ラポールとは?心理学上の意味やビジネスで活用する手法を紹介

最終更新日: 2024/10/16 公開日: 2022/07/25

心理学のラポールが大切だと理解はしていても、活用方法や具体的な手法は知らないという人は多いです。

形成する方法について知りたい経営者の方も多いのではないしょうか。

「心理学のラポールとはどういう意味?」
「心理学のラポールを形成するためにはどうしたらいいの?」

心理学のラポールを築くと、組織の一体感が増すだけではなく相手とのつながりを感じられ社員の仕事への満足度も上がるでしょう。

成果を出すのみでなく、楽しく働く従業員を増やすうえでもラポールを形成することは大切です。

今回は、ラポールの概要や、ラポールの形成が企業にもたらすメリット、企業例やおすすめ本をご紹介しましょう。

以下の項目に当てはまる方は、ぜひご覧ください。

  • ラポールとは何かについて知りたい人
  • ラポールを形成する方法を知りたい人
  • ラポールを築くための企業の取組事例について知りたい人
  • 心理学のラポールについてのおすすめ本を知りたい人

心理学のラポールとは?

ラポールとは、人と人との間に生まれる信頼関係のことです。

ラポールは、臨床心理学で使用されるもので、セラピーやカウンセリングを円滑に進めるためには欠かせません。

主に心理療法で使用され、臨床心理士と療法を受ける人との関係にはラポールを築くのが前提です。

二人の間にラポールが築かれると、療法を受けている人は安心して心の内を話すことができ、本来の心の癒しを感じられます。

ラポールの開発者とは?

ラポールは、オーストラリアの精神科医であるフランツ・アントン・メスメルによって言葉が使用されたのが起源です。

その後、心理療法での臨床心理士と療法を受ける人との関係性をあらわす言葉へと発展していきました。

心理学のラポールをビジネスでも使用できる

心理学用語のラポールは、カウンセリングの技術のみでなくビジネスや恋愛、普段の生活など多くの場面で活用されています。

組織は人と人との信頼関係のうえで成り立つものです。

信頼関係が深まった状態で日々を過ごせれば社員の幸福度があがり、毎日を気持ちよく過ごせるでしょう。

やがて、社員が生き生きと自発的に働ける職場を作れます。

ラポールを形成するテクニック

相手とラポールを形成するテクニックを見ていきましょう。

この章では、個人単位でできる相手とラポールを形成すること、信頼感をもってもらうことのテクニックを、以下の4つご紹介します。

  • ページング
  • ミラーリング
  • バックトラッキング
  • キャリプレーション

ラポール形成に参考になる企業事例は後にご紹介いたします。ぜひご覧ください。

ページング

相手に声のトーンや、呼吸を合わせることによって、相手に信頼感を持ってもらいやすくなるテクニックです。

相手に合わせた動きには、話し方のスピードや声のトーンなどがあります。

例えば以下の事項が有効です。
  • 話し方を相手のトーンに合わせる(相手がゆっくりで静かな声であれば、それに合わせるようにする、相手の話すスピードが速ければ、同様にスピード感をもって話す)
  • 呼吸を合わせる(相手と同じような速さで呼吸してみましょう。相手とのつながりを感じる)

ミラーリング

ミラーリングとは、相手と同じような動きをすることで、相手に心を開いてもらいやすくなる方法です。

たとえば以下のようなことが実践できます。
  • 商談の際に、相手が身を乗り出したらこちらも同じように身を乗り出す
  • 相手の喜びの行動にあわせて、こちらも大きく喜びを表現する
相手に合わせた行動は、相手に共感していることを示せます。

ただし、もし相手に分かるくらいにミラーリングを行ってしまうとわざとらしくなってしまうので注意が必要です。かえって相手に不快感を与えてしまうので気をつけましょう。

バックトラッキング

バックトラッキングとは、相手の話したことに対して同じ内容で反応することです。

相手に共感を示していることや、相手の話を親身に聞いていることを伝えられます。

バックトラッキングは以下のように行います。

①「この前のプロジェクトのことで、悩んでおりまして。」

②「プロジェクトのことで、悩んでいるんですね。内容を聞かせていただけますか。」

このように相手の内容をいったん受容すると、相手が安心して話せる効果もあります。

キャリプレーション

キャリプレーションとは、相手が行っている声や仕草、表情などから相手の心理を読み取ろうとする行為です。

これは相手が話している内容に対して、心の内で不安を抱いているときに活用できます。

たとえば、仕事の話で相手が 「この前の社内の業務改善のお話ですが、〇〇のような進捗状況です。」と言うとします。

このとき、声のトーンが低かったり、こちらを直視できなかったりすると、何か不安を抱えているのだと察することが可能です。

これがキャリプレーションです。このような変化を感じたら、相手を気遣うような言葉をかけてあげるとよいでしょう。

そこから、話す人が本当に伝えたかった内容を聞き出せたり、信頼関係の構築につながったりすることもあります。

ビジネスにおけるラポール形成のメリット

ビジネスにおけるラポール経営のメリットは多くあります。

メリットを把握しておくと、ラポール形成の施策を社内で行うときに、目的をもって取り組めます。

ラポールを築くことで企業にもたらすメリットは以下の通りです。

  • 社員の企業満足度につながる
  • 心理的安全性が確保される
  • 活発なコミュニケーションがすすむ
  • 生産性が上がる
  • 企業の業績が伸びる可能性がある
  • 離職率が低下する

それぞれ順番に見ていきましょう。

社員の企業満足度につながる

ラポールを形成することで、社員同士の信頼関係を保てます。

社員同士で信頼関係ができれば、それぞれの人が協調性をもって相手との関係を楽しむことが可能です。

社員同士の信頼感は、やがて企業への信頼へとつながるでしょう。


その結果、企業に対する満足度も高くなると考えられます。

心理的安全性が確保される


心理的安全性とは、言葉の通り心理的に安全を感じている状態です。

自分がどのような発言や言動をしても、ほかの人は受け止めてくれるというような心理的に安全を感じる状態を指します。

心理的安全性が確保されていると、私たちは安心感をもって本来の力を発揮しやすくなります。

心理的安全性を確保するためには、ラポールの形成が不可欠でしょう。

活発なコミュニケーションが進む

社内でラポールが形成されると社員同士で活発なコミュニケーションが進みます。

「こんなことを言ったら、怒られるのではないか?」
「この業務は、本当はこうすべきだと思うけれど提案してもよいだろうか?」
このような考えはラポールが形成されていないと、言わないでしょう。
上司と部下の関係はラポールが形成されているかどうかで、如実に表れます。

一方、ラポールが形成されていると、上司と部下は活発にコミュニケーションを取れます。

また、意見や思いついたことを自由に言い合える環境を作ることで、現場の声が上層部にも届きやすくなるでしょう。

企業をさまざまな意味で発展させていくためにも、ラポールの形成は必要です。

生産性が上がる

『Google流疲れない働き方』によると、生産性が高いチームには他のメンバーへの思いやりや共感といった能力があることが見られたそうです。

これは、相手との信頼関係を築くうえでは欠かせない行動です。

ラポールを適切に築くための能力と言い換えられるでしょう。

企業の業績が伸びる可能性がある

ラポールを築くと、企業の業績が伸びる可能性があります。

その手順は以下の通りです。

  1. 社員同士のラポール形成に注力する
  2. 社員のモチベーションアップ、心理的安全性の強化
  3. 生産性向上
  4. 業績向上

成果を出したいけれど、思うような結果が出ず困っている経営者の方は、まずは社員同士の関係性向上に注力するのがよいでしょう。

社員一人ひとりのモチベーションや生産性が向上し、企業の業績アップにつながります。

離職率が低下する

転職を行うことが珍しくなくなった現代では、離職率の低下を目指している企業も多いでしょう。

厚生労働省の調査によると、令和2年度で、仕事や職業生活に関する強い不安、悩み、ストレスを感じる労働者の割合は54.2%となっています。
(出典:厚生労働省による文書

そのうち、27%の人が対人関係のストレスを抱えているとのことです。

人間関係にもさまざまな要因があるでしょう。

一部の理由に周りの人や部署の人たちと信頼関係が形成されていない原因もあるのではないでしょうか。

ラポールを築くことで心理的安全性が確保され、人間関係も良好に進む可能性があります。

ラポールを形成している企業の事例

ラポールの形成に成功して、大きな成果を上げている企業は数多くあります。

ここではその事例として「ヤフー株式会社」と「株式会社メルカリ」を紹介します。

企業の実践例を参照し、参考にするのもよいでしょう。

ヤフー株式会社

ヤフー株式会社は、2012年から1on1ミーティングを始めました。

1on1ミーティングとは、上司と部下の1対1でおこなわれるミーティングのこと。

目的は、信頼関係を深める(=ラポールを築く)、部下の経験学習を深める、モチベーションを高めるなどがあります。

1on1ミーティングでは、以下のことを意識しているようです。

  • 相槌をうち、聞いている姿勢を示す
  • 否定的な言葉を使わない
  • 体ごと相手に向けて、じっくりと聞く姿勢を持つ

このようにして上司が部下に対してラポールを築く姿勢をもつことが大切です。

上司は部下が自主的に業務について内省できるように、傾聴をします。

1on1ミーティングについては、下記の記事で詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。

株式会社メルカリ

株式会社メルカリは、社員同士のラポールを築くために、さまざまな取り組みを行っています。

たとえば、感謝の気持ちを伝えるとともに、インセンティブを送付できる制度があります。

感謝の気持ちを述べることで、相手との思いやりや共感を促し、ラポールの形成につなげます。

またメルカリには、オウンドメディア「mercan」があります。メルカリで働いている人の雰囲気をメディアを通して伝えているメディアです。

ほかの社員の様子が見えることで、モチベーションが上がり、信頼感の形成につながるでしょう。

また、採用にも効果があります。詳しくは、下記の記事で解説していますので、ぜひご覧ください。

心理学のラポールに関するおすすめ本

心理学のラポールに関するおすすめの本をご紹介しましょう。

今回ご紹介する本は以下の通りです。

  • コーチングよりも大切な カウンセリングの技術
  • だから僕たちは、組織を変えていける ーやる気に満ちた「やさしいチーム」のつくりかた

コーチングよりも大切な カウンセリングの技術

出典元:Amazon

職場でも使用できるカウンセリングの聞く技術を紹介しています。

聞く技術を鍛えるメリットが多く掲載しています。

話し手の内省力を高めること、自主的な行動へとつながること、そして信頼関係の深めることなどにつながるでしょう。

組織のチームワークを高めるためには、社員同士がラポールを築くことが欠かせません。

一見、関係がないように見えるビジネスとカウンセリングの技術を探りたい方におすすめの一冊です。

『コーチングよりも大切な カウンセリングの技術』は以下の方におすすめします。
  • ラポールを築くための聞く技術について詳しく学びたい方
  • カウンセリング、コーチング、ティーチングなどの具体的な意味の違いが気にいなる方
  • 聞く技術やラポールを築く方法を社内で共有したい方

だから僕たちは、組織を変えていける ーやる気に満ちた「やさしいチーム」のつくりかた

出典元:Amazon

社員との関係性を重視するべきであるとした、心理的安全性を重視した本。

まずは社員との関係性に注力して、投資すると成果がついてくることが書かれた本です。

『だから僕たちは、組織を変えていける ーやる気に満ちた「やさしいチーム」のつくりかた』は以下の方におすすめします。
  • 組織全体を活発化し、成果を最大化したい方
  • ラポールの形成がもととなっている心理的安全性のつくり方を知りたい方

まとめ

心理学用語のラポールとは、相手との間に築かれる信頼関係のことを言いました。

心理学のカウンセリングや心理療法での基盤とされる相手とラポールを築くことは、ビジネスでも大事なことです。

ぜひ企業でのラポールの形成に、ラポールを築くと起こるメリットや、企業ごとの運用例をご参考にしていただけたら幸いです。

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最終更新日: 2024/10/16 公開日: 2022/07/25