報徳思想の4つの原理は、以下の通りです。
勤労:各々の職業の価値に誇りを持ち、その仕事を高めることに力注ぐこと
分度:それぞれの収入の中で、適切な支出範囲を決めること
推譲:分度で残しておいたものを自分の意志で人に譲ったり、将来に残したりすること
「報徳思想の詳しい意味を知りたい」
「報徳思想を知ってビジネスに必要なマインドを取り入れたい」
報徳思想という言葉は聞いたことがあるけれど、実際に詳しい思想内容については知らない方もいらっしゃるのではないでしょうか。
報徳思想は、江戸時代後期の偉人である二宮尊徳が考え出した思想。
この記事では報徳思想を学ぶメリットや、基本的な考え方をご紹介します。
報徳思想を学ぶメリット
報徳思想は、二宮尊徳が生み出した思想です。江戸時代後期に生まれたものですが、現在に生きる私たちが参考にすべき考え方であるでしょう。
報徳思想は、決して近道を行こうとせず、地道で誠実な積み上げを繰り返せば私たちは行きたい方向へ行けるということを教えてくれます。
報徳思想を学ぶ具体的なメリットは以下の通りです。
- 仕事へのモチベーションが上がる
- 社会貢献をする意味が分かる
- 誠実な行いをする意味が分かる
- 人生において大事なことが分かるようになる
- 選択に迷ったときに、自分にとって正しい選択ができるようになる
報徳思想を学ぶべき人
報徳思想は、私たちがあらゆる面を豊かに過ごすために大事な思想であると二宮尊徳は説きました。
豊かさを象徴するものとは、物質的、精神的、体力的なものなどいくつもあります。人によって、どのような面で豊かになりたいかは異なるでしょう。
報徳思想は、さまざまな面で豊かになりたい人が学ぶのに向いています。具体的に、以下に当てはまる方がこの記事を読むと良いでしょう。
- 物質的にも精神的にも豊かに幸せに過ごしたいと思う人
- 仕事を成功させるうえで、大切なことが分からなくなっている人
報徳思想に影響を受けた偉人
二宮尊徳の考え方の報徳思想に感銘を受けた偉人は何人もいます。代表的な人物は、以下の通りです。(※1)
- 渋沢栄一
- 稲盛和夫
- 松下幸之助(松下電器産業(現在のパナソニック)創業者)
- 豊田佐吉(トヨタ自動車創業者)(※2)
松下幸之助は、松下電器産業(現在のパナソニック)を設立した人物でおなじみです。経営を行う中で、社員を非常に大事にし家族のような愛情や親しみを持つ理念を提唱していました。また、後の章で詳しくご紹介する「報徳博物館」の設立にも関わった人物として知られています。
豊田佐吉は、人のため社会のために貢献するという考え方を大事にしていました。この考えは、豊田佐吉が生まれた土地、静岡県の生まれに根付いた「報徳思想」から来ていると考えられています。
社会貢献したいという熱い志を持った豊田佐吉の考えは、やがて画期的な製品の開発につながっていきました。(※2)
報徳思想とは?
報徳思想の考え方について深堀りしていきましょう。報徳思想の基本的な考え方以外に、報徳思想を形作る4つの原理についてご紹介します。
この章を読めば報徳思想の基本的な考え方以外に、自分でも実生活の中で報徳思想を実践できるようになるでしょう。
報徳思想の基本的な考え方
報徳思想の考え方は、二宮尊徳の経験によって作られました。
報徳思想は、神道・儒教・仏教のそれぞれの考え方を参考にして作られています。この3つの中で大事だと思われる事柄を抜き出して、独自の考え方を用いて報徳思想を作り出しました。
また、この報徳思想を実践して、さまざまな村おこしに成功しています。
報徳思想の4つの原理
報徳思想には、考え方の元になる4つの原理があります。4つの原理とは、二宮尊徳の生き方と強く結びついており、現在の私たちにもよく理解できるでしょう。
至誠
至誠とは、物事への取り組みを真心を持って誠実に行うこと。
そして、真心について頭の中で考えていても、具体的に行動をおこさなければ意味がないと二宮尊徳は言います。二宮尊徳は、善い行いをしていくことが大切であると説きました。これはすべての物事に接するときの基礎的な心構えで、報徳思想の根底の考え方です。
勤労
真心を持ちながら誠実に物事に取り組む「至誠」の心を持って、私たちは「勤労」をする必要があると言います。
私たちは、働く意味を単にお金を稼ぐためや、名誉のために稼ぐということだけに当てはめるべきではありません。大事なことは徳に報いること。各々の職業の価値に誇りを持ち、その仕事を高めることに力を入れるべきであると説いています。
分度
「分度」とは、それぞれの収入の中で、適切な支出範囲を決めるということ。
収入以上の支出をすれば、赤字になることは明白です。富を得るには、収入の範囲内で生活し、いくらかを残しておくことが大切であると言います。二宮尊徳は質素で倹約的な生活を理想としました。
推譲
推譲とは、分度で残しておいたものを自分の意志で人に譲ったり、将来に残したりするという意味。至誠、勤労、分度の過程をたどり、集まった分度を推譲していきます。
推譲とは物質的なもののみを譲るのではなく、精神的なものも意味します。思いやりの心を持ちながら、人に譲るということを大切にしようと二宮尊徳は説きました。
報徳思想を生み出した二宮尊徳とは?
二宮尊徳は薪のような木々を担ぎ、本を読んでいる二宮金次郎と同一人物です。二宮金次郎は、成人になり二宮尊徳と名乗るようになります。
二宮尊徳は、報徳思想の考え方を用いて、武家や潘家の財政を建て直したり、村の農業を復興させたり多くの地域に貢献しました。最終的には約600の村おこしを行ったと言われています。晩年には、後世に自分の思想を残そうと、啓蒙活動を行いました。
二宮尊徳の人物について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
報徳思想を詳しく学ぶには?
報徳思想を詳しく学んでみたいと思った方も多いのではないでしょうか。報徳思想を学ぶのにおすすめの書籍や、理解を深めるのに最適な博物館をご紹介します。
報徳思想についての書籍
報徳思想について、さらに理解を深めたいと思った場合は、思想に関して詳しく書かれた書籍を読んでみると良いでしょう。報徳思想を学ぶのに最適な書籍は以下の通りです。
報徳思想について学べる報徳記念館
また、報徳思想について詳しく学べる場所に報徳博物館があります。神奈川県の小田原市にあり、公益財団法人報徳福運社が運営しています。
二宮尊徳についての、文献や遺品なども思想をよく知ることができるでしょう。
報徳記念館の概要を下記に引用しますのでご覧ください。
こうした二宮尊徳やその思想・方法論(報徳)の研究と普及に努めるべく、1983年多くの皆さまのご賛同を賜り、当館は開館いたしました。
展示はもとよりさまざまな学びの場を提供し、大変革の時代に培われた先人の知恵を伝えてまいります。
引用:報徳博物館とは?
4つの心構えから私たちができること
4つの心構えである至誠、勤労、分度、推譲について、日々の生活の中で実践できているか、照らし合わせてみてください。
「至誠はできているけれど分度はできていない」「推譲は日常生活で実践していくのは自分には難しそうだ」
など、さまざまな感想が出てくるでしょう。そして、報徳思想は非常にシンプルな考え方であると気づくのではないでしょうか。
私たち日本人にも、取り入れることのできそうな考え方が多く、すでに実践している考え方があったという方もいらっしゃると思います。
松下幸之助や豊田佐吉など、実業家にも報徳思想の考えを取り入れ実践していた人が多いことから、ビジネスに多いに役立つでしょう。さらに書籍などで詳しく理解を深め、ぜひビジネスの事業や経営に役立ててください。
まとめ
二宮尊徳が生み出した報徳思想は、多くの実業家や歴史上の偉人に影響を与えています。経営者の方も、仕事に関する考え方や心構えなど大いに学ぶべきことがあるでしょう。
報徳思想について、今回ご紹介したポイントを以下にまとめますのでご覧ください。
・報徳思想は具体的に下記の4つの考え方がある。
至誠…物事への取り組みを真心を持って誠実に行うこと。
勤労…各々の職業の価値に誇りを持ち、その仕事を高めることに力を入れるべきであること。
分度…それぞれの収入の中で、適切な支出範囲を決めるということ。
推譲…分度で残しておいたものを自分の意志で人に譲ったり、将来に残したりすること。
報徳思想は、ネット社会が普及し、情報が錯綜する中で大事なことを私たちに教えてくれるでしょう。誠実によく働き、無駄な贅沢をせず、小さな事柄を積み上げていけば、やがて大きなことを成し遂げられるというシンプルな考え方はとても参考になります。
多くの情報があふれ、大事なことが分からなくなったときは、報徳思想の考え方を思い出してみてください。ビジネスや実生活の助けになることがあるでしょう。報徳思想の考え方をさらに深く学びたい方は、報徳思想に影響を受けた偉人について、経営の考え方や思想について学んでみるのも良いでしょう。特に経営者の方は学ぶことが多くあるはずです。
※1:二宮尊徳と報徳│報徳記念館
※2:佐吉の志│トヨタ産業技術記念館
・報徳に生きた人二宮尊徳|大貫章
・人は徳のある人に従いてくる―再建王・二宮尊徳のリーダーシップとその至誠実行|岬 龍一郎
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