ブランディングを実施するためには、ブランドアイデンティティの設定が重要と言われています。
「ブランドアイデンティティとは何か」
「ブランドアイデンティティを設定するために必要なことは何だろう」
「ブランドアイデンティティを設定するメリットはあるのか」
このような悩みを持つマーケティング担当者のために、この記事ではブランドアイデンティティの要素やフレームワーク、設定のメリットなどを説明します。
事例も示していますので、自社ブランディングの参考にしてください。
ブランドアイデンティティとは
ブランドアイデンティティとは、顧客に自社や商品・サービスについてどう思ってほしいかを企業が明確にしたものです。
アメリカの経営学者であるデイヴィッド・アーカーはブランドアイデンティティについて「そのブランドにこうなってほしいと強く願うイメージを、はっきりと言葉で説明したもの」と著書『ブランド論』の中で示しています。
ブランドアイデンティティは企業が自社ブランドをこんな風にイメージしてほしいと願うものであり、顧客がブランドについて抱くイメージ(ブランドイメージ)とは異なる場合があります。
ブランディングを行う際は、企業が思うブランドアイデンティティと顧客が抱くブランドイメージを一致させていくことが必要です。
そのために企業はロゴやブランドカラー、メッセージなどでブランドアイデンティティを表現し、顧客に自社の意図に沿ったイメージを持ってもらおうとしています。
ブランドアイデンティティ4つの構成要素
デイヴィッド・アーカーは、ブランドアイデンティティは以下の4つの要素で構成されているとしています。
- 製品としてのブランド
- 組織としてのブランド
- 人としてのブランド
- シンボルとしてのブランド
ブランディングにはどれか1つの要素があれば良いということではなく、すべての要素が組み合わさってブランドが構築されます。それぞれの要素を詳しくみていきましょう。
1. 製品としてのブランド
製品としてのブランドとは、商品・サービスから連想できることがブランドアイデンティティの要素になっているということです。
- 製品分野
- 製品属性
- 品質・価値
- 用途
- ユーザー
- 原産国
家具やインテリア用品などの企画・販売をしている株式会社ニトリでは「お、ねだん以上。」というキャッチフレーズで購入しやすい価格でありながら質の良い商品を提供するというブランドアイデンティティを確立しています。
ダイソン株式会社の「羽根のない扇風機」は、近未来的なデザインと「エアマルチプライアー」という特許技術がブランドアイデンティティとなっています。
2. 組織としてのブランド
組織としてのブランドは、組織属性がブランドアイデンティティの要素です。
- 企業属性
- ローカルかグローバルか
トヨタ自動車ではハイブリッド技術の普及を目指し、特許を持つ電動化の技術を無償提供することを決めました。
地球規模で二酸化炭素の排出量を抑制する「ホームプラネット」というメッセージを掲げ、顧客だけでなく同業者にもトヨタのメッセージを届けてブランドアイデンティティを確立させています。
3. 人としてのブランド
人としてのブランドは、ブランドを利用する消費者の個性や考え方がブランドアイデンティティを構築することです。
- ブランド・パーソナリティ
- ブランドと顧客の関係性
ハイブランドのシャネルやエルメスのバッグを持っているだけで自分の価値が上がったような気がすることや、スターバックスでパソコンを開いている自分はかっこいいと思う考え方が、ブランドアイデンティティとなります。
4. シンボルとしてのブランド
シンボルとしてのブランドはイメージや伝統がブランドアイデンティティの要素です。
- ビジュアルイメージとメタファー(比喩)
- ブランドの伝統
ディズニーでは「夢と魔法の国」というブランドアイデンティティが確立されており、その世界観を楽しむために多くのゲストがディズニーランドに訪れています。
キユーピー株式会社のシンボルといえばキューピー人形というように、キャラクターやロゴを見て会社名や商品を思い浮かべられるなら、ブランドアイデンティティ構築に成功していると言えます。
ブランドアイデンティティプリズムとは
ブランドアイデンティティプリズムは、ブランドアイデンティティの定義に必要な6つの要素を整理するためのフレームワークです。フランスにあるビジネススクールHECの教授であるジャン・ノエル・カプフェレによる提唱されました。
- Physique(ブランドの特徴)
- Personality(ブランドの個性)
- Relationship(ブランドと顧客の関係性)
- Culture(ブランドの文化)
- Reflection(ブランドのターゲット)
- Self-Image(セルフイメージ)
ブランドアイデンティティプリズムの縦軸には「Picture of Sender(企業)」と「Picture of Recipient(顧客)」があり、どちらかに近づくほど影響度が高くなります。
企業がブランドの特徴や個性を決めているため、図では「Physique(ブランドの特徴)」と「Personality(ブランドの個性)」が「Picture of Sender(企業)」のそばにあります。
「Reflection(ブランドのターゲット)」は顧客が誰かを示し「Self-Image(セルフイメージ)」は顧客が抱くイメージのため「Picture of Recipient(顧客)」側にあるということです。
横軸は「Externalization(外的要素)」と「Internalization(内的要素)」に分かれており、ブランドアイデンティティの要素が自社の外にあるか内にあるかを指しています。
1. Physique(ブランドの特徴)
Physique(ブランドの特徴)とは、ブランドを物理的に表しているものです。
- 名前
- 色
- デザイン
- ロゴ
- キャッチコピー
- ジングル
- 店の雰囲気・外観
- ユーザーインターフェース
スターバックスの人魚のロゴやインテルのジングルなど、視覚や聴覚などでそのブランドだと認識できるものです。
2. Personality(ブランドの個性)
Personality(ブランドの個性)はブランドをどのように表現しているかということです。
- フォント
- 配色
- デザイン
- 声
- キャラクター
ブランドアイデンティティに合わせた表現をしないと、顧客はブランドアイデンティティに沿ったブランドイメージを持ってくれません。
わかさ生活が販売しているブルーベリーアイのキャラクター「ブルブルくん」は、目が大きくデザインされておりブルーベリーアイは目に良いというメッセージを視覚的に表現しています。
3. Relationship(ブランドと顧客の関係性)
Relationship(ブランドと顧客の関係性)とは、ブランドと顧客がどのような関係性を築いていくのかということです。
- 価値観
- 目的
- 意義
- 共感点
ブランドを購入・使用することで顧客にどのような影響があり、何を得られるのかという点を重視します。
例えば、トヨタ自動車のシエンタというミニバンは「家族にみんなにいいことSIENTA!」というコンセプトで、家族とともにある車という関係性を打ち出しています。
4. Culture(ブランドの文化)
Culture(ブランドの文化)は、そのブランドらしさということです。
- 企業の理念・ビジョン
- 企業の社歴・社風・伝統・業績など
- 企業の価値観や他社との差別化できるもの
企業はブランドに自社の価値観や理念を込めているため、他社との差別化ができています。顧客がブランドの文化に好意を持ち共感することで、愛着を持つようになります。
アサヒ飲料のビジョンは「100年のワクワクと笑顔を。」です。主力商品の1つである「おいしい水 天然水」は、100年後を見据えた環境に配慮した素材の使用、小さくつぶせるペットボトルなどの工夫に取り組んでいます。
アサヒ飲料では、ビジョンに沿って環境に良いものを提供するというブランドらしさを表現していると言えるでしょう。
5. Reflection(ブランドのターゲット)
Reflectionには、反射や反映という意味があります。つまり、ブランドをよく購入するターゲットはどんな人かということです。
- 年齢
- 性別
- 職業
- 居住地
- 年収
- ライフスタイル
- 価値観
ターゲットは顧客の多くの割合をしめています。ターゲットを明確にすることでブランドの適切なアプローチ方法を検討できます。
ライザップ株式会社のchocoZAPのターゲットは、ジム通いを諦めた人や手軽に運動したい人です。
ジムに通っていたが忙しくて通えなくなったり、厳しいトレーニングがつらくて止めてしまったりした人でも、気軽に始められるコンビニジムというポジショニングを確立しました。
6. Self-Image(セルフイメージ)
Self-Image(セルフイメージ)は、顧客が抱いているブランドイメージのことです。顧客がブランドを思い出したときにどんな気持ちになるかをリサーチし、ブランドアイデンティティとの差を縮めます。
Apple社の製品はデザイン性の高さがブランドイメージとして定着しています。iPhoneやiPadを持つとかっこいい自分になれるという気持ちや、Apple社の製品に対する憧れなどがセルフイメージとなるのです。
ブランドがどのように顧客の理想を叶えるのかを明確にすることで、ブランディングの方法が決まります。
ブランドアイデンティティの3つのメリット
ブランドアイデンティティには以下のようなメリットがあります。
- 一貫性を持ったブランド戦略ができる
- 長期的にブランド戦略を立てられる
- 従業員のモチベーションが高まる
ブランディングは顧客に自社のブランドアイデンティティに近いブランドイメージを持ってもらうための活動と考えがちですが、ブランドアイデンティティを確立させることで顧客にも従業員にも影響を与えられます。
1. 一貫性を持ったブランディングができる
ブランディングにはコンセプトやロゴ、イメージカラーなど、様々な要素が含まれています。
企業がブランドアイデンティティを設定することですべての要素を統一できるため、商品・サービスの魅力を伝えやすくなるのです。
スターバックスは店舗のことをサードプレイスと呼び、おしゃれで高級感のある空間を提供しています。どの店に行っても同じ雰囲気です。
スターバックスではフランチャイズを導入せずほとんどが直営店であるのは、一貫性のあるブランド構築のためと考えられます。直営店であることによって、店舗の雰囲気や従業員の接客対応などのスタバらしさが保たれているのです。
2. 長期的なブランディングができる
ブランドは短期的に確立するものではありません。長期的にブランドを構築する必することで、ブレずに一貫したブランディングが可能です。
長期的にブランドアイデンティティの構成要素やブランドアイデンティティプリズムを定めることで、ターゲットや競合との差別化ポイントが明確になり、ブランディングが成功しやすくなります。
小学館の『小学一年生』は、1925年に創刊して以来ずっと小学一年生をターゲットにしている学習雑誌です。創刊当時のコンセプト「楽しく読んでいることが自然と学習につながる」は今でも受け継がれて紙面が製作されています。
「ピッカピカの一年生」というキャッチフレーズのCMも登場する子どもを毎年変えながら同じテーマで放送されており、小学一年生のブランド戦略が長期的に持続していると言えるでしょう。
3. 従業員のモチベーションが高まる
ブランドアイデンティティがあることで、従業員は自社ブランドを理解できます。
自社ブランドを理解している状況は従業員自身もブランドに関わっている一人であると感じられ、自社商品・サービスの向上に主体的に取り組めるようになるのです。
ディズニーではキャスト(従業員)にディズニーのブランドアイデンティティが浸透しています。
従業員教育でディズニーの哲学を徹底して伝え、キャストの言動がブランドアイデンティティと一致することで、ブランディングが強固なものにできるのです。
ブランドアイデンティティを構築し他社との差別化を図りましょう
この記事ではブランドアイデンティティの要素とフレームワーク、構築のメリットを説明しました。
ブランドアイデンティティが具体的で明確化されていることは、自社らしさがあるということ。競合とは差別化ができており、顧客にとって自社ブランドを選ぶ理由になります。
ブランドアイデンティティの要素やフレームワークの内容を検討して、ブランディングを実施しましょう。
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