松下幸之助「リーダーになる人に知っておいてほしいこと」から経営者が学ぶべきこと

最終更新日: 2024/01/17 公開日: 2022/11/09

1989年に94歳で永眠した松下幸之助氏。

日本を代表する経営者であり、「経営の神様」とも称される松下氏のことを知らない方はいないでしょう。

松下氏の没後20年を経て刊行された『リーダーになる人に知っておいてほしいこと』という書籍をご存知でしょうか。

管理職やリーダーを志す若手向けのように思えるタイトルですが、実は経営者の方にこそ読んでいただきたい書籍といえます。

とくに次のように考えている経営者の方におすすめです。

  • 経営者としての経営思想の「軸」が欲しい
  • 事業をさらに拡大していきたい
  • 人がついてくるリーダーでありたい

本記事では、松下氏の言葉から経営者の方々に知っておいてほしいエッセンスを紹介していきます。

ぜひ参考にしてください。

『リーダーになる人に知っておいてほしいこと』とは?

引用元:リーダーになる人に知っておいてほしいこと

はじめに、『リーダーになる人に知っておいてほしいこと』とはどんな書籍かを解説します。

松下氏の没後20年を経て刊行された背景と併せて理解を深めておきましょう。

松下政経塾所蔵の未公開テープから厳選された名言集

『リーダーになる人に知っておいてほしいこと』は、松下政経塾所蔵の未公開テープから書き起こされた書籍です。

松下氏が生前、松下政経塾で行った累計約100時間もの講話から厳選された名言を収録しています。

没後20年を経て、次世代のリーダーに先人の叡智を伝えるべく刊行された1冊です。

松下氏が塾生に向けて語った言葉を、あたかも直接聞いているかのように追体験することができます。

リーダーを志す若手の方々はもちろんのこと、経営者の方にとっても経営哲学の深い学びを得られる書籍となっています。

松下幸之助とは?

松下氏は、パナソニック(旧松下電器)グループの創業者として知られています。

9歳で火鉢店や自転車店で奉公したのち、大阪電灯株式会社での勤務を経て23歳のときに松下電器を創業しました。

創業当時の松下電器は、松下氏が自ら考案した「電球ソケット」の製造・販売を行う会社でした。

二灯用差込みプラグ、自転車用電池ランプといったヒット商品を生み出した同社は、事業を拡大していきます。

以降、ナショナルからパナソニックグループへと20世紀を代表する大企業へ成長していったことは誰もが知るところです。

松下政経塾とは?

80歳で現役を引退した松下氏は、次代の国家指導者を育成するべく松下政経塾を設立します。

松下政経塾は松下氏が私財により設立した財団法人で、4年間にわたる入寮生活を通じて研修・実践活動が行われるのが特徴です。

卒塾生は政財界をはじめ、研究・教育やマスコミなど幅広い分野で活躍しています。

松下氏も生前自ら講話をし、企業人として培った信念や指導者としての心得を塾生に説きました。

『リーダーになる人に知っておいてほしいこと』は、松下政経塾に保管されていた講話の音源を元に編集・刊行されています。

道を切りひらくために必要なこととは?

企業経営では、困難な事態に遭遇したり解決が難しいと感じられる場面に立ち会ったりすることはめずらしくありません。

幾多の困難を乗り越えてきた松下氏は、道を切りひらくためにどのような哲学を培ってきたのでしょうか。

初志を貫く

一事を貫くということは、むずかしいようで非常に効率的である。(中略)初志を貫くことで道はひらけてくる。
(『リーダーになる人に知っておいてほしいこと』より)

経営者として取り組むべき課題は多岐にわたるため、時には自分にとって不向きと思える事態に遭遇するかもしれません。

自分にとって適していないと感じたとしても、押し切って取り組んでみることの重要性を説いています。

初志を簡単に変えることなく、貫くことに集中する。

自分でも気づかないうちに慣れていき、いつの間にか好きになり、信用がついてくることもあるでしょう。

初志を貫くことは一見すると困難ですが、取り組みを続けることで大きなものが得られる効率の良い考え方だと説いているのです。

やるべきことを確実に実行する

仕事の勝負と賭け事は違う。絶対に成功するということを確実にしてやるべきだ。これはやるべきものだと思い、行動の善なることを信じてやる。そのために勉強もする。
(『リーダーになる人に知っておいてほしいこと』より)

ビジネスが日々勝負の連続であることは、経営者の方であれば骨身に染みて感じていることでしょう。

よく「リスクを取る」という言い方をしますが、勝算があるか分からないことに無謀な挑戦をするのが経営者の役割ではありません。

勝つか負けるか分からないことに賭けるのではなく、勝算のあることを確実に実行し、着実に勝ちを重ねていくことが重要です。

やるからには「必ずやるべきだ」と信じ、前に進むために必要な勉強をしていけばよい、と松下氏は説いています。

現場を重視し、絵空事ではない着実な経営を続けてきた松下氏の言葉だからこそ、重みをもって響く名言といえるでしょう。

知恵と力を集めるために必要なこととは?

事業を軌道に乗り、安定的に採算が取れるようになるまでは時間がかかることも少なくありません。

自主自立した組織を作っていくために、経営者はどのようなマインドで臨めばよいのでしょうか。

熱意を持つこと

何事も基本となるのは、熱意である。四六時中、頭の中は仕事のことでいっぱいになる。そうなると不思議なもので、新しいことが浮かんでくるものだ。浮かばないとしたら、それは熱意が足りないことにほかならない。
(『リーダーになる人に知っておいてほしいこと』より)

知識や小手先ではなく、根底に熱意がなければ経営はうまくいかないと松下氏は説いています。

創業当時はゆっくりと食事を味わうことなく、就寝時も枕元にアイデアを書き留めるための紙と鉛筆を置いていたという松下氏。

並々でない情熱こそが、事業を軌道に乗せ一大グループを築いていく原動力となっていたのです。

常に頭をフル回転させ、事業の成功に向けて熱意を持ち続けることの重要性を伝えています。

失敗さえも「縁」と捉える

随所に縁はある。縁を求めていけば、すべてが自分につらなっていることがわかる。失敗して叱られても、それを「縁」と思える人は強い。
(『リーダーになる人に知っておいてほしいこと』より)

企業経営において、しばしば「ピンチこそがチャンス」と言われることがあります。

クレームをつける顧客は、企業に対する期待があるからこそ憤慨し、製品やサービスの欠陥を指摘しているのです。

不良品を納品して叱られたことが松下電器の成功のもとになったと松下氏は説いています。

失敗さえも「縁」と捉え、チャンスに変えていくことが成功への道をよりたしかなものにしてくれるのです。

すべてに学ぶ人となるには?

経営者として成長し続けていくには、学び続ける姿勢を保っていくことが欠かせません。

事業が軌道に乗り、一定の成功を収めてもなお学び続けるには、どのようなことを意識すればよいのでしょうか。

基本を忘れない

武士は、いずまいを正すこと、つまり「座る」ことが基本だった。仕事にも儀礼がある。挨拶や掃除は、業績とは一見関係がないように思えるけれども、人間としての基本であり、きわめて大切なことである。
(『リーダーになる人に知っておいてほしいこと』より)

服装や身のまわりの整理整頓といった基本を大切にすることの重要性を松下氏は説いています。

業績と直接関係ないからと基本をおざなりにすれば、あらゆる面で組織の緩みが生じる原因となっていくのです。

基本は簡単だからこそ基本と思われがちですが、忙しいときでも身のまわりのことをきちんとしておくことは容易ではありません。

常に基本に立ち返り、1つ1つの原理原則を重視しているからこそ、自信を持って大きな仕事に取り組めるのです。

つまらない仕事などない

何事もやる以上は精魂をこめて身につくようにやる。すると掃除のような日常のことでも、十年のあいだに格段の差が出るものだ。掃除を究めれば、政治さえもわかるようになる。
(『リーダーになる人に知っておいてほしいこと』より)

形式的に仕事をこなしたり、単純作業だからと手を抜いたりしていれば、身につくものや学べるものはないでしょう。

丁寧に掃除をしていれば植木の落ち葉が以前よりも増えたことに気づき、水やりの量を増やしたほうが良いと判断できるものです。

大きな仕事に取り組むからといって、小さな仕事を軽視してもよいことにはなりません。

経営に関係ない仕事などなく、あらゆる仕事に意味や目的を見いだすことが重要であると松下氏は説いているのです。

新たな歴史の扉を開くには?

他社との競争に打ち勝ち、自社をいっそう成長させていくには他社に先駆けた試みが必要になることもあります。

先駆開拓を実現するには、経営者としてどのような点を心がけていけばよいのでしょうか。

知識にとらわれないこと

今までやってきたこと、それを一ぺん白紙に戻す。その知識にとらわれず、一からやり直す。すると、その捨てたものも有意義に働きはじめる。
(『リーダーになる人に知っておいてほしいこと』より)

身につけてきた知識やこれまでの経験を活かすことは、経営者として成功していく上で重要な要素と思われがちです。

知識は重要ですが、既知の情報や経験則にとらわれてしまうと新たな思考へと踏み出せなくなることも少なくありません。

近年、アンラーン(学習棄却)の重要性が論じられていますが、松下氏は当時からアンラーンの重要性に気づいていたのです。

知識は一見すると忘れたようでも、本当に重要なことであればきちんと記憶に刻まれています。

とらわれるよりも一からやり直すつもりで取り組むこと。

常に挑戦を続けてきた松下氏の金言といえるでしょう。

一歩先の現実を見ること

百歩先、十歩先、一歩先、それぞれを見ることが大事である。しかし、まずは一歩先を見なければならない。
(『リーダーになる人に知っておいてほしいこと』より)

経営者として事業を発展させていくには、遠くの目標やビジョンに向かって進んでいくことが大切です。

一方で、足元をしっかりと固めておくことも組織を着実に成長させていく上で欠かせない視点といえます。

遠い先にある目標を見据えつつ、足元を確実に固めていくことの重要性を松下氏は説いています。

事業が成長するにつれて見落としがちになりますが、「今」の積み重ねが企業の未来につながっていくことを忘れてはなりません。

真の発展を目指せる人になるには?

100年以上続く企業もあれば、ものの数年で存続が危ぶまれてしまう企業もあります。

長きにわたって発展し続ける企業をつくっていくには、何を重視していけばよいのでしょうか。

部下や社員と本音で向き合う

部下や後輩や生徒には教えるだけでなく、裸の一個の人間としてつきあい、話しあい、学びあう姿勢を忘れない。
(『リーダーになる人に知っておいてほしいこと』より)

経営者のあなたに対して、部下や社員は本音で意見を述べてくれるでしょうか?

社員を指導・教育しなければならないと一生懸命になるあまり、教える一方になっていませんか?

経営者自身も社員の良い面を学び、吸収することで成長していくことができます。

他者から学ぶ経営者の姿勢が組織全体に伝播し、学び合い成長を促し合う風土が醸成されていくのです。

誠実な奉仕の心を持つ

奉仕の心を忘れてはいけない。その心持ちが、お互いの絆をつなぐのだから。
(『リーダーになる人に知っておいてほしいこと』より)

企業組織は「人」によって構成されています。

お互いがお互いを尊重する気持ちが損なわれてしまうようでは、強い組織をつくり上げることはできません。

ポーズやテクニックではなく、誠実な奉仕の心を持つことの大切さを松下氏は説いています。

経営者もまた、社員に対して「仕える」という側面を持っていることを忘れるべきではありません。

まとめ

『リーダーになる人に知っておいてほしいこと』に収められている松下氏の言葉は、決して難解なものではありません。

1つ1つの名言は非常にシンプルで、淀みなくストレートに語られています。

若手の人材のみなず、経営者が定期的に読み返し、初心に戻るために役立つ名言の数々といえるでしょう。

経営者の方々こそ、常に手の届く場所に置いておきたい1冊といえるのではないでしょうか。

セミナーズ通信

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最終更新日: 2024/01/17 公開日: 2022/11/09