- 「上司は僕のことを嫌っているはずだ」
- 「また失敗した。自分はダメな人間だ」
- 「部下は〇〇するべきだ!」
このような、「〜すべき」といった『べき論(すべき思考)』で仕事に取り組んでいませんか?
このままでは、自身を苦しめている解釈をしてしまっているため、辛い結果ばかりになってしまっています。
今回の記事は、事例を用いて『ABC理論』を解説し、出来事に対して具体的にどのように解釈しアプローチするればいいのかを解説していきます。
ABC理論とは?
ABC理論とは、「Activating events」「Belief」「Consequences」の頭文字をとった造語で、人間はA→B→Cの順番で物事を解釈するという論理療法のひとつです。
- A「出来事」
- B「捉え方・思考・信念」
- C「結果・感情・行動」
人間は、同じ「A(出来事)」が起こっても「B(捉え方)」の違いで「C(結果)」が変わるという理論です。
つまり、人間は出来事によって感情が決まるのではなく、出来事の捉え方次第で感情が決まっているということになります。
ABC理論についてやビジネスで役立てる方法をもっと知りたい方は、以下の記事もお読みください。
論理療法とは?
論理療法とは、臨床心理学者 アルバート・エリスが提唱した心理療法のことです。
人間は「信念」を持っているため、その信念に基き考えて行動します。しかし、数々の経験や体験を経て、認知の歪みが生じ、合理的ではない信念を持ってしまいます。
その非合理な信念に、どのようにアプローチしていくのかを考察し、物事の受け取り方を変えていく技法のことを論理療法といいます。
自身を苦しめているビリーフ(belief)
ABC理論では、自身を苦しめているビリーフ(belief)があります。
例えば、以下のようなことがあります。
- 絶対に成功しなければならない
- いつも失敗してばかりだから、自分には価値がない
- うまくいかない人生、誰も好きになってくれない
- 部下は〇〇であるべきだ!
- 〇〇が上司なんて、口をきくのも耐えられない
- 私は無能で最低だ
このように、自己に向けた信念や、他人に向けた信念があります。
基本的に、自身を追い込み、前向きな気持ちを持っていない、また「〜すべき」といった『べき論(すべき思考)』も自分を苦しめているビリーフに含まれます。
ABC理論の例
ここからは、ABC理論の事例をご紹介していきます。
ABC理論|テストの点数
例えば、テスト点数が90点を目指していたが、結果は「70点」でした。
このような場合、どのように解釈したらいいでしょうか。
- 信念「90点でなければならない」
→結果「落ち込む」 - 信念「緊張もあるしミスはあるものだ」
→結果「しっかり復習をして次回に活かす」
前者の場合、信念が「〜ではなければならない!」という固定観念を持っていれば、70点の点数で苦しい感情が湧き上がってくるため、問題に向き合う心理状態にはなりにくいでしょう。
後者の場合、「誰だって緊張する。完璧な人間はいない」という信念であれば、次回はミスしないように対策を練るようになります。
ABC理論|褒めてもらえた
例えば、初対面の人から「とっても言葉づかいが綺麗だね」と褒められたとします。
このような場合、とても嬉しく思う方が多いのではないでしょうか?しかし、信念の捉え方で結果がネガティブになることがあります。
- 信念「褒められる人は裏があるはずだ」
→結果「その人のダメなところを探す」 - 信念「良いところを見出してくれる人だ」
→結果「その人のいい所を探す」
このように、「褒めてくる人」=「胡散臭い!何が裏があるはずだ」という信念を持っていれば、その人との関係が崩れてしまいます。
素直に受け止める信念がないと人間関係まで変わってしまうことも少なくありません。
ABC理論|YouTubeの動画に低評価をつけられた
例えば、YouTube動画を運用している場合に、配信した動画に「低評価」をつけられたとします。
このような場合に、どのような解釈をしますか?
- 信念「低評価は1つも付いてはいけない」
→結果「落ち込んでしまい次回の更新をしなくなる」 - 信念「全員が高評価なんて有り得ない」
→結果「これからは低評価が減るようにいい動画を制作する」
前者の場合、1つでも低評価がある動画は“ダメな動画”という完璧主義な人は、たった1つでも低評価がつけば「ダメな動画=ダメな人間」と苦しい結果になってしまいます。
後者の場合、YouTubeチャンネルのユーザー数を考えれば「低評価は当たり前だ」「それだけ観てくれる人が増えたんだ」と結果が変わります。
合理的な信念に変えるためには?
ここまで例を用いてABC理論を解説してきました。
信念を変えれば、同じ出来事でも結果が変わり、見える世界が変わってきます。
しかし、ここで「合理的な信念に変えるためには何をどのように行えばいいのか」と疑問を抱く方もいるでしょう。
ここからは、「信念」とABCDE理論について詳しくご紹介していきます。
信念の5つ要素
まず、信念には大きく分けて5つの要素があります。
- 価値観(優先席は座ってはいけない、困ってる人は助けるべきだ)
- 考え方(全員が好いてはくれない、嫌われることもある)
- 認知(メガネをしている人は、勉強ができる)
- 哲学(悩みはすべて人間関係の中にある)
- 常識(営業マンは全員スーツを着なければならない)
上記の5つの中でも、特に意識した方がいいことは「認知」です。
理由は「認知」は客観視しづらいため、間違った認知をしてしまう恐れがあります。
フォロワー数が多い美男美女のイメージ
例えば、フォロワー数が多い美男美女と対談した場合、反射的に「彼女たちは清潔に決まっている!自社の製品を売ってくれる!」と感じてしまうことがあります。
しかし、これは心理学で言う“ハロー効果”が働き「フォロワーが多い=人気者」「美男美女=部屋は清潔」などと定義してしまっています。
実際はフォロワーが多くてもコメントやリプライが少ないユーザーばかりで商品は売れないこともある、また部屋も汚いことだってあり得ます。
つまり、上記のように無意識のうちに間違った「認知」をしてしまうことがあるということです。
ABCDE理論
具体的に合理的な信念に変えるためには、ABCDE理論が重要になります。
ABCDE理論とは、ABC理論に「Disputing」「Effective New Belief」の頭文字をとった造語で、合理的な信念に変えるための理論です。
- Disputing:非合理なBへ反論
- Effective New Belief:合理的な新しい信念
つまり、DとEが添えられたことで“不合理な信念”を“合理的な信念”に変える理論のことです。
ABCDE理論|非合理なB(信念)へ反論する
「C:結果」を変えるためには、非合理な“B(信念)”へ反論することで、効果的な信念になります。
例えば、「A」知らない人がこっちを見て笑ったという出来事に対して、どのように解釈しますか?
- 「B」信念「容姿を見てバカにしたに違いない!」
- 「C」結果「私は惨めな人間だ」
このような信念にABCDE理論を用いて別の解釈で反論した場合、以下のような新しい信念になります。
- 「D」こっちも見て笑ったからといって悪意があるとは限らない
- 「E」たまたまこっちを見ただけで何も気にする必要がない
このように『自分のコンプレックスは客観的な事実なのか?』『全員がこっちを見て私のことを笑うのか?』と論理的に反論することで“合理的な信念”になることができます。
ABCDE理論|ビジネスシーンでよくある認知の歪み
ABC理論で「B」が無意識でつくられていることもあると解説してきました。
無意識に脳が解釈するということは、脳に自動プログラムが設定されているようなものです。
これを心理学では『認知バイアス』といいます。システムのプログラムと同じで、自動プログラムが歪んでいると出来事自体を自動的に歪めてしまいます。
ここからは、ビジネスシーンでよくあるを認知の歪みをご紹介と共に、ABCDE理論を用いて新しい信念をつくる例を1つご紹介します。
事例:上司から少し面倒な仕事を頼まれた
例えば、上司から少し面倒な仕事を頼まれた場合に「B:上司は私が嫌いだから押し付けてきたんだ」という信念であれば「C:最悪...仕事はつらい」という結果になります。
ここでさらに、不合理な『認知バイアス(上司は嫌がらせする)』が働くと、上司が近寄っただけで過緊張をしてしまい、実力が発揮できず「C(結果)」が悪いものになってしまいます。
さまざまな事例をご紹介してきましたが、実際に上司との関わりや実生活における考え方を客観的に俯瞰することで、日常生活に落とし込みやすくなります。
事例:ABCDE理論を用いて反論する
ABCDE理論を用いて反論する場合、以下のように捉え方を見つめ直し客観視して反論していくことが大切です。
反論『本当に嫌っているからこの仕事を振ったのか?』
- D「成長のために難しい仕事をやらせてくれた」
- E「自分の成長・実績につながった」
このように、反論していくことで解釈が変わり、新しい信念をつくっていくことができます。
まとめ
ABC理論とは、人間はA→B→Cの順番で物事を解釈するという論理療法のひとつです。
- A「出来事」
- B「捉え方・思考・信念」
- C「結果・感情・行動」
B「捉え方・思考・信念」にアプローチしていくことで、C「結果・感情・行動」が変わるという理論です。
具体的に信念を変えていくためには、ABCDE理論が重要になります。
- D「非合理なBへ反論」
- E「合理的な新しい信念」
「C:結果」を変えるためには、非合理な“B(信念)”へ反論することで、効果的な信念になるという理論です。
ABC理論をしっかり理解し解釈を変えていくことで、行動(結果)が変わります。
ビジネスシーンでも取り入れていくことで、仕事の充実度まで変わってくるため是非取り入れてみてください。