プロセス管理とは、業務やプロジェクトのプロセスを各工程ごとに管理するマネジメント手法です。
毎日行っている業務やプロジェクトは、複数のプロセスを経て成果につながります。
一つでもプロセスが欠けてしまうと目標達成ができません。しかし、結果を追い求めるあまりプロセスが疎かになってはいないでしょうか。
プロジェクトを進めるに当たってプロセス管理が注目されていますが、何をすれば良いのかわからないと悩んでいる方のために、この記事では以下の内容について説明します。
- プロセス管理のメリット
- プロセス管理に必要なマネジメント手法
- プロセス管理の手法と注意点
プロセス管理によって生産性を向上させることで、プロジェクトの成果に結びつきます。この記事を参考にプロセス管理に取り組んでみましょう。
プロセス管理とは
プロセス管理とは、業務やプロジェクトのプロセスを各工程ごとに管理するマネジメント手法です。業務は様々なプロセスを経て結果に至るため、良い結果を生むには適切なプロセスを踏まなければなりません。
プロセス管理で各工程のタスクや手法を細かく分析することで、ボトルネックを発見し対策を講じられるため、目標達成へのスピードアップが期待できます。
すべての業務でプロセス管理が有効というわけではなく、以下の業務がプロセス管理に適しています。
- ルーティンワーク
- 営業などの一定の型に当てはめて行う仕事
- 複数の従業員や部署が関わる業務
- 短期間で定期的に発生する仕事
プロセス管理の3つのメリット
プロセス管理には3つのメリットがあります。
- 業務の属人化を防げる
- 業務を標準化できる
- 進捗管理をしやすくなる
プロセス管理で業務の流れが明確になるため、組織全体でミスを削減できるようになります。
1. 業務の属人化を防げる
プロセス管理によって業務の各工程が明確になるため、業務の属人化を防げます。属人化とは、特定の従業員が仕事を抱え込み他の従業員との情報共有がされないため、担当者がいないと仕事が進まない状態のことです。
組織全体で情報共有ができていれば、担当者がいなくても業務を進められるため、業務のスピードアップと顧客満足度の向上に役立ちます。
2. 業務を標準化できる
プロセス管理で業務内容が明確になると、業務のマニュアルを作成しやすくなります。マニュアルがあれば、どの従業員もノウハウや情報を知ることができるため、成果が一定レベルに保たれます。
イレギュラーな対応が発生しても、過去のイレギュラー対応を管理しパターン化されているため、場当たり的な対応を避けられ、ミスを防ぐことも可能です。
3. 進捗管理をしやすくなる
プロセス管理によって各工程を細分化できていると、どの業務をいつまでに終わらせなければならないかを把握できます。自社のリソースを適切に配分し、余裕を持ったスケジュール設定が可能となります。
プロセス管理を実施することで無駄な作業を削減し、目標まで最短距離で達成できるでしょう。
プロセス管理における10種類の手法
プロセス管理には10種類のマネジメント手法があります。
- プロジェクト統合マネジメント
- スコープマネジメント
- スケジュールマネジメント
- コストマネジメント
- 品質マネジメント
- リソースマネジメント
- リスクマネジメント
- 調達マネジメント
- ステークホルダーマネジメント
- コミュニケーションマネジメント
一つひとつの手法が独立しているものではなく、プロジェクト完遂のために組み合わせて実施すべきものが多いです。
1. プロジェクト統合マネジメント
プロジェクト統合マネジメントは、プロセス全体を管理するマネジメント手法です。他の9つの手法をまとめて様々な視点からマネジメントを行います。
個々のマネジメント手法が独立したままでは、手法同士が対立してしまう可能性があるため、プロジェクト統合マネジメントで調整する必要があります。
2. スコープマネジメント
スコープマネジメントは、プロジェクトにおける各プロセスの業務内容やタスクを整理し、円滑な進行を促すマネジメント手法です。目標達成のためにプロセスを細分化し、どの業務をどこまで行うのかを決定します。
スコープマネジメントをしなければ、目標達成のためにすべきタスクや業務が不明確になり余計なリソースをかけてしまいます。目標の短期的な達成のために必要な手法です。
3. スケジュールマネジメント
スケジュールマネジメントは、各プロセスごとに納期を遵守するためのマネジメント手法です。大きなプロジェクトほどプロセスが増え、1つの納期が遅れるだけで他のプロセスに影響を与えます。
スケジュールマネジメントでは、全体のスケジュールだけでなく各プロセスの細かなタスクごとに納期を設定し、スケジュールを管理します。
4. コストマネジメント
コストマネジメントは、プロセスごとに必要な予算を管理するためのマネジメント手法です。プロジェクトは割り振られた予算内で目標を達成しなければなりません。
予算内でプロジェクトを完了させるために必要なコストの見積もりや予算の設定を行います。予算が超過する場合は、スコープマネジメントとスケジュールマネジメントとの調整が必要です。
5. 品質マネジメント
品質マネジメントは、各プロセスの品質を管理するためのマネジメント手法です。商品・サービスや、その製造過程の品質を監視し管理します。
低品質のものを提供すると顧客からのクレームが発生し、満足度は下がってしまいます。顧客の期待を明確にし、期待以上の品質を担保することが品質マネジメントでは重要です。
6. リソースマネジメント
リソースマネジメントは、各プロセスにリソースを適切に配置し管理するマネジメント手法です。ビジネスにおいてリソースは一般的に「ヒト」「モノ」「カネ」を指しますが、「時間」「情報」なども含まれています。
それぞれのリソースの管理方法は、以下の通りです。
| ヒトのマネジメント | ・ストレスチェックとケア ・スキルの可視化 ・従業員の評価制度、採用、配置 ・従業員の目標管理 |
| モノのマネジメント | ・必要な備品の調達、管理 |
| カネのマネジメント | ・作業量、人件費の管理 ・コストマネジメント計画を元に予算を決定 |
| 時間のマネジメント | ・時間の使い方の見直し ・目標設定と進捗の可視化 |
| 情報のマネジメント | ・情報の更新、共有 ・情報へのアクセス管理 |
7. リスクマネジメント
リスクマネジメントは、各プロセスのリスクを想定して回避するためのマネジメント手法です。
リスクには災害やサイバー攻撃、情報漏洩などがあり、リスクが発生すると企業にとって大きな損失となり、経営の継続が脅かされてしまいます。
リスクをすべて回避することは不可能なため、プロセスごとにリスクを洗い出し、優先順位を決めて対応策を検討、実行することで影響の高いリスクの発生を未然に防ぎます。
8. 調達マネジメント
調達マネジメントは、各プロセスで必要な資材やツール、サービスなどを外部から調達するための工程を管理するマネージメント手法です。調達や外注の相手企業との調整やや進捗管理、納品物の検収を行います。
調達マネジメントが機能していなければ、調達コストやスケジュールが杜撰になり、予算の不足やプロジェクトの遅れにつながります。
9. ステークホルダーマネジメント
ステークホルダーマネジメントは、プロジェクトに関わるステークホルダーすべてを管理する手法です。ステークホルダーはプロジェクトの意思決定に関わるため、良好な関係を構築しなければなりません。
大きく複雑なプロジェクトになればなるほど、ステークホルダーの数も増えます。
ステークホルダーマネジメントでは、ステークホルダーをすべて特定し、影響力などを考慮しながらステークホルダーにどのような形でプロジェクトに関わってもらうかを決めます。
ステークホルダーと良い関係を築ければ、プロジェクトへの協力者が増えるでしょう。
10. コミュニケーションマネジメント
コミュニケーションマネジメントは、円滑なコミュニケーションを取るためのマネジメント手法です。オンライン・オフラインの場面に応じたコミュニケーション管理やコミュニケーションにおける情報管理を行います。
プロジェクトの関係者全員を把握し、それぞれに適したコミュニケーション方法を検討します。コミュニケーションのツールや頻度を決め、円滑にプロジェクトを進行させていきましょう。
プロセス管理の方法5ステップ
プロセス管理の方法を5ステップで説明します。
- プロジェクトの目的とゴールを設定する
- ゴールを達成するための計画を策定する
- プロジェクトのプロセスを設計する
- プロセスを実行する
- 結果を分析し評価する
プロセス管理によって目的やゴールが明確になり、どのように各メンバーが行動すべきかを判断できます。プロジェクトマネージャーは、丁寧な状況把握やコミュニケーションが必要となります。
1. プロジェクトの目的とゴールを設定する
プロジェクトの目的とゴールを定めることで方向性が明確になり、適切なプロセスを構築できます。数値でゴールが設定すれば、プロジェクト終了後の評価をしやすくなります。
2. ゴールを達成するための計画を策定する
ゴール達成のために何をいつまでにするのか計画を立て、先に述べた10種類の手法のうち、どれを実行するのかを決めます。
プロセス管理の手法は複数を組み合わせて実施することが多いですが、同時に実行しようとしても結果が相反する手法もあるため、バランスを見ることが大事です。手法は自社の状況や業務内容に合わせて選択してください。
3. プロジェクトのプロセスを設計する
ゴールに到達するまでに必要な予算を配分したり、従業員の配置を考えます。各工程でのリスクを予測し対策を練っておきましょう。
業務のフローチャートやマニュアルを作成し、業務内容や流れを整理しておくことも必要です。業務の担当者とコミュニケーションを取り、必要な情報を漏れなく盛り込みます。
4. プロセスを実行する
プロセスの実行中は、丁寧に進捗状況を確認します。大きなプロジェクトになればなるほど、関係者の数も増えミスが出やすくなります。問題が発生したら速やかに改善することが大事です。
プロジェクトの管理者は、チームメンバー以外のステークホルダーとも積極的にコミュニケーションを取り、情報共有に努めましょう。
5. 結果を分析し評価する
プロジェクトが終了した後は、結果を分析し評価します。想定通りの進捗だったか、どのような問題が発生したのかなどを整理して共有することで、次回に活かせます。
プロセス管理実施時に注意すべき3ポイント
プロセス管理実施時には以下の3点に注意します。
- 目的と手段をはき違えない
- 目的を従業員と共有する
- マニュアルのクオリティを揃える
プロセス管理は自社の経営戦略やゴールによって変化します。適切なマネジメント手法を採用することでプロセス管理の効果が高まります。
1. 目的と手段をはき違えない
プロセス管理はプロジェクトのゴールを達成するための手段です。プロセス管理が目的となってしまうと、プロセス管理そのものに多くのリソースを割いてしまうため、業務効率が低下してしまいます。
プロセス管理に時間を割きすぎると、プロジェクトの目標達成は遠ざかるため、目的は何かを意識することが大事です。
2. 目的をメンバーと共有する
プロセス管理を実施する目的をメンバーと共有することで、プロセス管理の必要性やプロジェクトのゴールを周知できます。ゴールを達成するという一つの目標のために、メンバー全員が自分の役割をこなす意識を植え付けられます。
目的が共有されていると、メンバーは主体的な行動を取りやすく、業務効率が向上するでしょう。
3. マニュアルのクオリティを揃える
プロセス管理で業務内容を明らかにした後はマニュアルを作成することが多いですが、作成担当者によってマニュアルのクオリティが異なることは避けなければなりません。
あらかじめマニュアルのテンプレートや作成方法を整理しておき、どのマニュアルも同じクオリティに揃えましょう。
プロセス管理は限りある資源を効率的に活用するマネジメント方法
この記事では、プロセス管理のメリットやマネジメント手法、注意点などについて説明しました。
プロセス管理を実行することで、プロジェクトを進めるために必要なリソースを適切に配分し、効率的に活用できます。業務の明確化により、管理者の負担軽減にもつながります。
ぜひ自社でもプロセス管理に取り組んでみてはいかがでしょうか。
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