ステマ規制をわかりやすく解説|個人も注意すべき理由とは

最終更新日: 2024/09/06 公開日: 2024/05/27

ステマ(ステルスマーケティング)とは、消費者に対して宣伝と気づかれないように商品やサービスを宣伝する行為のこと。

2023年10月からステマ規制が始まっています。今までSNSやブログなどで商品を宣伝して報酬をもらったことがある人もいるのではないでしょうか。

ステマ規制で罰則があるのは企業側だけですが、実は広告を投稿した個人にも大きな影響を与えるのです。

「ステマ規制を聞いたことがあるが内容をよく理解していない」
「何に気を付ければステマ規制にひっかからないのかわからない」
「投稿に広告と入れないとステマ規制になるのは本当か」

このように不安に思っている個人事業主やインフルエンサーなどの個人発信者の方のために、この記事では以下の内容についてわかりやすく説明します。

  • ステマ規制の概要
  • ステマ規制の対象となる発信・ならない発信
  • 個人発信者とステルスマーケティングの関係
  • ステルスマーケティングの事例
  • ステマ規制に違反しないための対策

意図せずステマ規制にひっかからないように知識をつけておきましょう。

ステマ規制とは

2023年10月1日からステルスマーケティングが景品表示法違反となりました。ステルスマーケティングとは、消費者に広告とわからないように宣伝するマーケティング手法のことです。

消費者は企業の宣伝に対して嫌ったり疑ったりする傾向があります。消費者のネガティブな感情を軽減するために、企業は広告だと悟られにくい宣伝方法を採用することがありました。

消費者は広告だとわからなければ好意的にその内容を受け取ることが多く、購入に繋がりやすいです。不正広告により消費者は別の商品を選択する機会が奪われてしまい、消費者の利益が確保されない恐れがあります。

ステルスマーケティングにより公平な市場競争と消費者の広告に対する信頼が阻害されると、ますます広告を出しても売り上げが上がらなくなってしまうでしょう。

欧米諸国では既にステルスマーケティングは規制されているため、規制されていない日本で海外企業がステルスマーケティングをしていたと考えられています。ようやくステマ規制で日本も欧米諸国と足並みを揃えられたと言えるのです。

ステマ規制の対象になる発信

ステマ規制では消費者に宣伝だとわからない広告が規制されます。内閣府告示第十九号では、ステルスマーケティングを以下のように指定しています。

 一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示
 事業者が自己の供給する商品又は役務の取引について行う表示であって、一般消費者が当該表示であることを判別することが困難であると認められるもの

内閣府告示第十九号より引用

内閣府告示で指定された要件を満たしたときにステマ規制の対象となります。わかりやすく言うと、以下の2点が対象です。

  1. 事業者が第三者になりすましているもの
  2. 事業者が第三者に広告だと隠して宣伝するよう依頼したもの

基本的に消費者にとって広告だとわかりづらいものは規制対象になりかねないと捉えて間違いないといえます。

1. 事業者が第三者になりすましているもの

実際は企業が発信しているのにも関わらず、企業と無関係の第三者が口コミや感想を書いているようになりすましている場合、ステマ規制の対象となります。

商品を販売している企業の従業員や子会社などの販売促進にかかわる従業員も、SNS上で商品の感想を書くとステルスマーケティングとみなされる恐れがあります。

自社の商品を宣伝するだけでなく、第三者になりすまして競合企業の商品にネガティブな口コミを入れることもステマ規制の対象です。

2. 事業者が第三者に広告だと隠して宣伝するよう依頼したもの

企業がインフルエンサーや著名人に依頼して商品をSNSやECサイトのレビュー欄などに投稿してもらう場合、広告と明記しなければステマ規制の対象となります。

企業が明確に依頼していなくても良い口コミを書くとインフルエンサー側に利益があることを匂わせていれば、投稿が広告とわからなければステルスマーケティングとみなされる恐れがあります。

アフィリエイト広告に関しても企業がアフィリエイターに報酬を提示して商品に関する記事を書いてもらうもののため、広告だと隠すとステマ規制の対象となります。

個人発信者とステルスマーケティングの関係

検討会事務局『現役のインフルエンサーに対するアンケート結果』より引用

「現役インフルエンサーに対するアンケート調査」では、300名のインフルエンサーのうち41%が企業からステルスマーケティングを依頼され、そのうちの44.7%が依頼を受けた経験があると回答しています。

ステルスマーケティングをすれば報酬がもらえるため、あまり悪いことだと思わずに受けてしまっていたインフルエンサーは30.9%いました。(参考:検討会事務局『現役のインフルエンサーに対するアンケート結果』

【アライドアーキテクツ株式会社「echoes」調べ】『【2023年最新調査】”Twitter離れ”は本当に起きている?イーロン・マスク氏買収以降のX(Twitter)ユーザー利用実態調査』より引用

企業がインフルエンサーなどの個人にステルスマーケティングを依頼するのは大きな宣伝効果があり、消費者に好意的に受け取られることが多いからです。

アライドアーキテクツ株式会社「echoes」の調べによると、X(Twitter)では投稿をきっかけに来店をしたことがある人は58.4%にのぼります。

企業アカウントの投稿を見て購入や来店を決めている人が最も多い結果となっていますが、ほぼ同数で「フォローしている友人や一般の人の投稿」が購入や来店のきっかけとなっています。

個人の投稿がフォロワーに大きな影響を及ぼすため、一部の企業は個人にステルスマーケティングを依頼していたのです。

(参考:echoes『【2023年最新調査】”Twitter離れ”は本当に起きている?イーロン・マスク氏買収以降のX(Twitter)ユーザー利用実態調査』

ステルスマーケティングの事例

ステルスマーケティングは意図していなくても消費者から判断されかねません。消費者庁からの処置命令や罰則は企業側にありますが、SNSで炎上する可能性が高いので投稿したインフルエンサーなどにも影響があります。

特にオンラインに投稿したものは半永久的に残るため、最新の注意が必要です。ここでは美容サプリメントとTwitterでの炎上事例を紹介します。

1. 美容サプリメント

2021年11月に、豊胸効果があるとする美容サプリメントの口コミ投稿をインフルエンサーに依頼した企業2社が消費者庁に景品表示法違反で措置命令を受けました。

インフルエンサーはInstagramにサプリメントを摂取すれば豊胸効果が得られるような投稿をしていましたが、豊胸効果の根拠が示されず、投稿には広告であることの明記がありませんでした。

景品表示法違反は企業に対して罰則がありますが、インフルエンサーの該当投稿がすべて消費者庁に違反投稿として公開されています。

(参考:消費者庁『株式会社アクガレージ及びアシスト株式会社に対する景品表示法に基づく措置命令について』

2. 『アナと雪の女王2』感想漫画企画

2009年には、ウォルト・ディズニー・ジャパン株式会社が7人の漫画家に『アナと雪の女王2』を見た感想をX(Twitter)に投稿してもらう企画を実施しました。

漫画家の投稿には広告の文言がなく同じ時間に一斉に投稿されたため、ユーザーからステルスマーケティングだとの批判を受けました。

企業側も漫画家側もステルスマーケティングの意図がなかったと謝罪していますが、炎上騒ぎとなっています。

(参考:「『アナと雪の女王2』感想漫画企画」に関するお詫び

ステマ規制の対象外となる発信

ステマ規制には宣伝であっても対象とならない投稿もあります。

  1. 広告だと明記されている発信
  2. 自主的に発信しているもの

ステマ規制の対象になるか不安な場合は、広告だとの一文を入れておくと安心です。

1. 広告だと明記されている発信

企業に依頼されて個人が宣伝目的で発信するものは、誰が見ても広告だとわかりやすく明記しなければなりません。

「#PR」「#ad」というようなハッシュタグや「企業から商品の提供を受けての投稿」と記載すれば、ステマ規制の対象外です。

「#PR」「#ad」というハッシュタグを付けていても他の大量のハッシュタグに紛れ込ませていたり、動画に一瞬だけテロップを入れたりするなどの消費者にとって広告だと気づきづらいような記載では、ステルスマーケティングとみなされる恐れがあります。

2. 自主的に発信しているもの

第三者が企業に依頼されることなく自主的に口コミや感想を投稿したものは、ステルスマーケティングにはなりません。自分の好みで商品を買って感想をSNSに投稿するのは、自主的に発信していると判断されます。

企業からの商品の無償提供などを受けていても、口コミの内容に企業が関与しなければ問題ないとされています。

ただし、企業が同じ人に何度も商品を無償提供して感想の投稿を依頼していれば、自主的とみなされない可能性もあるため注意が必要です。客観的に見て自主的と判断できる場合のみ、対象外となります。

ステマ規制に違反しないための対策3つ

ステマ規制で罰則の対象となるのは企業のみで、依頼を受けたインフルエンサーは対象ではありません。しかし、罰則の対象とならなくても、自身の投稿が炎上したり社会からの信頼を失ったりするでしょう。

ステマ規制への対応が正しくできていなければ、報酬が支払われない可能性もあります。確実にステマ規制に違反しない投稿を行いましょう。

1. 広告だとわかりやすく表示する

自分の投稿に宣伝要素が入る場合、広告である旨を必ず明記しましょう。

  • #広告・#宣伝
  • #PR・#ad
  • #プロモーション
  • ○○社から商品の提供を受けた投稿です

商品の無償提供を受けた・宣伝依頼を受けたなどの、企業と自分との関係をわかりやすく書いておくことも有効です。

商品の誇張をしたり虚偽のレビューを書いたりすると、消費者に正しい情報が伝わらなくなってしまうため、正しい情報を投稿する必要があります。

2. 過去の投稿にも広告との明記をする

ステルスマーケティングが規制されるのは2023年10月1日からですが、それ以前に投降した宣伝や広告もステマ規制の対象となります。そのため、過去の投稿にも広告の明記が必要です。

SNSの投稿は編集できないことが多いので、レビュー投稿などの削除をしなければなりません。過去のアフィリエイト記事などもすべて「この記事には広告が含まれている」というような文言の掲載が必要となります。

3. 各SNSが推奨している方法で投稿する

SNSは各社独自でステルスマーケティングを規制するルールがあります。ただタグ付けをするだけではなく、各SNSのルールに則った対応をすると安心です。

  • X(Twitter)
  • Facebook・Instagram
  • YouTube
  • LINE
  • TikTok

口コミなどの投稿をする前に、ルールを確認しておきましょう。

X(Twitter)

X(Twitter)では「#広告」「#有料パートナーシップ」「#スポンサー」のようなハッシュタグを投稿に含めなければなりません。
(参考:Xヘルプセンター『有料パートナーシップに関するポリシー』

Facebook・Instagram

Meta社のFacebook・Instagramでも、無償提供や対価の受け取りがある投稿をする場合はタグ付けが必要と規定されています。
(参考:Metaビジネスヘルプセンター『ブランドコンテンツの利用事例』

YouTube

YouTubeにおいては動画をアップロードする際に「私の動画には、プロダクト プレースメント、スポンサーシップ、おすすめ情報などの有料プロモーションが含まれています」という項目にチェックを入れるだけで、広告が含まれている旨を自動的に表示できます。
(参考:YouTubヘルプ『有料プロダクト プレースメント、スポンサーシップ、有料おすすめ情報を追加する』

LINE

LINEでは広告が禁止されている分野が厳しく規定されており、禁止事項を破るとアカウント停止の措置が取られる場合があります。

文言や画像などのクリエイティブの規定が細かく決められているため、投稿する前に以下のサイトを確認しておきましょう。
(参考:LINEヤフーfor Business『LINE広告審査ガイドライン』

TikTok

TikTokでは商品などを宣伝する動画を投稿する前に「コンテンツ情報開示設定」をオンにする必要があります。オンにすると動画内に「有償パートナーシップ」というラベルが表示され、視聴者に宣伝動画だと示せます。

情報開示設定がオフのままだったり、正しい情報を開示しなかったりした場合は、動画が削除される可能性があるため注意しましょう。
(参考:TikTok『ブランド、製品、またはサービスの宣伝』

ステマ規制に違反すると社会的信頼を失う

この記事では、ステマ規制の内容やステルスマーケティングをしないための対策などについて説明しました。

個人発信者がステルスマーケティングをしても事業者でない限り罰則はありません。しかし、投稿が炎上したり、信頼を失って企業からの依頼が来なくなったりする恐れがあります。

個人だから大丈夫と考えずに、ステマ規制を理解し正しい投稿を心掛けることが大切です。まだステマ規制の対策をしていないという人は、早めに投稿の削除・修正をしておきましょう。

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最終更新日: 2024/09/06 公開日: 2024/05/27