ブリッツスケーリング(blitzscaling)とは、スタートアップ企業がスピードを最優先に成長し、市場をリードするための戦略です。
GAFAやUberなどの世界的大企業は、ブリッツスケーリングの戦略を使って市場での圧倒的なシェアを手に入れています。
今回は、ブリッツスケーリングの概要や詳しい戦略内容、メリットとデメリットなどを紹介します。
スタートアップ企業でどのような成長戦略を取るべきか方法を考えている方は、参考にしてください。
ブリッツスケーリング(blitzscaling)とは
ブリッツスケーリング(blitzscaling)とは、スタートアップ企業が他社を圧倒するほど速い速度で事業を成長させて、市場をリードする経営戦略のことです。
ブリッツスケーリングは企業が早いスピードで成長し、規模を大きくすることを最優先に考えます。
成長のために多くの資金が必要でリスクも大きいですが、新しい市場をすばやくつかみたい企業にとっては強力な武器となる選択肢です。
ブリッツスケーリングの提唱者は、LinkedInの共同創設者であるリード・ホフマンとクリス・イェーです。
二人は書籍『ブリッツスケーリング』で、この概念を紹介しました。
ブリッツスケーリングの戦略内容
ブリッツスケーリングは、次の戦略を取り事業を成長させます。
- 大規模な資金調達をする
- 市場を先占めする
- 短期間で多くの人材を採用する
それぞれの項目を解説していきます。
大規模な資金調達をする
ブリッツスケーリングでは、急速な成長を支えるために多額の資金を一度に調達します。
たとえばベンチャーキャピタルを利用したり株式を公開したりなど、さまざまな調達の手段を活用するのです。
また調達した資金は、事業をより速く拡大するためにさまざまなリソースに投資します。
具体的には、アイデアを具体化するための新製品の開発や多くの人に伝えるためのマーケティング活動や人材の採用に使用します。
市場を先占めする
ブリッツスケーリングでは、他の競合よりも先に大きな市場シェアをつかむことを目指します。
新しい技術や特定の地域などの有望な市場をターゲットにして、短期間で事業を大きくするのです。
たとえば市場を先占するには、広告やプロモーション活動に力を入れて、商品・サービスの認知度を高めます。
また、競合他社を買収して、市場シェアや顧客基盤を直接取り込むこともあります。
短期間で多くの人材を採用する
ブリッツスケーリングでは、短期間で多くの人材を採用します。
さまざまなスキルを持った人材を集めることで、素早く新しいアイデアを実現し、市場のニーズに応えられるのです。
スキルや企業文化に合った人材を採用することで、市場の要望に応えるスピードが上がり、競合他社よりも先に市場に進出できます。
ブリッツスケーリングを行うメリット
ブリッツスケーリングを行うメリットを紹介します。
- 企業の信頼性が高まる
- 優秀な人材を集められる
- 独占企業にできる可能性がある
一つずつ解説していきます。
企業の信頼性が高まる
企業はブリッツスケーリングを行うことで短期間で知名度を上げ、信頼性の高いブランドとして認識されます。
他の競合よりも早く市場に浸透できるため、消費者の心に深く刻まれる機会が増えるからです。
消費者はそのブランドを他の選択肢よりも優先して選ぶようになります。
たとえばあなたが新しい電化製品を買いたい場合、まず市場で人気のあるブランドが候補に上がるでしょう。
多くの人が使っていることが製品に信頼性があることを表しているからです。
商品・サービスへの信頼性は、企業が市場でいち早くシェアを獲得して存在感を出すことで得られます。
優秀な人材を集められる
ブリッツスケーリングを行うことで、優秀な人材を集められます。
短期間で急成長している企業は、今後もさらに成長する可能性が高いと予想できるため、仕事を探している人にとってとても魅力的に映るでしょう。
たとえば、ブリッツスケーリングで急速に成長した企業は、業界内で注目を集めます。
この企業が成長した歴史には、多くの人が興味を持つでしょう。自分たちのスキルやアイデアを活かしてこの企業の一員となり、成長に貢献したいと考える人が増えると考えられます。
優秀な人材を集めることで、企業は新しい視点や画期的なアイデアを取り入れられ、よりよい商品・サービスを市場に届けられます。
市場を独占できる可能性がある
ブリッツスケーリングを行うことで、市場を独占できる可能性があります。
なぜなら早期に市場シェアを獲得することで、他の企業が追いつく余地がなくなるからです。
たとえば、消費者があるサービスや製品に強い信頼感や愛着を持つようになれば、それだけ新規企業が市場に食い込むことは難しくなります。
また、大量の購買データや顧客情報を手に入れられるため、商品やサービスを改善したりより効果のあるマーケティング施策を行ったりできます。
市場での規模が大きくなるほど、いっそう事業を大きくするのに有利になるのです。
ブリッツスケーリングを行うデメリット
スピードを最優先にして事業を大きくするブリッツスケーリングには、次のデメリットがあります。
- 内部体制が追いつかない
- 莫大なコストがかかる
一つずつ解説していきます。
内部体制が追いつかない
ブリッツスケーリングを行うため、急速に社員が増えたり事業が拡大したりすると、内部体制が追いつかなくなることがあります。
たとえば短期間で多くの新しい社員を採用すると、企業がこれまで築いてきた社風や価値観が薄れてしまう可能性があるからです。
また、急成長すると仕事の流れやシステムが追いつかず、業務の効率が悪くなることもあります。
たとえば、新しく入った社員が仕事の流れや社風に馴染めなければ既存の社員とのコミュニケーションがうまく取れず、チーム全体の調和が乱れることがあります。
この結果、プロジェクトの進行が遅れたり製品の品質に影響が出たりするでしょう。
経営者が企業を急成長させるためには、内部体制をしっかり整えて組織全体が健全に成長できるようにすることが大切です。
たとえば次のことを実施できます。
- 新入社員の教育プロセスを強化して、事前に会社の文化や価値観をしっかりと伝える
- 定期的に全社や各部門のミーティングを開き、経営者や管理職と社員が気軽に意見を交換できる環境を作る
- 業務の流れを見直して効率を上げ、管理職を増やして現場のサポート体制を整える
莫大なコストがかかる
ブリッツスケーリングは、企業を短期間で成長させるために莫大なコストがかかります。もし失敗した場合に立ち直るためにもさらに多くの資本が必要です。
たとえば新しい技術の開発を急ぐ企業は、研究や開発に多くのお金を使わなければなりません。
また、市場での知名度を上げるためにより多くの人に知らせるためのマーケティング活動も必要です。
一方でこれらの投資が必ず成果につながるとは限らないため大きなリスクがあります。
ブリッツスケーリングを取り入れる際には、莫大なコストがかかることをよく理解し、それに対応するための準備が必要です。
たとえば次のことを実施できます。
- ターゲット市場のニーズや競合状況を詳しく調査したうえで最もよい広告手段を選び無駄な支出を避ける
- 事前に考えられるリスクを洗い出して失敗時の影響を最小限に抑えるための方法を考えておく
- プロジェクトの進捗状況を常に監視してリスクが発生した際にはすぐに対応できる体制を整えておく
ブリッツスケーリングの5つの段階
ブリッツスケーリングは主に以下の5つの段階を経て、スケールアップしていきます。
- 家族
- 部族
- 村
- 都市
- 国家
それぞれの概要を解説します。
家族
「家族」は、スタートアップ企業の初期段階です。
この段階では、チームメンバーはまだ10名以内の少数で、お互いに密接に連携しながら業務をおこないます。
具体的には、製品開発や市場調査などを一緒に進めていきます。
「家族」段階での目標は、製品が市場に適合しているかどうかを確認して、最初の顧客をつかむことです。
部族
「部族」では、製品やサービスが市場で受け入れられ始め、顧客が増えていく時期です。
この時期には、従業員が10〜99人と多くなり部門やチームが作られます。
「部族」段階での目標はより多くの人に商品・サービスを知ってもらい、市場のシェアを増やすことです。
この段階ではチーム間の情報のやり取りをスムーズにし、社員が協力し合いながら事業を大きくする必要があります。
村
「村」では、従業員は数百人規模になり、組織構造がより複雑になります。
「村」の段階から事業を拡大するためには、組織の方向づけをおこない、強いリーダーシップで組織をまとめることが重要です。
都市
「都市」は、従業員が数千人規模になり、部門や階層が増加する段階です。
この段階では、スケールアップによる内部統制の混乱が起こることも考えられます。
企業はより高いレベルでの組織の目的と戦略を設定することが求められます。
国家
「国家」の段階では、従業員は数万人規模となり、世界規模での市場シェアを狙いグローバルな市場で競争します。
このレベルに達すると、世界中で事業をおこない各地域の特性に合わせた戦略を立てことが大切です。
既存の事業モデルを維持して持続できる成長をしながら、新たなイノベーションを見つけ発揮していくことが求められます。
ブリッツスケーリングの成功事例
Amazonは、ブリッツスケーリングの成功例として有名です。
1996年から2017年にかけて、従業員数と売上を大きく増やしました。
Amazonが成功した理由は、新しい市場を探してサービスを作り出し、100%成功する確信がない場合でもすぐに決めて行動に移したことです。
具体的には、オンライン小売市場や電子書籍市場、クラウドコンピューティング市場に参入し、短期間で圧倒的なシェアをつかみました。
Amazonはブリッツスケーリングの戦略により、1996年の収益が510万ドルから、1999年には16億4,000万ドル、2017年には1,770億ドルと急激に増加しています。
ブリッツスケーリングはスタートアップに有効
今回は、ブリッツスケーリングの概要や具体的な戦略内容、実施するメリットやデメリットなどを紹介しました。
ブリッツスケーリングとは、スタートアップ企業がスピードを最優先にして、成長することで市場を圧倒する戦略です。
競合他社との差をつけ、独占企業になれる可能性がある一方で、内部体制が追いつかなかったり莫大なコストがかかったりするデメリットがあります。
ブリッツスケーリングを取り入れる際は、事前に事業計画を立てながらリスクヘッジをすることで対策していきましょう。
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