- 自然言語処理とはどのような仕組みのことを言うのだろう?
- なぜ自然言語処理が必要とされているのか?
- 最近よく聞くChatGPTとも関係のある技術だろうか?
上記のような疑問を感じていませんか?
今回は、NLP(自然言語処理)の基本的な仕組みについて分かりやすく解説します。
NLPが活用されている身近な例も紹介していますので、ぜひ参考にしてください。
NLP(自然言語処理)とは
はじめに、NLPの概要と注目されている理由について解説します。
そもそも自然言語とは何か、「処理」とは何を意味しているのかを押さえましょう。
自然言語を機械が処理するための仕組み
NLP(Natural Language Processing)とは、人間が使う言葉を機械が認識できるデータ形式に変換することを指します。
私たちが日常生活で会話や読み書きに使っている言葉は「自然言語」です。
自然言語は人間にとっては理解しやすい一方で、機械が理解することはできません。
コンピューターは「0(スイッチオフ)」と「1(スイッチオン)」を組み合わせて情報を処理しているからです。
自然言語という曖昧な情報を機械が理解できる形式に変換することが、自然言語処理の主な役割といえます。
なぜNLPが必要とされているのか
従来、コンピューターに指示を出して意図通りの動作をさせるのはプログラマーの仕事でした。
一般ユーザーは用意されたプログラムに沿って、「ボタンを押すと動作する」といったプロダクトを利用してきたのです。
ユーザーが操作するボタンやキーボードといった機械との接点のことを「ヒューマンインターフェース」といいます。
近年、機械を操作する際のヒューマンインターフェースは物理的なボタンやキーボードに限定されなくなりました。
- スマートスピーカーを「声」で操作する
- 録音した音声を文字起こしする
- 手書きの文字をテキストデータに変換する
上記のようなケースでは、いずれも発話や文字などの「言葉」が人間と機械の接点となっています。
言葉を通して機械と情報をやり取りするには、機械が認識できるデータ形式に変換しなくてはなりません。
人間が使う言葉を機械に伝えるためのプロセスとして、自然言語処理が欠かせないのです。
NLPの歴史
NLPの歴史は東西冷戦時代まで遡ります。
旧ソ連の科学技術について実態を調査するために、アメリカはロシア語を英語に翻訳する研究に莫大な予算を投じました。
機械翻訳と呼ばれる技術が、自然言語処理の始まりだったのです。
1960年代に入ると、ジョセフ・ワイゼンバイム氏が対話型プログラム「ELIZA(イライザ)」を開発しました。
人間との対話が可能な自然言語処理プログラムは、ELIZAが世界初とされています。
一方で、自然言語処理の技術は1990年代に入るまで大きく発展することはありませんでした。
NLPの研究が進まなかった主な要因は次の通りです。
- コンピューターの性能が未熟で、大量のデータ処理が困難だった
- 研究が進むほど自然言語処理技術の難しさが明らかになっていった
- 機械翻訳の実現は困難という認識が広まり、アメリカで研究費が削減されるようになった
- NLPよりも「チェスで人間に勝てるコンピューター」のようなトピックが注目されやすかった
1990年以降、インターネットの普及と言語データの増大に伴い、自然言語処理技術は急速な発展を遂げていきます。
およそ30年もの時を経て、ようやく自然言語処理が脚光を浴びるようになったのです。
2010年代に入るとニューラルネットワークと呼ばれる技術が登場し、人間の脳により近い機械学習が可能になりました。
ニューラルネットワークの台頭が、自然言語処理の発展に大きなインパクトをもたらしたといわれています。
NLP(自然言語処理)の基本的な仕組み
自然言語処理を行うには「形態素解析」「構文解析」「意味解析」「文脈解析」のプロセスを経る必要があります。
それぞれの基本的な処理内容を押さえて、自然言語処理の仕組みに対する理解を深めましょう。
形態素解析
形態素解析とは、文を単語に分ける作業のことを指します。
日本語は単語と単語がスペースで分割されていないため、どこからどこまでが1つの単語かを解析しなければなりません。
私は大きな犬と子猫を飼っている。
→私/は/大きな/犬/と/子猫/を/飼っ/て/いる。
私(代名詞)
は(係助詞)
大きな(連体詞)
犬(普通名詞)
と(格助詞)
子猫(普通名詞)
を(格助詞)
飼っ(動詞)
て(接続助詞)
いる(動詞)
単語は文の最小単位です。
形態素解析によって文を最小単位まで分割し、構文や意味を解析するための準備をします。
構文解析
形態素解析で文を単語に分けただけでは、文全体が何を意味しているのかが分かりません。
構文解析とは、単語と単語の組み合わせによって想定される文の構造を全て挙げることを指します。
私は大きな犬と子猫を飼っている。
・大きいのは犬と子猫の両方
・大きいのは犬のみ(子猫は標準的なサイズ)
例文を単語レベルで見た場合、上記のように少なくとも2通りに解釈できます。
連体詞「大きな」が「犬」「子猫」の両方にかかっているのか、直後の「犬」のみにかかっているのか判定できていない状態です。
意味解析
意味解析とは、文として最も適切な意味になるよう構文全体を解釈する作業を指します。
単語自体の意味や単語間のつながりを分析し、意味が1つに定まるよう解析するのです。
私は大きな犬と子猫を飼っている。
・大きいのは犬と子猫の両方→「子猫」は子どもの猫を表すため「大きな」はあまり用いられない
・大きいのは犬のみ→「子猫」は一般的な子どもの猫という意味になるため、適切である可能性が高い
人間にとって「大きな犬」と「子猫」を連想するのは決して難しいことではありません。
機械にとっては、一文の意味を正確に捉えるために形態素解析・構文解析・意味解析を行う必要があるのです。
文脈解析
文脈解析とは、複数の文にまたがる文章全体の意味を捉える作業のことを指します。
同じ文でも、前後の文との関係しだいで意味合いが変わる場合があるからです。
・「彼ら」とは、飼っている犬と子猫のこと
・「楽しみ」にしているのは「私」
上記の例文を人間が読んだ場合、「彼ら」が飼っている犬と子猫を指していることはすぐに分かります。
機械にとっては、「彼ら」が「犬・子猫」を置き換えた代名詞であることを解析するプロセスが不可欠です。
2文目には主語が書かれていないため、「楽しみだ」の主語についても解析する必要があります。
平易な文でも、機械にとっては複雑な自然言語処理のプロセスが必要となることが実感できたのではないでしょうか。
複雑な文や長文の意味を機械が捉えるには、非常に高い技術が必要とされるのです。
NLP(自然言語処理)の活用例
NLPはさまざまなサービスやプロダクトですでに実用化されつつあります。
聞いたことのあるサービスや実際に利用したことなるプロダクトの中には、実は自然言語処理が活用されているケースもあるのです。
NLPの具体的な活用例を見ていきましょう。
生成AI
ChatGPTやMicrosoft Bing、Google Bardといった生成AIは、NLPを活用している技術の1つです。
ChatGPTの場合、45テラバイトを超える膨大なコーパス(単語のデータベース)を大規模言語モデルに学習させています。
特定の単語の次に用いられる単語を言語モデルが予測することにより、まるで人間が書いているかのような文章を生成できるのです。
生成AIは人間の言葉を「理解」しているのではなく、「解析」することによって回答を生成しています。
NLPの技術に多くの人が触れるきっかけを作ったサービスといえるでしょう。
音声認識AI
SiriやAlexa、Google AssistantといったAIスピーカーもNLPを活用したプロダクトです。
音声データを自然言語処理によって単語データに変換し、インターネット上を検索することで回答を生成しています。
ユーザーは文字を入力する必要がないため、よりいっそう「会話」に近い感覚で利用できる点が特徴です。
音声認識AIは会議などの議事録作成にも活用されています。
会議内で交わされた会話を元にテキストを生成できるため、議事録作成の手間や時間を削減できるでしょう。
AI-OCR
OCRとは、手書きの文字を画像認識し、テキストデータに変換する技術のことです。
紙媒体のデータを電子化する手段の1つとして、AI-OCRの活用が広がっています。
AI-OCRの大きな特徴は、活用するにつれてAIが文字のパターンを学習し、文字認識の精度が向上していく点です。
カメラが読み取った文字を直接データに変換するのではなく、NLPによって単語間のつながりなどを修正しています。
人によって癖が出やすい手書きの文字を高精度でテキストデータに変換するために、自然言語処理が活用されているのです。
テキストマイニング
テキストマイニングとは、大量のテキストデータから単語の出現回数や相関関係などを分析する技術です。
SNSの投稿にどのような傾向が見られるかを分析したり、社内文書で多く使われている単語を抽出したりすることができます。
単語の出現回数を単純にカウントするだけでは、単語が使われた意図や背景を正しく分析することができません。
NLPによって、単語の前後関係や使われている意味合いをより詳細に解析できるようになったのです。
人間が読み切れないほど膨大な量の文書を分析する際などに役立つ技術といえるでしょう。
機械翻訳
Google翻訳やDeepLなどの機械翻訳にも、NLPの技術が活用されています。
日本語では主語が省略されたり、曖昧に記述されたりするケースが少なくありません。
日本語の曖昧さを自然言語処理の技術が解決している例を紹介します。
DeepLによる英訳:One place I have wanted to visit for many years is Yakushima.
上記の場合、「訪れたいと思っている」のがユーザー自身(私)であることを自然言語処理によって判断し、主語を補っています。
一方、「訪れたいと思っている」のが誰なのかを前後関係から判断しなくてはならない場合はどうでしょうか。
DeepLによる英訳:My sister loves to travel. One place she has wanted to visit for many years is Yakushima.
「姉」についての話題であれば、「訪れたいと思っている」のは姉と捉えるのが自然です。
「彼女は」と明確に書かれていなくても、前文の内容から主語がsheであることを的確に判断しています。
人間にとっては文脈を捉えるのが容易であっても、機械翻訳ではNLPが欠かせないことを示す好例といえるでしょう。
感情分析
感情分析とは、文章に使われている単語の傾向を元にユーザーの感情を分析する技術のことです。
「ネガポジ判定」と呼ばれる感情分析には、NLPの技術が欠かせません。
たとえば「内容は平凡で目新しさはないが、事例が分かりやすいのでおすすめ」という書籍のレビューが投稿されたとしましょう。
「平凡」「目新しさはない」といったネガティブな言葉が使われているものの、全体として「おすすめ」であると判断できます。
感情分析では単語を正確に抽出した上で、文章全体がどのようなニュアンスで書かれているのかを分析しなければなりません。
単語を漏れなく抽出し、ネガポジ判定の精度を高めるためにNLPが活用されているのです。
まとめ
NLPとは、人間が使っている言葉を機械が認識できるデータ形式に変換するプロセスを指します。
人間が言葉を理解することと、機械が言葉を認識することの違いを知るには、自然言語処理への理解が欠かせません。
今回紹介したさまざまな活用例を参考にしつつ、NLPをより身近な技術として捉えてみてはいかがでしょうか。
生成AIや音声認識AIなどを活用する際に、「機械にとって理解しやすい伝え方」を意識するきっかけになるかもしれません。
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