5フォース分析の活用事例|導入するメリットや使い方のコツ

最終更新日: 2024/01/11 公開日: 2022/11/24

5フォース分析は、5つの力(脅威)を分析することにより企業・ブランドの市場における優位性や課題を洗い出し、競合企業・ブランド対策として取るべき施策は何か?を明確にできるフレームワークです。

本記事では、5フォース分析の要点・注意点を解説した上で、実在の企業に当てはめた分析例を紹介します。

5フォース分析とは

5フォース分析は、競争戦略理論のマイケル・ポーター氏が提唱する分析方法です。ハーバード大学の教授であるポーター氏は著書「競争の戦略」において、経営する上で欠かせない5つの要素について下記のように定義付けました。

  • 競合他社との関係性
  • 売り手の交渉力
  • 買い手の交渉力
  • 新規参入の脅威
  • 代替品の脅威

上記の5つの競争要素を把握し分析することで、将来の市場環境を予測しながら適切な戦略を立てることができるとしています。

競合他社との関係性

まずは現在の市場における競合他社のブランド力や製品力、市場シェア率などを踏まえて確認します。

競合他社が多ければ多いほど商品の差別化は難しくなり、価格競争も激しくなります。ゆえに利益は生みにくい状況にあるといえるでしょう。

売り手の交渉力

売り手にとっての交渉力とは、材料などの仕入れ先の交渉力によって、利益が少なくなる可能性のことを表します。

仕入れ価格は状況によって変動しますが、販売価格は簡単に変更できません。
ゆえに仕入れ先の影響力が強まると利益が少なくなるので仕入れ先に譲歩しすぎずにいかに自社の立場を維持するかが大切になります。

買い手の交渉力

買い手の交渉力とは、商品を購入する顧客の交渉力によって利益が少なくなる可能性の現象のことを指します。

買い手の交渉力が高まると、商品に対する値引き交渉などが引き起こりやすくなります。

また、供給が過多の状態にある商品だと差別化を行いにくくなり、大企業同士の価格競争に拍車がかかりやすい傾向にあります。

新規参入の脅威

新たに市場に参入する企業の脅威度を把握することです。
例えばワイン販売ECにおいて知名度を上げた企業がペルソナの近い『おつまみチーズ』の市場に参入することは既存の生産販売企業にとって脅威になります。

一つの市場における勢力図が変わらないということはまずなく、どのような業界でも新たに市場に参入してくる企業は一定数存在します。

そのため参入障壁の難易度は勿論、新規参入企業の強みなども入念に確認する必要があります。

代替品の脅威

代替品の脅威とは自社の提供している製品・サービスが満たしている顧客のニーズを、別の形で満たすことが可能な代替品についても分析することです。

代表的な代替品は下記が挙げられます。
・ビール→発泡酒
・英会話学校→eラーニング

代替品が出た場合には、既存の業界は縮小していきます。既存の商品で生き残っていくためには、代替品にはない価値を見出すか、デザインや機能面の進化などを追求してゆく必要があります。

5フォース分析の具体的ステップ

それでは5フォース分析を行うための具体的な4つのステップを順に解説します。

①競合他社のリサーチ

洋食店はファミリーレストランやファーストフード店との競合が激しい傾向にあります。仮に売りたい商品がハンバーグとなると、ステーキレストランやコンビニのレトルト商品、弁当店などとも競合します。

しかし、牛赤身を使ったヘルシーで身体作りにも効果的なハンバーグという特長があれば、そのようなハンバーグを取り扱っていない競合との差別化ができます。

このように、自社が競合する他社の状況や競争状態を正確に分析した上で、自社商品だから打ち出せる差別化要素を見つけることで競合と違う顧客を獲得できる可能性が生まれます。

②ペルソナのリサーチ

牛赤身のハンバーグを食べたいと思う買い手は健康志向が強い方が挙げられます。健康志向でもまだペルソナとして広すぎるので、最低でも下記のところまで掘り下げる必要があるでしょう。

・普段ジムにも熱心な通ってボディーメイク中
・栄養のある食事が不足しがちな一人暮らしの男女

買い手に沢山の競合商品から選んでもらえるようになるには買い手の立場になってペルソナを深掘りすることが大切です。経営者・開発者視点になり過ぎないように注意しましょう。

③チームで分析する

自社が参入している市場やこれから参入を予定している市場は、自社にとって優位に考えてしまいがちです。

5フォース分析をする際は主観・先入観を極力排除して、希望的な観測をせずに客観的な事実を捉えることが重要です。

そのためには経営者やマーケティング責任者1人が分析するのではなく、複数の担当者が関わり、競合や脅威の洗い出しを行い、客観的で公平な目線で分析を進めましょう。

④打ち出す施策の決定

5フォース分析は脅威を洗い出し、分析することが主目的ではなく、分析結果を用いて実行可能な対策を打ち出し、差別化要素の抽出や具体的なプロダクト強化策を生むことが主目的です。

また、市場や5フォースは日々刻々と変化しているものなので定期的に5フォース分析を行い、対応が後手にならないように努めることも大切です。

5フォース分析の分析事例3選

それでは実在する企業3社をサンプルにして5フォース分析を行った事例をご紹介します。 

UNIQLO

競合他社

UNIQLOの競合と言えばしまむら、無印良品などが知名度のあるブランドが多く、H &MやZARAなどの海外ファストファッションブランドもUNIQLOの競合であり、枚挙に暇がありません。競合の脅威は強めであると言えます。

売り手の交渉力

UNIQLOにおける「売り手」とは、生地を卸す企業です。また、コラボ商品の場合は、デザイナーやクリエイターも売り手に該当します。

卸業者からすると、UNIQLOは実店舗数が多いので、大きな収入源になります。また、デザイナーやクリエイターの場合は、ブランド力による宣伝効果が期待できるので、UNIQLOは大きな利益源となるブランドです。

このような構造から、UNIQLOにおける売り手の交渉力は弱めです。

買い手の交渉力

UNIQLOは「国民服」と言われることもあるほど日本社会に定着しているブランドです。インナーからアウターまで、日常的にユニクロの服を利用している消費者も少なくありません。

しかし消費者は前述したように同価格帯の競合ブランドも多く消費者はUNIQLOにこだわらなくても、より低価格でよりおしゃれなデザインの服を自由に選ぶことができます。

ゆえにUNIQLOにおける買い手の交渉力は強いといえます。

代替え品の脅威

UNIQLOにとって代替え日の脅威となり得るのは月額制アパレルサービスや衣類のレンタルサービスなど、衣類に関わる新しいサービスが社会に定着しつつあることです。

また、近年は女性を中心に、本当に必要な物だけを厳選して生活するミニマル(minimal)な暮らし方が注目されています。「価格は高くても質の良い商品を選んで長く愛用する」という考えにシフトする消費者も増えている状況です。

ゆえに品質重視のアパレルメーカーがUNIQLOにとっての代替品の脅威になり得ている状況です。

新規参入の脅威

UNIQLOにとっての新規参入の脅威はネット通販です。
ZOZOやAmazonなどインターネットのアパレル通販は日々発展していますが、UNIQLOレベルの規模になるにはまだ時間がかかると考えられます。

ゆえにUNIQLOにとっての新規参入の脅威は強くないと考えられます。

スターバックスコーヒー

競合他社

スターバックスの競合としてドトール、タリーズ、エクセシオールなど知名度のあるカフェチェーン店が数多く存在します。

いずれも大きな駅の周辺にはこれらのカフェチェーン店の店舗が存在し、スターバックスにおける競合の脅威は強いと考えられます。

売り手の交渉力

スタバは高品質・高単価のコーヒーを売りにしているカフェチェーンではありません。原材料の仕入先は、比較的多くの選択肢から選べる立場にあると考えられるため、原材料に関しては売り手の交渉力はそれほど強くないといえそうです。

しかし店舗を出店する際に好立地を選ぶ必要があるため、不動産業者などの交渉力は強いと考えられます。

買い手の交渉力

スタバの店舗の周辺には類似コーヒー店も多く存在するケースが多いことから買い手の交渉力は強いと考えられます。

スタバの魅力である落ち着きのある空間やオシャレ感を強く求めている人でない限り、コーヒーを飲みたい時に透いているなどの理由でドトールなどの競合に心移りするケースは数多いです。

代替え品の脅威

スタバにおいて代替え品の脅威として挙げられるのは、セブンイレブンの「セブンカフェ」や、ローソンの「マチカフェ」に代表されるコンビニのコーヒーです。

100円台で淹れたてのコーヒーを味わえるコンビニのコーヒーは、スタバにとって脅威といえるでしょう。

新規参入の脅威

スタバにおける新規参入の脅威として挙げられるのが意外にもスシロー、くら寿司などの回転寿司チェーン店です。

近年、スシローやくら寿司ではメイン商品の回転寿司に加えて、スタバよりもお手頃な価格で、カフェのようなコーヒーやスイーツを提供しています。

スシローやくら寿司が今後さらにレベルの高い商品の開発が進めばスタバをはじめとしたカフェを普段利用している顧客が取り込まれる可能性もあります。

トヨタ自動車

競合他社

市場には日産、ホンダ、メルセデス・ベンツ、フォルクスワーゲンなど国内外の自動車メーカーが数多く存在し、競合他社の脅威は強いと考えられます。

国内自動車メーカーでは一つ飛び抜けた印象があるトヨタですが気を抜くと王座が揺らぐ危険性は常に潜んでいます。

買い手の交渉力

そもそも自動車を購入する消費者はブランド(車種)への信頼度やライフスタイルを鑑みて購入するケースが多く、買い手の交渉力は強くないと考えられます。

売り手の交渉力

トヨタは国内は勿論、世界規模でも見ても販売台数No.1のメーカーです。

部品メーカーなどの売り手にとってもトヨタの生産ラインは大きな利益源となっています。ゆえによって売り手の脅威は強くないと考えられます。

代替え品の脅威

トヨタにとって最も近年になりつつあるのが代替え品の脅威です。
一昔前に比べて若い世代を中心に車を持たない価値観も定着しつつあります。

特に都心では公共交通機関が充実しており、自動車を所有する必要性が低く、自動車所有率は年々低下しています。

新規参入の脅威

長年、トヨタは圧倒的な生産と販売規模を誇るため、新規参入の脅威は弱いと考えられていましたが近年は少しずつ強まっています。

その背景には電動化技術の発達により、機械部品を大きく削減して自動車を作ることが可能になりました。テスラなど電気自動車に特化したメーカーの支持も広がりつつあります。

その結果、GoogleやAppleなども自動車市場に参入してくるので、今後は新規参入の脅威も徐々に強まると予測できます。

まとめ

ブランディング戦略に役立てよう

本記事では5フォース分析の概要や分析方法、業種ごとの分析例について説明しました。

5フォース分析を繰り返して「5つの力」に対する解像度を上げることができれば市場において自社のポジションや課題を正確に把握して、それに沿ったブランディング戦略及び予算計画を立てられるようになります。

是非本記事で紹介している5フォース分析を活用し、自社のマーケティングや商品開発の際に実践しましょう。

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最終更新日: 2024/01/11 公開日: 2022/11/24