- ドミナント戦略とはどのような戦略なのか?
- ランチェスター戦略とどう違うのだろう?
- ドミナント戦略を採用するメリット・デメリットは?
上記のような疑問を抱えていませんか?
今回は、ドミナント戦略に関する基礎的な知識と、採用するメリット・デメリットについてわかりやすく解説します。
ドミナント戦略を実践する際のポイントもまとめていますので、ぜひ参考にしてください。
ドミナント戦略とは
はじめに、ドミナント戦略とはどのような戦略を指すのかを整理しておきましょう。
ドミナント戦略がよく活用されている業種や、ランチェスター戦略との違いを把握しておくことが大切です。
特定のエリアへ集中的に出店する戦略
ドミナント戦略とは、特定のエリアへ集中的に出店することで競争優位性を確保するための戦略のことを指します。
ドミナント(dominant)には「支配的な」という意味があるとおり、特定のエリアを自社店舗が支配するイメージです。
店舗を展開する際、広範囲に出店したほうがリスクを分散できるという考え方もあります。
一方で、あえて出店エリアを絞り込むことによって得られるメリットがあるのも事実です。
ドミナント戦略において多店舗展開に選ばれたエリアは「ドミナントエリア」と呼ばれます。
ドミナント戦略がよく活用されている業種
ドミナント戦略がよく活用されている業種として、次のものが挙げられます。
- コンビニエンスストア
- スーパーマーケット
- 飲食店チェーン
例えば、コンビニのセブンイレブンは出店当初、東京都江東区に絞って多店舗展開していきました。
江東区内での認知度を高めるとともに、広告宣伝や流通、店舗サポートの効率化を図ることが主な狙いだったとされています。
スーパーマーケットでは、関東地方に絞って出店している「ヤオコー」が有名な事例です。
出店エリアを限定することにより、配送の迅速化や物流コストの低減、商品鮮度の維持などを可能にしています。
ランチェスター戦略との違い
ランチェスター戦略は、強者・弱者の視点からマーケティングを分析する手法のです。
弱者が強者に打ち勝つための戦略であると同時に、強者が弱者に打ち負かされないようにするための戦略でもあります。
特定分野で自社独自の強みを見出し、競合他社との差別化ポイントを探るのがランチェスター戦略と捉えてください。
一方、ドミナント戦略では出店する「エリア」に着目して戦略が策定されます。
差別化するためのポイントが、両者の大きな違いといえるでしょう。
ドミナント戦略がランチェスター戦略にもとづいているケースも少なくありません。
ドミナント戦略への理解を深めるには、ランチェスター戦略についても理解しておくことが大切です。
ランチェスター戦略の活用方法や企業の事例については、以下の記事もぜひご参照ください。
ドミナント戦略を採用するメリット
ドミナント戦略を採用することにより、具体的にどのようなメリットを得られるのでしょうか。
主なメリットは下記の5点です。
- 特定のエリア内で認知度向上につながる
- 物流・広告・店舗開発コストを削減できる
- 経営資源を有効活用できる
- エリアマーケティングを最適化しやすい
- 競合他社が参入しにくくなる
それぞれ詳しく見ていきましょう。
特定のエリア内で認知度向上につながる
特定のエリアへ集中的に出店することにより、エリア内での認知度が向上しやすくなります。
頻繁に目にする店舗ほど記憶に残りやすいため、エリア内の住民の認知が高まっていくからです。
見慣れた店舗ロゴや聞き慣れた店舗名は、実際には店舗を利用したことがない人にも安心感を与えます。
知人や近所の住人が店舗を利用したといった話を聞くごとに「自分も利用してみようか」という気持ちに傾いていくでしょう。
結果として、エリア内での認知度を効率的に高められるのです。
物流・広告・店舗開発コストを削減できる
ドミナント戦略を採用することにより、さまざまなコストを削減できる可能性があります。
具体的には、下記のコスト削減効果が期待できるでしょう。
- 物流コスト:配送ルートの効率化、在庫を保管する倉庫の集約化
- 広告コスト:折込チラシやローカルCMにかかるコストの低減化
- 店舗開発コスト:出店予定地の立地調査や市場調査の簡易化
多くの地域に分散して出店した場合、上記のようなメリットを得るのは難しいのが実情です。
出店エリアを絞り込むことにより、限られた地域でのコンパクトな戦略立案が可能になります。
経営資源を有効活用できる
ドミナント戦略は、経営資源の有効活用にも寄与します。
例えば、ある店舗で発生したスタッフの欠員を補充する際にも、近隣の店舗であれば異動も決して難しくないでしょう。
余剰在庫を近隣の他店舗へ移動させたり、セールやキャンペーンをエリア内で一斉に実施したりすることも可能です。
限られた経営資源を最大限有効に活用できることは、ドミナント戦略を採用する大きなメリットの1つといえます。
エリアマーケティングを最適化しやすい
ドミナント戦略は、エリアマーケティングの最適化にも効果を発揮します。
特定のエリアに絞って店舗展開していくことによって、地域特性や消費者ニーズを把握しやすくなるからです。
ある店舗で効果的だった戦略は別の近隣店舗でも有効なケースが多く、マーケティング戦略の再現性が高いという特徴もあります。
地域特有のニーズにきめ細かく対応できることは、強力な差別化要因にもなり得るでしょう。
競合他社が参入しにくくなる
ドミナント戦略が功を奏することによって、競合他社が同じエリアに参入しにくくなるというメリットもあります。
すでに地域のニーズが満たされており、地域での信頼性が確立されている状態になれば、競合他社は容易に参入できません。
競合他社が参入しなければ価格競争も起こり得ないため、自社にとっての適正価格を維持しやすくなるでしょう。
競合他社を寄せ付けない強固な地盤を築けることは、ドミナント戦略を採用する大きなメリットの1つです。
ドミナント戦略を採用するデメリット
ドミナント戦略にはデメリットとなり得る側面もあります。
具体的には、下記の4点に注意が必要です。
- 地域のニーズが変化するリスクがある
- カニバリゼーションのおそれがある
- 出店エリアを拡充させにくくなる
- 災害によって事業継続が困難になる可能性がある
それぞれ具体的に見ていきましょう。
地域のニーズが変化するリスクがある
特定の地域へ集中的に出店することで、地域のニーズが変化した際に影響を受けやすくなります。
地域の需要が急激に低下する要因は決して少なくありません。
- 大手企業や教育機関の移転による地域人口の減少
- 他社の大型店舗進出による顧客の流出
- 特定の店舗で悪評が立ったことによる顧客離れ
さまざまな外的・内的要因によってニーズやブランドイメージが変化すれば、地域の全店舗が影響を受ける可能性があります。
複数の地域に出店する場合と比べると、リスクの分散が困難になりかねない点に注意が必要です。
カニバリゼーションのおそれがある
同じ地域に複数の店舗を展開することにより、カニバリゼーション(共食い)が発生するおそれがあります。
店舗間で売上を競わせるような施策を講じてしまうと、同系列内で顧客を奪い合うような不毛な争いに陥りかねません。
特にフランチャイズ店舗の場合、同系列の店舗同士が敵対する関係になることも想定されます。
出店エリアを慎重に計画するとともに、同系列内で顧客の移動が発生しても不利にならない評価の仕組みを構築することが大切です。
出店エリアを拡充させにくくなる
ドミナント戦略は「狭く深く」根を下ろしていく戦略のため、他のエリアに出店する際のハードルが高くなりやすい傾向があります。
新たなエリアでの出店ノウハウが蓄積されていないことに加え、1から市場調査を実施しなければならないからです。
結果として事業が頭打ちになり、将来的に成長が鈍化するおそれがあります。
培ってきたノウハウを他のエリアでは活かせないケースも少なくありません。
中長期的な視点で事業を捉えた場合、ドミナント戦略は「頭打ち」のリスクを抱えている点を見落とすべきではないでしょう。
災害によって事業継続が困難になる可能性がある
出店エリアが集中していることは、地震や台風、洪水といった自然災害の被害を受けやすいことを示しています。
仮に出店エリアで大地震が起きた場合、全店舗が営業を再開できない状況に陥ることもあり得ます。
状況によっては事業の継続自体が困難になってしまう可能性も否定できません。
さまざまな地域に分散して出店する場合と比べると、災害による事業への影響が大きくなりやすい点を想定しておく必要があります。
災害は予測できないため、災害が起きた場合のことも想定して準備を進めておくことが大切です。
ドミナント戦略を実践する際のポイント
ドミナント戦略を採用する際に、必ず押さえておきたいポイントを紹介します。
出店エリアを絞るメリットを引き出すためにも、次の3点を実践しましょう。
出店予定エリアの市場調査を十分に実施しておく
ドミナント戦略は出店エリア次第で明暗が分かれると言っても過言ではありません。
出店エリアを見誤ってしまうと、全店舗の売上が伸び悩むことにもなりかねないでしょう。
具体的には、下記の5点を綿密に調査しておくことが大切です。
- エリアの人口推移
- 人口・人流が多い地域
- 世帯構成や年齢層
- 競合他社の出店状況
- 地域のニーズ
店舗の立地や出店数に関しても、カニバリゼーションのリスクを抑えるために計画を立てておく必要があります。
将来の人口増減予測も含めて、十分な市場調査を実施することが大切です。
市場調査の進め方については、以下の記事もぜひ参考にしてください。
競合他社の動向や自社の差別化要因を深く分析する
出店予定エリアにすでに店舗を構えている競合他社の動向は、中立的な立場から慎重に調査しましょう。
長年にわたって地域で親しまれてきた店舗であれば、消費者から選ばれる何らかの理由があるはずです。
競合他社の強み・弱みを把握した上で、自社の差別化要因を深く分析しておくことも大切なポイントといえます。
差別化要因は地域のニーズに合致しているのか、データを元に客観的な判断を下していくことが重要です。
業界や市場における収益構造を把握する際に役立つ「5フォース分析」などを活用し、差別化要因を明確にしておきましょう。
リスク管理体制を整えておく
ドミナント戦略に特有のリスクへの対策を講じておくことも、出店にあたって欠かせないポイントの1つです。
具体的には、エリアでの需要の推移や競合他社の出店状況について、最新情報を入手する仕組みを確立しておく必要があります。
人材確保についてもリスク管理は必須です。
人材採用だけでなく、採用後の教育体制についても研修プログラムなどを整備しておくことが求められます。
クレームを防ぐための対策のほか、クレーム発生時の対応方法についても事前に決めておきましょう。
想定される主なリスクの例として、下記のものが挙げられます。
- 自然災害(地震・台風・洪水など)
- 人手不足
- 顧客からの悪評(レビューサイト・口コミなど)
- 競合他社の出店 など
特定のエリアへ集中的に出店することで生じるリスクを想定し、対策を講じておくことが大切です。
まとめ
ドミナント戦略は、大資本でなくても事業を成立させられる可能性のある戦略といえます。
自社の強みと地域のニーズが合致すれば、長年にわたり地域で愛される店舗づくりを実現できるでしょう。
一方で、ドミナント戦略には特有のリスクやデメリットがあることも十分に理解しておかなくてはなりません。
今回紹介したポイントを参考に、ドミナント戦略のメリット面を引き出す出店計画を立ててください。
年商5億円を超えさらなるスケールアップを目指す経営者必見!
あなたのビジネスをスケールアップさせる集客と組織作り、
さらに、成功事例やここだけのお得な内容をお届け致します。
#ドミナント戦略