30人の壁・50人の壁とは?組織拡大で避けては通れない壁を壊す方法

最終更新日: 2024/09/04 公開日: 2022/05/02

ベンチャー企業が大きく成長するとき、さまざまな問題に直面することは少なくありません。

特に社員数が30人・50人と増えるタイミングで問題が発生しやすく、「30人の壁」「50人の壁」といわれています。

30人の壁・50人の壁を壊せるかどうかで、企業が存続できるかが決まるといっても過言ではないのです。

  • 立ち上げ当初よりも社内のコミュニケーションが減った気がする
  • 30人の壁・50人の壁の打開策が知りたい

今回は、30人の壁・50人の壁にぶつかる原因と対処方法を解説します。問題発生を最小限に抑えるために、起業時から気をつけておきたいことも紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。

組織の30人の壁・50人の壁とは

組織の「30人の壁」「50人の壁」とは、企業が成長し社員数が増える中で起こるさまざまな問題を指します。

企業を設立したばかりの頃は社員数が少ないため、直接意見のぶつかり合いが起こることはあっても、コミュニケーション事故は起きにくいといわれています。

ところが、企業が成長する中で徐々に社員数が増えていくと、今まで順調だったものがうまくいかなくなることがあります。

問題の多くは、30人・50人と社員数が増えた時期に起こりやすいため、30人の壁・50人の壁といわれているのです。

組織の30人の壁の原因

組織の30人の壁の原因は、以下の通りです。

  • 「集団」から「組織」への進化
  • 入社時期のズレによる社員の感覚のズレ

一つずつ詳しくみていきましょう。

「集団」から「組織」への進化

社員数が30人を超えると、企業は集団から組織へと進化します。

それまでは経営者自身が社員を評価したり個別に教育したりできていても、社員数が増えるにつれて手一杯になり、経営者がすべての社員を把握するのが難しくなります。

このとき、評価マニュアルや社員育成マニュアルがあればよいのですが、30人の壁を迎える企業では、まだマニュアルの整備が追いついていない場合が多く問題が起こりやすいのです。

入社時期のズレによる社員の感覚のズレ

集団から組織へと進化する中で、入社時期が違う社員の感覚のズレが問題になりやすいです。

設立当初は経営者と社員同士の仲間意識が強く、経営者と同じ目線で仕事に取り組めるので、企業は円滑に回るケースが多いでしょう。

ところが社員数が増えてくると、徐々にコミュニケーションが取りづらくなってきます。仕事に対するモチベーションが保てない・やりがいが感じられないという社員が出てきて、社員間の温度差が顕著に現れます。

だからこそ、一貫したスキルアップ教育の場や、企業哲学を浸透させるコミュニケーションの場が必要になるのです。

30人の壁を突破するために役立つ本

30人の壁を突破するために役立つ本として、次のような書籍が出版されています。

「社員30名の壁」超え 3つのステップ 親方社長を卒業し、リーダーシップ型組織からマネジメント型組織へ

引用元:Amazon

この本は30人の壁を超えるためのノウハウが学べるのはもちろん、実際に著者が30人の壁を突破した事例を顧客インタビューという形で紹介しています。

企業成長の分岐点にフォーカスを当てているため、50人の壁、100人の壁を突破するためにも役立ちます。

筆者が携わってきたコンサルティング経験をもとにした「理論」「ノウハウ」「顧客事例」の3つの構成で具体的に解説した実務書となっています。

組織の50人の壁の原因

組織の50人の壁の原因は、以下の通りです。

  • 企業としての法令上の義務が発生
  • 中間管理職の目が行き届かなくなる
  • バックオフィスに対応できる人員の不足

一つずつ詳しくみていきましょう。

企業としての法令上の義務が発生

50人の壁の原因の一つは、企業としての法令上の義務に関する準備不足です。社員数が50人を超えた企業には、以下のような法令上の義務が発生します。

・衛生委員会の設置
・衛生管理者の選任
・障害者の雇用
・産業医の選定
・健康診断報告書の提出
・ストレスチェックの実施
・休憩室の設置

法令上の義務に関する準備をあらかじめ行わないまま社員数が増えると、突然対応に追われる事態になるでしょう

「50人」は正社員だけでなく、常用雇用のアルバイトなども含まれるので注意が必要です。

専門的な知識を持った人材を確保し、確実に対応しなければ、義務違反に繋がる恐れがあります

中間管理職の目が行き届かなくなる

企業の社員が50人を超えて成長する中で、中間管理職の目が行き届かなくなるという問題が発生するケースがあります。これは「中間管理職の質」が大きく関係しています。

50人を超えた企業では、経営者が直接指示を出さない事柄が増えるため、管理職の質が組織の質を左右し始めます。管理職の実力が不足していると、企業としてうまく回らなくなってしまうのです。

ただしこの問題には、管理職の育成制度が整っていないことにも原因があります。

成長途中の企業では、管理職の育成にまで手が回らないケースが多いです。その間も社員数は増加するため、実力が伴わないまま役割を任せなければいけない状況が生まれてしまうのです。

マネジメント力がない管理職の部下は、次第に疲弊したり不満を抱えたりして、離職率が高まる原因になります。

バックオフィスに対応できる人員の不足

50人の壁では、バックオフィスに対応できる人員の不足が原因の一つです。

企業の拡大を目指す場合、営業や新規事業の開拓など、利益に直結するフロントオフィスの人員を増やす場合が多いのではないでしょうか。

順調に利益を上げる一方、人事・経理・総務事務などのバックオフィスの人員が足りていないと、企業は正常に機能できなくなるのです。

人材のバランスが取れていない企業が崩壊してしまうケースは珍しくありません。

30人の壁・50人の壁を壊して組織を拡大する方法

30人の壁・50人の壁が立ちはだかったとき、どのように対処すれば危機を乗り越え組織拡大に繋がるのでしょうか。

30人の壁を壊す方法

30人の壁の壁を壊す方法は、以下の通りです。

  • マニュアルを整える
  • 社員間のコミュニケーションを充実させる

一つずつ詳しくみていきましょう。

マニュアルを整える

経営者がキャパオーバーしてしまう30人の壁では、経営者以外が社員育成や正当な評価が行えるよう、マニュアルを整えるのが効果的です。

明確なマニュアルがあれば、経営者の負担を軽減するとともに、安定的な社員育成が行えます

経営者の目が社員全員に行き届かなくても、管理職がマニュアルに沿って正当に評価することで、社員の承認欲求は満たされモチベーション向上が見込めます

指針となるマニュアルを整えれば、30人の壁を打破し、組織のさらなる拡大に繋がるでしょう。

社員間のコミュニケーションを充実させる

社員の感覚のズレが起きやすい30人の壁では、なによりも社員間のコミュニケーションを充実させるのが大切です。

集団から組織へと進化すると、どうしてもコミュニケーションが取りづらくなります。意思疎通が図れないと、社員の感覚のズレが大きくなり、不満を抱える社員も出てくるでしょう。

社員一人一人を確実にサポートはできないにしても、サポートする管理体制は必要です。社員がバラバラになって組織として機能しなくなる前に、しっかりとコミュニケーションを取ることが肝心です

個別の面談やランチでのちょっとした会話・社員研修や親睦会など、さまざまな工夫を凝らしながら、意識的にコミュニケーションを取りましょう。

50人の壁を壊す方法

50人の壁の壁を壊す方法は、以下の通りです。

  • 管理職と経営者の意識を統一させる
  • バックオフィス人員を強化する

一つずつ詳しくみていきましょう。

管理職と経営者の意識を統一させる

50人の壁では、管理職と経営者の意識を統一させるのがとても重要です。

この規模の組織では、経営者ではなく管理職が社員をマネジメントする立場です。両者の意識にズレがあっては、組織はうまく回りません。

管理職と経営者がコミュニケーションを取るのはもちろん、企業理念の理解を深めることが大切です。

その上で管理職が社員育成にあたれば、社員一人ひとりに企業理念を浸透させられます。社員数が増えても企業は安定して機能するため、さらなる企業拡大へと進めるでしょう。

バックオフィス人員を強化する

バックオフィスの人員強化は、50人の壁を壊す方法の一つです。

50人以上の企業に発生する法令上の義務に関する対応は、バックオフィスの人員なくしては成り立ちません

また安定的な人材確保のためには、社会保障や福利厚生などの仕組みが大切ですが、実際に運用するのはバックオフィスの人員なのです。

直接的な利益を上げずとも、企業を陰で支える人員を強化できれば、安定した企業運営と組織の拡大に繋がるでしょう。

30人・50人・100人の壁を突破した実例

30人・50人・100人の壁を突破して成長した企業はたくさんあります。

実際の事例を参考に、30人・50人・100人の壁の課題を把握し、事前に対策を行っていきましょう。

30人の壁を突破した実例

ある企業は、組織としては円滑に回っているものの、事業成績が伸び悩むという30人の壁にぶつかってしまったそうです。

そこで30人の壁を突破するため、原点に立ち帰ってビジネスの見直しを行ないました。

顧客が抱える課題や悩みを改めて分析し、自社都合を排除したうえで何をすべきか、どこにフォーカスすべきかを再検討したところ、事業成長曲線が大きく上がったといいます。

50人〜100人の壁を突破した事例

従業員が50 人〜100人と増えることによってぶつかりやすい壁は、立ち上げから会社に貢献した既存社員が会社の変化を感じて離職してしまったり、入社した社員をうまく統制できず、会社の体制が崩れてしまったりすることです。

各部門が独自の採用基準を持って社員を採用したことによって、スキルにバラつきができ。短期離職が増えたり、既存社員の離職が増えてしまったりしていました。

そこで採用基準を明確化し、採用チームが主導して選考フローを再建することで、短期離職者を減らしました。

選考フローを大幅に変更したことによって、人事制度が社員から理解してもらえないという課題はありましたが、採用した人材が第一線で活躍できるようになるためには早くても3ヶ月程度かかるのが一般的です。

人材が定着するまでの期間、社員からの問い合わせや課題解決に対応することによって結果的に安定運用につながりました。

起業時から気をつけておくこと

企業の成長過程で起こる問題は致し方ないとも考えられますが、できるなら30人の壁・50人の壁は回避したいものです。そのために、起業時から気をつけておきたいことを紹介します。

  • 1on1の機会を定期的に設ける
  • 福利厚生を充実させる
  • 企業理念を社員に浸透させる

一つずつ詳しくみていきましょう。

1on1の機会を定期的に設ける

1on1ミーティングとは、上司と部下が1対1で話す機会をいい、おもに人材育成を目的に行われます。

社員が抱えている問題や不安・不満などを聞き共に考えることで、コミュニケーションを図るとともに、社員の成長を促す効果があります。

週に1回30分程度の短い時間を有効活用し、組織の活性化に繋げましょう

1on1ミーティングは「管理職と社員」だけでなく「経営者と管理職」の組み合わせで行うのも効果的です。

福利厚生を充実させる

組織が拡大する中でさまざまな問題が起こると、優秀な人材が定着しにくいため、定着させる施策も構築する必要があります。

部下や他社からも憧れられる給与体制や休暇制度はもちろん、さまざまな福利厚生を充実させることが重要です。

社員が働きやすい環境を提供し、自社で働くことに魅力を感じてもらえれば、従業員満足度は高まります。

日本経済団体連合会の2019年度「福利厚生費調査結果報告」によると、住宅関連やライフサポート(食事・育児関連など)に関する手当を導入している企業が多い傾向です。

実際に社員にアンケートを実施して必要としている福利厚生を導入するのもよいでしょう。

企業理念を社員に浸透させる

企業を大きく拡大させるためには、社員一人ひとりに企業理念を浸透させるのが重要です。

起業時は仲間意識の強い経営者と少人数の社員が、同じ理念を持って仕事に取り組んでいたはずです。

しかし組織が大きくなるにつれて、企業理念の共有が難しくなり、社員が一つにまとまりづらくなります。

起業時から企業理念を明確にし、全社員にしっかりと浸透させることで、あとから入社する社員にもスムーズに伝わるでしょう

社員一人ひとりが企業理念を理解している企業は確固たる信頼関係のもと、さらなる成長を遂げるはずです。

まとめ

組織が拡大するときに起こる「30人の壁」「50人の壁」という名のさまざまな問題。これらの問題が起きたとき、適切に対処できるかどうかで、企業の行く末が左右されます。

社内のコミュニケーションを大切にし、経営者と全社員が同じ企業理念を持つことが、30人の壁・50人の壁を壊す強力な武器となるでしょう。

セミナーズ通信

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最終更新日: 2024/09/04 公開日: 2022/05/02