自社ブランドを差別化し、独自の立ち位置を確立することをブランドポジショニングといいます。
マーケティングを成功させ継続的にファンを獲得するためには、強力な立ち位置が必要です。
「自社ブランドが他社に埋もれてしまっている」
「他社との差別化をしたポジショニング方法を取りたい」
「ブランドポジショニングの成功事例を知りたい」
このように考えているマーケティング担当者のために、この記事ではブランドポジショニングのフレームワークと成功事例について説明します。
この記事を読んで、ぜひ自社ブランドの立ち位置構築の参考にしてください。
ブランドポジショニングの意味
ブランドポジショニングとは、自社ブランドの市場における立ち位置を設定することです。
どのブランドにも競合にはない特徴や強みがあります。自社ブランドの他にはない独自性を顧客に認識してもらい「○○と言えば××」という状況を作ることが、ブランドポジショニングでは重要です。
差別化をするには、市場にはないまったく新しい商品・サービスを作る方法がありますが、市場には商品・サービスがあふれており、今までにないものを提供するのは困難です。
ブランドポジショニングによって競合の強みからずらしたり、市場に新しい価値観や視点を提案したりすることで他社との差別化を行い、有利な立ち位置を獲得できます。
ブランドポジショニングの設定に使うフレームワーク
ブランドポジショニングを設定するのに役に立つフレームワークを4種類紹介します。
- STP分析
- 6R
- 3C分析
- ポジショニングマップ
ブランドポジショニングにはSTP分析が基本です。分析に必要な指標や情報収集に6Rや3C分析などを活用しポジショニングを明確にしていきましょう。
1. STP分析
STP分析とは「Segmentation(市場の細分化)」「Targeting(市場の選定)」「Positioning(立ち位置の明確化)」の3つの言葉の頭文字をとって名付けられたフレームワークです。
アメリカの経営学者であるフィリップ・コトラーによって提唱されました。
STP分析を実施することで、市場ニーズを整理し(S)ペルソナを明確にし(T)他社との差別化を実施(P)できるようになります。
Segmentation(セグメンテーション:市場の細分化)
市場の細分化とは、顧客や市場をグループ分けすることです。分け方には以下の4種類があります。
地理的変数 (ジオグラフィック) | ・居住地 ・国・市町村・地域 ・人口密度 ・気候 ・文化 ・宗教 ・行動範囲 |
人口統計的変数 (デモグラフィック) | ・年齢 ・性別 ・職業 ・学歴・職歴 ・家族構成 |
心理的変数 (サイコグラフィック) | ・ライフスタイル ・価値観 ・性格・パーソナリティ ・購入のきっかけ・動機 |
行動変数 (ビヘイビアル) | ・購買頻度 ・購買心理 ・購買のタイミング ・使用用途 |
地理的変数は地図や測量情報、地理調査結果などを参考にして判断する地理的な特徴に基づいたセグメント指標です。人口統計的変数は国の統計調査結果などから判断するセグメント指標で、人の基本情報に基づいています。
心理的変数はアンケート結果や企業が行うヒアリングから得られる個人の性格や心理的な情報に基づくセグメント指標です。行動変数は個人の購買行動を基にしたセグメント指標で、トラッキングデータなどから判断します。
Targeting(ターゲティング:市場の選定)
市場の選定はターゲットにする顧客グループを選定するということです。セグメンテーションによって分けた市場の中から、どの市場をターゲットにするかを絞っていく作業になります。
市場の選定には以下の3つの方法があります。
無差別型マーケティング | ・様々な市場に同じ商品を提供する方法 ・すべての人が日常的に購入する商品のマーケティング |
差別型マーケティング | ・それぞれの顧客グループのニーズに合わせた商品を提供する方法 ・ハイリスクハイリターン |
集中化型マーケティング | ・特定の顧客グループに特化して商品を提供する方法 ・ローリスクローリターン |
無差別型マーケティングは、細分化した市場に関係なく同じ商品を提供するため、資金力のある大企業に適したマーケティング手法です。日用品や食料品などで無差別型マーケティングが使われています。
差別型マーケティングはニーズごとに商品・サービスを作り替えて提供する手法です。自動車やスポーツ用品が差別型マーケティングに当たります。
自動車は高級車やファミリーカー、福祉車両など様々なニーズに合わせて商品が提供されており、スポーツ用品もレベルや年齢などに合わせた商品が展開されています。
広告費などの資金が十分にないとマーケティングが成立しないため、大企業のマーケティング手法です。
集中化型マーケティングは、選んだ市場ニーズを徹底的にリサーチして特化した商品を提供する手法です。経営資源は少なくても技術力はある中小企業に適しています。
Positioning(ポジショニング:立ち位置の明確化)
立ち位置の明確化とはターゲティングで選んだ市場の中で、競合とかぶらない立ち位置を決めるということです。自社の独自性を見つけることが重要です。
競合と比較する際には、様々な指標があります。
- 価格
- 品質
- 機能
- 店舗数
- 販売方法
競合の強みや規模などと比較して自社商品・サービスが勝てる立ち位置を探します。もし勝てそうにない競合ばかりの場合は、比較する指標を変更します。
2. 6R
6RはSTP分析のセグメンテーションの際に使うことで、企業視点と顧客視点の両方で検討でき、より正しいセグメンテーションとターゲティングが可能となります。
6Rは以下の6つの言葉の頭文字がすべてRであることから名づけられました。
- Realistic scale(市場規模)
- Rate of growth(成長率)
- Rival(競合)
- Rank(優先度)
- Reach(到達可能性)
- Response(測定可能性)
6Rを使う際は1つずつの指標を個別にみるのではなく、6つの指標を合わせて分析することが大事です。
Realistic scale(市場規模)
市場規模は大きいと企業の利益率が高まるとされていますが、大きい市場にはたいてい競合がすでに参入しています。
現在の市場規模が大きくても流行が終われば衰退していくことも考えられるため、市場規模だけで判断することは難しいです。
市場規模が小さくても特定の顧客層のニーズにはまる商品・サービスもあります。ニッチな商品・サービスは競合とかぶりにくく売り上げも安定しやすいです。
市場規模を検討する場合は、市場の成長率や競合の数・規模なども考慮に入れましょう。
Rate of growth(成長率)
市場の成長率は新規参入する際に必要な分析指標です。市場が縮小傾向にあるとマーケティングが失敗してしまう可能性が高いため避けなければなりません。逆に市場が拡大傾向にあるなら事業が成功しやすいと言えます。
現在の市場規模が小さくても成長率が高いこともあります。市場全体の状況を把握して判断しましょう。
成長率を確認するには、競合の売上額や顧客の消費額を見ます。長期的な成長率から新規参入を検討することが重要です。
Rival(競合)
Rival(競合)とは、競合の商品やサービス、シェア率などの市場における競合の立ち位置です。競合と比較することで自社の独自性がわかり、顧客へのアプローチ方法を検討できます。
競合の数が少なくても自社の商品・サービスを販売しやすいとは限りません。店舗の場合、場所が悪くて競合が出店していないことも考えられます。競合がどのセグメントでのシェアを取っているのかを考える必要があります。
Rank(優先度)
優先度とは、顧客にとって自社商品・サービスを購入する優先度は高いかどうかという指標です。顧客が自社商品・サービスに関心を持っていれば優先度は高くなると考えられています。
優先度を上げるために効果的なものはSNSです。SNSでインフルエンサーが紹介したものは拡散され、周囲の人の関心が高くなります。同じようにメディアが取り上げることでも注目を浴び、購入の優先度が高まります。
Reach(到達可能性)
到達可能性は、ターゲットに適切にアプローチできるかという指標です。どんなに良い商品を市場に出しても、ターゲットに届いていなければ購入されません。
ターゲットが何に興味を持ち、何を考えているかなどを把握し、それに合わせたアプローチ方法をとることで到達可能性は高まります。
Response(測定可能性)
測定可能性はアプローチ施策に対する反応を測定できるかという指標です。プロモーションを実施した後にどれだけの効果があったかを確認することはマーケティングで重要です。
効果を測定できなければ分析や改善ができず、目標を達成できません。結果的にチームや従業員のモチベーション低下を招くでしょう。
3. 3C分析
3C分析は「Customer(市場)」「Competitor(競合)」「Company(自社)」の3つの市場環境を分析するフレームワークです。
市場と競合の状況を調べることで自社の強みが明確になるため、ブランドポジショニング設定に役立ちます。
3C分析は以下の記事で詳しく説明していますので、参考にしてください。
4. ポジショニングマップ
ポジショニングマップは、STP分析のポジショニングで使用します。縦軸と横軸に比較する指標を設定し、自社と競合の商品・サービスを配置したマトリックス図です。
縦軸と横軸には価格や品質などの要素を入れ競合を配置すると、縦軸と横軸の条件で競合の少ない市場がわかります。自社が独自性を発揮できるかを検討し、強みを生かせると判断すれば市場に参入できます。
ブランドポジショニングの成功事例5選
ここではブランドポジショニングの成功事例を5つ紹介します。
- ハーゲンダッツ
- モスバーガー
- Airbnb
- レッドブル
- スターバックス
どのブランドポジショニングも競合のブランドからずれており、独自の強みを持っています。後発であっても独自の立ち位置を持つことで、マーケティングを成功に導けます。
1. ハーゲンダッツ
ハーゲンダッツは「コンビニで買えるプレミアムアイスクリーム」というブランディングに成功しています。
ハーゲンダッツが日本に進出した当時のアイスクリームは子供が食べるお菓子というイメージで、他社がすでに市場のシェアを獲得していました。
そのような中、ハーゲンダッツは20代から30代の女性をターゲットにして、仕事から帰宅した後のプチご褒美として販売しヒットしました。素材や品質にこだわる高級路線で、他社との差別化ができています。
2. モスバーガー
モスバーガーの参入当初はマクドナルドが大きなシェアを持っていました。マクドナルドには安くて早いという一般的なファストフードのイメージがあります。
モスバーガーではその逆をいく市場で差別化を行いました。ファストフードでも健康志向の人をターゲットに国産素材を使い、野菜を多く使用しています。
バンズの代わりにレタスでパティを挟んだハンバーガーや、大豆ミートのパティを使ったハンバーガーなど、モスバーガーに行けば健康的なハンバーガーを食べられるというブランディングに成功しました。
3. Airbnb
Airbnbは「暮らすように旅する」というコンセプトを掲げ、現地で実際に住んでいる人の家に泊まり生活を体験できます。最近では旅行スタイルが観光地に行くだけではなく体験が重視されるようになりました。
ホテルのポジショニングは非日常や高級感、疲れをいやすことにありますが、Airbnbは日常や体験、交流にポジショニングし、ホテルとの差別化ができています。
4. レッドブル
エナジードリンクは滋養強壮や疲労回復のイメージがあり、中高年の男性をターゲットにしていました。レッドブルは「レッドブル、翼をさずける。」というキャッチコピーで飲むと強くなれる印象を与えています。
レッドブルはスケートボードやBMX、トライアルバイクなど、マイナースポーツのスポンサーをしており、キャッチコピーのイメージを顧客に植え付けているのです。
疲れたから飲むエナジードリンクの機能性で売るのではなく、レッドブルはスタイリッシュでかっこいいイメージのあるドリンクというポジショニングを確立させました。
5. スターバックス
スターバックスには、家でも職場でもないサードプレイスというコンセプトがあります。コーヒーといえばインスタントコーヒーに代表される自宅で飲むものと、職場で仕事をしながら飲むコンビニコーヒーがあります。
スターバックスは品質にこだわったコーヒー豆を使い、コーヒーの香りを楽しませるため店内を禁煙にして自宅よりも快適で、職場よりも仕事ができる空間を作り出しました。
スターバックスはコーヒーを提供するだけでなく、快適な空間も提供するカフェというポジショニングをしています。
ブランドポジショニングはブランディングのファーストステップ
この記事では、ブランドポジショニングのフレームワークや成功事例について説明しました。
どんなに競合が強くシェアが大きくても、競合が弱い部分や競合がいない市場があるはずです。後発ブランドや新規参入でも新しい視点を提案し価値を生み出すことで、ブランドポジショニングを確立できます。
ぜひブランドポジショニングで独自性のある価値を見つけ、市場での立ち位置を築いてください。
年商5億円を超えさらなるスケールアップを目指す経営者必見!
あなたのビジネスをスケールアップさせる集客と組織作り、
さらに、成功事例やここだけのお得な内容をお届け致します。
#ブランドポジショニング