
アシミレーションは、アメリカのゼネラル・エレクトリック社(GE)を筆頭に、海外でよく導入されている組織開発の手法です。
アシミレーションには、「融合」「同化」という意味があります。
アシミレーションをすることで、上司と部下、チームリーダーとメンバーといった上下関係のある人同士の相互理解を深め、関係の構築を進めることができます。
最近は国内の企業でも実施されることが多くなりましたが、まだ日本では馴染みが薄いのではないでしょうか。
「アシミレーションを行ったが、愚痴の言い合いになってしまった」
「アシミレーションを成功させるコツを知りたい」
「アシミレーションをいつ行うのが効果的なのだろう」
このような悩みを持つ方や、アシミレーションの実施を社内で検討されている方のために、この記事では実施方法と実施のタイミング、実施する際の注意点を解説します。
アシミレーションの実施方法

アシミレーションは、どのように実施するのでしょうか。この章では、アシミレーションの実施方法を5つのステップに分けて解説します。
- 実施計画を立てる
- ファシリテーターを選出する
- ファシリテーターがチームメンバーの意見を聴く
- ファシリテーターがチームリーダーにメンバーの意見を伝える
- チームリーダーが意見に対してコメントする
アシミレーションでは全員の公平性が求められます。
しっかりとやり方を理解して、有意義な時間にしてください。
もしも社員育成について情報が欲しい方は、今回の記事と合わせて、こちらの記事もぜひご覧ください。
①実施計画を立てる
アシミレーションには、チームリーダーとチームメンバー全員が参加します。
そのため、日時の調整が必要なことが多いです。
アシミレーションは、チームメンバー全員の意見を引き出す必要があるため、時間がかかります。
アシミレーションを導入していることで有名な、アメリカのゼネラル・エレクトリック社(GE)では、3時間も議論するそうです。
アシミレーションをしている間、他の部署に協力を仰ぐ必要も考えて、実施計画を立てましょう。
②ファシリテーターを選出する
ファシリテーターは、アシミレーションの進行役で、人事部の社員がすることが多いです。
ファシリテーターは、アシミレーションが成功するか否かを担う大切な役目であるため、人事部でなくても、中立的な立場の人を選びましょう。
チームメンバーの意見をうまく引き出し、それをチームリーダーに丁寧にアドバイスできる人が適任です。
③ファシリテーターがチームメンバーの意見を聴く
アシミレーションが始まったらまず、チームリーダーが退席します。
ファシリテーターは、チームメンバーに質問をしつつ、意見を引き出していきます。
- リーダーについて知っていること・知らないこと
- リーダーについて知りたいこと
- リーダーに知っておいてもらいたいこと
- リーダーにどんなことを期待するか
- リーダーの長所・短所
ファシリテーターは客観的にメンバーの話を具体的に落とし込み、紙に書くなどしてまとめます。
④ファシリテーターがチームリーダーにメンバーの意見を伝える
ファシリテーターがメンバーの意見をまとめたら、メンバーは全員退席し、代わりにチームリーダーが入室します。
ファシリテーターは、リーダーにメンバーたちの意見を話し、必要に応じてアドバイスも行います。
チームメンバーがいないところで意見を話すのは、誰がどの意見を出したのかがわからないようにするためです。
リーダーにとって耳の痛い話もありますが、だからこそ肯定的に受け入れる姿勢が求められます。
⑤チームリーダーが意見に対してコメントする
ファシリテーターとチームリーダーの話が終われば、チームメンバーが入室します。
全員が揃ったところで、チームリーダーは意見に対して自分の意図や考えをメンバーに伝え、質問があれば回答します。
チームリーダーはメンバーの意見を肯定しつつ意見を述べましょう。
チームメンバーは意見を肯定されることで、自分たちの意見を理解してもらえていると感じられます。
また、チームリーダーもメンバーに対して質問があれば、この場で質問をします。
アシミレーションは、お互いの長所・短所を知り、チーム全体の相互理解を深めていくための時間です。
自分の主張ばかりでなく、客観的に話すようにしましょう。
アシミレーションはチームの結束におすすめな手法ですが、もし別目線での情報が欲しいという場合には、こちらの記事もおすすめです。
アシミレーションを実施するタイミング

アシミレーションの実施には、下記のタイミングがおすすめです。
- 新しいチームリーダーが着任したとき
- 既存チームを活性化させたいとき
- 企業理念を社員に浸透させたいとき
最適なタイミングを見極めてアシミレーションを実施し、最大限の効果を得ましょう。
新しいチームリーダーが着任したとき
新しいチームリーダーが着任した当初は、お互いがどのような人物なのかわからないため、遠慮してしまうことが多くなります。
チームリーダーが積極的にコミュニケーションを持とうとしても、メンバーは気が引けてしまっていることもあります。
新チームリーダーの着任から1か月後くらいにアシミレーションを実施することで、チーム内での意思疎通を図りやすくなります。
既存チームを活性化させたいとき
長年メンバーが変わらず落ち着いている既存チームは、一見何の問題もないように見えます。
しかし実際は、課題が表面化していないだけということもあります、
惰性で業務をこなしていたり、問題を容認してしまっていたり、悩みを我慢してしまっているメンバーも増えてきます。
アシミレーションで本心を打ち明けることで、チーム全体の刺激になり、既存チームの課題の顕在化や業務の効率化を目指すことも可能です。
企業理念を社員に浸透させたいとき
大企業になればなるほど、社員に企業理念やビジョンは行き渡らなくなりがちです。
部署や支社間の連携がうまくいかないときや、部署内や個人の成績を重視する社員が増えてきているときは、本社や管理部門の意思が届いていないと考えられます。
だからこそ、アシミレーションで社員が会社や経営陣に対して率直に意見を述べることが大切になります。
経営陣はビジョンを詳しく示し、会社全体の考え方や目標が統一化されるようにしていきましょう。
アシミレーションのメリット

アシミレーションの目的は、下記のようにチームリーダーとメンバーの信頼関係を深めることにあります。
- チームワークが向上する
- 生産性が上がる
- チームメンバーとリーダーの考え方の相違を回避できる
- 職場環境がより良くなる
アシミレーションを実施するメリットを4点解説します。
チームワークが向上する
アシミレーションでチームリーダーとメンバーの双方が意見を伝えあうことで、相互理解が深まります。
相互理解があると、メンバーは自分もチームの一員だとの意識が強くなり、チーム全体に一体感が生まれます。
チームメンバーの結束力も強力になるため、もし問題が起こっても、チーム一丸となって問題解決できるようになるでしょう。
生産性が上がる
アシミレーションをすることで、チームリーダーとメンバーはコミュニケーションがとりやすくなります。
相互に話がしやすいと、リーダーはメンバーをまとめて全体目標などを共有しやすく、メンバーはリーダーへ新しいアイデアを出しやすくなります。
その結果、チーム全体の活性化になるため業務の効率化につながるということです。
チームメンバーとリーダーの考え方の相違を回避できる
ファシリテーターがチームメンバーの率直な意見をチームリーダーに伝えることにより、リーダーはメンバーたちが自分の指示や行動についてどう思っていたのかを知ることができます。
その後、リーダーはメンバー全員のいる前で、自分の指示や行動がどのような目的のためにあるのかを説明するため、メンバーたちもリーダーの意図を知ることができます。
リーダーは言わなくても察するだろうという考えを捨てられ、メンバーはリーダーの本意を知ることで、指示の通りに行動しやすくなります。
アシミレーションは、お互いの考え方を統一し、チームとして一丸となる役割も果たしています。
職場環境がより良くなる
チームメンバーとチームリーダー間のコミュニケーションが活発になると、職場環境が居心地の良いものになっていきます。
チームメンバーは自分のアイデアが取り入れられたり、リーダーが意見に耳を傾けてくれたりすると、自己肯定感の向上につながります。
チームメンバーはもとより、リーダーからも認められていると感じることができ、モチベーションを上げることができるようになります。
その結果、満足度は高く、離職率も下がり、人材流出を軽減することができるようになります。
アシミレーションの注意点

アシミレーションが成功するか否かは、ファシリテーターの力量にかかっています。
アシミレーションの主な注意点は、以下の3点です。
- 愚痴や悪口の言い合いにならないようにする
- メンバー全員が意見を言える配慮が必要
- 必ずメンバーの意見を匿名でリーダーに伝える
ファシリテーターは、チームメンバーが話し合う際のかじ取り役となります。
アシミレーションの目的を十分に理解して進行するようにしましょう。
愚痴や悪口の言い合いにならないようにする
アシミレーションを知らないチームメンバーは、ついリーダーの愚痴や悪口を言ってしまうこともあります。
そのようなときは、ファシリテーターが「なぜそう思うのか」「チームリーダーにどのように変わってほしいのか」などを深掘りし、建設的な意見を引き出す必要があります。
アシミレーションは愚痴や悪口を言い合って慰め合う場ではなく、チームリーダーとチームメンバーとの相互理解を図る場であることを理解したうえで、参加してもらいましょう。
アシミレーションを始める前に、全員に「悪口や愚痴言う場ではない」と周知しておくと、スムーズな意見交換の場にすることができます。
メンバー全員が意見を言える配慮が必要
チームメンバーの中には、遠慮して意見を言わない人もいます。
ファシリテーターは、チームメンバー全員がリーダーについてどのように思っているかを聞かなければなりません。
もし一部のメンバーの話だけを聞いてしまうと、メンバーの意見に偏りが出て、リーダーへのフィードバックが十分に行えないからです。
ファシリテーターは、全員が均等に話ができるよう、あまり発言しない人には自ら質問するなどの工夫をすることが必要です。
必ずメンバーの意見を匿名でリーダーに伝える
ファシリテーターはチームメンバーの意見を聞いても、誰が何を言ったのかを漏らしてはいけません。
アシミレーションでは、ファシリテーターが自分の意見を匿名でリーダーに伝えてくれるという安心感があるからこそ成立します。
もしチームリーダーに誰が何を言ったのかが伝わってしまうと、特定のメンバーへ贔屓したり、虐げてしまうことに繋がりかねません。
いつもは言えない本音をメンバーに話してもらうためにも、必ず秘密を守りましょう。
アシミレーションで風通りの良い職場作りを
今回の記事では、アシミレーションのやり方や注意点、実施のタイミングなどを解説しました。
上司に面と向かって意見を言えない人はたくさんいることとでしょう。
逆に、部下のことをわかっているつもりでも、実は正しい理解をしていなかった上司もいるでしょう。
アシミレーションによって、お互いが裏で愚痴を言い合う風土をなくし、チームや部署、会社のために意見やアイデアを出しえるような職場をつくりましょう。
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