ポリヴェーガル理論とは、自律神経を腹側迷走神経・交感神経・背側迷走神経の3つに分け、それぞれのバランスを整えることで心身の健康を育む理論です。
腹側迷走神経が優位になると安心感が高まり、行動できない「不動化」状態から抜け出しやすくなります。
その結果、新しい挑戦や積極的な行動がしやすくなり、挑戦に不安を感じる人に特に効果的です。
本記事では、ポリヴェーガル理論の基本的な仕組み、自律神経のケアに役立つ実践方法、そしてビジネスシーンでの活用法についてわかりやすく解説します。
ポリヴェーガル理論とは?
ポリヴェーガル理論とは、生物などの研究を行っているアメリカのスティーブン・ポージェス博士が1995年にアメリカの学会で提唱した理論で、自律神経系の発達について、人間の自律神経は3つの神経枝に分かれているといわれています。
副交感神経の迷走神経には、「腹側迷走神経」、「背側迷走神経」の二つの枝があります。また、この二種類は生命の進化でまったく違う段階で出現し、まったく違う役割を担っていると提唱されています。
ポリヴェーガル理論は、「多重(ポリ)迷走(ヴェーガル)神経理論」ともいわれており、よくトラウマの治療やPTSD(心的外傷後ストレス障害)の患者の療法などに用いられる理論です。
セラピー業界や欧米で旋風を巻き起こしたとも言われています。
つまり、トラウマを解消して神経系のバランスを取り戻し、心身ともに健康になり安心して生きていくことを目的とした理論です。
腹側迷走神経
腹側迷走神経は、交感神経系と副交感神経系のバランスを整えている重要な神経ともいわれており、お腹側かつ横隔膜の周辺に位置している副交感神経です。
人間は、ストレスを感じると人との繋がりを求めたり、誰かに助けを求めたり、相手と交渉をしたりします。人と人が繋がりを持つ時は、表情や声のトーンをコントロールする際に、この腹側迷走神経が優位になっているということになります。人間が古来から進化していく段階で獲得した最も新しい神経です。
この神経が優位になることで、リラックスした状態をもたらしています。つまり、この腹側迷走神経が優位になると、心拍数が安定し、呼吸も穏やかになり、人間関係が良好になっていきます。
このことから、社会交流神経系(Social Engagement Neuro Platform)とも呼ばれています。
交感神経→背側迷走神経
上記のように人との繋がりがうまくいかなかったり、問題が解決しない出来事が続くと、次は“交感神経”が優位になってしまい、このストレスと「闘う?逃げる?」と興奮した状態へと神経モードが切り替わってしまいます。
普段、イライラしたり不安なことを感じている時は、この“交感神経”が優位になってしまっているということです。
このイライラや不安が続くと“交感神経”が更に、優位になってしまい次は「背側迷走神経」が優位になってしまう状態になります。
背側迷走神経は、普段の睡眠や身体の休息に関する神経で、日常では心と身体のエネルギーを回復する際に優位になります。iPhoneなどで、充電が少なくなってくると“省エネモード”に切り替わるようなものです。
しかし、普段仕事を頑張り過ぎたり、睡眠時間が足りていなかったり、身体の危機や絶体絶命の危機に置かれた場合は、この神経が過剰になり過ぎてしまいます。過剰になり過ぎてしまうと「無表情・無感情」といった状態に陥ってしまいます。
「頭がぼーっとする」「何もしたくない」「何も感じない(楽しくない)」といった“省エネモード”が過剰に働いてしまっている状態です。
人はなぜ挑戦できなくなるのか?
上記の項目で解説したように、ストレスなどを感じたり、ビジネスで交渉した時にうまくいかなかった場合「逃げる?戦う?」という交感神経モードになってしまいます。
更にうまくいかなくなると「背側迷走神経」が優位になり、人間は動けなくなってしまい、これを「不動化」といいます。
人間だけではなく、生物も同じような神経の働きをします。例えば、自然界で生きている生物達は、生命の危機(絶体絶命の場面)に遭遇した時に“死んだふり”をする生物がいます。
これは、人間と同じでビジネスの交渉場面で逃げることも戦うこともできない時と同じで生存戦略の「不動化」モードに切り替わり動けなくなってしまうのです。
この状態になってしまうと思考力も低下してしまうと言われており、人間は「挑戦」ができなくなります。
各生物の生存戦略
生物は、それぞれの進化過程によって適切な神経が働くので、持っている生存戦略を使い分けます。
主な神経系 | 生存戦略 | |
---|---|---|
爬虫類(ワニ・トカゲ) | 副交感神経系 (背側迷走神経) | 死んだふり 硬直 |
哺乳類(ウマ・キツネ・ゾウ) | 交感神経 | 戦闘・迷走 |
高等哺乳類(ヒト) 霊長類(サル) | 社会交流神経系 (腹側迷走神経) | シャットダウン 硬直 不動化 |
※高等哺乳類とは、進化の程度がより進んでいる生物のこと。
必ず、生物は表に記載している生存戦略を使うということではありません。生物は適応力が優れているので失敗したときは、別の神経を利用して生き延びる方法を選定しています。
ポリヴェーガル理論を活用した自律神経のケア方法
ポリヴェーガル理論を活用して自律神経をケアするには、日常生活の中で神経系を整える具体的な方法を取り入れることが大切です。
特に心身のバランスを保つには、腹側迷走神経を活性化させるアプローチが効果的です。
ここでは瞑想や呼吸法、マインドフルネスを取り入れた運動、安心感を持てる人との交流という3つの実践方法をご紹介します。
瞑想・呼吸法を実践する
瞑想や呼吸法は、腹側迷走神経を活性化して心身をリラックスさせることが科学的に示されています。
マインドフルネスでは、呼吸に意識を集中することで「今この瞬間」に意識を向けます。浮かんできた考えを判断せず、穏やかに呼吸へ意識を戻すことで、緊張がほぐれ、安心感を得られるのです。
例えば、仕事や普段の生活でストレスを感じたとき、数分間だけ呼吸に意識を集中するだけでもストレスを和らげてリラックス効果を得ることができます。
マインドフルネスに基づく運動をする
体を動かすことは、セロトニンやエンドルフィンといった「幸せホルモン」を活性化させ、心と体のストレスを和らげる効果があります。
特にマインドフルネスと運動を組み合わせた方法は、心と体の両方に働きかけ、自律神経のバランスを整えるのに役立ちます。
例えば、ヨガやストレッチは筋肉がほぐれる感覚に意識を向けることで、自然と心も落ち着きマインドフルな状態になれる運動です。
また、ウォーキングもおすすめです。足が地面に触れる感覚や呼吸に意識を集中すると、身体と外の世界とのつながりを感じやすくなり瞑想状態に入りやすくなります。
安心感を持てる相手と交流する
相手を信頼し安心してコミュニケーションを取れる状況では、腹側迷走神経が活性化して心と体がリラックスします。
例えば、初めて出会う相手との会話で相手を理解しようと意識し、ゆっくり信頼関係を築いていくとします。
このプロセスで一方が安心感を得ると、それが相手にも伝わり互いに心が穏やかになる良い循環が生まれるのです。
日常生活で自律神経を整えるには、このように安心感を共有できる人と過ごす時間を増やすことが効果的です。
また、他者との交流でリラックスしたい場合は、まず自分が落ち着いた状態を作りましょう。
呼吸を整えたり、マインドフルネスを取り入れることで、よりスムーズに信頼関係を築けるようになります。
ポリヴェーガル理論をビジネスで活かす方法
ポリヴェーガル理論は、自律神経を整えることで安心感や信頼感を高め、スムーズなコミュニケーションや柔軟な思考を促進します。
これにより、生産性向上や社員の挑戦意欲の向上にもつながるため、ビジネスの現場でも大いに役立つのです。
ここでは、ポリヴェーガル理論を活かしてビジネスで成果を上げる具体的な方法を解説します。
コミュニケーション力
腹側迷走神経を優位な状態を保つことができると、人間は顔の表情や声のトーン(抑揚)に現れます。
そのため営業の方や接客業の方など、コミュニケーション力、プレゼンテーション力を求められている人にとっては、腹側迷走神経を優位にすることが重要になってきます。
普段コミュニケーションが苦手な方や、上司に伝達がうまくできない自分は「ダメな人間だ」と落ち込むことはありません。
ポリヴェーガル理論のように、腹側迷走神経が優位になっていれば誰でも可能ということです。この神経系の働きを知り、活かすことができるとコミュニケーション力が求められるビジネス界において成功する鍵となります。
社員を「不動化」させていないか
経営者の方や、上司の方で会社全体で「不動化」は起こっていないか確認してみましょう。
例えば、社員の関係で部下が意見を伝えても、受け止めてくれなかったり(交渉)または、そもそも聞いてもくれない人間関係ではないでしょうか。
部下は上記の場面があると、「上司は変えられない(逃げる)、意見を言ってみたが潰される(戦う)」となり「何をしてもダメだ、何をしても変えられない(背側迷走神経が優位)」となってしまい「不動化」が始まってしまいます。
職場で“背側迷走神経”が優位になってしまう関係があると、社員は思うような成果が発揮できなくなり、優秀な営業マンさえも不動化モードに入ってしまう可能性があります。
- 不合理な頼みごと(とりあえずこれをやれ!)
- 新人に高すぎる目標設定
- 社員全体でコミュニケーションを取る場面が極端に少ない(交流が全くない)
上記のような関係が続いてしまうと、不動化が進んでしまい「挑戦できない社員」「動けない社員」が増えてしまうということです。
神経科学からわかるように、“背側迷走神経”ではなく“腹側迷走神経”を優位にすることで、社員を挑戦する神経を刺激して新しいことへのチャレンジを促すことができます。
ポリヴェーガル理論で挑戦意欲を高める
ポリヴェーガル理論とは、自律神経系の発達について、従来は「交感神経」「副交感神経」の2つだといわれていたところ、スティーブン・ポージェス博士は人間の自律神経は3つの神経枝に分かれていると提唱しました。
- 腹側迷走神経
- 交感神経
- 背側迷走神経
この3つの神経のなかで、どの神経が優位になるかでビジネスにおいてのパフォーマンス力や「挑戦したい」という思考が湧いてくるかが変わってきます。
「挑戦ができない社員が多い」「自分はコミュニケーション能力が低い」と思っている方は、腹側迷走神経が優位になっていないことで不動化(硬直)してしまっているだけです。
背側迷走神経を優位にしない働き方を取り入れて、ビジネスで最も重要なコミュニケーション力を活かすことができれば、自社の売り上げはもちろん、新しいことへチャレンジしている自分になれます。
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