- 従業員に企業理念が浸透しなくて困っている
- 毎日朝礼で暗唱してるけど、効果がある気がしない
- どうやったら社員全員のベクトルを揃えることができる?
経営者であれば、一度は悩んだことがあるのではないでしょうか。
企業理念は、経営者も従業員も全員が、同じ方向を向いて会社を発展させるために必要なもの。
ですが、従業員に浸透させるのは至難の業。
この記事では、従業員全員が企業理念に沿った行動をしているリッツ・カールトンの企業理念の浸透方法を、人材育成の観点から紐解いていきます。
リッツ・カールトンとは
ザ・リッツ・カールトン・ホテル・カンパニーL.L.C.は、1983年にアメリカで設立されました。
初期のホテルであるザ・リッツ・カールトン・ボストンからずっと、最高品質の施設とホスピタリティを提供しており、ラグジュアリーなリゾート高級ホテルとして世界中に知られています。
リッツ・カールトンは、世界30か国で90軒のホテルを経営しており、それぞれのホテルは旅行雑誌などが授与する数々の賞を受賞しています。
世界中に35,000人以上の従業員がいるにも関わらず、各ホテルが最高峰のホスピタリティをお客様に提供しているのは、リッツ・カールトンが目指す価値観や企業理念が世界中のホテルに浸透しているからです。
そのため、ホスピタリティ業界に身を置く企業の多くが、リッツ・カールトンを見本として従業員教育を行い、企業理念の浸透を目指しています。
リッツ・カールトンが企業理念「ゴールド・スタンダード」とは
リッツ・カールトンでは、企業理念を「ゴールド・スタンダード」と呼んでいます。
「ゴールド・スタンダード」には以下の6つの項目があり、リッツ・カールトンのホスピタリティの基礎となっています。
- クレド
- モットー
- サービスの3ステップ
- サービスバリューズ
- 第6のダイヤモンド
- 従業員との約束
「ゴールド・スタンダード」を深掘りしていきましょう。
クレド・カード
リッツ・カールトンのスタッフは、クレド・カードという四つ折りにしたカードを携帯し、いつでも見られるようにしています。
「クレド」とは、ラテン語で信条という意味です。
クレド・カードには、リッツ・カールトンのスタッフとして持つべき信条として、ゴールド・スタンダードやホスピタリティの精神が書かれています。
カードを常に身につけていることで、ゴールド・スタンダードを自分ごとに感じやすくなるでしょう。
従業員も紳士淑女である
リッツ・カールトンのモットーは、「We are Ladies and Gentlemen serving Ladies and Gentlemen(紳士淑女をおもてなしする私たちもまた紳士淑女です)」です。
リッツ・カールトンは宿泊するお客様を紳士淑女と定義しており、リッツ・カールトンのスタッフも紳士淑女であるように社員教育を行っています。
スタッフは紳士淑女にふさわしいマナーや振る舞いなどを身につけられるよう、研修が行われます。
また、お互いが紳士淑女であると認め合うことで、尊敬しあう関係性を育めます。
従業員への約束
リッツ・カールトンが定めている「従業員への約束」には、このように記されています。
リッツ・カールトンではお客様へお約束したサービスを提供する上で、紳士・淑女こそがもっとも大切な資源です。 信頼、誠実、尊敬、高潔、決意を原則とし、私たちは、個人と会社のためになるよう持てる才能を育成し、最大限に伸ばします。
ザ・リッツ・カールトン「ゴールド・スタンダード」より引用
リッツ・カールトンでは、紳士淑女である従業員を「大切な資源」として、従業員の多様性や生活、志を大切にすると、従業員に約束しています。
会社として従業員に約束し実行していくことで、従業員の満足度は上がり、業務に真剣に取り組むようになるでしょう。
その結果、顧客満足度も向上して会社の利益となるのです。
サービスの3ステップとサービスバリューズ
「サービスの3ステップ」と「サービスバリューズ」は、クレドやモットーといった抽象的な理念を具体的に行動できるように示したものです。
「サービスの3ステップ」では、基本的なホスピタリティについて示されています。
1. あたたかい、心からのごあいさつを。
2. お客様をお名前でお呼びします。一人一人のお客様のニーズを先読みし、おこたえします。
3. 感じのよいお見送りを。さようならのごあいさつは心をこめて。お客様のお名前をそえます。
ザ・リッツ・カールトン「ゴールド・スタンダード」より引用
「サービスの3ステップ」には、挨拶とお客様の名前を呼ぶことが書かれており、サービスの基本を徹底することで、リッツ・カールトンのホスピタリティを表現していきます。
「サービスバリューズ」では、お客様に対してどのように価値を提供するのかが書かれています。
(前略)
2. 私は、お客様の願望やニーズには、言葉にされるものも、されないものも、常におこたえします。
3. 私には、ユニークな、思い出に残る、パーソナルな経験をお客様にもたらすため、エンパワーメントが与えられています。
4. 私は、「成功への要因」を達成し、ザ・リッツ・カールトン・ミスティークを作るという自分の役割を理解します。
5. 私は、お客様のザ・リッツ・カールトンでの経験にイノベーション(革新)をもたらし、よりよいものにする機会を常に求めます。
6. 私は、お客様の問題を自分のものとして受け止め、直ちに解決します。
7. 私は、お客様や従業員同士のニーズを満たすよう、チームワークとラテラル・サービスを実践する職場環境を築きます。
(後略)
ザ・リッツ・カールトン「ゴールド・スタンダード」より引用
「サービスバリューズ」では、リッツ・カールトンだからこそのサービスを提供するための姿勢と行動がわかります。
「サービスの3ステップ」と「サービスバリューズ」に具体的な行動を明記することで、従業員は自分が会社から何を求められているのかを知ることができ、クレドに書かれている行動をとるようになるのです。
第6のダイヤモンド
第6のダイヤモンドとは、ゴールド・スタンダードの6つ目の要素として付け加えられました。
第6のダイヤモンドは、ミスティーク、エモーショナルエンゲージメント、機能的という3つの言葉で構成されています。
ミスティークとは神秘性という意味で、機能的と逆のイメージを持つ言葉です。
従業員は割り当てられた職務をこなしつつ(機能的)、お客様を一番に考えたホスピタリティを提供する(神秘性)ことにより、お客様と従業員の心が交わる(エモーショナルエンゲージメント)と考えられます。
機能的と神秘性が交わることで、エモーショナルエンゲージメントが生まれ、リッツ・カールトンの価値が高まるのです。
リッツ・カールトンが企業理念を浸透させるために行っていること
「ゴールド・スタンダード」を浸透させるためには、壁に掲げておくだけではできません。
具体的な行動へと落とし込むことで「ゴールド・スタンダード」が全スタッフに浸透していくのです。
「ゴールド・スタンダード」を浸透させるための取り組みを紹介します。
顧客情報のデータベース化
リッツ・カールトンでは、従業員がお客さまとの会話などから得た顧客情報をデータベース化しています。
お客様の個人情報以外にも、家族構成や好みの物など、すべてをデータベース化することで、従業員のホスピタリティに活かすのです。
情報を知っている人だけがサービスをするのではなく、従業員全員がホスピタリティのレベルを上げていく組織とわかります。
ワオ・ストーリー
ワオ・ストーリーとは、リッツ・カールトンのスタッフとお客様との間で生まれた感動的なサービスのことです。
客室に眼鏡を忘れてチェックアウトしたお客様のために、忘れ物に気づいたスタッフが新幹線に乗って届けたという話や、プライベートビーチに落とした結婚指輪を、金属探知機を購入して探し出した話など、リッツ・カールトンの感動のサービスには事欠きません。
ワオ・ストーリーは従業員の自発的な行動により生まれるサービスではありますが、リッツ・カールトンでは、ワオ・ストーリーを生みやすい環境を整えています。
1日2,000ドルの決裁権
ワオ・ストーリーを生み出すために、リッツ・カールトンでは従業員に1日2,000ドルの決裁権を与えています。
この2,000ドルは上司の決裁を待たずに、自分の判断で使えます。
企業理念に沿った行動で、かつお客様が喜ぶことであれば、スタッフはすぐに行動すべきというリッツ・カールトンの信念が現れていると言えるでしょう。
ワオ・ストーリーの共有
世界各国で生まれたワオ・ストーリーは本部で収集され、週に1度各ホテルに配信されます。
様々な感動体験を知ることで、自分がその場にいたらどうするかを考えられ、お客さまへのサービスに活かすことができるのです。
また、同僚が実行したワオ・ストーリーを知ると、自分も同じようにお客様のためにサービスしたいと考えるため、より一層ホスピタリティのレベルが上がります。
ファーストクラス・カード
ファーストクラス・カードとは、従業員同士で渡すカードのことです。
忙しく働いているスタッフを手伝ったスタッフがいれば、手伝ってもらったスタッフは、手伝ったスタッフにファーストクラス・カードを渡します。
ファーストクラス・カードは「手伝ってくれてありがとう」という感謝と賞賛の意味があります。
このファーストクラス・カードはもらった枚数、渡した枚数が人事評価にも結び付いており、モチベーションの持続にも繋がっています。
ホテル内での部署を超えた連携や、従業員同士が助け合う風土が醸成され、お客さまへのホスピタリティにも活かされるのです。
リッツ・カールトンの社員研修
リッツ・カールトンの人材育成の8割は、他の企業でも同じようにしていることだと言われています。
一般的な新入社員研修も、社会人としての常識を学ばせるうえで重要ではありますが、リッツ・カールトンではゴールド・スタンダードの浸透に重きを置いています。
ゴールド・スタンダードを理解し、リッツ・カールトンの一員ということに誇りをもって仕事をすることが最重要です。
そのために、研修では「面倒だ」「やりたくない」というようなネガティブな気持ちを生ませず、授業員一人ひとりが成功を収められるように促しています。
ここでは、新入社員が受けるオリエンテーションと現場での研修について説明します。
新入社員研修
リッツ・カールトンに入社した新入社員は、3日間のオリエンテーションを受講することになります。
入社してすぐに行われ、リッツ・カールトンについて何も知らない新入社員に対して、リッツ・カールトンが大切にしている価値観や企業理念などを教えます。
最初に業務の姿勢の基本となる企業理念をみっちりと教えることで、新入社員の価値観は会社の価値観に近づいていくでしょう。
また、この3日間は、リッツ・カールトンのホスピタリティを体験してもらう機会でもあります。
誰しも新しい職場では緊張してしまうものですが、新入社員を温かく迎えることが、リッツ・カールトンの企業理念を体感させることにも繋がります。
現場での研修
3日間のオリエンテーションの後は、自分の担当部署で3週間の研修が行われます。
現場での研修でも、リッツ・カールトンの企業理念に沿った考えや行動が教えこまれますが、リッツ・カールトンの価値観にそぐわない人がいれば、この時点で辞めてもらうこともあるそうです。
例えば、お客様の喜びのために動くのを面倒だと思っている人や、基本的なサービスだけしていればいいという考えの人は、おもてなしを第一としているリッツ・カールトンには合いません。
そのような人がいると、会社に悪影響を及ぼし、サービスの質も下がってしまうため、厳しい判断が下されることになるのです。
企業理念を浸透させるには、自分で考え行動させることが大事
リッツ・カールトンの人材育成方法や企業理念の浸透方法を紹介しました。
リッツ・カールトンのゴールド・スタンダードを浸透させるために、様々な取り組みが行われていますが、基盤となっているのは、従業員に自分で考えさせ、行動させるという権限移譲にあります。
ゴールド・スタンダードに沿っていて、お客様が喜び満足すれば、上司の決裁を経なくても、自分で行動することができ、それを褒められるのです。
一見、自分勝手に行動させてしまうのではと思うかもしれませんが、会社と従業員の価値観が同じであれば、企業理念に沿った行動をしてくれます。
ぜひ、リッツ・カールトンの取り組みをもとに、自社でも企業理念の浸透に何ができるかを考えてみてください。
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