ラテラルシンキングとは?固定観念に縛られない思考の3ステップ

最終更新日: 2024/03/12 公開日: 2024/03/12

ラテラルシンキングは、ビジネスで新しいアイデアを出し変革を促す思考法として注目されています。

ラテラルシンキングができる人はまだ少なく、ロジカルシンキングのように多くの人に知られているものではありません。

「ラテラルシンキングの思考法について知りたい」
「ラテラルシンキングがビジネスに必要な理由がわからない」
「ラテラルシンキングで思考する場合の注意点を教えてほしい」

このように悩んでいる人のために、この記事では以下の内容を解説します。

  • ラテラルシンキングとロジカルシンキング・クリティカルシンキングの違い
  • ラテラルシンキングが必要とされている背景
  • ラテラルシンキングのメリット・デメリット
  • ラテラルシンキングの方法

この記事を読めばラテラルシンキングの有用性を理解できますのでので、ぜひ最後までお読みください。

ラテラルシンキングとは

ラテラルシンキング(Lateral thinking)とは日本語では水平思考と言います。「ラテラル」には「水平の」「側面の」という意味があります。

物事を様々な視点から考察し、斬新な発想を生み出すための思考法です。常識や先入観にとらわれず新しいアイデアを導き出せるため、ビジネスにおいても必要とされています。

マルタ共和国の医師であるエドワード・デボノが1967年に出版した『水平思考の世界 - 固定観念がはずれる創造的思考法』で、ラテラルシンキングが提唱されました。

論理や分析によって思考するロジカルシンキングを垂直思考と表現し、それに対して論理ではなく、直感的な発想から始まる思考を水平思考と呼びました。

例えば、以下のような考え方がラテラルシンキングです。

【問い】
13個のオレンジを3人に平等に分けるとき、どのように分ければ良いか

【答え】
①4個ずつオレンジを分け、残った1つを3等分に切り分ける。
②オレンジの重さを量り、同じ重さになるように切り分ける。
③すべてのオレンジを絞り、オレンジジュースにして3等分する。
④4個ずつオレンジを分け、残った1つを地面に植えてできたオレンジを3人で平等に分ける。

丸いオレンジのまま分けるという回答は、一つの視点でしか考えられていません。

オレンジの形にこだわらない答えがオレンジジュースで分ける③であり、分ける時間にこだわらない答えがオレンジを植えてなった実を分ける④です。

ただ切り分けるだけではなく視点を変えて斬新な発想ができるのが、ラテラルシンキングです。

ラテラルシンキングと他の思考法の違い

ラテラルシンキングは問題を解決するための思考法の1つです。思考法には他にロジカルシンキングとクリティカルシンキングがあります。

ラテラルシンキング・水平思考
・導き出される答えは複数
・様々な視野から物事を考える
ロジカルシンキング・論理的思考
・答えは矛盾がなく一つだけ
・合理的に推論を繰り返しながら考える
クリティカルシンキング・批判的思考
・データを疑うことで物事の本質を考える

3つの思考法は別々に考えるものではなく、それぞれを組み合わせて思考することで最も適切な答えを導き出せます。

1. ロジカルシンキングとの違い

ロジカルシンキングは論理的思考と言い、偏見などに左右されず合理的で筋道の通った解決を目指す思考法です。

ロジカルシンキングはデータや事例などから共通点を見出し結論を導く帰納法と、一般論や前提に今ある事実を重ね合わせて段階的に結論を導く演繹法があります。

これに対して、ラテラルシンキングが導き出す答えは必ずしも合理的ではなく、常識に捕らわれないアイデアとなります。

2. クリティカルシンキングとの違い

クリティカルシンキングは批判的思考と言います。問題となっている前提条件やデータが本当に正しいのかを問うことで本質を見抜く思考法です。正しいかを考えることで問題の新しい解決方法が生まれます。

ラテラルシンキングは常識や既成概念にとらわれず自由な発想をしますが、クリティカルシンキングは常識や既成概念の枠の中で正しいかを考えるという違いがあります。

ラテラルシンキングが必要になった背景

ラテラルシンキングは50年以上前に提唱された思考法ですが、最近注目を集めるようになりました。それは今までの固定観念が通用しない時代になっているからと言えるでしょう。

ラテラルシンキングは常識や固定観念に縛られない思考法のため、変化が多く多様性を重視する現代に必要な考え方です。

ここではラテラルシンキングが必要になった背景としてVUCA時代と働き方改革について説明します。

1. VUCA時代

VUCA時代とは「Volatility(変動性)」「Uncertainty(不確実性)」「Complexity(複雑性)」「Ambiguity(あいまい性)」の4つの言葉の頭文字を取って名付けられました。

現代のように変化が大きく不安定な要素が多いため将来を予測することが難しい時代のことです。VUCA時代では柔軟性をもって変化に対応し、既成概念にとらわれない思考が重要です。

ラテラルシンキングができる人材は問題が発生しても、様々な視点から解決策を探り行動するため、現状に最適な選択ができるでしょう。

2. 働き方改革

2019年から始まった働き方改革により、従業員の働き方に多様性が生まれています。会社に出勤して働くだけでなく、自宅でのテレワークもコロナ禍により急増しました。

働き方の多様化が進むと、従業員は自律して主体的に行動する必要があります。昔からあるレールに乗って仕事をしても過去を超えることはできず、成績は右肩下がりになるリスクを抱えることになりかねません。

ラテラルシンキングを学ぶことにより慣習にとらわれず自分で道を切り開き、ビジネスチャンスをつかむ人材が育ちます。

ラテラルシンキングの3つのメリット

ラテラルシンキングにはビジネスに役立つメリットがあります。ここでは主なメリットを3つ説明します。

  1. 新しいアイデアが生まれやすい
  2. 複数のアイデアを考えられる
  3. 比較的アイデアを出すまでの時間が早い

ラテラルシンキングができる人材を育てることで、自社の業務効率化を促進し変化に適応できる企業となるでしょう。

1. 新しいアイデアが生まれやすい

ラテラルシンキングは今までの既成概念を取っ払って思考できるため、今までにないまったく新しいアイデアを生み出しやすい特徴があります。

会議で良い意見が出ず煮詰まってしまったときなどに、ラテラルシンキングが大いに役立ちます。今までと異なる考え方をすることで、競合企業に負けない自社独自の商品・サービスを企画することもできるでしょう。

2. 複数のアイデアを考えられる

ラテラルシンキングで出せるアイデアは1つだけではありません。様々な視点で物事を考えるため、視点ごとに解決策が生まれます。思考を広げて考えるようにしましょう。

ビジネスでは1つの課題に対して柔軟な発想が求められます。多角的な思考から生まれたいくつかのアイデアから最適なものを選べば良いのです。

3. 比較的アイデアを出すまでの時間が早い

ラテラルシンキングは直感的にアイデアを出すため、解決策が出るまでのスピードが速いです。アイデアの分析をせずに解決策を出すのがコツです。

アイデアを出すまでのプロセスよりも、出てきたアイデアが課題解決に適切なものであるかという点を重視しています。

結論を早く出せると、スピードを保ってビジネスができます。アイデアをまず出していくという意識が業務効率化にも効果的です。

ラテラルシンキングの3つのデメリット

ラテラルシンキングは多くのアイデアを考えるのに効果的な思考法ですが、デメリットもあります。

以下の3つのデメリットについて説明します。

  1. 信頼性が低い場合がある
  2. 必ずしも効果が保証されているわけではない
  3. ラテラルシンキングで思考するのが難しい

直感的に斬新なアイデアを生む思考法だからこそ、信頼性や効果の面に注意が必要です。ラテラルシンキングをする場合は、どのように解決策に至ったかを理論的に説明することで周囲に納得してもらえます。

1. 必ずしも効果が保証されているわけではない

ラテラルシンキングは直感的で思考プロセスに分析や証明が含まれていないため、考えたアイデアが必ずしも信頼できると言えない可能性があります。

ラテラルシンキングは既成概念から脱却して自由に思考できますが、斬新な発想の中には荒唐無稽なものも含まれてしまいます。論理的でない思考のため、解決策が実現できるとは限らないのです。

そのため、ラテラルシンキングで生まれたアイデアが効果的なのかどうかをロジカルシンキングで分析・検討することが必要です。

2. 方向性を見失うリスクがある

ラテラルシンキングは様々な視点で思考し視点ごとに解決策を導き出すため、解決策は1つではありません。自社の目指す方向性から外れた解決策も出てきます。

方向性が定まらないままラテラルシンキングをすると、課題解決の役に立たない可能性もあるため、課題解決の目的やビジネスの方向性などを明確にしておく必要があります。

3. ラテラルシンキングで思考するのが難しい

ラテラルシンキングは慣れるまで時間がかかります。人はいつも常識や固定観念などに基づいて思考しているため、それらから外れて思考することは簡単にできません。

多くの人が難しく感じる思考法だからこそ、ラテラルシンキングで生み出されるアイデアは斬新でほかの人が思いつかないものになるのです。

ラテラルシンキングの方法3ステップ

ラテラルシンキングでは、常識や固定観念などに縛られずに思考することが必須です。一つの視点で見ることが常識だったとしても、様々な視点から課題の解決方法を考えます。

ラテラルシンキングの方法は以下の3つのステップで表せます。

  1. 現状の不満を洗い出す
  2. 前提条件や既存の概念を疑う
  3. 視点を変えて考える

多くの視点を得るために現状を疑うことを意識すると、ラテラルシンキングをしやすくなります。

1. 現状の不満を洗い出す

業務の中で不満に感じていることを洗い出します。無駄な日常業務や時間がかかりすぎている作業などをすべてピックアップします。

例えば「会議資料をプリントアウトして配っているため時間がかかる」というような「こんなことをする必要はあるのか」という疑問などです。

小さな不満でもすべて洗い出すことで現状の課題がわかり、解決しようとする意識が生まれるでしょう。

2. 前提条件や既存の概念を疑う

不満を洗い出した後は、その不満の前提条件や既存の概念を疑います。「なぜしなければならないのか」「なぜこの手順で行っているのか」などの理由や原因を考えます。

前述の「会議資料をプリントアウトして配っているため時間がかかる」であれば「なぜプリントアウトする必要があるのか」「なぜ会議に資料を配る必要があるのか」といった疑問が浮かぶでしょう。

「なぜ」と考えることで新しい視点で物事を考えることができます。

3. 視点を変えて考える

次に「なぜ」と考えた疑問に対して解決方法を考えましょう。

前述の疑問であれば「プリントアウトしないのならどうすれば資料を配れるか」「会議で資料を配らないなら資料をどう見せれば良いのか」などを考えることになります。

視点を変える方法には、アメリカの実業家であるアレックス・ファイクニー・オズボーンが作った「オズボーンのチェックリスト法」があります。

「オズボーンのチェックリスト法」は9つの視点でアイデアを出すための発想法です。

転用
(Other uses)
既存の商品・サービスをそのまま使う、もしくは改変や改良することで、ほかの用途に使えないか
適合・応用
(Adapt)
過去に同じような前例やアイデアはあるか
変更
(Modify)
既存の商品・サービスの一部を変えることはできるか
(色・形状・音・香り・動作・意味など)
拡大
(Magnify)
既存の商品・サービスを拡大できるか
・サイズを大きくできるか
・重くできるか
・厚みを増やせるか
・強度を上げられるか
・数を増やせるか
・サービスの提供時間を長くできるかなど
縮小
(Minify)
既存の商品・サービスを縮小できるか
・サイズを小さくできるか
・軽くできるか
・厚みを薄くできるか
・強度を下げて柔らかくできるか
・数を減らせるか
・サービスの提供時間を短くできるかなど
代用
(Substitute)
既存の商品・サービスの内容をほかの何かで代用できないか
(材料・場所・製造過程・アプローチ方法・成分・音声・人など)
置換・ 再配置
(Rearrange)
既存の導線や工程を改善できないか
(部本・要素・成分・配列・位置・レイアウト・スケジュールなど)
逆転
(Reverse)
従来の物事から真逆の発想はできないか
結合
(Combine)
複数ある商品・サービスを組み合わせて新しい価値を生み出せるか

「オズボーンのチェックリスト法」を使うことで、考えるべき視点の漏れを防ぎ、ラテラルシンキングを活用しやすくなります。

ラテラルシンキングは多様な視点で物事を考える思考法

この記事ではラテラルシンキングについてメリットやデメリット、実践する手順などを説明しました。

ラテラルシンキングは様々な視点から物事を見て新しいアイデアを創出できる思考法です。

業務効率化や生産性向上を目指しても行き詰っていたり、既存の方法で望んだ結果が得られていなかったりする場合は、ラテラルシンキングを用いて現状をもう一度多角的な視点で見直してみると良いでしょう。

日常的に様々な視点で物事を見るように意識し、ぜひラテラルシンキングを身につけてください。

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最終更新日: 2024/03/12 公開日: 2024/03/12