エンパワーメント(empowerment)とは、「力を与える」「自信を与える」という意味の言葉です。
- 一人ひとりが活躍できる組織にするにはどうすればいいのだろう?
- 組織を引っ張っていくリーダーを育てるには?
- 従業員のモチベーションを高める方法とは?
会社経営や組織運営において、上記のような課題や悩みを抱えていませんか?
今回は従業員一人ひとりが能力を発揮して活躍できる組織づくりに役立つ「エンパワーメント」について解説します。
エンパワーを取り入れるメリットのほか、具体的な実践方法にも触れていますので、ぜひ参考にしてください。
エンパワーメントとは
はじめに、エンパワーメントの基本的な意味と、注目されている背景を押さえておきましょう。
エンパワーメントという言葉が表す意味を正確に理解しておくことが大切です。
本来の意味は「能力や才能を発揮すること」
エンパワーメント(empowerment)とは、もともと「力を与える」「自信を与える」という意味の英語です。
個人や集団が能力や才能を最大限に発揮し、自己決定や自己実現を可能にすることを指します。
20世紀にアメリカで公民権運動や女性運動がさかんになった際、頻繁に使われるようになった言葉です。
現在では、より広い意味で能力や才能を発揮できるようにするための働きかけ全般に使われています。
ビジネスにおいては「権限委譲」を指すことが多い
ビジネスにおいては、エンパワーメントは「権限委譲」を表す言葉としてよく用いられています。
部下やチームメンバーにより大きな裁量を与え、権限をもたせることによって、本来の力を発揮してもらおうというわけです。
注意点として、単純に権限を委譲すればエンパワーメントが完了するわけではありません。
権限委譲はあくまでも手段であり、個々の自由度が高まることで能力を発揮しやすくすることがエンパワーメントの目的です。
エンパワーメントが注目されている背景
エンパワーメントが注目されている背景には「人材不足」と「VUCA時代の到来」という2つの要因があります。
人材不足はあらゆる業界において対処すべき重要な課題です。
生産年齢人口が減少していく以上、一人ひとりが能動的に思考・判断した上で行動していくことが求められるでしょう。
エンパワーメントは人材不足を補うための解決策の1つとなり得ます。
VUCAとは、先が予測できない不確実性のことです。
- Volatility(変動性)
- Uncertainty(不確実性)
- Complexity(複雑性)
- Ambiguity(曖昧性)
未来予測が困難になっている時代においては、迅速に意思決定を行い、臨機応変に対応していく柔軟性が求められます。
従業員一人ひとりが主体性を持って考え、行動する組織になることは、VUCA時代に対応する上で不可欠な要素といえるでしょう。
エンパワーメントの8原則
国際発達ケア:エンパワメント科学研究室(筑波大学)は、エンパワーメントの原則として下記の8点を挙げています。
2. 主導権と決定権を当事者が持つ。
3. 問題点と解決策を当事者が考える。
4. 新たな学びと、より力をつける機会として当事者が失敗や成功を分析する。
5. 行動変容のために内的な強化因子を当事者と専門職の両者で発見し、それを増強する。
6. 問題解決の過程に当事者の参加を促し、個人の責任を高める。
7. 問題解決の過程を支えるネットワークと資源を充実させる。
8. 当事者のウエルビーイングに対する意欲を高める。
出典:筑波大学 国際発達ケア:エンパワメント科学研究室
ビジネス領域においても、形式的な権限委譲に終始するのではなく、働きやすく能力を発揮できる環境を目指すことが重要です。
エンパワーメントを取り入れるメリット
エンパワーを取り入れることによって、企業や従業員はどのようなメリットを得られるのでしょうか。
主なメリット4点について解説します。
迅速な意思決定をしやすくなる
エンパワーメントを促進することによって、意思決定のスピードが向上することが期待できます。
従業員が上長や役員の承認を得るプロセスが省略され、一人ひとりが主体性を持って意思決定できるようになるからです。
市場やビジネス環境がめまぐるしく変化している現代において、意思決定を迅速に進められることは重要なポイントといえます。
企業理念や組織のミッションを深く理解し、各自が適切な意思決定を下せるようになることで、組織が強化されていくはずです。
リーダーの育成に役立つ
エンパワーメントは従業員の自律的な思考・判断を促すことから、リーダーの育成にも効果的な手法といえます。
マネジメントする側・される側という関係性から脱却し、一人ひとりが考え抜いて課題解決にあたる組織が築かれていくからです。
何事にも主体性をもって考え、行動することが習慣づけられれば、あらゆる業務はリーダー育成のための教育機会となります。
リーダーシップを発揮して活躍できる人材を増やせることは、エンパワーメントによって得られるメリットの1つといえるでしょう。
中途採用者の早期適合に寄与する
権限を委譲することによって、在籍年数を問わず業務を自分事として捉えやすくなります。
特に即戦力としての活躍が期待される中途採用者に関しては、早期に職場になじんでもらうための1つの手段となるでしょう。
結果として早期退職を回避し、定着率を高めることにもつながります。
新たに仲間に加わった従業員の早期適合に寄与することは、エンパワーメントを推進するメリットの1つです。
従業員のモチベーション向上につながる
エンパワーメントを取り入れることは、従業員のモチベーション向上にもつながります。
主体的に判断して実行した結果、成果が得られたという体験を積み重ねていくことが、成長にもつながっていくでしょう。
自身が組織に貢献できていると実感しやすくなるため、業務を通じてモチベーションを高められます。
仕事を任されることでモチベーションが上がり、モチベーションが上がることで業務の質が向上するという好循環を生み出せます。
エンパワーメントの実践に向けた3つのアプローチ
エンパワーメントを実践するための方法として、大きく分けて3つのアプローチが想定されます。
それぞれのアプローチについて具体的に見ていきましょう。
1. 構造的アプローチ
経営層から管理職、管理職から従業員といったように、ポジションを基準に権限委譲を進めるアプローチです。
意思決定の場に従業員も参加してもらったり、一定の裁量を与えたりすることにより、経験値を高めていきます。
実際に昇進する前に上位ポジションの職務を実体験できるため、人材育成の観点においてもメリットのある方法です。
構造的アプローチは従来から存在する組織の仕組みを活用することから、比較的実践しやすい方法といえます。
2. 心理的アプローチ
従業員の自己効力感を高め、「やればできる」という思いを強めてもらうアプローチです。
小さな成功体験を積み重ねることが、自信をつけモチベーションを高めることにつながります。
例えば、重要なプレゼンを任せることにより、成功体験を積める機会を意図的に提供するといった方法が想定されるでしょう。
実際に成功しなければ逆効果になってしまうおそれがあるため、単に業務の丸投げにならないよう注意が必要です。
本人が自力で成功をつかんだと実感できる範囲で、きめ細かなサポートを行うことが求められます。
3. OODAによるアプローチ
OODAとは、Observe(観察)・Orient(状況判断)・Decide(決断)・Act(実行)の頭文字を取った言葉です。
一連のプロセスを繰り返す過程で、目の前の情報から判断して行動へ移す思考が身に付いていきます。
特に意思決定のスピードを向上させる効果が期待できるため、エンパワーメントの実践においても有効なアプローチです。
ビジネスにスピード感が求められる現代においては、取り入れておきたいアプローチの1つといえるでしょう。
エンパワーメントの実践方法
エンパワーメントを組織に根づかせていくには、どのようなことを実践していけばよいのでしょうか。
求められる取り組みについて解説します。
情報共有を促進する
エンパワーメントを推進する際には、情報共有の促進にも注力することが求められます。
権限を委譲される側の従業員にとって、知り得ない情報があるにも関わらず裁量だけが大きくなるようでは納得できないでしょう。
必要な情報はすべて開示されているか、誰もがアクセスできる状態になっているかを確認しておくことが重要です。
例えば、上層部が会議で決定したこと・話し合ったことが現場に下りてこないといった状況を回避する必要があります。
目標やゴールを明確化する
エンパワーメントの推進を通じて、組織が目指しているゴールを明確に示しましょう。
部下の立場から見ると、上長が独自に判断しているのか、会社の方針として決められているのかは大きな違いとなり得ます。
エンパワーメントが会社全体の方針であること、目標やゴールが明確に決まっていることが伝われば従業員は安心するはずです。
同時に、エンパワーメントの推進によって組織や従業員が得られるメリット面についても周知しておく必要があります。
支援・フォロー体制を充実させる
エンパワーメントを推進する以上、支援・フォロー体制の充実化は欠かせないポイントとなります。
成功体験を積んでもらうために権限を委譲したにも関わらず、失敗して自信を失ってしまうようでは本末転倒です。
適切なフォローを行えるよう、委譲する側に求められる行動を仕組み化しておくことをおすすめします。
例えば、進捗状況の報告方法を決めておくことや、部下の状況について管理職間で共有する場を設けておくことが大切です。
結果と達成度合いを確認する
エンパワーメントを推進する上で最も避けなくてはならないのは、業務の「丸投げ」に終始してしまうことです。
権限を委譲した結果、どのような状況になっているのか、達成度合いを随時確認していくことが求められます。
個々の自由度が高まり、能力を発揮しやすい環境になっているか、定期的に振り返りや総括を実施しましょう。
形だけ権限委譲を進めたものの、従業員の負担が増して疲弊する状況に陥っていないか、注意深く様子を観察してください。
エンパワーメントの本来の趣旨に立ち返り、目的が達成できているか確認していくことが大切です。
まとめ
エンパワーメントは、従業員が自律的に判断・行動し、自走できる組織にしていく上で効果的な取り組みといえます。
一方で、進め方を誤ると単に上長が部下に仕事を丸投げしているようにも映りかねません。
今回紹介したエンパワーメントの意義や目的を十分に理解した上で、自社の事業運営に取り入れてみてはいかがでしょうか。
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