ユニクロは世界を股にかけるファミリー系の巨大ファストファッションブランドとして知られています。
一般的な方法とは異なる手法を取り入れたマーケティング戦略により、ブランディング、ポジショニングを成功させました。
この記事では、ユニクロの成功事例を解説します。ユニクロが行ってきたマーケティング戦略をひもとき、自社のマーケティングにつなげましょう!
ユニクロのマーケティング戦略の本質
ユニクロのマーケティング戦略は、商品が売れる仕組みづくりに役立ちます。
たとえば、ユニクロがファッションコンセプトとして掲げているLIFE WARE(ライフウェア)です。
ユニクロがLIFE WAREというポジション取得に成功した背景には、一般的なマーケティングの手法をそのまま実行するのではなく、視点を変えたことが挙げられます。
売れる仕組みづくりに注力する
2021年2月、ユニクロを運営する株式会社ファーストリテイリングの時価総額が、アパレル業界で世界首位に躍り出ました。
新型ウイルス蔓延などの情勢も無関係ではありません。しかし、それもユニクロがこれまでに培ってきたマーケティング戦略あってのことです。
ただ、ユニクロのマーケティング戦略は、大企業ならではの手法が盛り込まれています。中小企業では実践することが難しい部分もありますが、うまく応用すれば参考にできるでしょう。
ユニクロが独自に実践するSTP分析
STP分析とは、以下3つの要素を分析することで商品の市場、顧客、市場内のポジションを明確にするフレームワークです。
- Segmentation(セグメンテーション):区分
- Targeting(ターゲティング):対象
- Positioning(ポジショニング):配置
STP分析のセグメンテーションでは、性別や年齢層など、顧客を特徴別に分けて分析することが一般的です。
ユニクロのSTP分析は一般的な方法とは異なります。ユニクロが成功した理由は、本来の型に応用を加えて、顧客のニーズを満たす独自のマーケティング戦略にあるといえます。
ユニクロのセグメンテーション戦略|自社の強みを活かす
トレンドの移り変わりが激しいアパレル業界では、「どのようにターゲットを絞るか」が課題です。
そのため多くのファッションブランドがセグメンテーションの指標とするものは、年齢や嗜好、ライフスタイルなどが挙げられます。
しかしユニクロが着目したのは、「どのように自社の強みを活かすのか」という点です。ユニクロの強みとは、商品の企画から製造、販売にいたるまでのすべてを自社で行っていること。
これは、SPA(Specialty store retailer of Private label Apparel)と呼ばれるビジネスモデルです。
SPA(Specialty store retailer of Private label Apparel)
SPAを取り入れているユニクロは、顧客のニーズに合わせた柔軟な商品の生産ができることがメリットです。売れ行きが伸びた商品は生産量を増やし、売れない商品は生産量を押さえて在庫を調整しました。
本来のセグメンテーションは、「対象となる顧客層をどのように限定するのか」を考えるでしょう。
しかしユニクロが限定したものは顧客層ではなく、生産する商品。競合と異なる点に着目したことで、コストカットを実現し、効率的な商品開発、販売を行うことに成功したのです。
ユニクロのターゲティング戦略
ユニクロのターゲティングは、一般的な顧客属性を絞り込まず、顧客のニーズに重きを置いて商品の生産を行っています。
ユニクロの定義した顧客のニーズとは次のようなものです。
流行に関係なく着用できる洋服が欲しい
ユニクロが焦点を定めているターゲット層は、性別や年齢などの人口統計的な数字ではなく、「カジュアルorフォーマル」「トレンドorベーシック」です。
ユニクロの洋服を想像してみてください。紳士服、婦人服のカテゴライズはあるものの、老若男女問わず着用できる洋服を提供しています。
このようにユニクロは、「この商品が欲しい!」と思う顧客の気持ちを分析し、商品を開発、販売しているのです。
ユニクロのポジショニング戦略|他社とは異なる位置に立つ
ファストファッションブランドは、ユニクロの他にH&M、ZARAなどがあります。一見同じ場所に立ち競っているように見えますが、実はポジションがはっきりと分かれているのです。
一方ユニクロは、少ない種類の洋服を大量に生産するタイプのブランドです。H&MやZARAのようにトレンドを追うのではなく、長期間使用できるものを販売しています。
つまり同じファストファッションブランドでも、H&MやZARAとユニクロは、立っている場所(ポジション)が異なります。
このようにユニクロは、ファストファッションという市場の中でも、他社と競う場所を切り分け、ポジションを確率しているのです。
ユニクロの成功事例
これから紹介するユニクロの成功事例は、以下の3つです。
- LifeWearという考え方
- 広告戦略
- オンラインストア
ユニクロによるマーケティング戦略の事例を見ていきましょう。
ユニクロのLifeWear|商品コンセプトの確立
「流行に左右されない、ベーシックな普段着といえばユニクロ」として知られています。
ユニクロと聞くと、このようなイメージが湧きませんか?
ユニクロが独自のSTP分析によって導き出した商品コンセプトは、LifeWear(最適な普段着)です。ユニクロでは、どんな人でも毎日気軽に着用できる普段着の開発を進めてきました。
購入しやすい価格設定、トレンドにとらわれない長期間着用できるデザイン。これこそがユニクロのブランディングです。
つまり、顧客に「ユニクロがいい!」ではなく「ユニクロでいい!」と思わせる戦略です。これにより「ベーシックな普段着=ユニクロ」として、独自のブランドを確立させたといえるでしょう。
ユニクロの広告戦略|顧客の心理をつく
ユニクロはテレビCMや新聞の折り込みチラシなど、さまざまな媒体を活用して広告を打ち出しています。
ユニクロのテレビCMを観ると、機能性や着用時のシチュエーションを謳ったものが多いでしょう。これは、商品を使用した後の未来を思い描いてもらう狙いがあるのです。
またユニクロのチラシは、新聞の折り込み広告として毎週届けられることで単純接触効果が生じます。
たくさんの衣類と価格表記が入り混じるユニクロのチラシは、決して読みやすいとはいえません。しかし、そこにもユニクロの戦略が隠れているのです。
単純接触効果を高めるユニクロ独自の戦略
ユニクロのチラシは、商品そのものを紹介するのではありません。
購入する商品を顧客に自ら探してもらうことを目的としています。チラシを見た顧客は、まるで掘り出し物を探すような感覚で商品選びをはじめるでしょう。
このようにユニクロの広告には、顧客の心理をついたテクニックがちりばめられていることがわかります。
ユニクロのオンラインストア|店舗に招くための流入経路
アパレル業界では、実店舗とオンラインストアを競わせることが珍しくありません。
しかしユニクロは違います。オンラインストアを、店舗を足を運んでもらうための流入経路として活用しているのです。
そんなとき、登録していたユニクロのオンラインストアから、商品の最新情報が届きました。
ポップアップをタップして、ユニクロのオンラインストアを覗くと、気になる洋服を発見。
しかし、オンラインストアでは生地の質感やサイズがわかりません。
そこで気になった商品の肌触りやサイズを確かめるために「実物が見たい」という心理が芽生えます。
このようにユニクロは、オンラインストアと店舗を切り離すのではなく、シームレスな関係にしています。オンラインストアを店舗の販売促進を狙ったマーケティングチャネルとして捉えているのです。
2021年10月現在、ユニクロの国内店舗数は800以上。オンラインの需要が増す現代に合ったマーケティング戦略、他社とは異なる手法によって、躍進を続けています。
ユニクロのマーケティング戦略をヒントに成功を掴もう!
ユニクロは今や、世界を相手取るアパレルブランド。競合がひしめく中で独自のマーケティング戦略を繰り出し、顧客から愛されるメーカーに発展しました。
環境に配慮したサステナビリティ活動によるリサイクルも、顧客から愛される要素の1つではないでしょうか。
ユニクロが成功を収めた背景にあるものは、自社の強みと独自性のあるマーケティング戦略です。
紹介した事例をもとに、自社のマーケティング戦略を見直す材料にしてみてください。
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自らが顧客にとって「よいこと」をすれば、顧客は自社のファンになってくれるでしょう。
そして自社の売上が上がります。
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