クリニックが求める人材を採用するためには、その手法を網羅的に把握し、適切なアプローチをする必要があります。
医療業界では看護師や医者が不足しており、採用競争は激化の一途をたどっているためです。
国立病院や私立大学病院が高待遇で医療職を募集するなか、より効果的な採用を行わないと求める人材はクリニックに応募しないでしょう。
クリニックの経営者や人事は、求める人材を採用するために戦略を練ることが重要です。
医療業界の有効求人倍率は?
まずは医療業界の転職市場の現状を把握してもらうために、有効求人倍率をお伝えします。
有効求人倍率とは、求職者1人に対して何件の求人があるかを示した割合です。
たとえば、有効求人倍率が2倍ならば、求職者1人に対して2件の求人がある状態です。
1倍を下回っている場合は、求職者1人に対して求人数が1件以下ということになります。
つまり、有効求人倍率が1.1倍以上になると、会社にとっては求職者を見つけにくい状況だといえます。
上記を踏まえた上で、看護師・准看護師と医師・薬剤師の有効求人倍率を見ていきましょう。
順番に解説していきます。
看護師・准看護師
厚生労働省によると、2022年度のパートを含む看護師および准看護師の有効求人倍率は2.20倍です。
求職者1人に対して、求人が2.2件あることを意味します。
たとえば、看護師や准看護師を目指している方が100人いたとして、そこに220件の求人が集まっていることになります。
つまり、120社は看護師や准看護師を採用できません。
このことから、看護師および准看護師は不足しており、売り手市場だといえます。
医師・薬剤師等
厚生労働省が公表した令和5年2月分の「一般職業紹介状況」によると、医師・薬剤師等の有効求人倍率は2.27倍です。
(参考:厚生労働省|令和5年2月「一般職業紹介状況」)
パートを含めると有効求人倍率は3.18倍になります。
医師や薬剤師などの求職者が100人いるならば、そこに318社が求人を出していることを意味します。
つまり、100社は求職者を獲得できますが、218社は採用できません。
医師や薬剤師に関しては、看護師よりも人手不足に悩まされているといえるでしょう。
クリニックの採用方法7選
医療業界は看護師と医師のどちらも人手不足で、採用市場は激化しており、優秀な人材は待遇のよい国立病院や私立大学病院を選ぶ傾向があります。
クリニックは求める人材を得るために、適切な採用手段を知っておく必要があります。
そこで本章では、クリニックの採用方法を以下の7つ紹介します。
- 求人・転職サイトに掲載する
- 求人検索エンジンに掲載する
- 人材派遣サービスに依頼する
- ハローワークを活用する
- 自社のSNSやWebサイトに求人情報を掲載する
- リファラル採用を活用する
- ナースセンターで看護師を募集する
それぞれ順番に見ていきましょう。
1. 求人・転職サイトに掲載する
医療従事者を採用する定番の方法のひとつが、求人・転職サイトに求人情報を掲載することです。
求人・転職サイトは、企業が求人を掲載し、求職者がその情報を閲覧して応募できるプラットフォームです。
代表的なサービスとしては次のものがあります。
- リクルートエージェント
- doda
- マイナビ看護師
求人・転職サイトを利用するメリットは、全国の求職者に向けて求人を届けられることです。
規模が大きい求人媒体だと、登録者が多いためマッチする確率が上がるでしょう。
また、スカウト機能が備わっていることもあり、求める人材に直接アプローチできることもポイントです。
2. 求人検索エンジンに掲載する
クリニックが採用を成功させるためには、求人検索エンジンに情報を掲載するのもおすすめです。
求人検索エンジンとは、簡単にいうと求人情報に特化した検索エンジンを指します。
複数の求人サイトの情報を、ひとつの検索窓で横断して調べられます。
わかりやすく言えば、GoogleやYahoo!の求人バージョンとイメージです。
代表的な求人検索エンジンとしては、次のものが挙げられます。
- indeed
- 求人ボックス
求人検索エンジンのメリットは、掲載費用をかけずに求人を掲載できる点です。
初期費用をかけずに、幅広い求職者に求人情報を届けられるので、非常にお手軽に始められます。
3. 人材派遣サービスに依頼する
クリニックの人手不足を解決したい方は、人材派遣サービスを活用するのが効果的です。
人材派遣サービスとは、人材派遣会社が雇用している人材を、企業に派遣するサービスです。
派遣社員は派遣先で仕事に従事しますが、雇用関係にはありません。
採用コストを抑えられるため、予算をかけられないクリニックにおすすめです。
ただし、医師の派遣については、以下のケースを除き法律で原則禁止とされています。
- 人材不足の解消がとくに必要だと認められるケース
- 派遣先が医師を直接雇用するケース
上記を理解した上で、人材派遣サービスに依頼しましょう。
4. ハローワークを活用する
クリニックの採用では、ハローワークを活用するのも手段のひとつです。
ハローワークは、求職者と企業に無償でさまざまなサービスを提供する、厚生労働省が運営する総合雇用サービス期間です。
メリットには、求人情報の掲載が無料なことや会社説明会に参加できることなどが挙げられます。
求人情報を出す場合、求人サイトを利用すると広告料がかかりますが、ハローワークでは費用がかかりません。
また、ハローワークは、就職面接会や会社説明会を定期的に開催しています。
これらのイベントに参加すると、就職に意欲的な人材や自社の価値観に合った人材を採用することにつながるでしょう。
5. 自社のSNSやWebサイトに求人情報を掲載する
採用コストを抑えたい方は、自社のSNSやWebサイトに求人情報を掲載してみましょう。
XやInstagram、Facebookなどに求人情報を掲載すると費用がかかりません。
また、求人に応募してきた方のプロフィールから人柄を確認することも可能です。
そのため、採用に予算をかけずに、よい人柄の人材を得られる確率が上がります。
ただし、SNSやWebサイトで求人を掲載する場合、情報を拡散することが求人媒体に比べて難しくなります。
求人情報を拡散させるために、SNSマーケティングやSEOの知識が必要になることに留意しましょう。
6. リファラル採用を活用する
リファラル採用を行うのもクリニックの採用手段のひとつとして挙げられます。
リファラル採用とは、自社の社員から知人や友人を紹介してもらい採用する手法です。
自社の社員を通して、働き方や雰囲気、風土などが伝わっているケースが多く、採用のミスマッチが起きにくいメリットがあります。
また、求人・転職サイト経由よりも採用コストがかからず、社員の定着率が高くなりやすいとされています。
ただし、知人同士でグループ化してしまったり、不採用の場合に紹介者と気まずい雰囲気になったりする恐れがあることに注意しましょう。
7. ナースセンターで看護師を募集する
看護師が不足している場合は、ナースセンターで募集するのも手段のひとつです。
ナースセンターとは、看護職員の知識の向上と就業の支援をするための団体です。
そして同機関の事業の一部である「ナースバンク事業」が、看護師の就職を支援するサービスになります。
看護職員は無料でサービスを利用可能です。
さらに、ブランクのある看護師には、研修会や就職相談会などが実施されています。
このため多くの看護師がナースセンターに登録しています。
看護師を採用したいと検討している方は、ナースセンターで求人を出すのもおすすめです。
クリニックが求める人材を採用するコツ
クリニックが求める人材を採用するコツは、以下の3つです。
- 働きやすさをアピールする
- スタッフの声を掲載する
- ペルソナを明確にする
それぞれ順番に見ていきましょう。
働きやすさをアピールする
求める人材を採用するためには、クリニックでの働きやすさをアピールすることがポイントです。
XやInstagram、YouTubeなどで働いている動画を掲載したり、代表からのメッセージで働き方を伝えたりするとよいでしょう。
クリニックでの働きやすさを拡散できると、より多くの求職者から応募がくることが期待できます。
そこから人柄や価値観、経験などをチェックし厳選していくと、求める人材を採用できるようになります。
そのため、まずは働きやすさをアピールして、応募者の母数を増やすことが重要です。
スタッフの声を掲載する
Webサイトにスタッフの声を掲載することも、求める人材を採用するコツです。
スタッフの声を掲載することで、求職者がクリニックでの働き方や人間関係、制度などをイメージしやすくなるためです。
たとえば、毎日の仕事内容や休憩時間の過ごし方、1週間のスケジュールなどを載せると、求職者は働いたあとの自分の姿をイメージできます。
文章だけでなく、看護師や医療事務、医師にインタビューを行い、その写真を載せるのもポイントです。
そうすることで、応募者が増えることが期待でき、求める人材を得られる確率が高まります。
ペルソナを明確にする
クリニックが求める人物像(ペルソナ)を明確にすると、人材選びに失敗しにくくなります。
ペルソナを明確にしていないと「なんとなく人柄がよい」「話しやすかった」などの抽象的な判断基準で選ぶことが少なくなります。
求める人材の性格や年齢、価値観、経験などが明確だと、その設定にある程度マッチする求職者のみを採用すればよいだけです。
その結果、理想的な人材を採用できる可能性が高まるでしょう。
以下のペルソナの設定項目を参考にして、設定してみてください。
社会的/経済的な情報 | 心理的な情報 |
・名前・性別・生年月日・居住地・職業・収入・学歷・家族横成 | ・価値観・ライフスタイル・性格・興味関心・趣味・将来の目標/夢 |
クリニックの採用で失敗しないポイント
クリニックの採用で失敗しないポイントがわかると、リスクを下げながら定着しやすい人材を見つけられます。
採用で失敗しないポイントは、以下の2つです。
- 採用コストを抑える
- 内定者へのフォローをきちんと行う
順番に解説していきます。
採用コストを抑える
クリニックの採用で失敗しないポイントのひとつは、採用コストを抑えることです。
採用コストをかけて求人・転職サイトに求人を掲載し、求職者を採用しても離職されると、すべてが水の泡です。
採用活動に予算をかけたくない方は、以下の手段を利用してみてください。
- 自社のSNSやWebサイトに求人を掲載する
- ハローワークを活用する
- リファラル採用を実施する
- ナースセンターで看護師を募集をする
上記のような手段だと、採用にほとんどコストがかかりません。
まずは予算をかけずに採用活動を行ってみましょう。
内定者へのフォローをきちんと行う
内定者へのフォローをきちんと行うことも、クリニックが採用で失敗しないポイントです。
内定が決まっていても内定者は100%入社するとは限りません。
同時並行で他社の面接を受けて採用されている可能性があり、条件次第では入社を断られる可能性があります。
そのため、内定者へのフォローをきちんと行い、入社するように促す必要があります。
たとえば、定期的に内定者と面談を行って悩みを解決したり、職場見学や先輩社員と話す機会を設けたりしましょう。
そうすることで、内定者の入社意欲が高まり、採用に失敗しにくくなります。
まとめ
本記事ではクリニックの採用手法と求める人材を獲得する方法、失敗しないポイントなどをまとめました。
クリニックが求める人材を採用するには、働きやすさをアピールしたり、スタッフの声を掲載したりすることが大切です。
自社の採用情報と魅力をWebサイトやSNSに載せることで、応募者の増加につながり、人材を選べるようになります。
しかし、よい人材を採用しても社内体制が整っていないと、働きづらさや将来性のなさを感じさせてしまい、離職につながる恐れがあるでしょう。
医療従事者に長く働いてもらうには、マネジメント力やリーダーシップを強化することがポイントです。
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