三方よしの読み方や意味は?近江商人が成功した経営の基礎をわかりやすく解説

最終更新日: 2024/11/25 公開日: 2024/11/25

三方よしは、近江商人が経営理念として掲げていた考え方です。

「和の心」につながり日本的な考え方であるため、現代でも多くの企業が「三方よし」を経営の軸にしています。

本記事では、三方よしの読み方や意味をはじめ、三方よし以外に近江商人が経営理念として掲げていた「商売十訓」を解説しています。

三方よしの考え方を経営に取り入れようとしている企業からは、次のような声が多く上がっています。

  • 三方よしの「三方」はどんな意味?
  • 三方よしの考え方で経営を成功させることはできる?
  • 昔から変わらないビジネス成功の考え方が知りたい

経営の基礎ともいえる三方よしの考え方を身につけ、生産性のあるビジネスを進めていきましょう。

三方よしの読み方や意味は?

三方よしをイメージして指を3本建てている人の画像

「三方よし」の読み方は、「さんぼうよし」あるいは「さんぽうよし」です。

三方よしは古くからある考え方ですが、「三方よしの状態を目指しましょう」「三方よしの結果となりました」というように、現代でもビジネスシーンで使われることが多い言葉です。

「ギブアンドテイク」や「共存共栄」といった単語に意味が近いため、三方よしの言い換え表現として用いられることがあります。

では、三方よしは誰が言いはじめたのか、どんな意味を持つのか詳しく解説します。

三方よしを経営に活かす具体的な方法が知りたい方は、こちらの記事も参考にしてみてください。

「三方よし」は誰の言葉?

三方よしは、江戸時代から明治時代にかけて、近江(現在の滋賀県)を拠点に日本全国を行商していた近江商人の経営理念がもとになっています。

当時の日本は現在よりも地域ごとの特色が色濃く出ていたため、地域によって文化や流行が大きく異なっていました。

そのため、近江商人は訪れた地域や住んでいる人に合った方法で商売をすることが、成功のカギだと考えました。

そこで生まれたのが「三方よし」という考え方です。

この考え方が現代まで受け継がれる課程で、「三方よし」と呼ばれるようになりました。

三方よしの意味

三方よしとは、「売り手」「買い手」「世間」の三方にとってベストな状態を意味します。

たとえば、商品を売買したとき、売り手は利益が得られ、買い手は物品が手に入るため、どちらにとっても良い状態といえます。

しかし、商品を作るために従業員が過酷な労働環境で働いていたり、商品を製造している工場が環境を汚染している場合、近い将来、ビジネスを続けていくために問題が発生するのが目に見えて分かります。

売り手や買い手だけでなく、従業員や株主、関連する地域など、会社を取り巻く環境に貢献することで、末長いビジネスを目指すのが三方よしの考え方なのです。

三方よしの「三方」とは?

三方よしの「三方」は、「売り手」「買い手」「世間」を意味します。

では、「売り手よし」「買い手よし」「世間よし」とは具体的にどのような状態を指すのか解説します。

三方よしを経営に取り入れている企業の事例を知りたい方は、こちらの記事も参考にしてみてください。

売り手

企業や法人など、商品やサービスを提供する立場を指します。

売り手は商品やサービスを提供するためにコストが発生している上、従業員にも給料を支払わなければいけないため、売り手ファーストの経営を行ってしまう可能性があります。

しかし、目先の利益だけを追求すると、買い手からの信頼を得られず、世間からのイメージも悪くなってしまうケースも少なくありません。

そのため、売り手は長期的な視点を持って、売り手の利益を追求していく必要があるといえます。

買い手

企業や法人などの売り手から、サービスや商品を購入する顧客が「買い手」です。

売り手にとって、買い手に商品やサービスを購入してもらうことがゴールではありません。

買い手の満足度を高めることで、リピート購入してもらえたり、口コミから会社の評判が上がったりする効果が期待でき、会社の継続につながります。

ただし、満足度は顧客の属性によって違います。

「買い手よし」の状態を目指すには、適切なターゲット設定を行い、商品開発やマーケティング活動に取り組んでいくことが大切です。

世間

競合他社や、自社の株主を含む、社会全体が「世間」です。

たとえば、世間からのイメージが良くなれば、自社の商品やサービスを購入してくれる買い手が増えたり、自社で働きたいと考える人が増えたりする効果が期待できます。

また、イメージだけでなく業績が上がれば、取引相手との交渉がうまくいく可能性が上がります。

「世間よし」を目指す取り組みは、すぐに効果が出るものではないため、後回しにされることも少なくありません。

しかし、「世間よし」の状態でなければ、会社の評判が下がることによって利益が得られなくなり、会社の危機を招いてしまいます。

売り手や買い手だけでなく、常に世間を意識して会社を運営することが大切です。

近江商人の商売十訓とは|成功する経営の基礎

ビジネスで協力するために握手をする人の画像

日本全国を渡り歩いてさまざまな土地で商売を成功させた近江商人は、行商によって得た知見をもとに「三方よし」以外にも、商人としてあるべき姿を見出していました。

では、「三方よし」以外に近江商人が大切にしていた、商売十訓を紹介します。

1.商売は世の為、人の為の奉仕にして、利益はその当然の報酬なり

三方よしに通じる言葉で、買い手や世間に奉仕することができているならば、売り手である会社に報酬が入ってくるのは当たり前であると説いています。

これには、次の2つの意味があると考えられます。

  • 買い手や世間のために行動してこそ、報酬として利益が得られる
  • 買い手や世間に奉仕できているのあれば、利益を追求するべきだ

買い手や世間に奉仕することは大切ですが、肝心の売り手に利益が発生しなければ、経営が成り立ちません。

ボランティア活動ではなく、価値を提供して対価をもらうのは当たり前という意識を忘れないようにしましょう。

2.店の大小よりも場所の良否、場所の良否よりも品の如何

会社や店舗の経営において大切なのは、規模や立地ではなく、商品の質であるという意味を持つ言葉です。

たしかに、大企業は商品開発にかけられる予算が大きく、会社や店舗の立地が良ければ、訪れる人も増えるでしょう。

しかし、いくら予算をかけて商品やサービスを開発し、たくさん人を集めても、商品の質が悪ければ売れません。

この言葉は、見た目や条件に囚われずに、買い手にとって価値のある商品やサービスを提供することの大切さを説いています。

3.売る前のお世辞より売った後の奉仕、これこそ永遠の客をつくる

商品やサービスを提供した後のアフターフォローによって、買い手との信頼関係が築けるため、会社運営が継続できるという教えです。

アフターフォローには次のような取り組みがあげられます。

  • 電話やチャットで問い合わせができるカスタマーサポートを実施する
  • 「商品の交換1回無料」「◯日以内の返品対応」など、返品交換に関するサービスを設ける
  • 商品やサービスの購入後にメールや電話でフォローをする

アフターフォローを充実させることで、リピート購入や、口コミや紹介による新規顧客の獲得につながります。

もちろん、商品を売るためのマーケティング活動は大切ですが、売ることをゴールにするのではなく、一歩先にある買い手や世間との信頼関係構築を目指しましょう。

4.資金の少なきを憂うなかれ、信用の足らざるを憂うべし

少ない資金の範囲内でも提供できる商品やサービスはたくさんあります。

それよりも、売り手や世間から信頼されなければ、商品やサービスを購入してもらえず、経営がうまくいかないという教えです。

資金を集めることに注力するよりも、確保できる予算、確保できる人材で何ができるのかを考え、買い手に満足してもらえる商品やサービスを提供することが先決です。

5.無理に売るな、客の好むものも売るな、客の為になるものを売れ

押し売りで商品やサービスを購入してもらっても、継続的な購入にはつながらず、一時的な利益にしかなりません。

また、顧客は自分の好みの商品やサービスを求めているのではなく、不便や悩みを解消するための商品やサービスを求めています。

そのため、多くのターゲットの潜在的なニーズを見出し、商品やサービスとして提供するのが、商売の本質であるという教えです。

6.良きものを売るは善なり、良き品を広告して多く売ることはさらに善なり

顧客が求める高品質な商品やサービスを提供することは、買い手にとっても世間にとってもいいことです。

しかし、どんなにいいものを提供しても、買い手や世間に知ってもらえなければ意味がありません。

いいものを宣伝して、たくさんの人に購入してもらうことが、買い手や世間への貢献にもなるという教えです。

7.紙一枚でも景品はお客を喜ばせる、つけてあげるもののないとき笑顔を景品にせよ

どんなに予算や時間がなくても、顧客を喜ばせる方法は必ずあります。

お金のかからない景品や、接客対応の向上など、簡単にできることでも構いません。

「顧客に提供できる付加価値はないか」と常に考えることが、顧客満足度の向上につながるという教えです。

8.正札を守れ、値引きは却って気持ちを悪くするくらいが落ちだ

売れ行きが悪い商品やサービスを販売するときに、真っ先に値下げを検討する方もいるでしょう。

しかし、簡単に値下げをしてしまうと、利益が下がるのはもちろん、買い手や世間からのブランドイメージも下がってしまう可能性があります。

売れないときは、商品やサービスの見直しを行い、価値を高める方法を検討することが先決です。

値下げは最終手段であり、できるだけ避けるべきというのが、この言葉の教えです。

9.今日の損益を常に考えよ、今日の損益を明らかにしないでは、寝につかぬ習慣にせよ

月単位や週単位で損益を確認するのではなく、1日単位で損益を確認し、分析する習慣をつけることが大切だという教えです。

できるだけ短い期間の損益を把握し、分析することで、商品やサービスが売れるタイミング、売れないタイミングが把握できます。

定量的な目標を設定し、毎日達成率を確認しましょう。

10.商売には好況、不況はない、いずれにしても儲けねばならぬ

ビジネスを続けていると、景気が悪化して利益率が下がってしまうこともあるでしょう。

しかし、経営を継続するためには利益を出し続ける必要があるため、「景気が悪いからしょうがない」という言い訳は通用しません。

どんな状況であっても、利益を出すためにやるべきことを模索して取り組む必要があるという教えです。

時代や世界情勢の変化、競合他社の急成長など、ビジネスを進めていくときは、あらゆる課題が発生する可能性があります。

常に変化する顧客のニーズを汲み取り、価値のある商品やサービスを提供して行きましょう。

まとめ

かつて日本中を渡り歩いて行商していた近江商人が生み出した「三方よし」という考え方は、現代ビジネスにも広く浸透しています。

「三方よし」をはじめとする商売十訓は、ビジネスの本質を見抜いており、現代でも十分に通用する考え方といえます。

実際に「三方よし」を経営理念に掲げて成功している企業もたくさんあるので、ぜひ参考にして、継続的なビジネスを目指してみてください。

#三方よし #近江商人

最終更新日: 2024/11/25 公開日: 2024/11/25