- ユング心理学における集合的無意識の意味について知りたい
- ユング心理学とフロイト心理学の無意識の違いについて知りたい
- 集合的無意識を深く理解するために必要なユング心理学の用語を知っておきたい
この記事は、上記の項目を知りたい方におすすめです。
ユング心理学の集合的無意識とは、ユングが提唱した心の階層構造の機能の一つです。ユング心理学における心の階層構造は、「意識」と「無意識」の2種類からなります。
集合的無意識をさらに深く理解するための元型の概要やその具体例、自我肥大、個性化などのキーワードの意味を説明します。
ユング心理学における集合的無意識とは?
ユング心理学における集合的無意識とは、「私たちが無意識の心の中に表れて、生まれながらにして誰にでも備わる個人の意識を超えた無意識のこと」です。普遍的無意識と言い換えられることもあります。
集合的無意識は、スイスの心理学者であり精神科医であったカール・グスタフ・ユングによって提唱されました。
身近に起こる集合的無意識を感じる例としては、私たちが自然に対して抱く感情に見ることができます。
古代から人間は「自然に感謝しながら豊作を祈る」「嵐が止むように祈る」など、自然を神格化した行いをしていました。
これも私たちが先天的に持つ集合的無意識の感情が関係していると考えられています。
集合的無意識は人間の心の中に当たり前に根差している感覚であるため、自覚することが難しいものです。
ユング心理学における心の階層構造
ユング心理学における集合的無意識は心の階層構造による一部と考えられています。
ユング心理学では、心の階層について意識と無意識の2種類が存在すると考えました。
意識はその中心に自我があり、無意識は個人的無意識と集合的無意識から成り立っているといいます。
また、心の階層構造のなかで意識が占める割合はほんの少しです。
ユング心理学では、心の構造のほとんどの部分を無意識が覆っていると考えました。このように見ると、日々の私たちの考えや行動には無意識の部分が多く反映されていると分かります。
次に「意識」と「無意識」の構造について詳しく見ていきましょう。
「意識」は中心に自我を置く
意識を構成する要素は一つの自我であり、自我の中心を意識が包んでいます。
意識とは自分であるという自覚のことを言います。簡単に言うと、行動したり考えたりしている自分を感じられていることです。
意識の根幹を成す自我は、自分の存在を認識する主体のことを指します。
「無意識」は「個人的無意識」と「集合的無意識」から構成される
無意識は個人的無意識と集合的無意識で構成されます。
個人的無意識とは、過去の経験や知識から培われた自分でも自覚していない領域のことです。
過去の嫌な経験や不快な記憶は、抑圧されて自分自身が自覚していないうちに無意識に入り込んで個人的無意識に蓄積します。
例えば、原因が分からないのに特定の現象に恐怖を感じたり不快さを感じたりすることはないでしょうか。
これらは自分自身の意識では忘れているけれど、無意識の部分が覚えていて心が反応している証拠です。
個人的無意識は過去の経験から作られるため一人ひとり異なります。一方で、集合的無意識は全ての人に先天的に備わっている領域です。
個人的無意識の部分は集合的無意識と対の関係になります。
ユング心理学とフロイト心理学の心の構造の違い
ユング心理学における集合的無意識の考え方は、フロイト心理学の無意識の概念に影響を受けています。
フロイト心理学とは、オーストリアの心理学者であり精神科医のジークムント・フロイトによって確立された心理学理論です。
フロイト心理学では、心の階層構造を「局所論」と「構造論」の2種類で捉えました。
「局所論」では、心の階層を意識・前意識・無意識の3種類にわける考え方です。「構造論」では、心の階層をエス・超自我・自我の3種類にわけて考えました。
ユングはフロイトと師弟関係にありましたが、集合的無意識の考え方をフロイトが受け入れることができず別々の理論を打ち立てるようになりました。
集合的無意識は目に見えない神学的な要素を含むため、無神論者のフロイトにとっては受け入れがたい考え方であったのです。
ユング心理学における集合的無意識の理解を深めるためのキーワード
ユング心理学で「集合的無意識」の理解を深めるために知っておきたい以下のキーワードの概要について紹介します。
- 元型
- 夢
- 自我肥大
- 個性化(自己実現)
それぞれの用語の意味を見ていきましょう。
元型
元型とは、集合的無意識の中にある私たち人間が誰しも持っている共通認識の心のイメージのことです。
元型は、神話のモチーフとしてあげられるといいます。私たちは普段、集合的無意識の元型について自覚できることはありません。
しかし、時に元型は夢で形となって現れることがあり、意識的に把握できることがあるといいます。また、神話や昔話などの登場人物に見ることも可能です。
ここでは、ユングが唱えた元型の具体的な例について紹介します。
ペルソナ
ペルソナは、私たちが社会や家庭で生活をする際にかぶる自己の仮面のことです。
私たちは外の世界に出る時に、周囲に見せたい自己イメージの仮面をかぶってそれを演じています。
友人、家族、会社などで他人に見せる自分の顔は異なるでしょう。私たちは、ペルソナを使い分けることで、周囲に環境に上手く適応しようとします。
影(シャッテン)
影(シャッテン)は、自分自身が見たくないものでありながら自分の中に隠されている陰の部分のことです。
私たちは、過去の経験などから抑えつけている自分の性質を他者の中に見られたときにその人に嫌悪感を抱くことがあります。これは自分の見たくない部分である影(シャッテン)を他者に投影させているからです。
例えば、何でも感情的に意見を口に出したり人を批判したりしている人がいたとしましょう。
もしその時その人に大きな嫌悪感を抱けば、自分が心に抑圧していた「本当はそうしたい」という感情を大きく感じていることになるのです。
自分に投影していなければ他人がそのようなことをしていても、特に気にかかることはありません。私たちは、他人の言動を通して自分の影を自覚できることがあります。
トリックスター
トリックスターは神話の中に登場する人物であり、その中でも物語の進行を混乱させたり登場人物に変わった関わり方をしたりします。
固定観念を砕くようなふるまいをして、その物語のスパイス的な役割をしたり物語の進行を左右する重要人物となったりするのです。
例えば、実際の神話に登場する物語では日本神話のスサノオや西遊記の孫悟空などがトリックスターに該当します。
アニムスとアニマ
アニムスは、女性が男性に向けて無意識的に描くイメージのことです。
反対にアニマは、男性が女性に向けて無意識的に描くイメージのことで、ラテン語で「魂・生命」という意味があります。
両者は異性に対して抱くイメージの象徴とされています。
太母(グレート・マザー)
太母(グレート・マザー)は、大いなる母なる存在を表し母親の象徴像です。私たちは、母という存在には安心感がある、包み込むなどの共通認識があります。
一方で、太母には肯定的と否定的な二つの面が存在します。母自身が問題を抱えていると否定的な面が表れるのです。
もし否定的な面が強く出れば、母親は子を過度に束縛して自立を妨げてしまい子供を呑み込んでしまう存在になるといいます。
子どもは自立しようとする際にこの母親のイメージが元型へと投影され、無意識的に自立を避けようとしてしまうことがあるのです。
老賢者(グレート・ファザー)
老賢者(グレート・ファザー)は、父親の象徴像です。
老賢者は経験の知恵や理性を持っていて、私たちが困っている時に相談をして助言を述べて手を差し伸べてくれる存在です。
言わば自分とは異なる意図を持った存在であり、私たちの中にもこのような面が無意識下に存在しています。
夢
ユング心理学において夢は、意識と無意識にあるものに関わらず人間の願望が表れるものであるとしました。
ときには集合的無意識における元型のイメージが夢に現れることがあり、その存在を時には自覚できることがあるといいます。
ユングは、見た夢によってその人の願望を読み解き、自己理解や問題解決をしようとするアプローチをとっていました。
自我肥大
ユングは自我が十分に確立していない場合に、自我が無意識にのみこまれる危険性を唱えています。これを自我肥大といいます。
自我が無意識にのみこまれると、心の中のイメージであるさまざまな元型を自我に重ね合わせてしまうことがあると考えました。
自我肥大が起きると、自我だけが膨らみ他人のことを気にかけないようになってしまいます。自分の目的達成のためだけに振る舞い、他人に傲慢な態度を見せるようになるのです。
その逆もしかりで、極端に自己否定的になることもあります。
現代社会では競争社会やSNSの発達などにより、自我肥大に悩む人が増えています。
自我肥大に陥らないためには、自分が本当にやりたいことや実現したいことを見つめて自覚し、それに向かって生きることが大切です。
個性化(自己実現)
個性化とは、自分が本当にやりたいことを見つめ自分の個性を活かした生き方をすることです。自己実現ということもできます。
私たちは個人的無意識と集合的無意識を意識することによって、自分の独特の個性を自覚することにつながります。
自分の意識と無意識の部分にずれがなく、ありのままの状態でやりたいことを実現することをユング心理学では目指していくのです。
自己実現を目指すためには、心の構造を理解したり自分の中にある集合的無意識を自覚したりすることが多いに役立ちます。
まとめ
今回は、ユング心理学における集合的無意識の詳しい意味や、元型の具体例、自我肥大や個性化などの概要を紹介しました。
ユング心理学における集合的無意識は、ユングが提唱した心の階層構造の一部です。無意識の中にあるもので、誰にでも備わる個人の意識を超えた無意識のことでした。
集合的無意識は、抽象的な概念で普段意識することができないものであるため、理解が難しい概念であると思います。
関連用語について把握することでその意味について深く理解できるでしょう。
集合的無意識について知ることで自分を見つめ直す機会となれば幸いです。
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