SMARTの法則は時代遅れ?効果的な目標設定の方法と注意点

最終更新日: 2024/01/17 公開日: 2023/01/09

ビジネスにおいて目標達成は非常に重要です。

到達すべき場所が分からなければ、日々の仕事でも明確な方向性が分からないまま何となく進めることになるからです。

定期的に目標設定が必要になりますが、次のようなことを考えているビジネスパーソンも多いことでしょう。

「どのように目標を設定すればよいか分からない」
「目標を立ててもなかなか達成できない」
「目標に対するモチベーションが維持できない」

この記事では、SMARTの法則を用いた目標達成の方法と注意点、さらにより高い目標を立てるためのフレームワークについても解説します。

SMARTの法則とは

SMARTの法則とは、目標を立てる時に用いられるフレームワークのことです。

1981年に米国のジョージ・T・ドラン博士が論文において発表しました。

SMARTの法則では、5つの要素に沿って明確な目標を設定することで達成の可能性が高まると言われています。

SMARTは次の5つの言葉の頭文字を取った言葉です。

  • Specific:具体的で明確な
  • Measurable:計量的で数字で測れるもの
  • Achievable:達成可能な
  • Relevant:関連のある
  • Time-bound:期限を決めている

この5つの要素を満たす目標を立てられれば、やるべきことが明確になり日々のモチベーションも維持しやすくなります。

ビジネスシーンでは、人材採用や人材育成、人事考課、営業目標などにも活用されています。

明確な目標達成のためのメソッドとして、こちらの記事もオススメです。

SMARTの法則を目標設定に活用するメリット

SMARTの法則を使って目標を作成することで、次のようなメリットが得られます。

成長が加速する

具体的で高いレベルの目標を設定できると、その目標に向かって主体的に取り組むことができます。

パフォーマンスが上がり、個人の成長はもちろん組織の成長にも繋がっていきます。

評価基準が明確になる

目標が明確になれば、上司と部下の間に共通の認識が作られます。達成度も的確に判断できるため、公平な人事評価を行えるはずです。

また、評価する側とされる側双方が納得いく評価結果を出すことができるでしょう。

SMARTの法則の5要素と目標の立て方

SMARTの法則は5つの要素で構成されています。それぞれの要素について解説していきます。

ただし、必ずしもすべての要素を入れなければいけないということはありません。企業や組織の方針に沿って、要素を置き換えたり追加したりも可能です。

1.Specific(具体的)

目標はSpecific(具体的)である必要があります。

目標が曖昧では、達成への実行計画も曖昧なまま進めることになります。目標を達成できているのかどうかも不明瞭で、目的意識も弱くなってしまうでしょう。

立てた目標を誰が見ても同じ認識ができることが重要です。

Specificな目標の立て方

例えば、「お客様の幸せに貢献する」「会社の売上に貢献する」という目標は、叶えたいことは分かります。しかし、具体的に何をするべきなのか、何をもって貢献できていると判断するのかの基準が曖昧です。

「新規のお客様を前期の10%アップとする」「売上を前年比115%にする」など、次の行動計画が立てやすい目標を設定しましょう。

また、後輩や部下の育成を目標にする場合、次のように定義をすることで行動に落とし込みやすくなります。

  • 部下が新規アポを5件取れるようにサポートする
  • 新しい企画を立案できるようにする

2.Measurable(計測できる)

Measurableは、計量可能という意味です。ここでは、数値化した目標であることが重要です。

Specificにも似ていますが、目標の達成度を明確に測れるかどうかが重視されます。

数値化することで、目標と現状のギャップも認識しやすく、目標までのルートが明確になります。客観的な評価ができるよう、具体的な指標を用いて作成しましょう。

Measurableな目標の立て方

例えば、「できるだけ多くのアポを取る」では基準がなく、評価しづらいものです。

自分自身もどれくらいの行動をすればよいかの指標がないため、モチベーションも上がらないでしょう。

「月に10件の新規アポを取る」や「半期の売上目標〇〇万円」など明確な数値を用いて目標を立てます。

3.Achievable(達成可能)

SMARTの法則で設定する目標は、無理にAchievable(達成可能)である必要があります。高い目標を立てることはとても大切ですが、実現不可能では意味がありません。

途中で目標が達成できないかもしれないと思ってしまうと、モチベーションも下がるでしょう。

少し背伸びをすれば届くかもしれないという、現実的かつ成長に繋がる目標であることが大切です。

Achievableな目標の立て方

現在の売上が月100万円程度である場合に、「月1000万円の売上にする」というのは実現可能性が極めて低い目標です。

現状から1.2倍の目標を設定すると効果的だと言われています。

例えば、今の売上が100万円であれば、120万円を目指します。プラス20万であれば困難な数字ではなく、少しがんばれば達成できる目標となるでしょう。

4.Relevant(関連性がある)

Relevant(関連する)な目標とは、「組織の目標と関連している」「個人の将来の成長に繋がっている」などを表します。

達成した先に、自己実現や個人の利益、組織の成長があればモチベーションが維持できます。

会社と個人の両方に利益がでる目標であれば、より主体的に行動できるでしょう。

Relevantのある目標の立て方

会社にインセンティブ制度がある場合、「達成すればボーナスが出る」といった個人の金銭的利益に繋がる目標であれば、達成した先の姿がイメージしやすく社員のモチベーションアップにもつながります。

お客様から依頼を受けて仕事をしている場合、「集客効果〇倍」という目標を立てて達成できれば、お客様の利益にも繋がります。

5.Time-bound(期限がある)

目標には必ず期限を設定することが必要です。いつまでにという期限がなければ、何となく惰性で業務を進めることにもなりかねません。

具体的で達成可能な目標を立てているにもかかわらず、期限がなければモチベーションも維持しづらいでしょう。

目標達成の期限が、明確かつ妥当かどうかも確認することが大切です。

Time-boundを決めた目標の立て方

企業であれば、半期目標や年間目標を立てる場合も多いのではないでしょうか。

6カ月や1年といった期限はもちろん、1カ月などの短期目標も立てることで、より行動しやすくなります。

SMARTの法則を活用するための注意点

SMARTの法則を使って目標を設定する際や、目標を作成した後に注意することを3つ解説します。

目標を低くしすぎない

目標は実現可能なものである必要がありますが、低すぎてもいけません。簡単に達成できては、個人の成長に繋がらないからです。

前述したように「少し背伸びをして達成できる目標」であることが重要です。

PDCAサイクルを回す

目標は一度作成して完了ではありません。目標に向かって日々行動できているかどうかを検証し、改善することも大切です。

  • 目標まであとどれくらいか
  • 計画したとおりに進んでいるか
  • 達成まで遠い場合、要因は何か
  • 改善すべきポイントはあるか

これらの事を意識しながら、目標と現在地の確認が重要です。

PDCAサイクルを回すことにより、モチベーション維持にもなるでしょう。

PDCAの効果的なやり方については、こちらの記事も参考にしてください。

達成目標から逆算した行動目標

「売上目標〇〇万円」という達成目標を立てた場合、達成のためにどのような行動をするべきかも考える必要があります。

行動の目標を決めることで、目標達成の確率も上がると言われています。

「1日〇件電話をする」
「月〇件のアポを取る」
「1件当たりの単価を〇円にする」

このように、達成目標から細分化して行動目標を立てましょう。

SMARTの法則から生まれた新しいフレームワーク

約40年前に提唱されたSMARTの法則は、時代遅れと言われることもあります。新しい項目を入れることで、新たな概念として活用されています。

ここでは、SMARTの法則から派生した新しいフレームワーク3つをご紹介します。

SMARTER

SMARTの法則に「E」「R」を追加したものです。

E:Evaluated(他者からの評価)
R:Recognized(認識・承認)

立てた目標が上司に評価されているか、承認を得ているかどうかを意味します。目標が組織の方向性と違っていては意味がありません。

EとRを追加することで客観性が上がり、より評価基準が明確になります。

SMARRT

SMARTの法則に「R」を追加したフレームワークです。

R:Realistic(現実的)

Achievableと同様の意味ですが、現実的で合理的かどうかが重要となります。

SMARTTA

SMARTの法則に「T」「A」が加えられたものです。

T:Trackable(追跡可能)
A:Agreed(同意、合意)

Trackableは目標に対する行動を振り返り、現在地を認識できるかどうかという意味です。

振り返りができれば、これまでの行動がどのように結果に結びついているかを検証できます。

合意とは、その目標が組織の中で合意を得られ、メンバーが納得しているかどうかを表します。組織の成長のためにも重要な要素と言えます。

より高い目標を立てるためのFASTの法則

FASTは2018年に新たに提唱された目標達成のためのフレームワークです。

  • Frequent:頻繁に議論される
  • Ambitious:野心的
  • Specific:具体的で明確
  • Transparent:組織全体から見える透明性

提唱者のDonald Sull氏とCharles Sull氏は「SMARTの法則では企業のパフォーマンスが低下する可能性がある」として、FASTの法則を推奨しています。

より高い目標を設定し、パフォーマンスを向上させながらモチベーションを上げることを目的としています。

SMARTの法則とFASTの法則の違いとは?

SMARTの法則とFASTの法則の大きな違いは、達成の可能性ではなくより高い目標を目指す点です。

SMARTの法則では達成に左右され、目標を低く設定してしまうことがあります。

一方でFASTは、「完全に達成できそうにはない目標」を設定し、従業員のパフォーマンスとモチベーションを向上させるものです。

そして目標は忘れてしまっては意味がないため、頻繁にミーティングにおいて議論を行い、見直す機会を作る必要があります。

目標の透明性を上げることで、組織力を高めることにも繋がるでしょう。

効果的な目標で個人と企業の成長を目指そう

明確な目標を設定することは、個人と企業の成長に大きく影響します。SMARTの法則を使えば、具体的で効果的な目標が立てられるでしょう。

40年前のフレームワークではありますが、未だ企業では注目され活用されています。

より高い目標を立てたいとお考えの方は、SMARTの法則から派生した3つのフレームワークやFASTの法則なども利用してみてください。

個人のスキルアップや事業活性化のためにも、ぜひSMARTの法則を取り入れてはいかがでしょう。

セミナーズ通信

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最終更新日: 2024/01/17 公開日: 2023/01/09