DAOのビジネスモデルの特徴とは?従来の組織づくりとの違いを解説

最終更新日: 2024/03/04 公開日: 2024/03/04

Web3.0の発展に伴ってDAO(分散型自律組織)が注目を集めています。

現在は営業・企画などの職能で部署を分ける職能別組織や、事業で分ける事業部制組織といったピラミッド型の組織形態がありますが、DAOは円形に表され階層がない組織です。

新しい組織形態であるがゆえに、DAOがどのような組織形態であるのかを詳しく知らない人も多いのではないでしょうか。

「DAOでどのようにしてお金を稼ぐのか」
「DAOのビジネスモデルにすると、どのようなメリットがあるのか」
「株式会社などの従来の組織とどのように異なるのか」

このような疑問を持っている人のために、この記事では以下の内容を解説します。

  • DAOのビジネスモデルの特徴
  • DAOと従来のビジネスモデルとの違い
  • DAOのビジネスモデルが持つ課題
  • DAOのビジネスモデル事例

DAOのビジネスモデルを自社に取り入れられるかを検討する際の参考にしてください。

DAOとは?

DAOは「Decentralized Autonomous Organization」の略で、分散型自律組織と訳されています。分散型自律組織とは、中心となるリーダーや管理者がいなくてもメンバーや参加者が自律して意思決定を行う組織やコミュニティのことです。

ブロックチェーン上に組織が作られ、トークンで資金調達をします。インターネット環境があれば誰でも組織を設立でき、参加や脱退の手間も少ないのが特徴です。

DAOのビジネスモデルの5つの特徴

DAOのビジネスモデルには今までの組織にはない特徴があります。DAOのメリットとも言える特徴を5つ紹介します。

  1. 不正が発生しにくい
  2. 公平性が高い
  3. 誰でも参加できる
  4. コストカットができる
  5. 資金調達がしやすい

自社がDAOを採用した場合に、どのような利点があるのかを確認しましょう。

1. 不正が発生しにくい

DAOは所属メンバーが投票することで意思決定を行います。投票はブロックチェーン上で行われ、投票状況がリアルタイムで確認できるため、不正をしづらい環境です。

ブロックチェーンはブロックを鎖のように繋げて保管する技術のことです。1つのブロックを改ざんするとブロック内の情報が変わってしまうため、次のブロックとの整合性が取れなくなってしまいます。

ブロックチェーン上の情報を改ざんするには、すべてのブロックの情報を改ざんしなければならないため、管理者であっても後から情報を書き換えることは不可能です。

誰でも閲覧できる環境でDAOメンバーの交流をすることも多く、メンバー間だけでなく外部にも透明性のある組織と言えるでしょう。

2. 公平性が高い

DAOは中央集権型でなく所属するメンバー全員に所有権があります。所有権は保有しているガバナンストークンの数として表され、ガバナンストークン1つにつき1票が与えられるシステムです。

DAOに入るためにガバナンストークンを購入することが一般的ですが、DAOへの貢献度によっても分配されるため、創業者などに権力が一極集中することを防いで公平性を担保しています。

3. 誰でも参加できる

DAOは初心者でも参加できるものが多く、匿名性があります。オンライン上の組織のため、国籍や性別、年齢などに区別されず、世界中のDAOから気に入ったものを選んで活動することができます。

インターネット環境があれば誰でも気軽に参加し、プロジェクトを企画・提案することもでき、気に入らなければ退会も可能です。

4. コストカットができる

DAOはブロックチェーン上で契約するスマートコントラクトを導入しています。スマートコントラクトとは、第三者の手を介さず、プログラムされた条件に従って契約の締結から履行までが自動的に実行される仕組みです。

スマートコントラクトを利用することで、取引条件を決めて瞬時に取引を完了することができます。手続きが単純化されるため仲介業者などの手数料が不要です。

金銭的コストのほかに、時間的コストや人的コストも削減することが期待できます。

5. 資金調達がしやすい

DAOの意思決定に使われるガバナンストークンは通貨としての役割も持っています。DAOはガバナンストークンを発行することで資金調達もできます。

ガバナンストークンを買ってもらうにはプロジェクトが必要です。プロジェクトを支援したい、仲間になりたいと思う人がガバナンストークンを購入するため、資金調達が比較的しやすいと考えられます。

DAOと従来のビジネスモデルとの違い

DAO従来の組織
組織構造分散型組織中央集権型組織
管理者いないいる
意思決定メンバーによる投票株主総会や管理者の指示
情報公開すべて公開一部のみ公開もしくは非公開
参加しやすさ誰でも参加可能面接や試験がある
参加資格問わない学歴や性別を確認されることがある
退会しやすさいつでも退会可能退職届が必要

従来のビジネスモデルでは縦型の組織で、経営者をトップに管理職がおり、管理職の下に一般社員がいます。しかし、DAOはトップとなる人や管理職がおらず、全員が組織を管理します。

意思決定もDAOはメンバーの投票で決められて公平性がありますが、従来の組織は社員の意志よりも株主総会や管理者の指示に従わなければなりません。

決定事項のプロセスなども公開されることは少なく透明性が低いです。

従来の組織では入社試験や面接に合格して入社となり、退職するにも上司に退職届の提出が必要ですが、DAOは誰でもいつでも参加・退会が可能です。

DAOのビジネスモデルが持つ3つの課題

DAOのビジネスモデルは組織としてメリットが多いと感じるかもしれませんが、比較的新しい仕組みなので課題も生まれています。

  1. 意思決定が比較的遅い
  2. 分散化が難しい
  3. 法整備が間に合っていない

DAOのビジネスモデルを採用する際は、課題に対する解決方法もある程度検討しておく必要があります。

1. 意思決定が比較的遅い

DAOはメンバーの投票により意思決定を行うため、意思決定のスピードが遅くなりがちです。ハッキングなどの突発的な事故が発生した場合でも、投票で行動を決めなければならないため、事態の収拾に時間がかかってしまいます。

また、投票で決定したことが間違っていても修正するには投票が必要となるため、プロジェクトのスピード感が欠けてしまうでしょう。

2. 分散化が難しい

DAOはガバナンストークンを購入した人に投票権があるため、所有権がそれぞれのメンバーに分散されていますが、必ずしも完璧に分散されているとは言い難い点もあります。

DAOの設立者や投資家が大量のガバナンストークンを持つと、意思決定に影響を与えられます。まだDAOは生まれて間もない組織のため、軌道に乗るまで管理者がある程度の決定権を持つのは仕方がないことと言えます。

3. 法整備が間に合っていない

DAOはオンライン上の組織のため、既存の法的枠組みには入りません。オンラインに国境はなく、利益が出た場合はどの国に税金を支払うのか、登記をどの国でするのかなどの問題を解決する必要があります。

一国だけでの法整備でなく、国際的な法の整備が急務となっています。

DAOのビジネスモデル事例7選

DAOは企業だけでなく地方自治体も作っています。ここでは、DAOの主なビジネスモデルを7つ紹介します。

  1. Augur
  2. 美しい村DAO
  3. 山古志DAO
  4. Nouns DAO
  5. Roopt神楽坂DAO
  6. Mirror
  7. Ukraine DAO

DAOは多くの人を集めて公平に運営することが基本です。アイデア次第で様々な活動ができるでしょう。

1. Augur

Augur(オーガ)は分散型未来予測プラットフォームです。誰でも自由に予測市場を作ることも、予測に参加することもできます。

実在の予想市場にはスポーツの結果などを賭けるブックメーカーやカジノなどがありますが、すべて仲介者が利益を得られるようになっており、不正が行われることもあります。

Augurでは人が仲介せずとも自動的に契約を実行できるスマートコントラクトを採用することで、ブックメーカーなどの仲介者を通さない予想市場を作れるようになりました。

また、予測結果の認定を行うレポーターという人がおり、デポジットを払って認定作業をするための不正を防ぐシステムを採用しています。レポーターは正しい認定を行えば報酬が手に入り、間違っていればデポジットが没収されます。

参考:Augur

2. 美しい村DAO

美しい村DAOは、2023年8月現在、鳥取県智頭町と静岡県松崎町が合同で提供している共創型地方創生プラットフォームです。

複数の自治体が運営するDAOは日本で初めてで、地方自治体が持つ財政不足などの課題をクリアしています。

美しい村DAOのメンバー(デジタル村民)になるには、デジタル村民証のNFTを購入する必要があります。NFTは非代替性トークンと訳され、偽造が困難で唯一無二のデジタルデータのことです。

デジタル村民になると、現地に住む村民と同じように施設の割引を受けられ、環境イベントに参加することができます。

デジタル村民証には智頭町と松崎町の2種類がありますが、どちらを購入しても同じ特典を受けられるため、購入者にも地方自治体にもフェアなシステムです。

デジタル村民証を購入してDAOのメンバーになると、美しい村DAOで作られたNFTに投票することができ、美しい村のイメージをメンバー全員で守っていこうという意識が高められます。

NFT購入により地方自治体を応援し、現地で特典を使うことで地域活性化にも貢献できると期待されています。

参考:美しい村DAO

3. 山古志DAO

新潟県山古志地域は、住民が800人まで減少し高齢化率55%の限界集落です。それでも山古志独自のアイデンティティを守るため、エストニアの電子住民票(※)をヒントにNFTのデジタル住民票を発行しました。

山古志は錦鯉ファンが世界中から集まるくらい有名な錦鯉の生産地のため、錦鯉をデザインしたNFTアートを販売し、現在1,000人以上がNFTを保有しています。

NFTを購入した人にはデジタル住民票が発行されるため、2回目のNFT販売でデジタル住民票の数が実際の山古志の住民の数を上回りました。

デジタル村民と実際の住民の交流を深めるために、実際の住民へのNFT無料配布や、山古志デジタル村民総選挙を行っています。

山古志デジタル村民総選挙では、山古志を存続させるためのプロジェクトプランをデジタル村民が提案し投票で順位を決めることで、主体的に地域づくりに参加できるようになっています。

参考:仮想山古志プロジェクト

(※)エストニアの電子住民票はe-Residencyと言い、居住地や国籍に関係なく誰でもエストニアのデジタル住民になれるというものです。実際の国民ではないためエストニアに住むにはビザが必要です。

4. Nouns DAO

Nouns DAOは、NounというNFTアートを所有している人たちで構成された組織です。Nounはピクセルアートのようなキャラクターが描かれているNFTで、毎日1体ずつ自動生成されます。

自動生成されたNounは毎日24時間のオークションにかけられ、競り落とした人がNounホルダーとなります。Nounは同じものがなく数も少ないため希少性があり、高値で競り落とされることが多いです。

Noun販売の売上金額は全額Nouns Daoの口座「Treasury(トレジャリー)」に入ります。Noun所有者は提案や投票ができ、活動資金をどのように使うかを公平に決められます。

Nounはパブリックドメインなので二次創作が可能です。Noun市場が活況すればよりNounの価値が高まり、Nouns DAOが活発化すると考えられています。

参考:Nouns DAO

5. Roopt神楽坂DAO

Roopt神楽坂DAOは、学生起業家を対象としたDAO型のシェアハウスです。一般的なシェアハウスはオーナーが管理していますが、DAO型シェアハウスは入居者と出資者が運営に関与します。

トークンを購入することでシェアハウスの入居権利が与えられ、保有数により投票権の数が決まります。トークン保有者と運営会社がシェアハウスの運営方法や予算の使い方を議決するシステムです。

シェアハウスをDAO型にすることで、入居者は住環境について気兼ねなく話し合うことができ、細かなニーズを拾うことができます。

参考:Roopt神楽坂DAO

6. Mirror DAO

Mirror DAOはブロックチェーンを利用したブログサービスです。執筆したブログはNFT化して販売することができます。購入したブログは転売が可能で、売買されると執筆者にも収益が入ります。

一般的なブログでのマネタイズ方法はアフィリエイト収入ですが、Mirror DAOでは自分のブログを販売してマネタイズするシステムです。

サブスクリプション機能やクラウドファンディング機能もあり、資金集めにも役立ちます。

参考:Mirror DAO

7. Ukraine DAO

Ukraine DAOは軍事侵攻されたウクライナへの支援を募る組織です。ウクライナ国旗のNFTを販売し、開始後24時間で8億円の資金を調達しました。

Ukraine DAOで集められた資金はウクライナの市民団体に送られて医療などに使われています。

既存の支援では資金がどのように運用されたのかわからないことが多いですが、DAO型組織にしたことで資金の運用方法が可視化され、誰でも使い道を確認することができます。

参考:Ukraine DAO

DAOのビジネスモデルはこれからも増える

この記事では、DAOのビジネスモデルの特徴と課題、事例について説明しました。

現在はまだ株式会社などの中央集権的な組織が一般的ですが、徐々に決定権を分散させてDAOのように経営していく組織がこれから増えていくと考えられています。

DAO型のビジネスモデルでは、所属メンバーが主体的に考え行動できる組織となるため、高いモチベーションを持続しながら働くことができるでしょう。

将来のWeb3.0が浸透した社会を見据えたビジネスモデルを検討することが大事です。

セミナーズ通信

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