組織マネジメントとは?フレームワークや必要なスキルを解説

最終更新日: 2024/07/03 公開日: 2024/07/03

組織マネジメントとは、経営資源である「ヒト・モノ・カネ・情報」を効率的に活用して、組織を円滑に運営することです。

管理職は経営陣の考えを部下に伝える役目を主に担っていましたが、最近ではマネジメントの幅が広がっています。

管理職のすべきことも増え、従来のマネジメントでは上手くいかないことも増えてきました。

「どのように部下をマネジメントすれば良いのか」
「管理職に必要なスキルは何か」
「組織マネジメントのフレームワークを使いたい」

このような悩みのある管理職の方のために、この記事では組織マネジメントの目的や必要なスキル、「マッキンゼーの7S」というフレームワークについて説明します。

組織マネジメントとは

組織マネジメントとは、経営資源である「ヒト・モノ・カネ・情報」を効率的に活用して、組織を円滑に運営することです。

企業は個人の考えや裁量だけで動いてしまうと統率が取れず、目標やビジョンを達成できないため、組織マネジメントが必要です。

組織マネジメントは管理職が担います。昔は上層部の考えを部下に落とし込むことが主な目的でした。

現代では変化が速く、上層部の判断を待っていると変化についていけない場合もあるため、部下の能力を引き出すために組織マネジメントを行うことが多いです。

組織マネジメントの目的

組織マネジメントをすることで、以下のような組織の課題を解決できます。

  1. 管理職の負担を軽減する
  2. 各従業員に合わせたマネジメントを行う
  3. 生産性を向上させる
  4. 離職を防止する

組織マネジメントは経営資源の中でもヒトにフォーカスを当てています。管理職が部下に対して適切にマネジメントをすることで、従業員のモチベーションを高く保てます。

1. 管理職の負担を軽減する

リクルートマネジメントソリューションズ『マネジメントに対する人事担当者と管理職層の意識調査2023年』より引用

組織マネジメントを行うと、ヒト・モノ・カネ・情報を適切に配分できます。人材の適材適所ができ組織を管理しやすくなるため、管理職の負担が軽減します。

リクルートマネジメントソリューションズのアンケート結果では、管理職である「ミドルマネジメント層の負担が重くなりすぎている」と考えている人が多いとわかりました。

管理職はもともと組織の要として経営者と現場の一般社員をつなぐ役割を担っていましたが、働き方の多様化やコンプライアンスの順守、リスキリングなどの経営課題の増加などにより負担が増えています。

組織マネジメントによって従業員の自発的な行動が増えるため、管理職は成長途中の部下へのサポートを重点的に行えます。すべての部下に同じだけのサポートをする必要がなくなり、効率的な運営ができるでしょう。

2. 各従業員に合わせたマネジメントを行う

組織には多様なスキルやバックグラウンドを持った従業員がいます。全員に同じマネジメントをしても、それぞれの良さを伸ばすことができません。

組織マネジメントでは、各従業員の能力や現状を考慮してそれぞれに適したマネジメントができます。価値観の違いを把握することで部下の資質を活かせるようになるため、組織全体のマネジメントも上手くいきます。

3. 生産性を向上させる

それぞれの部下に適したマネジメントができるようになると、部下はモチベーション高く業務を遂行します。組織マネジメントにより適材適所に業務を担当させると組織の生産性が向上するでしょう。

生産性を向上させるために無駄の削減が行われ、経営資源の「ヒト」に余裕が出てきます。従業員満足度が上がることでより良いサービスを提供できるようになり、顧客満足度も向上します。

4. 離職を防止する

組織マネジメントにより従業員満足度が上がっている状態は、この会社に貢献したいというモチベーションが高まっている状態でもあるため、従業員は離職を考えることがなくなります。

日本の労働人口は年々減少し、転職のハードルが下がっているため、離職を考えない環境の構築とマネジメントが重要です。

従業員を離職させないためには、社内コミュニケーションを活発化させ、公平で適切な評価制度を確立させましょう。

組織マネジメントを行うために管理職に必要なスキル

日本能率協会マネジメントセンター『【管理職の実態に関するアンケート調査】ポジティブな管理職を育てる鍵とは』より引用

日本能率協会マネジメントセンターが実施したアンケートによると、ポジティブ管理職とは、今の仕事が面白く管理職を続けたいと思っている人のことです。

ポジティブ管理職がマネジメントとして意識しているのは、人と信頼関係を構築することや組織の目標達成に部下を導くことだと考えられます。

アンケート結果を踏まえて、組織マネジメントに行う際に必要なスキルを5種類紹介します。

  1. コミュニケーションスキル
  2. 目標設定スキル
  3. 実行力
  4. 評価力
  5. リスクマネジメントスキル

組織マネジメントを円滑に行うためにも、スキル向上を意識しましょう。

1. コミュニケーションスキル

管理職は社内外での信頼関係の構築のために、コミュニケーションスキルが必要です。上司の決定を部下に伝える情報伝達や部下の育成、評価に役立ちます。

高いコミュニケーションスキルを持つ管理職は周囲から信頼されているため、円滑に業務を進められます。管理職は発言力が強くなりますが、アクティブリスニングを取り入れて部下の言葉を最後まで聞き理解することが重要です。

感情に任せて叱ったり、自分を正当化したりすることは、信頼関係に傷がつきます。自らをコントロールし客観視できる立場でコミュニケーションをとりましょう。

2. 目標設定スキル

管理職は目標を設定し、組織全体で目標達成に向かって働きます。適切な目標を設定できなければ、部下はモチベーションを失ってしまうでしょう。管理者が行うべき目標設定には3種類あります。

  • 組織の目標
  • 部下の目標
  • 自分自身の目標

まず、組織という共通の目標を設定することで、部下が同じ方向を目指し自身の役割に合った目標を設定できます。目標を設定する中で現状の課題を把握でき、具体的な行動へと落とし込むことが可能です。

自分自身の目標には、部下が目標を達成するためのサポートと組織の目標を達成するためにすべきことが含まれます。

3. 実行力

新・社会人基礎力
経済産業省『人生100年時代の社会人基礎力について』より引用

実行力は、経済産業省が『人生100年時代の社会人基礎力について』という資料の中で「新・社会人基礎力」12の能力要素の1つとして挙げています。「前に踏み出す力」の要素に分類され、完遂力やチャレンジ力のこととされています。

目標設定スキルと実行力はセットで考えられ、目標を設定した後、行動し実現しなければなりません。失敗を恐れずに計画的に行動することが実行力です。

4. 評価力

管理職は部下を評価する立場にあります。評価は給与に直結しているため、部下の能力を客観視して公平に評価しなければなりません。評価には3種類あります。

  • 能力評価
  • 業績評価
  • 情意評価

業績評価と情意評価は達成度や勤怠に関する評価のため判断しやすいですが、能力評価は部下の能力を評価するため高い評価力が求められます。

部下一人ひとりに関心を持って日々の勤務を細かく観察し、成長のためにサポートすることで、部下との信頼関係を築けます。評価を伝えたときに部下が納得できる関係性の構築が重要です。

5. リスクマネジメントスキル

管理者はリスクは起こりえるものと考えて業務にあたる必要があります。業務の中でどのような時にどのようなトラブルが発生する可能性があるかを考え、事前に防ぐことが重要です。

トラブルが発生しても管理者が責任を持って解決することや、部下にはトラブルが起きればすぐに報告することを徹底することがリスクマネジメントスキルです。

組織マネジメントのフレームワーク「マッキンゼーの7S」

組織マネジメントのフレームワークは「マッキンゼーの7S」が有名です。

McKinsey & Company『Enduring Ideas: The 7-S Framework』より引用
ハードの3S・戦略(Strategy)
・組織構造(Structure)
・システム(System)
ソフトの4S・スキル(Skill)
・人材(Staff)
・スタイル(Style)
・共通の価値観(Shared value)

7Sとは、マッキンゼー・アンド・カンパニーというコンサルティングファームが提唱しているフレームワークです。組織にはハード面の3種類とソフト面の4種類の構成要素があるとして、それぞれの課題を総合的に考えます。

ハードの3Sは組織に関する要素で、ソフトの3Sは人に関わる要素です。ハード面は経営者が短期間に変更できる要素ですが、ソフト面は経営者がコントロールしづらく、変更に長い時間がかかります。

それぞれの要素を詳しく見ていきましょう。

1. 戦略(Strategy)

戦略とは、企業の最終的なミッションを達成するためのアクションプランです。

他社との比較で導き出した自社の強みや弱みを分析し、経営理念を達成するための方向性を決めます。経営資源をどのように戦略に落とし込むのかを重視します。

2. 組織構造(Structure)

組織構造は、組織の形態や仕組みのことです。組織構造には仕事の種類で部署を分ける機能別組織、事業部ごとに決定権を持つ事業部制組織、プロジェクトごとにチームを編成するチーム組織の3種類に分けられます。

部署間での上下関係の有無や指揮命令系統の構造だけでなく、組織の中で誰と働くのか、上司と部下の関係性、コミュニケーションの方法などを分析します。

3. システム(System)

システムとは、社内制度や情報システムなどのことです。社内で業務を滞りなく遂行するための制度には以下のようなものがあります。

  • 予算管理制度
  • 目標管理制度
  • 人事評価制度
  • 給与体系
  • 採用・人材育成制度

作業手順を示した業務マニュアルの作成や情報の透明性の確保などもシステムの運用に必要です。

変化の激しい世の中にあって旧態依然としたルールや仕組みが残っていては、効率が下がってしまいます。時代に合わせた制度やシステムの設定が必要です。

4. スキル(Skill)

スキルは従業員が持つスキルや能力だけでなく、組織として蓄積したノウハウや技術も含みます。組織に必要なノウハウなどは従業員から発信されて蓄積していくものなので、一人ひとりのスキルや知識を高めることが大事です。

組織に十分なスキルがあることは市場での競争優位性が高まるとともに、効率的な事業運営が可能です。従業員のスキル向上には、セミナー開催やeラーニングシステムの活用などで、学習機会を継続的に創出する必要があります。

5. 人材(Staff)

人材とは、組織で働く従業員のことです。従業員の採用や育成、評価などの人材管理を行います。

従業員満足度を詳細に調査し、組織への不満や育成の進捗を確認する必要があります。働いている従業員が組織文化や価値観を作るため、従業員エンゲージメントや満足度の向上に注力しなければなりません。

6. スタイル(Style)

経営スタイルとは、組織の雰囲気や特徴、風土のことです。上下関係があってもコミュニケーションがとりやすい組織なのか、経営者が定めた方向性に全従業員が一丸となって向かっていく組織なのかでは、雰囲気が変わるでしょう。

組織の雰囲気は働きやすさに関わるため、人材にとって会社を選ぶ理由の1つとなります。雰囲気が悪ければ従業員満足度が下がり、離職率が上がってしまう可能性もあります。

7. 共通の価値観(Shared value)

共通した価値観とは、経営陣と従業員の価値観が一致しているかということです。価値観にずれがあると、一丸とした組織になりません。

組織のミッションやビジョン、バリューを定めても、従業員が知っていなければ、同じ方向に進むことは難しくなります。価値観が共有されることで、従業員はモチベーション高く、組織の目標を達成するために業務を行います。

組織マネジメントを成功させるには心理的安全性の確保が重要

この記事では、組織マネジメントの目的や管理職に必要なスキル、フレームワークについて説明しました。

現代の組織マネジメントは部下を管理するだけでなく、様々な価値観やスキルを持った部下の強みを引き出すリーダーシップが求められています。リーダーシップを発揮するには、部下との信頼関係の構築が重要です。

役職や勤続年数などに関わらず、誰しもが率直な意見や質問を発言できるようにするためには、心理的安全性が確保されている環境を作らなければなりません。組織の中で対話が活発になれば、方向性を示しやすくなります。

部下にとっても自分の強みや価値観を知ってもらったうえで、組織の一員として業務を行えます。組織マネジメントは、管理職と部下の双方にとって良い影響を与えるのです。

従業員の主体的な行動を促すためにも、自社に合った組織マネジメントを実施してください。

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最終更新日: 2024/07/03 公開日: 2024/07/03