脳科学と心理学の違いは?間違えやすい特徴と実践したいこと

最終更新日: 2024/06/20 公開日: 2022/09/06

心理学と脳科学には明確な違いがあります。

心理学は「なぜ」人間がそのような行動をとるのかを追求し、脳科学は「どのように」脳が働いてその行動を生み出すのかに焦点を当てていることです。

今回は、心理学と脳科学の違いについてそれぞれの概要や共通点を詳しく解説します。ビジネスに活かせる知見も紹介しますので参考にしてください。

心理学とは│心と行動を科学する

心理学とは、人の心と行動の動きを科学的に解明しようとするものです。

それらを解明するアプローチとして、2種類の側面から研究されます。

  1. 人の認知や、行動の原理を客観的な視点から解明しようとするもの
  2. 個人が感じた主観的な思いや感情・経験を理論的な基礎におき解明しようとするもの

また、心理学は主に基礎心理学と応用心理学に分類されます。

基礎心理学…心のメカニズムを追求し、理論的に解明する学問のこと。(応用心理学の基礎となる部分のため、応用心理学を学びたい人は基礎心理学から学ぶこととなる。)

  • 発達心理学
  • 進化心理学
  • 認知心理学
  • 行動心理学
  • 社会心理学 など

応用心理学…基礎心理学を基とした、より実践的で日常に根差した人の心理を扱う。ビジネスや、マーケティングなどさまざまな場面で取り入れられている。

  • 臨床心理学
  • 産業心理学
  • 組織心理学
  • 犯罪心理学
  • 応用行動分析 など

私たちの心の動きはとても複雑です。特定の行動をすると、なぜあのような感情が引き起こされるのだろうと不思議に思うことはないでしょうか。

心理学は心と行動について科学的に解明することで実生活の多くの側面で活躍しています。

例えば次のようなものです。

  • マーケティングで人の購買意欲をそそり経済活動を促進させる
  • 犯罪の心理などを研究し、世の中の安全な生活に貢献する

どのように役立つかを解説していきます。

脳科学とは│脳の働きを追求する

脳科学とは、脳のそのものの働きによって引き起こされる現象を確かめようとするものです。

脳科学(のうかがく、英: brain science)とは、ヒトを含む動物の脳と、それが生み出す機能について研究する学問分野である。

対象とする脳機能としては視覚認知、聴覚認知など感覚入力の処理に関するもの、記憶、学習、予測、思考、言語、問題解決など高次認知機能と呼ばれるもの、情動に関するものなどである。

Wikipedia(脳科学とは

脳にはそれぞれの部位に名前がついており、それぞれに特徴があります。

例えば、以下は代表的な部位とその特徴です。下記以外にも脳には部位がさまざまあり、思考や感情をつかさどっています。

■前頭葉…脳の前方の部位。論理的思考や抽象的思考、感情の制御などをつかさどっている。

■前頭前皮質…前頭葉の前方の部位。(未来の)予定を立てたり、変化に対応したり適応したりする能力、自制心、他者にどう対応するかなど、最も複雑な知的機能をつかさどっている。

■側頭葉…こめかみの内側にある部位。主に記憶を補完する役目を担っている。

■小脳…頭の後方に位置し、運動制御や平衡感覚をつかさどっている。小脳は、脳全体の容積の10%を占める。

■扁桃体…アーモンドのような形をした脳の部位で、恐怖感情や情動反応をつかさどっている。脳の左右に一つずつ、合わせて2つあり、進化の過程において、最古の時代に形成された「爬虫類脳」の一部として保持されてきた。  

■海馬…脳の両側に一つずつ備わった、親指大の器官。記憶のほか、感情の制御、空間認識といった機能もつかさどっている。海馬は、運動によって最も影響を受ける脳の部位だと考えられる。

■側坐核…脳内にある小さな部位で、報酬系において中心的な役割を果たし、私たちの行動を制御している。

一流の頭脳(著者:アンダース・ハンセン 訳:御舩由美子)p310~312から項目を抜粋して引用

心理学と脳科学の違い

心理学と脳科学の違いは、対象とするものと研究方法に違いにあります。

心理学は心の動きを解明する学問であり、統計や実験を通じて科学的に追及するものです。

具体的には質問用紙を作成し回答してもらったり、実験を行いデータを集めたりすることで心の動きを分析します。

脳科学は脳そのものの働きを追求する学問で、脳の構造や機能を直接的に研究します。

具体的には、MRI(磁気共鳴画像)などの技術を使って、実際に人が行動しているときの脳の動きを確認するものです。

例えば、特定の課題を行っているときに脳のどの部分が活発になるかを調べることで脳の機能を理解します。

心理学と脳科学の共通点

心理学と脳科学は異なる視点から心と脳の働きを研究していますが、共通の目標に向かって相互に影響を与え合っています。

心理学と脳科学はそれぞれ異なる方法で人間の思考や行動を研究していますが、最終的には「人間の生活を改善すること」を目指すものです。

これら二つの学問が交差するところには、認知神経科学という新たな学問領域が生まれています。

認知神経科学とは、心理学的なアプローチと脳科学的なアプローチを組み合わせて人間の認知や行動をより深く理解しようとする学問です。


この分野では脳の活動を測定しながら、思考や感情の変化を追跡する研究が行われています。

心理学と脳科学の知見を統合することは、人間の思考や行動のメカニズムをより深く理解して生活の質を向上させるのに役つのです。

治療や教育方法の改善、仕事のパフォーマンスの向上など様々な面での応用が期待されています。

ビジネスに活かせる心理学の知見

ビジネスに活かせる心理学の知見をご紹介します。心理学は主に他者との関係性によって引き起こされます。

ビジネスに役立つ心理学の知見を見ていきましょう。

アドラー心理学│社員のマネジメントに役立つ

企業内のチームワークをよくして、従業員満足度を上げたい方には、特に知っていただきたい考え方です。

アドラー心理学はアルフレッド・アドラーによって開発され、「勇気づけ」と「共同体感覚」を基礎としています。

「勇気づけ」…苦難を乗り越えるための活力を与えること(できないことに対して、なぜできないのか?と怒ることはせず、互いの尊敬と信頼の関係から共感を示すこと)

「共同体感覚」…競争的な組織ではなく、共感や貢献をベースにした組織の集まりであること

NLP│脳と心の取り扱い説明書

NLPは「脳と心の取り扱い説明書」と言われる、比較的新しい心理学の考え方です。

Neuro Linguistic Programming(神経言語プログラミング)と言われています。

五感で刺激を受け取った後、どのような感情が引き起こされるのかを追求するものです。

例えば、今までに起きた不快な出来事から、実際に起きていないことに対してもマイナスイメージをいだくことがあります。

これには外部刺激に対して誤った認識の感情が働いているとされ、新たなプログラミングを学習させることもNLP心理学の一つです。

例えば、NLPには以下のような手法があります。

アンカリング…一定の動作から、引き出したい感情を引き出すテクニック。例えば、スポーツ選手は、試合前に独自のルーティンをおこなう人も多いです。
いつも同じ行動をすることで、心が整えられた状態で試合に臨めるのです。

NLPについてさらに詳しく知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。

ビジネスに役立つ心理学について知りたい方は以下の記事もご覧ください。

ビジネスに活かせる脳科学の知見

ビジネスに活かせる脳科学の知見をご紹介します。

今回ご紹介するのは、「運動」と「マインドフルネス」についてです。

この2つをおこなうと、仕事の生産性を上げるための脳の部位が活性化します。

詳しく説明をしていきましょう。

運動は脳の認知機能を上げる

運動は、認知機能アップが期待でき、脳に非常によい影響をもたらします。運動の脳の活性化でおこる効能をご覧ください。

海馬が大きくなり記憶力が上がる

運動をすると、記憶力をつかさどる脳の部分の海馬が大きくなり、記憶力が上がります。

一流の頭脳」(著者:アンダース・ハンセン  訳:御舩由美子)によると、海馬は通常一年で約1%ずつ縮んでいくとされています。

アメリカの研究チームは、120名の被験者を対象にある実験をおこないました。一つは、持久系のトレーニング。もう一つは軽いストレッチをするグループ。

一年後、持久系のトレーニングをしたグループの海馬の大きさが2%ほど成長していたことが発見されました。

年齢とともに、衰えると思われる記憶力が、持久系のトレーニングをすることで、むしろ上がることが分かります。

前頭葉が活性化して集中力が上がる

運動をおこなうと、前頭葉と頭頂葉が活性化するため、集中力が上がり、物事を処理するスピードが速くなります。

意前頭葉と頭頂葉は、意識を集中させて、その状態を維持させる力をつかさどる部位です。

運動をすると、前頭葉の細胞同士のつながりが強化されると考えられ、活性化が期待できると考えられています。

瞑想で脳が活性化する

瞑想は、脳を活発化させるためにぜひおこないたいものです。日常的に瞑想に取り組むことで、さまざまな効果が期待できます。

瞑想の具体的な効果をご紹介しましょう。

注意力が高まる

マインドフルネスをおこなうと、脳の認知機能がアップする中で、特に注意力に効果があると言われています。

注意力は、物事の様子をよく観察し、適切で素早い判断を下すことを求められる経営者の方には、なくてはならないものだといえます。

年齢を重ねても衰えない脳の働きを目指したい方へは、次の引用文を踏まえつつ、マインドフルネスを実践することををおすすめします。

ある総説論文にはこう書かれている。「最も有力な発見は、マインドフルネス瞑想の後、注意力が大幅に高まったことだ。刺激の過剰選択性が減り、持続的注意が増し、注意の瞬きがかなり減った。瞑想によって認知と実行機能全般が改善することを示唆する証拠もある」(省略)

「注意の瞬き」とは、脳がタスクを切り替えるときに経験する注意の遅れのことだ。タスクを切り替えるには500ミリ秒ほどかかる。目の瞬きとほぼ同じ感覚だ。年をとるにつれて、タスクの切り替えにかかえる時間は長くなる。しかし、脳にはマインドフルネスのトレーニングをさせると、その遅延を防ぐことができる。マインドフルネスを行うと、行わなかった同年齢の人と比べて、注意の瞬きの成績が約30%向上する。マインドフルネスをしない20代の人とほぼ同じレベルだ。

ブレイン・ルール: 健康な脳が最強の資産である. (2020). 日本: 東洋経済新報社. p121,122より引用

集中力が高まる

瞑想は、集中力をアップさせ、仕事のパフォーマンスを上げる働きがあります。

なぜなら、脳のDMN(デフォルト・モード・ネットワーク)という働きを抑える効果があるからです。

世界のエリートがやっている 最高の休息法――「脳科学×瞑想」で集中力が高まる」(著者:久賀谷 亮)によると、

DMNとは、

  • 内側前頭前野
  • 下頭頂小葉
  • 後帯状皮質

などでつくられる脳内ネットワークのことをさします。 意識的に何かを考えていないときに、おこなわれる活動です。(何も考えなくても浮かんでくる雑念などを言います。)

驚くべきことに、DMNは脳の消費エネルギーの60~80%を占めているとのこと。

私たちは、無意識に何か考え事をしていて、何かをしていなくても常に思考は動き続けています。

私たちが感じる疲労感は、DMNの過剰な活発が関係していることがあります。

意識的に瞑想をおこない、DMNの動きを抑えることで、脳を休息させることができ、集中力アップや仕事のパフォーマンスアップにつながります。

脳科学と心理学の違いを把握しよう

心理学との脳科学の違いとそれぞれのビジネスに役立つ知見をご紹介しました。

  • 心理学とは、心と行動について科学的に追及する学問
  • 脳科学とは、脳の働きによって引き起こされる現象を追求する学問

心理学と脳科学は、近い学問ですが、焦点をあてて追及する場所が異なることが分かりました。

2つの学問を取り入れ、ビジネス面で役立てていただけたら幸いです。

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