- 自然言語処理と機械学習には何か関わりがあるのだろうか?
- 機械学習とAI・ディープラーニングはどう違う?
- そもそも機械学習とはどういうものなのか?
AIやディープラーニングについて情報を収集する中で、上記のような疑問を抱えたことはありませんか?
自然言語処理と機械学習については理解できたものの、互いにどう関わり合っているかは知らないという方もいるでしょう。
今回は、自然言語処理と機械学習の違いや両者の関係について、わかりやすく解説します。
ぜひ参考にしてください。
NLP(自然言語処理)とは
NLP(Natural Language Processing)は、人が使う言葉を機械で処理させるための技術です。
私たちが使っている言葉(自然言語)は人間にとって理解しやすいものの、機械が処理するデータとしては適していません。
コンピューターは「0」と「1」の2進数でデータを扱っており、自然言語のような曖昧な情報は直接処理できないからです。
近年、スマートスピーカーや生成AIのように、発話した言葉や文字で機械と対話できる技術が次々と実用化されています。
機械と人間の対話が実現できているのは、NLPによって私たちの言葉を機械が理解できる形式に変換されているからです。
NLPの基本的な仕組み
NLPでは主に4つの段階を経て、人間が使う言葉の意味を解釈しています。
- 形態素解析:文を単語に分ける
- 構文解析:単語と単語の組み合わせから想定される文の構造を列挙する
- 意味解析:文として最も適切な意味になるよう構文を解析する
- 文脈解析:複数の文にまたがる文章全体の意味を捉える
一例として、「警察官は大急ぎで逃げる犯人を追った」という文を考えてみましょう。
警察官は大急ぎで/逃げる犯人を追った →急いでいたのは警察官
同じ文であるにも関わらず、2通りに解釈できることが分かります。
私たちは日常生活の中で、曖昧な自然言語を場面や前後の脈絡を元に推測しながら理解しているのです。
コンピューターをはじめとする機械には人間のような五感が備わっていないため、感覚を頼りに推測することができません。
機械が文の意味を正確に捉えるには、単語と単語の関係や文と文のつながりを論理的に解析しなければならないのです。
NLPが必要とされる理由
NLPが必要とされる理由を、スマートスピーカーを例に考えてみましょう。
SiriやAmazon Echo、LINE CLOVAといったスマートスピーカーは、人が直接話しかけるだけで操作できます。
電化製品を声で操作したり、音楽の再生・停止やニュースの読み上げなどを声で指示したりすることも可能です。
スマートスピーカーは、人が話す言葉そのものを理解しているわけではありません。
NLPの技術で音声を単語に分け、単語と単語のつながりから意味を解析し、要求された動作を実行しています。
言葉によって機械を操作するには、人の言葉を機械が理解できる形式に変換するNLPの技術が欠かせないのです。
ML(機械学習)とは
次に、機械学習がどのようなものかを見ていきましょう。
一般的なプログラムやAI・ディープラーニングと機械学習がどう違うのか、ポイントを押さえておくことが大切です。
機械学習の定義
機械学習とは、機械がデータを分析し、データの背景にあるルールやパターンを学習させる手法のことです。
たとえば、写真に写っている動物が「犬か猫か」を判断するケースを考えてみましょう。
人間が写真を見た場合、犬と猫を区別するのは難しいことではありません。
機械が画像を判定する場合、何を根拠に「これは犬」「これは猫」と判断するのでしょうか。
- 犬も猫も四足歩行で尻尾がある
- どちらも体毛に覆われている
- 犬・猫ともに、多くの種類が存在する
- 子犬もいれば、小型犬や子猫もいる
脚の数、体毛の有無、体つきの特徴や大きさといった条件だけでは、全ての犬と猫を正確に区別することはできません。
世界中に存在する全ての犬と猫の情報を集めるのは現実的ではないため、「パターンを元に推測する」必要があります。
犬と猫の画像データを大量に学習させることで、犬・猫の画像にそれぞれ共通するパターンを機械が記録していくのです。
結果として、初見の画像であっても写っているのが犬か猫かを高い精度で判定できるようになります。
「学習データを元に推測する」というプロセスを可能にしている点が、機械学習の大きな特徴です。
一般的なプログラムと機械学習の違い
機械学習の機能が備わっていない一般的なプログラムは「学習」ができません。
プログラムされた通りにしか動作しないため、あらかじめ組み込まれていないデータは認識できないのです。
画像判定プログラムであれば、事前に覚えさせた画像と完全に一致していない限り認識してくれません。
プログラムに組み込まれた犬の画像と少しでも特徴やアングルが異なれば、判定不能な異常値として処理してしまうでしょう。
事前にインプットしたデータから学習し、パターンを元に「推測」できる点が、機械学習と一般的なプログラムの大きな違いです。
AI・ディープラーティングとの関わり
機械学習とAI・ディープラーニングの関わりは、次のように表すことができます。
- 機械学習とディープラーニングはどちらもAIに実装できる機能
- 機械学習はAIにデータを学習させる手段の1つ
- ディープラーニングは機械学習の手法の1つ
上記をまとめると、「AI>機械学習>ディープラーニング」の順にカテゴリが細分化されていくことになります。
とくに機械学習とディープラーニングを混同しているケースが多く見られるため注意が必要です。
ディープラーニング以外の機械学習の手法は、ディープラーニングよりも前から研究や利活用が進められてきました。
・ディープラーニング:人間が自然に行っているタスクをコンピュータに学習させる手法
・決定木分析:ツリー構造を用いてデータを分析する手法
・回帰分析:結果と要因の関係を調べて明らかにしていく手法
・サポートベクターマシン:限られたデータを手がかりとした分類を可能にする手法
・ランダムフォレスト:複数の決定木を組み合わせることで予測を可能にする手法
「機械学習はディープラーニングだけではない」ことを念頭に置きつつ、機械学習の技術と接していく必要があるでしょう。
NLPと機械学習の関係
NLPと機械学習には密接な関係があります。
具体的な関わりについて見ていきましょう。
NLPは「人の言葉を機械が分析するための手段」
NLPは、機械に人の言葉を理解させる上で不可欠な手段といえます。
コンピューターサイエンスの領域では、NLPが機械学習の一分野と見なされることもあるほどです。
最初期のNLPは、単語データを事前に与えられた辞書と照合することで意味を解釈していました。
機械学習の技術を活用することで新たな単語や文法の学習が可能になり、NLPの応用範囲が大きく拡張されたのです。
NLPは機械学習の土台を支えると同時に、機械学習がNLPの発展を支えてきたともいえます。
機械学習は「分析データを元に学習すること」
機械学習は、分析データによって機械を学習させるための技術です。
NLPは機械学習が言葉を扱うための重要な要素の1つであり、NLPなくして機械学習は成立しません。
一方で、機械学習はNLPの進化にも寄与しています。
機械学習によって得られた学習データがNLPに還元されることにより、NLPの精度を高められるからです。
NLPの精度が高まるほど、機械学習の効率も改善されていくでしょう。
NLPと機械学習は表裏一体の関係にあるのです。
NLPは機械学習アルゴリズムによってトレーニングされる
NLPの精度を高めるために用いられるのが「機械学習アルゴリズム」と呼ばれる仕組みです。
私たちの言葉を機械にとって理解しやすい形式に変換するには、自然言語に特有の曖昧さを回避する必要があります。
とくに単語から意味を推測する「意味解析」においては、曖昧さをできる限り排除しなければなりません。
次に挙げる2つの手法は、自然言語処理でよく使われている機械学習アルゴリズムの代表例です。
・bag of wordsモデル
・TF-IDF(Term Frequency - Inverse Document Frequency)
bag of wordsモデルは、文書内の単語の出現回数を数えるアルゴリズムです。
異なる文書間の記述内容を比較したり、類似性を分析したりする際に用いられます。
TF-IDFは、文書内の単語の出現頻度(TF)を元に、頻出単語ほど重要度が低いと判断する(IDF)手法です。
たとえば、英語の文書であればtheやthisといった単語は大半の文書で頻繁に使われています。
反対に、特定の文書にしか出現しない独自性の高い単語ほど重要と考えてよいでしょう。
bag of wordsやTF-IDFのような機械学習アルゴリズムを活用することで、NLPはトレーニングされているのです。
機械学習による解決が期待されているNLPの課題
NLPは近年急激な発展を果たした技術ですが、あらゆる課題が完全に解決されたわけではありません。
機械学習によって、将来的な解決が期待されている代表的な課題は次の通りです。
曖昧さ
自然言語には、語彙・構文・代名詞が指し示す対象など、さまざまな曖昧さが含まれています。
人間にとっては容易に推測できる文章でも、機械にとっては曖昧で難解なものとなり得るのです。
言葉が内包するあらゆる曖昧さを学習データとして準備できない問題は、あらゆる犬や猫の画像を収集できない問題と似ています。
曖昧さが生じやすいパターンや、適した意味を導き出すプロセスを学習していくことによって解決を図る必要があるでしょう。
機械学習は、NLPを発展させていく上で避けて通れない「曖昧さ」の問題を解決する技術として期待されているのです。
センチメント分析
センチメント分析とは、言葉に込められた感情を分析する技術のことです。
人間が使う言葉には、さまざまな感情が込められています。
道に迷った際に「近道をしたらしい」と自嘲や皮肉を込めて言うことがあるように、言葉と感情は必ずしも一致していません。
言葉の背景にある感情を推測するには、機械学習を駆使して言葉と感情の組み合わせパターンを蓄積していく必要があります。
NLP単体では解決できなかったセンチメント分析の課題を、機械学習が解決していくものと期待されているのです。
バイアス
NLPの学習データを用意するのは人間なので、どういったデータを与えるべきかを検討する際にはバイアスがかかりがちです。
明らかな偏見や差別的な言葉を排除することはできても、当人が認識していないバイアスは排除し切れない恐れがあります。
一例として、次の文章に書かれている場面をイメージしてみましょう。
高熱にうなされているわが子を、彼女は心配しているに違いない。
「彼女」が外科医本人を指しているのか、パートナーを指しているのか、上記の文面だけでは判断できません。
上記の例文を学習データを与えた人物が「彼女とはパートナーのことだろう」と思い込んでいたとしたらどうなるでしょうか。
外科医はたいてい男性であるという先入観が、偏った学習データを与える結果を招いてしまうのです。
私たちの思考には、無意識のうちにバイアスがかかっていることも否定できません。
機械学習は、NLPの学習データに潜むバイアスを修正し、より中立な解釈へと導く役割も担っているのです。
まとめ
NLPと機械学習は、互いの技術を支え合う表裏一体の関係にあります。
NLPを理解するには機械学習への理解も併せて深めていく必要があるでしょう。
いよいよAI時代が到来し、AIが私たちにとってますます身近な技術になりつつあります。
機械が人間の言葉を理解するとはどういうことなのか、改めて追究してみると思わぬ発見があるかもしれません。
機械が言葉を理解するプロセスを学ぶことは、私たちが言葉をどう捉えているのか、立ち止まって考えるきっかけにもなるはずです。
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