近年、コロナ禍の影響もあり、デジタル化が進むにつれて顧客のニーズも多様化してきています。
このような時代に求められているのは、自社独自の価値や体験を創り出すこと、そしてそれを顧客に届けることです。
今回の記事では、マーケティングの神様と呼ばれているフィリップ・コトラーが提唱した「マーケティング5.0」について解説していきます。
マーケティング5.0について興味がある、詳しく知りたい方の中には、次のような疑問や悩みを抱えているケースが多いです。
- どのようにしてマーケティング5.0まで変化したのか知りたい
- マーケティング5.0とマーケティング1.0〜4.0の違いは?
- マーケティング5.0の具体的な施策が知りたい
こちらの記事をお読みいただくと、マーケティング1.0〜4.0についても詳しく解説していきますので、時代と共に変わっていく概念を理解できます。
マーケティング1.0〜5.0までの変化
マーケティング5.0の時代に突入するまで、長い歴史をかけてマーケティングの形は変化してきました。では、マーケティング1.0〜5.0まで、どのように変化したのか、特徴や代表的なフレームワークなどを紹介します。
マーケティング1.0
マーケティング1.0とは、1900年〜1960年代「安ければ売れる」という時代で、商品中心のマーケティング時代のことをいいます。
簡単に言ってしまえば、商品を大量生産し、大量に消費する時代でした。
当時のマーケティングを行う目的は、「商品をできるだけ安く売り、利益を最大化させる」ことでした。
そのため、主なマーケティング戦略は、商品を大量生産しコストを抑えることで、テレビCMを大量投下(Spray)して、認知度を上げて、利益向上に成功することを祈る(Pray)という「スプレー・アンド・プレイ」戦略でした。
商品と価格で需要を制御できたマーケティング1.0の時代は、企業が顧客に対して優位に立てる時代だったといえます。
・【商品】が中心のマーケティング
→コストを抑えて大量生産、大量販売する
・スプレー・アンド・プレイ戦略が主流
・需要が供給よりも多い
・4Pフレームワークが誕生
4Pフレームワークの誕生
マーケティング1.0時代は4Pフレームワークが誕生しました。
現代においても使用されていて、マーケティングを学ぶ際の基礎中の基礎と言われるほどのフレームワークでもあります。
この時代において「商品が中心」だったので商品(Product)と価格(Price)が重要な要素といわれていました。
自社利益を最大化するために、開発した商品(Product)をどうやって(Place)いくらで販売するか(Price)を調整し、どこで宣伝するのか(Promotion)を見える化し、実行可能なアクションをするために使われています。
マーケティング2.0
1970年代に技術が大きく進化したため商品のコモディティ化が進みました。
そのため、企業が商品を安く売ることではなく、買い手にとって“本当に何が必要なのか”にシフトした「買い手主導」マーケティングの時代のことをマーケティング2.0といいます。
当時は、技術発展に伴い似た商品が安く製作できるため、市場全体の価格競争が激しくなってしまい、以前からある薄利多売が通用しなくなってしまいました。
マーケティング1.0の企業優位な姿勢では、この時代で勝ち残ることはできなくなってきたため、顧客ニーズを知ることが重視された時代になり「企業視点から顧客視点」にシフトしたということです。
・【買い手】が中心のマーケティング
・コモディティ化が進む
→技術進展により、似た商品が増えた
・企業優位の「製作すれば売れる」時代が終了 ・STP分析が誕生
STP分析が誕生
マーケティング2.0では、「買い手志向のマーケティング」となったためSTP分析が誕生しました。
STP分析とは、市場の全体像を捉え、ターゲット対象となる顧客層を見定めたうえで、自社商品の立ち位置を選定するためのフレームワークです。
当時は、顧客を知ることが重視された時代ですので買い手を細分化し、より深く顧客を分析するために使わていました。
今も4P分析と共によく使用されています。
セグメンテーション:市場をニーズで分類するプロセス
ターゲティング:狙っていく対象となる顧客層を絞り込むプロセス
ポジショニング:自社の立ち位置・強みを見出すプロセス
マーケティング3.0
マーケティング3.0とは、1990〜2000年代に市場全体に商品が溢れ、企業の間で競争がさらに激しくなりました。
インターネットの普及により顧客が獲得する情報は急増したため、更なる市場変化が起きはじめました。
そのため、顧客側の変化に対応するために企業側は、ネットを使ったマーケティングが主流になったと共に、社会的責任を担うCSR(corporate social responsibility)に力を注ぐようになった時代のことをいいます。
当時は、国際化によって「地球温暖化」「人種差別」など、数々の社会問題が顧客側にダイレクトに認知されるようになったため、顧客の価値観に大きな変化が生まれたことで、CSRが注力するようになったといわれています。
このことから、マーケティング3.0時代の特徴は「環境にいい」「ECO(エコ)」など、その商品に合ったキーワードを付け、社会的責任を果たしているブランドとアピールする企業が増え始めたことです。
この時代からは顧客にとっての価値は何なのかを訴求する「価値主導のマーケティング」が必要とされた時代だといえます。
・社会的責任を担うCSRに注力することが求められる
・インターネットの普及
・価値主導のマーケティング
→モノ消費よりもコト消費が好まれようになり、共創(顧客と共に価値創造)していく
・3iモデル誕生
3iモデル誕生
3iモデルとは、企業を評価する「ポジショニング」「ブランド」「差別化」という3つの側面から見るフレームワークのことです。
「i」は、ブランドのアイデンティティ(identity)、イメージ(image)、インテグリティ(integrity)をさします。
ブランド・アイデンティティとは、買い手の興味関心を引くために、マインド内にポジショニングをすることです。
ブランド・イメージは、企業の将来のビジョンや目指すライフスタイルなど示すことで差別化を測り、顧客ニーズをしっかり満たしながら心を掴むことです。
ブランド・インテグリティは、ポジショニングと差別化によってブランド自体の実現を主張し、顧客の信頼を作り上げることで成り立ちます。
マーケティング4.0
マーケティング4.0とは、2010年以降になりますと消費者は「社会的価値」だけではなく、「精神的価値」を満たすことも求められるようになりました。
オンライン・オフラインを融合し「自己実現」を重要視する“自己実現マーケティング”の時代のことをいいます。
企業側は商品やブランドを通じて、ありたい自分・あるべき自分を追求する消費者の“精神的欲求”を満たす商品が求められていました。
また、近年ソーシャルメディアやブログ等の普及に伴い、顧客側が自身で情報発信をできる環境が整っています。
買い手は、口コミや宣伝など簡単に情報発信ができます。
ですから、企業のマーケティング活動は商品購入までのプロセスだけではなく、買い手の購入後のアフターサービスのプロセスまで考慮する必要が出てきた時代です。
マーケティング4.0時代は、オン・オフライン両方の顧客接点を充実させながら顧客エンゲージメント(ファンになってもらう)の向上が重要視され始めたのが特徴です。
・自己実現マーケティング
・社会的価値+精神的価値も求められる
・顧客エンゲージメントの追求
→購入後のプロセスまで重要になる
・5a理論誕生
5a理論の誕生
5a理論とは、顧客の購買プロセスのフレームワークです。
4aが主流だったため顧客は「行動(Act)」で終わりそれが繰り返されていました。
4.0の概念では最終目標が変更され「奨励(Advocate)」他者に商品やサービスを勧めるという行為が加わりました。
マーケティング4.0の目標は、ただ商品を認知してもらうだけでなく、商品のファンになってもらい、顧客自ら商品の推奨をしてもらうことです。
②訴求(Appeal):商品を識別・記憶する
③調査(Ask):評価や口コミを調査する
④行動(Action):商品・サービスの購入・申し込み
⑤奨励(Advocate):他者へ勧める
マーケティング5.0
マーケティング5.0とは、テクノロジーを応用し顧客体験価値を高める時代のことをいいます。簡単に言うと「テクノロジー」と「人間」の掛け算になります。
テクノロジー (AI・NLP・センサー・ロボティックス・loT) | ・データの処理、効率重視のパターン化 ・特定のアルゴリズムに沿った合理的な考え ・大規模で早いスピードで行える |
人間 | ・機械にはない視点がある、洞察力 ・心に共感することができ、信頼関係が構築できる ・何かあった時に柔軟に対応 |
上記のように、テクノロジーもこなす業務において完璧ではありません。
データを効率的に処理することやパターン化させることは得意でも、人間のように多角的な考え方や洞察力などを発揮することは人間にしかできません。
両者ともに、特徴を最大限に活かしながら協力していくことがマーケティング5.0の概念になります。
マーケティング4.0でも顧客体験の向上が重要視されていましたが、テクノロジーを応用し新たな価値提供が求められる時代に突入しています。
なぜマーケティング5.0が提唱されたのか?
マーケティン4.0で出来なかったことがテクノロジーの進展により可能になったためマーケティング5.0が提唱されたと言われています。
マーケティング4.0時代ではテクノロジーは、基本的なソーシャルメディアでのコンテンツ配信やオムニチャネルを使った戦略などで、存在感を示すことにとどまっていました。
現代のビジネスにおいて、コロナ禍の影響もあったためデジタル化の発展が大加速し市場全体、そしてマーケター達も強制的に新テクノロジーの世界に適応しなければいけなくなりました。
そのため、マーケティング5.0の概念を取り入れる必要がありました。
マーケティング5.0時代は、顧客体験全体を通じて人間のようにふるまうテクノロジーを活かしながら価値提供し、心に共感することができる人間で信頼関係を構築しながら価値を増幅させるような活動を行いましょう。
マーケティング5.0と1.0〜4.0の違いとは
商品販売中心のマーケティング1.0から、インターネット販売中心のマーケティング3.0に変化し、マーケティング4.0ではオンラインとオフラインを掛け合わせたマーケティングへと変化しました。マーケティング5.0では、AIなどの高度なテクノロジーを取り入れた価値提供が可能になりました。
本来、人が持っているコミュニケーション能力や状況に合わせた柔軟な思考、対応力と、高度な技術をかけ合わせて顧客満足度の向上を目指すのが、マーケティング5.0の特徴です。
マーケティング5.0の施策
マーケティング5.0のおもな施策は次のとおりです。
- データドリブンマーケティング:収集したデータをもとに、ユーザー属性やアクションを分析し、マーケティング戦略を立てる
- プレディクティブマーケティング:ユーザーアクションや市場の動きをもとに、予測を立てる
- コンテクスチュアルマーケティング:ユーザーの検索意図や文脈を読み取り、ニーズに合った広告を配信する
- アジャイルマーケティング:変化する時代や顧客のニーズに合わせて、短いスパンで施策に取り組んだり、調整したりする
このように、最新のテクノロジーを活用しながら、臨機応変に対応していくことで、より価値の高いサービスや商品を提供できます。
まとめ
- マーケティング1.0「製品中心」
- マーケティング2.0「買い手中心」
- マーケティング3.0「価値主導」
- マーケティング4.0「自己実現」
マーケティング5.0はテクノロジーの進化に伴い「テクノロジー✖︎人間」この掛け算で新たに顧客体験価値を増幅されていく概念のことです。
これからもAI、loT、そいてARやVRマーケティングを活用した活動も増えていき、顧客の好奇心を刺激して購買意欲を高め体験価値を重要視する時代になっていくでしょう。
それぞれの特徴を活かしながらマーケティングを行なっていきましょう。
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