時代の流れや環境に応じて顧客のニーズは変化するため、企業立ち上げ時のブランディングが長年通用するとは限りません。
実際に、ブランディングを再構築する「リブランディング」を行って成功を収めている企業もあります。
本記事は、リブランディングをおこなうことで売上を大きく上げた企業の成功事例と実際に行った施策について解説しています。
自社のブランディングに悩みを抱える方からは、次のような声が多くあがっています。
- ブランディングを再構築して、売上を回復させたい…!
- 競合他社に負けない自社ならではのブランド力を構築したい…!
- 商品に自信はあるのに、マーケティングが上手くいかず売上が振るわない…!
企業の売り上げや人気が停滞または下降気味で打開策を探しているという方はこの記事を読んでみてください。
リブランディングとは?
リブランディングとは、企業が既に構築したブランドを顧客のニーズや市場の変化に合わせて再構築することです。
リブランディングは、変動性が大きい現代社会に対応するためにも重要な取り組みです。
テクノロジーが発展するなかで、予想だにしなかった商品・サービスが次々に生まれそのたびに私たちの価値観は大きく変わります。
そうすると、顧客が企業に対して求めることも変化するため、企業は顧客のニーズを汲み取り変化していく必要があるのです。
リブランディングは、完全に一からブランド構築を行うのではなく、既存のブランドを活かしつつブランドイメージを一新します。
そのため、金銭的、時間的コストや一から実施する手間を少なくしながらブランドイメージを大きく変えることが可能です。
企業がリブランディングを行うメリット
次に、企業がリブランディングを行う二つのメリットを確認しておきましょう。
ターゲット層の拡充と新規顧客の獲得
リブランディングを行うメリットの一つ目は、ターゲット層が拡充でき新規顧客が獲得できることです。
リブランディングを行うにあたりまず行われることは現状の分析であり、業績低迷の原因を明らかにしていきます。
多くの場合業績低迷の原因には、時代の流れに沿っていないターゲット層を設定していることがあるのです。
リブランディングでは、低迷の原因を探って新たな顧客のニーズをキャッチすることでターゲット層を拡充していきます。
既存顧客のロイヤリティを上げる
リブランディングを行うメリットの二つ目は、既存顧客のロイヤリティを上げることです。
既存顧客が企業へ抱いていた願望や、不十分だと感じた部分を見直して、改良することでロイヤリティを向上させることが可能です。
また、既存顧客が商品に求める新たなニーズを察知して既存のブランドを再改良して、顧客に新しい価値を提供することもできます。
社員の業務への取り組み方が変化する
リブランディングを行うメリットの三つ目は、ブランドイメージの再構築を行う取り組みに伴い社員の業務への取り組み方が変化することです。
企業は時代の変化に合わせて顧客のニーズや社会から求められていることをキャッチします。そのうえで、企業が目指す価値観を変えることにより社員の意識が変化するのです。
例えば、業務の進め方を見直す機会になり生産性の向上につながります。また、既存の価値観に囚われない新しいアイデアを考えることも可能になるのです。
ブランドイメージを再構築すると、企業が目指す価値観に合わせて社員の仕事への取り組み方が変化します。
企業のリブランディング成功事例5選
企業のリブランディングの成功事例を紹介します。
今回ご紹介するのは以下の5つの企業です。
- ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)
- 湖池屋
- ヤンマー
- ORBIS(オルビス)
- UNIQLO(ユニクロ)
それぞれの事例について深堀していきましょう。
ユニバーサル・スタジオ・ジャパン
ユニバーサル・スタジオ・ジャパンは、リブランディングをおこなうことでV字回復を果たした企業です。
具体的には、圧倒的な消費者目線で企業改革を行いました。この消費者からの目線による具体的な施策が鍵となり、業績の急回復を成功させたのです。
そして、このリブランディングの改革を行った人物が、株式会社刀代表取締役兼CEOである森岡毅氏でした。
森岡氏は、「日本を代表するマーケッター」と呼ばれている人物です。
これまでにネスタリゾート神戸や、丸亀製麺などの企業マーケティングを行ってきました。
二つの企業は業績低迷からV字回復を果たし、現在でも顧客のニーズを掴んで売上を伸ばし続けている企業です。
事業低迷の時期
ユニバーサル・スタジオ・ジャパンが、業績停滞に陥った後、森岡氏への依頼に至った変遷について確認しておきましょう。
2007年にマザーズに上場しましたが、業績低迷により2009年に上場を廃止した過去があります。上場廃止頃の来場者数は、800万人ほどでした。
内部で様々な立て直しの試みを行いましたが上手くいかず、森岡氏に依頼をします。
ここからリブランディングを行ったことで、V字回復への快進撃が始まりました。
Themed Entertainment Association(TEA)が行った調査によると、ユニバーサル・スタジオ・ジャパンの2022年度の来場者数は1235万人を達成します。これは、世界3位の快挙であり日本国内では1位です。
ちなみに、1位はアメリカのフロリダ州にあるマジックキングダムの1,713万人でした。2位はカリフォルニア州にあるディズニーランドの1,688万人となっています。
具体的な施策
ユニバーサル・スタジオ・ジャパンを立て直すために森岡氏が行った具体的な施策は、「ターゲット層の変更」です。
かつて、開園した当時のコンセプトは「映画のテーマパーク」でした。
アメリカの映画ファンにとっては楽しむ動機となりますが、それ以外のユーザーのニーズを満たすことができませんでした。そして、次第に足を運ぶ人が少なくなっていったのです。
森岡氏は、そこで「世界最高のエンターテインメントを集めたセレクトショップ」をテーマにリブランディングを行います。
映画のみでなく日本のアニメやゲーム、歌手なども取り入れるとともに、低年齢層の家族も楽しめるためのパークを設置しました。
例えば、今までに登場したものには次の項目があります。
- ドラえもん
- きゃりーぱみゅぱみゅ
- AKB48
- バイオハザード
森岡氏は、さまざまなターゲット層にニーズがあるものを取り入れ、生涯来場者数を増やす試みを行っていきました。
また、テレビCMも「世界最高のエンターテインメント」を届けることに焦点を当て、よりコンセプトが届く様に作り変えたのです。
これらの具体的説明については、以下の記事でご紹介していますのであわせてご覧ください。
湖池屋
湖池屋は、1953年に創業を開始したお菓子メーカーで日本で始めてポテトチップスの量産に成功した企業です。
時代の流れによって消費者の消費傾向が変化してきたことから、2016年からリブランディングを実施しました。
湖池屋がまず行ったのが商品分析です。時代の流れにより食べ物に対する私たちの消費の傾向も変化していることに着目します。
今までは安価で量が多いものに対して消費が多くなる傾向がありました。しかし、近年ではその商品に対して高い付加価値のあるものの消費が伸びていたことを発見したのです。
湖池屋は、日本で始めてのポテトチップスを量産した老舗メーカーならではの付加価値がつけられるのではないかと推察します。
こうして湖池屋のさまざまなリブランディングを行うための取り組みが始まったのでした。
具体的には次のようなリブランディングを実施しています。
- ロゴマークの変更
- 社員の意識改革
- 社屋や事務用品のデザイン変更
どれか一つでも欠けていたら、今の湖池屋はなかった可能性もあります。
具体的な施策1:ロゴマークの変更
よし、アイコンはこれだ!!
— 湖池屋 コイケヤ【公式】 (@koikeya_cp) June 16, 2017
ええ、言いたいことはわかります。わかりますよ。しかし!新生・湖池屋のロゴは「六角形」なのです。親しみ・安心・楽しさ・本格・健康・社会貢献の意味があるのです(*´ω`*)今後もよろしくお願いします! pic.twitter.com/qwk2J7d0bV
湖池屋は、ロゴマークを一新して、六角形の中に湖池屋の湖の字が埋められているデザインに変更しました。
この六角形は、従来の3つのコアバリューに新しく生まれ変わった湖池屋の3つのバリューを加えます。次の6つのバリューからなることの意味を込めて作られました。
従来のバリューは、「親しみ」「安心」「楽しさ」でした。そして、商品への付加価値に関わる「本格」「健康」「社会貢献」を追加しています。
また、このブランドデザインは2017年にグッドデザイン賞も受賞しました。
具体的な施策2:社員の意識改革
社内の意識改革をするために新しい湖池屋について記載された「ブランドブック」が全社員に渡されました。
このブランドブックは、社内のルールやバリューについて書かれたものです。
本で配布されることによって、社員が空いた時間にそれを手に取ることができます。
業務の進め方で迷ったときや新たなアイデアを考える際にも、本を読んでイメージをつかみながら業務に取り掛かることが可能です。
具体的な施策3:社屋や事務用品のデザインを変更
社内のあらゆる建物や、物について新しいブランドイメージのデザインへと一新します。
社屋は、木材と暖簾が特徴的な日本の伝統的な雰囲気を感じられるデザインへと変えられました。
そして、これはペンや名刺なども新生湖池屋の方向性に合わせて同様に変更されています。
また、袋は国産100%のものにこだわるなどといったように一新されました。
ヤンマー
ヤンマーは、発動機を始め農業や海運などさまざまな事業で使用する機械の製造・販売を行うメーカーです。
2012年には開業100周年を迎えた節目で、リブランディングに乗り出しました。
理由としては、日本と欧米で扱う主要製品やサービスに関して認知の差があったためです。
日本では、ヤンマー社は農業機械用品の企業として認知度が高くありました。トラクターや草刈り機などといったものです。
また、『ヤン坊マー坊天気予報』の制作企業としても有名でした。天気予報とともにヤンマー製品を使用している工場の映像が流れているのが特徴的で、1959年から2014年まで50年の放送を行っていたものです。
一方で、欧米ではヤンマーはヨットのエンジンメーカーとしての認知度が高かったのです。
今後グローバルでさらに競争力を上げてそれぞれの認知の差を是正するために、ヤンマーはリブランディングに乗り出しました。
具体的な施策1:ブランドマークのリニューアル
ヤンマーは、デザイン経営に力を入れてブランドマークをリニューアルします。
新しいデザインは、日本の豊作の象徴のオニヤンマとヤンマーの頭文字をモチーフにした形が特徴的です。
コーポレートカラーでもある赤色を使用しながら、先進性と世界最先端の技術力を提供する意味を込めました。
ブランドイメージに合わせて、社屋、プロダクトのデザインも変更します。
具体的な施策2:ブランドステートメントの設定
2015年には新たに「A SUSTAINABLE FUTURE」のブランドステートメントを掲げました。
これは、「日本の農業に貢献していきたい」というヤンマーの創業当時からの一貫した思いから生まれたものです。
「A SUSTAINABLE FUTURE」は、具体的に以下の4つの未来像をミッションとします。
- 省エネルギーな暮らしを実現する社会
- 食の恵みを安心して享受できる社会
- 安心して生活・仕事ができる社会
- ワクワクできる心豊かな体験に満ちた社会
このミッションを掲げることで、社員の意識変革にも取り組みました。具体的には、発表の社内イベントを開き社長と若手社員の座談会などを行います。
また、ミッションを実現するための取り組みを紹介する自社メディア「Ymedia」での発信も始めました。社外への表明や取り組みを発信することにも成功しています。
・YANMAR「私たちのパーパス」
https://www.yanmar.com/jp/about/corporate/our_mission/ (参照 2023-09-19)
・YANMAR「TALK ABOUT “A SUSTAINABLE FUTURE”」
https://www.yanmar.com/jp/about/ymedia/article/asftalk_yamaoka_sato.html (参照 2023-09-19)
ORBIS(オルビス)
スキンケアブランドのORBIS(オルビス)は、オンラインをメインに、独自技術を活かしたスキンケア用品やコスメを販売しています。
オルビスはもともと低価格なスキンケア商品を販売して評判を上げていましたが、「オルビス=安い」というイメージが、ブランドの品質を下げる原因にもなっていました。そこでオルビスは2018年からリブランディングを開始。
開始から5年でオルビスはベストコスメを受賞できるまでに成長し、価格だけでなく品質で選ばれるブランドに成長しました。
オルビスがリブランディングのために行った施策は、おもに次の2つです。
- 低価格の強調ではなく成分のこだわりを強調
- 「パーパソナリティ」を掲げた社員の意識改革
参考:リブランディングから5年。変化を経て見えたオルビスの価値と「さらなる進化」に向けた3つの課題|ORBIS(オルビス)
具体的な施策1:低価格の強調ではなく成分のこだわりを強調
従来のオルビスの商品は、1,000円前後と手に取りやすい価格設定が特徴でした。しかし、安いというイメージを払拭するため、品質を強調する商品を開発。
オルビスの名前がついた代表的なスキンケアラインである「オルビスユー」が良い例です。成分を強調し、2,000〜3,000円と安さを強調しない価格帯に設定しています。
また、従来はカタログ型の販売方法で、『顧客に選んでもらう手法』をとっていましたが、「エイジングケアならオルビスユーがおすすめです」といったように、『顧客におすすめする手法』に変更しました。
具体的な施策2:「パーパソナリティ」を掲げた社員の意識改革
オルビスは創業から「お客様起点」を大切にし、いち早くフリーダイヤルの導入や、自由な返品交換を実施してきましたが、リブランディングでさらに社員の意識を改革するため「パーパソナリティ」を掲げました。
パーパスとパーソナリティを掛け合わせて、ブランドの人格とその存在意義を表現したオルビス独自の造語です。
引用元:ORBIS
どこの部署の社員でもお客様とコミュニケーションが取れるよう、お客様の意見や感想、SNSの反応などが確認できるデジタルツール「CHIEIZU(チエイズ)」を用意し、社員が気軽にアクセスできる体制を整えています。
また、オルビス本社のコールセンターでは、お客様とのやり取りをモニタリングできるなど、社員の意識を強化し、さらなるリブランディングに取り組んでいます。
UNIQLO(ユニクロ)
世界的にアパレル販売を展開しているUNIQLO(ユニクロ)は、2006年当時から企業としては成功していました。しかし、「ユニクロ=安い、みんなが着ている」というイメージがついてしまい、「ユニバレ(ユニクロの服を着ていると恥ずかしい)」という言葉が流行していました。
そんなイメージを払拭するため、ユニクロはリブランディングに着手。次のような取り組みを行いました。
- ロゴマークの変更
- 安いだけでなくユニクロらしさを強調
このような取り組みを経て、ユニクロの安いイメージを払拭し、さらなる事業の拡大に成功しました。
参考:ユニクロのロゴ刷新で、佐藤可士和が考えたこと|ダイヤモンドオンライン
具体的な施策1:ロゴマークの変更
まずユニクロが取り組んだのが、ロゴマークの変更です。クリエイティブディレクターの佐藤可士和氏が世界的に通用するロゴを検討し、現在では一目でユニクロだと認識できるカタカナのロゴが誕生しました。佐藤氏はロゴの制作について、次のように語っています。
実はカタカナのロゴっていうのは、ユニクロらしさを説明する上でとても理にかなっているんです。ユニクロは、アメリカのカジュアルファッションを日本的にアレンジして販売してきたブランドです。そしてカタカナというのは、海外の言葉や考え方を日本語に持ち込むときに使われるものです。だから実は、カタカナはユニクロの本質を表現する上でぴったりだったんですよ。そういうことを柳井さんは瞬時に見抜いていた。
引用元:ユニクロのロゴ刷新で、佐藤可士和が考えたこと|ダイヤモンドオンライン
佐藤氏と柳井氏の思惑通り、ユニクロのロゴは世界的に通用する、ファッショナブルなロゴとして認識されるようになりました。
具体的な施策2:安いだけでなくユニクロらしさを強調
ユニクロはロゴマークだけでなく、デザインも刷新しました。従来通り、シンプルで日常に取り入れやすいデザインはそのままに、通気性を追求した「エアリズム」、保温性を追求した「ヒートテック」など、機能性を強調した商品を販売。
また、世界的な有名ブランドやデザイナーとコラボして、価格を抑えてデザイン性のあるアイテムを販売するなど、ユニクロらしい魅力をアピールすることに成功しました。
まとめ
今回は、リブランディングを行った企業の成功事例を3つ紹介しました。
リブランディングは、時代の変化に合わせた顧客のニーズをキャッチして、それに合わせたブランドの再構築を行う方法です。
新たなターゲットのニーズにマッチした新規顧客の獲得のみでなく、既存顧客に対して企業のロイヤリティをあげることにもつながります。
リブランディングに成功した企業は、時代の変化に合わせてどのような価値提供をできるかに着眼点をおき改革を進めています。
今回ご紹介した成功事例を参考にしていただき、ぜひ弊社が独自制作した「全ての中小企業に贈る:進化成長のロードマップ」を取り入れながら、自社のリブランディングの参考にしていただけましたら幸いです。