組織の「7S」とは?経営戦略に活かす方法と併せて解説

最終更新日: 2024/08/23 公開日: 2024/08/09

組織変革に役立つフレームワークとして知られる「7S」について、この記事ではわかりやすく解説しつつ、次のような悩みや課題の解決に訴求していきます。

  • 組織を変革したい場合、活用できるフレームワークがないだろうか?
  • 現状の組織が抱える課題や問題点をどのように分析すればよいのか?
  • 経営戦略と紐づいた組織戦略を立案するにはどうすればいい?

昨今、ビジネスを取り巻く環境はめまぐるしく変化しており、従来までの組織のあり方を変革する必要に迫られることもあり得ます。

7Sを経営戦略に活かすための具体的なステップも紹介していますので、ぜひ参考にしてください。

組織の7Sとは

はじめに、組織の「7S」とはどのようなフレームワークなのか、概要を確認しておきましょう。

7Sがどのように提唱され、何に活用されているのかを押さえておくことが大切です。

マッキンゼー・アンド・カンパニー社が提唱するフレームワーク

7Sとは、コンサルティングファームのマッキンゼー・アンド・カンパニーにおいて提唱されたフレームワークです。

組織マネジメントに不可欠な課題解決組織変革を推進するためのフレームワークとして開発されました。

7Sを活用することにより、課題の洗い出しや解決策の考案を抜け漏れなく進められます。

7Sが提唱されたのは今から30年以上前のことですが、現在でも組織マネジメントにおける重要なフレームワークの1つです。

組織をハード面とソフト面の2つの要素に分類

7Sの大きな特徴として、組織を「ハード」と「ソフト」の2つの要素に分解している点が挙げられます

ハード面とは、戦略や組織構造といった仕組みのことです。

一方、ソフト面は人材やスキルといった特定の形を持たない要素のことを指します。

ハードをさらに3要素、ソフトを4要素に分解することにより、組織が抱える課題を総合的に捉えることが可能です。

今でこそ組織をハードとソフトの二側面で捉える考え方は当たり前になっていますが、当時としては新しい発想でした。

7Sが提案された時代には、組織が抱える課題は戦略や組織構造といったハード面から解決すべきものと考えられていたからです。

組織の現状を診断し、変革を目指す際に用いられる

企業などの組織が抱える重要な課題を発見し、解決していくには、組織全体を俯瞰的に捉える必要があります。

7Sでは組織をハード3要素+ソフト4要素に分類していますが、要素ごとに解決策を講じればよいという意味ではありません。

各要素は相互に関わり合っており、いずれか1つの要素について課題を解決すれば組織が改善されるわけではないからです

7Sを用いる際には、「分解する」ことが目的ではなく、全体を「統合させる」ことが重要である点を理解しておく必要があります。

ハード面に関する3S

7Sの各要素が何を表しているのか、具体的に見ていきましょう。

ハード面に関する3Sには、次の要素が含まれています。

  • 組織構造(Structure)
  • 戦略(Strategy)
  • システム(System)

各要素の意味をそれぞれ解説します。

組織構造(Structure)

組織構造(Structure)とは、組織の形態や仕組みの特徴のことです。

職務ごとの権限や指揮系統はどうなっているか、中央集権化されているか分権化されているか、といった点が組織構造に該当します。

組織構造によって、ヒト・モノ・カネ・情報を柱とする経営資源を配分する際の考え方も大きく異なるでしょう。

代表的な組織構造として、下記のものが挙げられます。

  • 機能別組織:業務の種類や職務内容によって分けられた組織
  • 事業部制組織:部署ごとに決定権をもち、各部署が独立した企業のように扱われる組織
  • チーム組織:プロジェクトチーム単位で編成されている組織

戦略(Strategy)

戦略(Strategy)とは、企業としての目的やミッションを達成するために構築された計画や行動方針のことを指します。

比較的新しい組織であれば、戦略ありきで人が集まり、組織構造が築かれていくケースも少なくありません。

一方、長年にわたって運営されている組織においては、設立当初から事業の目的や事業内容が変化している場合があります。

戦略ありきで組織構造が決まるのが理想ではあるものの、現状のリソース内で戦略を構築せざるを得ない場合も多々あるでしょう。

ヒト・モノ・カネ・情報をどのように配分するかは戦略によって決定づけられるため、非常に重要な要素といえます

システム(System)

システム(System)とは、組織を機能させ、戦略を実行に移していくために必要な仕組みのことを指します。

具体的には、組織内での制度やルール、情報の流れなどがシステムに含まれる要素です。

例えば、組織に所属する人材が入れ替わったとしても、組織内でのルールや制度が変わることはありません。

戦略を着実に実行し、組織の機能を維持していくには、所属する従業員が共通の方針に則って動いていく必要があります。

ルールのない組織は組織ではなくなっていくように、組織構造や戦略が有効に機能するにはシステムが不可欠です。

ソフト面に関する4S

次にソフト面に関する4Sを見ていきましょう。

4Sとは下記の4要素のことを指します。

  • スキル(Skill)
  • 人材(Staff)
  • 組織風土(Style)
  • 共通の価値観(Shared Value)

各要素が表している意味は次のとおりです。

スキル(Skill)

スキル(Skill)とは、組織が保有している知識や技術、ノウハウのことを表しています。

商品開発力や製造技術力のほか、マーケティング能力や営業ノウハウなども組織にとって重要なスキルです。

現状、組織として発揮できるスキルがどの水準にあるのか、不足しているのはどのような点かを把握しておく必要があります。

不足しているスキルを分析し、必要に応じて補っていくことも組織改革を実現する上で欠かせない要素といえるでしょう。

人材(Staff)

人材(Staff)とは、言葉どおり組織に所属する従業員やチームメンバーのことです。

組織変革に必要な要素を分析するには、各従業員のスキルレベルや能力、適性を正確に把握しておかなくてはなりません。

各従業員を過小評価しても過大評価しても、組織にとって必要な変革を正しく見極められないおそれがあります。

人的資源の現状を正確に把握することは、従業員の成長が今後どの程度見込めるかを判断する上でも非常に重要なポイントです

担当業務に意欲的に取り組んでいるか、組織に対して不満を抱いていないかといった点も慎重に確認しておく必要があります。

組織風土(Style)

組織風土(Style)とは、自社独自の特徴や風土、企業文化などのことを指します。

例えば、明文化されていないルールや、経験則にもとづいて業務が遂行されている度合いなども組織風土の1つです。

組織風土は企業独自のカラーを打ち出していく上で重要な役割を果たす一方で、組織の成長を妨げる要因にもなりかねません。

暗黙の了解によって「指摘するべきではないこと」「明らかにしないほうがよいこと」が蓄積されていく可能性があるからです。

他社から転職してきた従業員や社外取締役などの意見も参考に、組織特有の風土や文化を客観視しておくことが求められます。

共通の価値観(Shared Value)

共通の価値観(Shared Value)とは、組織に所属するすべての人の間で共有されている価値観のことです。

価値観が根本的に異なれば、同じビジョンやコンセプトに則って業務を遂行するのは容易ではありません。

企業理念や経営ビジョンを従業員が十分に理解しているか、組織全体で共有されているか、改めて確認しておく必要があります。

単に「企業理念を暗記しているか」といった表層的なことで判断するのは適切ではないでしょう。

事細かに行動指針やルールを設けなくても、組織が掲げる経営哲学や思想にもとづいて従業員が判断・行動できる状態が理想です

7Sを活用して組織を変革していくための4ステップ

組織変革を進める際には、一度に大きな問題を解決しようとするのではなく、順を追って進めていくことが大切です。

具体的には、次の4つのステップに沿って7Sを活用していきましょう。

ステップ1:現状把握

はじめに取り組むべきことは、組織の現状把握です。

課題や問題点だけでなく、うまく機能している点や自社の強みといえる点を含めて、現状を正確に把握しておく必要があります。

組織変革といっても、現状の組織のあり方をやみくもに変えればよいというものではありません。

評価できる点は正しく評価した上で、改善すべき点を客観的な視点にもとづいて判断することが重要です

現状把握を進める過程において、組織変革が必要とされる理由がいっそう明らかになっていくでしょう。

ステップ2:問題点の明確化

現状分析を通じて浮かび上がった問題点を整理していきます。

一般的に、組織が抱える課題や問題点は単一ではなく、複数の課題が複雑に絡み合っているケースがほとんどです。

すべての問題点を解決しようと試みるのではなく、改善効果が高いもの・実現可能性が高いものを絞り込んでいくとよいでしょう。

問題の大きさや深さによっては、解決の糸口がすぐには見つからない可能性もあります。

問題を細分化し、改善に着手できる確度の高い課題を見つけていくのがポイントです。

ステップ3:改善策の検討

ステップ2で抽出した課題について、具体的な改善策を検討していきます。

それぞれの課題と関わりの深い7Sの要素を確認しながら、改善に寄与するアプローチを導き出していくことが大切です。

改善策を策定する際には、SMARTに該当していることを確認しておく必要があります。

  • Specific(具体的か)
  • Measurable(測定可能か)
  • Achivable(達成可能か)
  • Related(経営方針に連動しているか)
  • Time-bound(期限が設定されているか)

ステップ4:実行と検証

改善策を実行に移した後も、検証の際には7Sを活用することをおすすめします。

想定よりも効果が出ていない場合は、施策の再検証が必要です。

効果が芳しくない原因を分析する際、7Sのうちどの要素が因子となっているかを詳細に検証していく必要があります。

例えば、当初はスキルに課題があると思われていたものの、実際には能力を十分に発揮できない要因があるのかもしれません。

能力が発揮しにくい原因が組織構造にあるのか、組織風土にあるのかによって、講じるべき対応も大きく異なります。

組織変革は短期間で完了するものではありません。

常に7Sに立ち返りつつ実行と検証を繰り返し、改善効果を高めていくことが大切です

まとめ

健康診断の検査項目が細かく分かれているように、組織の課題や問題点を知るには要素ごとに分ける必要があります。

組織は規模が大きくなればなるほど、運営期間が長くなればなるほど、抱える課題も複雑なものになりがちです。

7Sは、複雑化した組織の課題を解決可能な単位にまで細分化する上で有効なフレームワークといえます。

今回紹介した7Sの考え方や組織変革のステップを参考に、自社が抱える課題の抽出と解決にぜひ役立ててください。

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最終更新日: 2024/08/23 公開日: 2024/08/09