孫正義が学んだ孫子の兵法|現代のビジネス戦略に活用するコツ

最終更新日: 2024/09/06 公開日: 2024/06/13

「日本長者番付で何度も1位取った大富豪」
「ソフトバンクグループの代表」
「日本で初めてiPhoneの独占販売権を獲得した」

このような輝かしい実績を打ち立てたのが孫正義です。

本当に一部分だけですが、これだけでも孫正義の実力を垣間見ることができますが、全てが順調に進んだわけではありません。

ソフトバンクが創業し、事業が軌道に乗り始めた1983年ごろ、孫正義は慢性肝炎と診断され、入退院を繰り返していました。

そんな状況の中、「孫子の兵法」を含んだ3000冊から4000冊もの本を読み、現在の成功の鍵となった「孫の二乗の兵法」を考案しました。

この記事では、日本ビジネス界を牽引する孫正義が学んだ「孫子の兵法」を主軸に、現代の経営者が習得すべきマーケティングの概念についてご紹介します。

孫正義が学んだ孫子の兵法とは

孫正義が考案した「孫の二乗の兵法」は、今から約2500年前に作成された中国の兵法書「孫子の兵法」を参考に考案されました。

全部で13章あり、それぞれ戦に勝つために必要なリーダーとしての立ち振る舞いや考え方、戦で勝つためにはどのような戦略が必要かなどの内容が記載されています。

戦に勝つための兵法書ではありますが、現代ビジネスを勝ち抜くためのビジネス書として多くの経営者が愛読し、さまざまな場面でその知識が生かされています。

世界のトップ経営者たちも参考に

孫子の兵法は、Microsoftの共同創業者である「ビル・ゲイツ」Twitter社の買収で話題にもなった「イーロン・マスク」など、世界的な経営者にも参考にしています。

しかし、なぜ2500年も昔の兵法書が現代でも多くの経営者に参考にされているのかと疑問に持つ人もいるのではないでしょうか。

その理由は、孫子の兵法が2500年もの長きにわたり、多くの成功者に評価された戦いの原則が記されているからです。

戦いの原則とは
・そもそも戦いに勝つために必要な戦略とは何か
・どのようなリーダーに人がついてくるのか
など、戦いを始める前から知る必要があります。

つまり、孫子の兵法は、時代や場所に関係なく「戦いに勝つための原則」を学ぶことができ、2500年もの間、多くの成功者を生み出した普遍的価値のあるビジネスの指南書であると言えます。

孫正義が構築した成功の仕組み化

孫正義が現在の成功を収めた理由の一つは、徹底した成功の仕組み化です。

その仕組み化の一つが「人材」です。孫正義は、優秀な人材の確保だけで終わらず、その人材が活躍できるように環境を整えることで、多くの事業を成功させました。

「環境を整える」と言っても、単に働きやすくなるように配慮したというわけではありません。優秀な人材を発掘し、重要な役割を任せ、挑戦ができるように環境を整えたのです。

唯一無二の「孫の二乗の兵法」

「孫子の兵法」を元に、孫正義の経営哲学などを掛け合わせ、編み出したのが、25文字の文字盤「孫の二乗の兵法」です。

  • 道天地将法(どうてんちしょうほう)
  • 頂情略七闘(ちょうじょうりゃくしちとう)
  • 一流攻守群(いちりゅうこうしゅぐん)
  • 智信仁勇厳(ちしんじんゆうげん)
  • 風林火山海(ふうりんかざんかい)

先にご紹介した通り、孫正義は徹底した仕組み作りや優れたリーダー像など、現在の成功を収めるに当たって「孫子の兵法」に大きな影響を受けています。

とくに「孫子」に関しては、「孫武は、わが祖先と関係があるのではないか」と感じ、親しみを持ちながら読み進んで行った。次第に、「祖先に間違いない」と思い込むようになる。そしてついには『孫子』の「孫」と自らの「孫」を掛けた「孫の二乗の法則」を編み出すのである。

「孫の二乗の法則 孫正義の成功哲学」著者:板垣 英憲 出版:PHP研究所

「孫の二乗の兵法」は、孫正義がソフトバンクグループを現在の成功に導いた鍵となる重要な考え方です。

実際、孫正義が自身の後継者を育成するために開講した「ソフトバンクアカデミア」の開講式では、孫正義自らが「孫の二乗の兵法」についての特別講義を行ったほどです。

現代ビジネスを勝ち抜く鍵となる考え方「孫の二乗の兵法」を1段ずつ簡単にご紹介しましょう。

道天地将法(どうてんちしょうほう)

1段目「道天地将法」は、ビジネスを行う上で重要な土台となる「理念」や「基礎」を表している段です。

  • 道:ブレない「志」や「理念」を持つ。
  • 天:アイデアを出すタイミングを計り、時代の流れを見極める。
  • 地:出店場所や住む場所を見極め、その地の利を得る。
  • 将:理念を共有できる優秀な仲間を集める。
  • 法:継続して成功する仕組みづくり。

孫正義は「将」人材の発掘、抜てき、育成や活躍するための環境作りなど、人材を重要視しています。

理念に共感してくれる人材を採用したあとは、その人材が実際に活躍できる環境作りも忘れずに行いましょう。

頂情略七闘(ちょうじょうりゃくしちとう)

2段目「頂情略七闘」は、ビジネスを始めるために重要なビジョンとそのビジョンをかなえるために必要な戦い方についてまとめられています。

  • 頂:ビジョンを持ち、より鮮明に「どうなりたいのか」を具体的な期限と共に思い描き、目標として定める。
  • 情:徹底的な情報収集。
  • 略:ビジョンの方向性を決める「戦略」を徹底的に考える。
  • 七:七割の勝算を見極める。
  • 闘:徹底的に闘う。

全ての項目が重要ですが、意外と実践に落とし込むのが難しいとされているのが、徹底した情報収集「情」と「闘」です。

孫正義は、事業家としてどんなビジネスを生涯の仕事にすべきか探っていたころ、一つの事業・ビジネスモデルについて一メートル以上も資料を集め、調べ抜くということを、四十もの事業・ビジネスモデルに対して行った。

「孫の二乗の法則 孫正義の成功哲学」著者:板垣 英憲 出版:PHP研究所

孫正義は、キリがないと思われがちな情報収集でも徹底的に調べ抜いたことで、現在の成功をつかみました。

一流攻守群(いちりゅうこうしゅぐん)

3段目「一流攻守群」は、「戦略」を意味します。

1段目と2段目は、実際にビジネスで戦うための準備に必要な要素でしたが、3段目は、実際に戦うために重要な戦略が記載されています。

  • 一:1番に徹底的にこだわる。2番や3番になるつもりなら最初から手を出さない。
  • 流:時流に乗れ。時流に逆らうな。洞察力と先見を見る力を養い、時代の流れを見極め、乗ることが重要。
  • 攻:リーダーになるなら、あらゆる攻撃力を鍛える。
  • 守:あらゆるリスクに備えて、資金を確保する。
  • 群:一つのビジネスに頼り切りにしない。

一つのブランドやビジネスに頼りきりになると、そのビジネスが立ち行かなくなるだけで、経営危機を迎えるのは簡単に想像できます。

現在の事業が失敗した場合も考え、資金の確保や他の資金源になる事業を持つことで、余裕を持って経営や新規事業に取り組めるのではないでしょうか。

智信仁勇厳(ちしんじんゆうげん)

4段目「智信仁勇厳」は、孫子の兵法「第一始計編」の言葉から「リーダーとして持つべき重要な素養」を記載しています。

  • 智:単なる知識だけでなく「プレゼン」「交渉力」「財政面の知識や分析力」など、さまざまな知的能力を常に高いレベルを目指して磨く。
  • 信:人から信頼されるに値する人物であれ。
  • 仁:慈しみの心「仁愛の心」を持ち、私利私欲ではなく人々の幸福のために働く。
  • 勇:進み続け戦う勇気だけでなく、退却する勇気も併せ持つ。
  • 厳:どんなに部下がかわいくても、時として鬼になることも必要。

身内や側近に対しても、厳しい処分を迫られる場合がある。そのとき、甘い判断、甘い処分でやりすごしていると、綱紀が緩み、肝心なときに、リーダーの命令を誰も聞かなくなる。

「孫の二乗の法則 孫正義の成功哲学」著者:板垣 英憲 出版:PHP研究所

リーダーが曖昧な態度で決断を先延ばしにしたり、一貫性のない判断を下すことは、結果的に組織全体にとって不利益な結果を招きかねません。

常日頃から、「智信仁勇厳」を意識した行動を取り、いざという時には厳しい決断を下すこともリーダーには必要です。

風林火山海(ふうりんかざんかい)

最後の5段目「風林火山海」は、孫子の兵法の中でも非常に有名な言葉である「風林火山」と孫正義のオリジナル「海」を合わせた言葉です。

  • 風:動くときは風のように早く動くことが重要。ビジネスでは意思決定や実践は素早く行うこと。
  • 林:重要な交渉は世間や周囲に知られないように極秘で静かに進める。
  • 火:攻める時は火が燃え広がるように激しく一気に攻める。
  • 山:ピンチに陥っても山のようにブレない。
  • 海:戦いに勝利したら、広く深い、静かな海のように相手を包み込む。

「ピンチに陥っても山のようにブレない」というのは、決して揺るがない「理念」や「志」を意味します。

また、ピンチに陥った時こそ、慌てふためくのではなく、山のようにどっしりと構え、冷静に対処することの重要性も示唆した言葉でもあります。

人を活かす孫正義の兵法

ソフトバンクでは「孫の二乗の兵法」を実践する機会が、新入社員にも与えれています。

例えば、2023年12月時点の採用において「ソフトバンクイノベンチャー(新規事業提案制度)」という、新入社員から参加できる制度が掲げられていました。

孫正義が、いかに「人を活かす」ことに重点を置いているのかが、ご紹介した制度からも分かるのではないでしょうか。

ここからは、人を活かすことを重要視している孫正義の考え方の中でも、特に重要なものをピックアップしてご紹介します。

勝率の見方|7割の勝率で突入せよ

新しい企画や事業を行う際に重要なのが、徹底した事前の情報収集や準備です。

これを徹底し、事前に7割の勝率を確定できる状態で参入することです。

「時間をかけて、確実な勝利を手にすることができる状態で参入する方がいい」と考える人もいるかもしれません。

しかし、勝率を上げるために時間をかければかけるほど、競合他社が同じアイデアを思いつき、先に成功してしまう可能性もあります。

また、7割の勝率で参入するということは、3割以上は失敗のリスクはないということになります。3割の失敗であれば、すぐに退却することでそこまで大きな打撃にはなりません。

これを孫正義は、「とかげの尻尾も三割ぐらいなら切っても生えてくる。半分切ったら、はらわたまで出てきて死んでしまう」というユニークな表現でわかりやすく説明している。

「孫の二乗の法則 孫正義の成功哲学」著者:板垣 英憲 出版:PHP研究所

リスクの背負い方

孫正義は、リスクに対して「リスクはあるものだ」と放置したり、何も考えずに背負ったりはしません。

重要なのは「リスク」を、「最大でどの程度の被害が出るのか」とはっきりさせた上で、そのリスクを背負うことです。

最大被害が予想ができないものは、リスクではなく「危険」と判断し、そもそも手を出しません。

起業する際や新規事業に参入する際には、抱えているものが「リスク」なのか「危険」なのかを判断して、リスクのみを背負いましょう。

一点突破で圧倒的ナンバーワンになれ

徹底的な情報収集や理念に共感してくれる優秀な人材の確保など、ビジネスを始める際にはさまざまな準備を行いナンバーワンを目指します。

目指すべき分野を間違わずにナンバーワンになれば、自然とお客様の声を聞く余裕や新規開発の余裕も生まれます

つまり、一度でも1番を取ることで、「次も1番になりたい」と勝つための気迫が生まれ、勝ち癖もつくようになります。

美意識ある経営をせよ

経営者のマインドとして必要な考えこそ、孫の二乗の兵法の4段目「仁」です。経営者として、利益を求めることは当然です。

しかし、自分の利益だけを求め、従業員や他人の幸せを無視した経営では、周囲からの信頼がなくなり、いずれ経営も立ち行かなくなります。

ビジネスを行う以上、自分だけでなく身近な人や他人の幸せを考えた経営を行うという信念を持った経営をすることが重要です。

実際に成功している企業は、誰かの問題を解決することで、大きな利益を得ています。

他人の幸せを考えた経営をすることが、ビジネスを成功させるためにいかに重要なことなのか、分かるのではないでしょうか。

ビジネスに正解はない

「孫の二乗の兵法」には、真のリーダーや経営者になるために必要な要素が詰まっています。しかし、ビジネスに完璧な正解はありません。

孫子の兵法や孫の二乗の兵法を一度読めば、成功をつかめるという保証もありません。

ビジネスに正解がないからこそ、多くの経営者は常にさまざまなことを学び、挑戦をしています。

常に最適解を求め続けよ

成功を手にする経営者は、常に学び考え続けています。

ある程度の場面で納得して、成長を止めてしまえば、あとは衰退のみで、それ以上の成功を収めることも、成功した状態を継続することもできないからです。

そして孫正義は最後に、「常に考え続けよと。少なくとも僕は常に考え続けている。そういう執念、信念、これがないとリーダーにはなれないということであります。志し高く。頑張りましょう。ありがとうございました」と語り、約二時間にわたる講義を終了した。

「孫の二乗の法則 孫正義の成功哲学」著者:板垣 英憲 出版:PHP研究所

「考え、その時その時の最適解を求め続ける」

だからこそ、孫正義や大企業の経営者は、現代ビジネスのトップを走り続け、世界に大きな影響を与えていると言えるのではないでしょうか。

まとめ

孫正義が孫子の兵法を元に考案した「孫の二乗の兵法」を主軸に、現代の経営者が習得すべきマーケティングの概念についてご紹介しました。

孫子の兵法や「孫の二乗の兵法」など、現代ビジネスで成功を納めた人々の知識や概念を学び、考え続け、挑戦し続け、成功への一歩を踏み出しましょう。

*「孫の二乗の兵法」は、時期の詳細は不明ですが、「孫の二乗の法則」と呼ばれている時期と「孫の二乗の兵法」と呼ばれている時期があります。本記事では「孫の二乗の兵法」と記載しています。

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最終更新日: 2024/09/06 公開日: 2024/06/13