
- DAOという言葉をよく聞くけれども、どういう意味なのだろう?
- DAOと従来の組織は何が違うのか?
- DAOは今後の社会やビジネスにどう影響するのか?
上記のような疑問を感じている方は多いのではないでしょうか。
今回は、DAOの仕組みやメリットのほか、現状抱えている問題点について解説します。
DAOが今後の社会やビジネスにもたらす影響にも触れていますので、ぜひ参考にしてください。
DAOとは何か?

はじめに、DAOの定義と従来型組織との違いを押さえましょう。
DAOが成立した歴史的背景を知ることで、理解がいっそう深まるはずです。
分散型自律組織
DAO(ダオ)はDecentralized Autonomous Organizationの略で、日本語では分散型自律組織と訳されます。
ブロックチェーン技術の活用により、メンバーが管理・運営する民主的な仕組みを実現した組織と捉えてください。
民主的に運営される組織のため、組織のルールや運営方法を誰もが検証できるのが特徴です。
メンバーは誰もが等しく提案の権限を持ち、メンバーの投票によって意思決定がなされます。
コミュニティ内で合意が形成されれば、提案事項に貢献したメンバーに対してインセンティブが支払われる仕組みです。
従来の組織との違い
DAOと従来の組織との違いについて、イーサリアム財団は次のようにまとめています。
DAO | 従来の組織 | |
組織構造 | 通常はフラットな組織で、完全に民主化 | 通常は階層的 |
運営方針 | 変更を実行するには、メンバーによる投票が必要 | 組織構造によっては、単独の当事者から変更が要求されることがあり、または投票が行われる場合がある |
投票結果 | 投票は集計され、結果は仲介者なしに自動的に実行される | 投票が可能な場合、投票は内部で集計され、投票結果は手動での処理が必要 |
サービス 提供方法 |
提供されるサービスは、自動的に分散化された方法で処理される
|
人間による処理、または集中管理された自動化を必要とし、改ざんされるおそれがある |
情報公開 | すべてのアクティビティは透明で完全に公開 | 通常、アクティビティは非公開 |
DAOは、従来の組織が抱えていた階層構造や中央集権、人為性、閉鎖性といった課題の解決に繋がる可能性を秘めた仕組みです。
経営者や管理者が指揮をとり、メンバーは組織のルールに則って従属的に行動するのが従来型組織の一般的なあり方でした。
メンバー1人1人が公平に権限を持つフラットな組織のあり方が、DAOの仕組みによって実現可能になるといわれているのです。
DAOの歴史
DAOの歴史は2013年まで遡ります。
DAOの提唱者は、暗号資産EOSの開発で知られるプログラマー、ダニエル・ラリマー氏です。
当初は会社組織を想定していたため、DAC(Decentralized Autonomous Corporation)と呼ばれていました。
世界初のDAOは、2016年に設立された「The DAO」といわれています。
The DAOは約1億5,000万ドルの資金調達に成功したものの、脆弱性を突かれて資金流出を招く結果となりました。
The DAOの失敗を契機にセキュリティの向上や法整備が図られ、DAOが理想とする組織運営が現実味を帯びていったのです。
DAOの仕組みを理解する上で必要な3つのキーワード

従来型組織とは異なるDAOの仕組みは、どのようにして実現されているのでしょうか。
DAOの仕組みを理解する上で、必ず押さえておきたいキーワードがあります。
「ブロックチェーン」「スマートコントラクト」「ガバナンストークン」の3つのキーワードについて解説します。
ブロックチェーン
DAOはブロックチェーン技術を基盤として成り立っている仕組みです。
ブロックチェーンは分散型ネットワークと暗号技術によって、次の性質を実現しています。
・台帳に記録された情報の改ざんが困難な耐改ざん性
・取引履歴をたどることができるトレーサビリティ
ブロックチェーン技術は、ビットコインやイーサリアムといった暗号資産(仮想通貨)にも活用されています。
暗号資産には取引所はあるものの、暗号資産そのものを特定の国や組織が発行・管理しているわけではありません。
ブロックチェーン技術を通貨に活用した事例が暗号資産、組織運営に活用した事例がDAOと捉えて差し支えないでしょう。
誰もが参加でき、中央管理を必要としないDAOの仕組みは、ブロックチェーン技術抜きでは成立しないのです。
スマートコントラクト
スマートコントラクトとは、契約の検証・執行・実行・交渉などに活用されるコンピュータープロトコルの総称です。
より具体的に表現するなら、ブロックチェーン上で取り交わされる契約と捉えてよいでしょう。
あらかじめ設定された条件を満たした場合、取引が自動的に実行される仕組みになっています。
自動販売機に商品の代金を投入し、所定のボタンを押すと商品が提供されるのと似た仕組みと考えてください。
スマートコントラクトによって契約書のやり取りは不要となり、合意内容の改ざんが不可能な仕組みが実現されたのです。
ガバナンストークン
DAOの運営においては、意思決定はメンバーの投票によって行われます。
投票に活用されているのがガバナンストークンです。
トークンとは暗号資産の一種で、DAOのメンバーとなるには固有のガバナンストークンを保有する必要があります。
ガバナンストークンは、従来型の企業組織が発行する株式と意味合いが近いと捉えてください。
企業組織においては株式が組織全体の議決権に直結しますが、ガバナンストークンの保有率は投票権にのみ影響する点が異なります。
ガバナンストークンを多数保有していたとしても、DAOを恣意的に操ることはできない仕組みになっているのです。
DAOのメリット

DAOは従来型組織では困難とされてきた仕組みや運営方法が実現できる仕組みです。
DAOの主なメリットとして、次の3点が挙げられます。
公平で民主的な組織運営が可能
DAOには中央管理者が存在しないため、全てのメンバーが公平に提案・投票することができます。
上下関係のないフラットな組織のあり方は、従来型組織において繰り返し議論されてきました。
ティール組織やホラクラシー組織など、理想的な組織のあり方は提唱されているものの、実現化は容易ではないのが実情です。
DAOは公平で民主的な組織のあり方が仕組みのレベルで実現されているため、従来の組織が抱えていた問題が生じません。
発言権を持つ一部の人物が組織にとって重要な意思決定をする、といったことが起こり得ないのです。
組織運営の透明性が高い
DAOの運営や契約上のルールは、スマートコントラクトによって実行されています。
取引や投票の履歴はブロックチェーンに記録される上に、一度記録された履歴を改ざんするのは困難です。
誰かが意図的に組織運営のあり方をねじ曲げる、といったことができない仕組みになっているのがDAOの特徴といえるでしょう。
組織運営の透明性が高く、不正が行われにくい仕組みを整備できることはDAOの大きなメリットの1つです。
所有権が分配される
DAOの所有権は、メンバー全員に分配されます。
ガバナンストークンを保有することがDAOへの参加条件であると同時に、DAOの所有権を保有することにもなるのです。
たとえば株式会社の場合、会社を所有しているのは株主のため、株式を保有していない従業員には組織の所有権がありません。
DAOに関わる全てのステークホルダーに所有権が分配されることで、全員がDAOの成長に意義を見出しやすくなるでしょう。
従来の組織に見られた創業者や一部投資家への所有権の集中を回避できることは、DAOに特有のメリットといえます。
DAOが抱える問題点

DAOは従来型組織とは異なる仕組みのため、新しい組織のあり方に特有の問題も抱えています。
次に挙げる2点は、DAOの問題点として把握しておく必要があるでしょう。
法整備が追いついていない
DAOは既存の法律では定義されていなかった組織のあり方です。
たとえば現行の会社法では、ブロックチェーンを基盤とした組織をどう扱うかは言及されていません。
日本だけでなく諸外国においても、DAOに関する法整備が追い付いていないのが実情です。
一方で、地域によってはDAOを正式に法人として認める動きも見られます。
- DAOを有限責任会社として認めた(アメリカ・ワイオミング州/2021年4月)
- DAOを法人として承認する法改正を可決(マーシャル諸島/2022年2月)
上記の動きに追随する国や地域も現れることが予想されるため、法整備の問題は徐々に解決されていくでしょう。
少なくとも2023年3月時点の日本においては、DAOの法人登記は認められていないことを押さえておく必要があります。
意思決定に時間がかかることがある
DAOの民主的な運営は、ガバナンストークンによる投票によって維持されています。
どのような決定にもメンバーによる投票が必要となるため、場合によっては意思決定に時間がかかることもあるのです。
既存の会社組織などでは、上層部による「鶴の一声」で物事が決まっていく場合もあります。
良くも悪くもスピーディな意思決定が可能であることは、状況によってはメリットにもなり得るのです。
ハッキングやスマートコントラクトの脆弱性が発覚した時など、緊急性を要する場合に意思決定の遅さは弱点になりかねません。
DAOは社会やビジネスをどう変えていくのか?

DAOの特徴やメリット・デメリットへの理解が深まったでしょうか。
最後に、DAOが今後の社会やビジネスをどう変えていく可能性があるのか、より長い視点で見ていきます。
DAOは一時的なブームや流行ではなく、世の中の仕組みや私たちのライフスタイルを根底から変える可能性を秘めているのです。
従来のWebからWeb3へ
最近よく耳にするようになったWeb3は、DAOと非常に関連性の高いトピックです。
従来のWeb(Web2.0)では、ユーザーは管理者が提供するプラットフォーム内で情報をやり取りするしかありませんでした。
GAFAMに代表される巨大IT企業に、世界中のユーザーの情報が集中していることを懸念する声も聞かれます。
一方、Web3は従来のWebのような管理者を必要としない分散型インターネットの仕組みです。
中央集権的でないことや、特定の管理者が不在であることなど、DAOとのコンセプトの共通点が多々あります。
近い将来、Webも組織も「誰かが管理すべきもの」ではなくなっていくかもしれません。
所有から共創へ
従来、モノや組織には特定の所有者が存在するのが常識でした。
会社組織であれば株主、自動車や住宅であれば所有者に所有権が帰属していたのです。
DAOは特定の人物が全体を所有できない仕組みになっています。
分散型自律組織のあり方は、より広い意味で捉えると分散型社会が到来する予兆の1つとも考えられるのです。
シェアリングエコノミーが浸透すれば、自動車や住宅も「所有するもの」から「共有するもの」へと移り変わっていくでしょう。
組織も同様に、所有から共創へと生まれ変わっていく可能性を秘めているのです。
金銭から信用へ
資本主義社会では、さまざまな取引や契約に金銭が必要になるのは一般的なことでした。
たとえば、大きな事業を実現したい場合は多額の融資を受けるなど、金銭によって信頼を獲得することが求められています。
一方、DAOの場合はガバナンストークンさえ保有していれば、誰もが参加可能です。
経営者と従業員、資本家と労働者といった区別は存在しません。
提案を通すには、メンバーの投票によって承認を得る必要があります。
金銭ではなく信用が重視される社会への移行を予期させる組織のあり方といえるでしょう。
まとめ
DAO(分散型自律組織)は、新しい組織のあり方として注目を集めています。
従来型組織とは異なる組織が実現できることは、画期的な変化といえるでしょう。
一方でDAOの台頭は、これから世界が歩んでいくであろう未来の一端を映し出しているとも解釈できます。
ぜひDAOの概念への理解を深めて、分散型社会の到来に備えてください。
誰もが等しく繋がるフラットな社会のあり方は、従来とは全く異なる新鮮なビジネスのアイデアをもたらしてくれるかもしれません。
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