
- 有機肥料への回帰:合成窒素肥料の使用を取りやめ、有機肥料に切り替えることで自然本来の炭素循環を促す
- 被覆作物の活用:休閑期に地面を覆うように植物を植え、土壌有機物の増加を促進する
いずれも自然が持つ本来の力を活かした施策といえます。
新たな仕組みを取り入れるのではなく、もともと存在していたものを活かすという発想にもとづいている点が特徴です。
建築分野
建築分野においては、リジェネラティブデザインと呼ばれる設計方法が存在感を増しています。
リジェネラティブデザインとは、自然との共生を志向する考え方を取り入れた建築デザインのことです。
アメリカの建築デザイン会社HDRは、リジェネラティブデザインの基準として下記の6項目を挙げています。
- トリプル・ネットゼロ:エネルギー・水・廃棄物をいずれも正味ゼロにすることを目指す
- カーボンバランシング:建築・居住の過程で排出されるCO2よりも吸収されるCO2を多くする
- 人と健康のウェルネス:光・空気・食品・自然・コミュニティと人を結びつける設計を目指す
- 無害で透明性のある材料:リサイクル資材や再生可能な材料など環境に配慮した建材を使用する
- 再利用・回復可能:解体しやすい構造や再利用可能な設計にすることで、ライフサイクルを伸ばす
- 社会的公平性:居住者やコミュニティ全体が健康で幸福な暮らし方を実現できるデザインを目指す
建築物の利用者や居住者にとっての快適性を重視するだけでなく、環境やコミュニティへの配慮がなされている点が特徴です。
プロダクト・ライフサイクルを意識した製造・供給のあり方は、建築以外の業界においても重要なヒントとなるでしょう。
ファッション分野
ファッション業界では、リジェネラティブ農業で栽培された作物を原料として選定するといった取り組みが進められています。
従来から大量生産・大量廃棄が問題視されてきた業界であるだけに、環境負荷への取り組みが急務となっているからです。
具体的な取り組みとして、パタゴニアが制定した「リジェネラティブ・オーガニック認証プログラム」が挙げられます。
同プログラムの認証基準は下記のとおりです。
- 有機認証を取得すること
- 不耕起栽培または省耕起栽培であること
- 植物による土壌被覆が25%以上であること
- 輪作により3種類以上の作物または多年性植物を利用すること
- 土壌の再生を促す農業技術を3種類以上取り入れていること
農業認証として厳格な基準が定められている同プログラムの認証は、アパレル各社にとって重要なブランド価値となっています。
環境再生に取り組みながら、ブランディングの強化も実現するという発想は、他業界においてもヒントになり得るでしょう。
まとめ
リジェネラティブは従来の消費・生産のあり方を見直し、環境再生に向けて取り組むこと全般を指す概念です。
経営方針や事業計画にリジェネラティブを掲げることでビジネスの視座を上げ、より長い時間軸を意識することにつながるでしょう。
今回紹介した事例や注意点を参考に、ぜひ自社で取り組むべきリジェネラティブの施策について検討してみてください。
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