テレワークや副業をする人が増えたことに伴い、自分の力で起業しようと考える人も多くなっています。
しかし、会社員として働いている人にとって、起業は方法がわからず難しいという印象もあります。
「起業するまでの流れを知りたい」
「起業して法人を設立する場合、どんな書類が必要なのか」
「起業はリスクが多そう」
このような悩みを持つ人のために、この記事では以下の内容を説明します。
- 個人事業主の起業の流れ
- 法人設立をして起業する流れ
- 起業で起こるリスクを減らす方法
これから起業しようと考えている人は、ぜひ最後までお読みください。
個人事業主として起業するまでの流れ
個人事業主は、特定の企業などに属さず個人で事業を営んでいる人のことです。
個人事業主になるには、開業後1か月以内に税務署へ「個人事業の開業・廃業等届出書」を提出するだけです。必要な資格もなく、誰でも起業できます。
確定申告で青色申告をする場合は「所得税の青色申告承認申請書」も一緒に提出しましょう。
事業を始める前に起業目的を決め、事業計画書を作成すると、起業してからの事業の進め方について迷いがなくなるのでおすすめです。
個人事業主でも法人と同じように従業員を雇用したり、組織を大きくしたりすることができますが、節税の観点から年間500万円以上の収入がある場合は、法人を設立する方が良いとされています。
法人を設立して起業するまでの流れ
法人を設立して起業する場合は、個人事業主よりも複雑な手続きです。
大まかに以下の9ステップで法人での起業の流れを説明します。自社の状況に合わせてステップを入れ替えることも可能です。
- 起業の目的を決める
- 会社の基本情報を決定する
- 事業計画書を作成する
- 資金を調達する
- 法人用の印鑑を作成する
- 定款を策定する
- 資本金を払い込む
- 登記申請する
- 設立後に必要な手続きを行う
- 自社の業務活動に必要なものを揃える
1. 起業の目的を明確にする
起業の目的を決めると、自分が起業で実現したいことを明確にすることができます。
起業の目的には、ネガティブな意識から発生したものとポジティブな意識のものがあります。
ネガティブな起業目的とは、以下のようなものです。
- 会社のルールに縛られず、自由に仕事がしたい
- 職場に不満があり、心地よい人間関係を構築したい
- 現在の給料が安いため、生活を良くしたい
現状を変えるためという起業目的では、起業がうまくいかなかった時に長く続かないことが多いです。
なぜ起業したいのかというポジティブな理由を探しましょう。
- 自分の持つスキルや専門知識を活かしたい
- 自分の知見から業界の問題を解決したい
- 自分の商品で困っている人の役に立ちたい
- 自分の住む地域に貢献したい
以上のような起業目的の場合、壁にぶつかったとしても改善し成功に向かって進むことができます。
2. 会社の基本情報を決定する
会社の基本情報は定款に記入する情報です。定款は登記申請をする際に必要な書類のため、基本情報を早めに決めておきましょう。
基本情報とは、以下のような項目です。
- 会社名(商号)
- 本社所在地
- 事業目的
- 資本金額
- 資本金の出資者
- 発起人の氏名・住所
- 機関設計
- 事業年度
会社名はWeb検索で上位表示させるためにも、他とかぶらないオリジナルの社名にすると良いです。ただし、銀行ではないのに「銀行」を社名の一部に使用したり、有名企業と同じ名前にしたりすることは認められていません。
資本金は1円以上で設立できますが、あまりにも少ない金額では信用されないため、資本金として初期費用と運転資金3か月分以上を用意することをおすすめします。
なお、出資者が複数人いる場合、最低でも50%の出資金を自分で用意しておかないと、経営権を奪われてしまう可能性があるので注意しましょう。
3. 事業計画書を作成する
事業計画書とは、どのように事業を展開していくのかを具体的にまとめた書類です。融資や補助金を受ける際の判断材料になるので、しっかりと作成する必要があります。
事業計画書には最低限、以下の内容を入れておきましょう。
- 会社概要
- 事業内容
- 事業のコンセプト・目的
- 従業員数
- 組織体制・人員計画
- 資金調達や売り上げの計画
- 競合他社・市場規模・顧客ニーズなど
- 自社の強み・弱み
- 商品・サービスの内容
- 販売戦略・プロモーション戦略
事業計画を具体的に作成することで、自分の頭の中で思い描いていた事業が明確になります。
法人を設立し従業員を抱える場合、事業計画を共有することにより皆が同じ方向を向いて取り組むことができます。
4. 資金を調達する
自分の貯金の他に資金を調達する方法は、主に以下の方法があります。
- 銀行や公的機関から融資を受ける
- 補助金や助成金を受給する
- 投資家などから出資を受ける
- クラウドファンディングを利用する
- 家族や親戚から贈与を受ける
- ビジネスプランコンテストで受賞する
- 現物資産と現金化する
法人設立や起業には開業資金と運転資金が必要です。
補助金や助成金の申請に関しては、以下の記事を参考にしてください。
5. 法人用の印鑑を作成する
法人用の印鑑には4種類あります。
- 実印(代表印)
- 銀行印
- 角印
- ゴム印
実印は登記申請や契約の際に必要になる印鑑で、必ず作成しなければなりません。他の印鑑は必須ではありませんが、通常の書類に押印するときなどの用途に合わせて使い分けます。
6. 定款を策定する
定款は会社のルールをまとめた書類です。定款に記載する項目は「絶対的記載事項」「相対的記載事項」「任意的記載事項」の3種類があります。
絶対的記載事項 | ・事業の目的 ・会社名(商号) ・本社所在地 ・資本金額 ・発起人の氏名、住所など |
相対的記載事項 | ・変態設立事項 ・株主名簿管理人 ・単元株式数 ・株券発行 ・相続人等に対する売渡請求など |
任意的記載事項 | ・株主総会の開催規定 ・役員報酬 ・配当金などは |
絶対的記載事項は記載がなければ、定款が無効になってしまう項目です。
相対的記載事項は法的には記載する義務はありませんが、記載がない項目は効力がなくなってしまいます。
任意的記載事項は定款に書く必要がなく、他の文書で間に合わせられる項目です。
7. 資本金を払い込む
資本金は、自分の個人口座に自分の名前で振り込みます。
本来、資本金は会社の法人口座に振り込むべきなのですが、会社を設立しないと法人口座を開設できないため、まずは個人口座に振り込んでください。
定款に記入した金額を資本金として口座に入れ、振り込んだ通帳の表紙と1ページ目、振り込みをしたページをコピーし、払込証明書を作成します。
8. 登記申請する
登記申請は法務局での書面申請、もしくはオンライン申請を行います。必要な書類は以下の通りです。
- 登記申請書
- 登記申請書別添
- 発起人決定書
- 就任承諾書
- 印鑑届出書
- 印鑑証明書
- 代表取締役選定書
- 取締役会議事録
- 定款
- 設立時の代表取締役就任承諾書
- 本人確認証明書
- 資本金の額の形状に関する証明書
- 出資払込証明書
- 調査報告書
会社設立の登記は、設立時取締役などの調査が終わった日、または発起人が定めた日のいずれか遅い日から2週間以内にしなければならないと会社法で定められています。
9. 設立後に必要な手続きを行う
会社設立後には以下の手続きを行います。それぞれ管轄の役所が異なるので注意しましょう。
必要な提出書類 | |
法務局 | ・印鑑カード交付申請書 ・印鑑証明書交付申請書 ・登記事項証明書交付申請書 |
税務署 | ・法人設立届出書 |
年金事務所 | ・健康保険・厚生年金保険新規適用届 ・健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届 |
都道府県税事務所 市町村役場 | 法人設立届出書 |
労働基準監督署 | ・適用事業報告 ・労働保険保険関係成立届 ・労働保険概算保険料申告書 ・就業規則(変更)届 ・時間外労働・休日労働に関する協定届 |
ハローワーク | ・雇用保険適用事業所設置届 ・雇用保険被保険者資格取得届 |
銀行 | ・商業登記簿謄本(履歴事項全部証明書) ・定款 ・実印 ・印鑑証明書 ・代表者の印鑑証明書 ・代表者の実印 ・代表者の身分証明書 |
法務局で印鑑カードを取得する
登記申請の手続きから数日後に「登記事項証明書交付申請書」を提出し、登記事項証明書を受け取ります。
それと同時に「印鑑カード交付申請書」を提出して印鑑カードを取得しましょう。印鑑カードは、印鑑証明書を発行するときに必要になります。
印鑑証明書はなりすましなどを防ぐために、契約の際に必要になることがあります。
年金事務所で社会保険に加入する
会社設立後5日以内に、年金事務所で「健康保険・厚生年金保険新規適用届」と「健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届」を提出します。
法人には社会保険への加入義務があるため、届出を忘れないようにしてください。
税務署で法人税に関する届出を行う
税務署に届ける書類は4種類です。それぞれ届け出る期限が異なります。
給与支払事務所等の開設届出書 | 会社設立後1か月以内 |
法人設立届出書 | 会社設立後2か月以内 |
青色申告の承認申請書 | 会社設立後3か月以内 |
源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書 | 適用を希望する月の前月末日以内 |
「青色申告の承認申請書」と「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」の提出は任意です。「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」は従業員が10人未満の法人のみに適用されます。
都道府県税事務所や市町村役場で地方税に関する届出を行う
法人住民税と法人事業税に関する届出は、都道府県税事務所と市町村役場で行います。
法人設立届出書の提出期限が各自治体によって異なるため、ホームページで確認してください。自治体によっては、市町村役場への届出が不要の場合もあります。
労働基準監督署で労働保険に加入する
従業員を雇う場合は、労働基準監督署に届け出なければなりません。書類により提出期限や条件が異なります。
適用事業報告 | 従業員を雇用後遅滞なく |
労働保険保険関係成立届 | 従業員を雇用した日の翌日から10日以内 |
労働保険概算保険料申告書 | 従業員を雇用した日の翌日から50日以内 |
就業規則(変更)届 | 従業員を10人以上雇用した場合、作成後遅滞なく |
時間外労働・休日労働に関する協定届 | 時間外労働・休日労働をさせる日以前に遅滞なく |
従業員の数により必要な書類が変わりますので注意してください。
公共職業安定所(ハローワーク)で雇用保険の届出をする
従業員を雇用した場合、雇用保険に加入しなければなりません。管轄のハローワークで提出する書類は2種類です。
雇用保険適用事業所設置届 | 従業員の雇用後10日以内 労働基準監督署に労働保険保険関係成立届を提出後ただちに |
雇用保険被保険者資格取得届 | 従業員を雇用した翌月の10日まで |
銀行で法人口座を開設する
法人を設立すれば、法人口座を開設できます。法人口座の開設は任意ではありますが、正しく会計処理や税務処理をするために必要です。
また、法人口座を持っていると社会的信用度が上がるため、融資を受けやすくなります。
法人設立前に資本金を個人口座に入れていますが、法人口座を開設できたら資本金を移しておきましょう。
10. 自社の業務活動に必要なものを揃える
実際の業務に必要なものを業務開始までに揃える必要があります。
- オフィス
- パソコンやデスクなどの設備
- ホームページ・SNSアカウント
- 名刺
- 挨拶状・チラシ・営業資料
- ロゴマークなど
新しく事業を始める場合、周囲に知られていないことが多いので、顧客獲得のためにも宣伝活動に力を入れましょう。
起業のリスクを最大限避ける方法3選
起業すると金銭面や生活の不安定さなど様々なリスクが生じます。とはいえ、リスクがあるからと言って起業をしないのは機会損失となるでしょう。
起業のリスクは小さい方が良いため、できる限りリスクを避ける方法を説明します。
1. 副業で小さく始める
起業は会社員の立場でも可能です。会社員であれば会社に属しているため、失敗してもお金の心配をすることはありません。
起業に憧れて退職してしまう人もいますが、上手くいかず事業を失敗してしまうと再就職を考えなければならず、金銭的にも精神的にもストレスになるでしょう。
本業があるため副業にかけられる時間が少なくなってしまいますが、自分の事業を試し、軌道に乗れば脱サラをすることで、リスクが最小限になります。
2. 最小限の初期投資にする
起業したばかりでは売り上げも立たないため、初期投資に多額のお金をつぎ込んで失敗してしまえば多くの借金を抱えてしまいます。
自宅で行えるような小規模ビジネスから始め、だんだんとステップアップしていけば失敗したときのリスクも小さく済みます。
起業に必要な準備を選別して、最小限の出費にすることが重要です。
3. 事業計画を綿密に立てる
起業を失敗しないためには、起業目的を明確にしたうえで事業計画を綿密に練ることが大事です。
事業計画を作成するためには、競合調査や顧客のニーズ把握などをして、事業をどのように大きくしていくのかをしっかりと考える必要があります。
事業の将来性や問題点などがわかるため、事業計画書は必ず作成しましょう。
起業までの流れを理解し、事業を成功させましょう
この記事では、個人事業主と法人の起業の流れを説明しました。
起業までの流れは個人事業主よりも法人を設立する方が複雑です。多くの書類を揃え提出することに流されて、事業の準備ができなければ起業してもうまくいきません。
事業を成功させるためには、しっかりと事業計画書を作成することが重要です。
起業に憧れるだけでなく、起業することでの生活や収入の変化をしっかりと検討し、目的意識を持って起業準備を行いましょう。
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