- ビジネス心理学の人生脚本の意味は…?
- ビジネス心理学の人生脚本の種類や書き換える方法は…?
ビジネス心理学の人生脚本とは、人生が幼少期の頃に思い描いたもののシナリオ通りになるという理論です。
具体的には、幼少期のころに形成された考え方やパターンが大人になっても繰り返されることをさします。このパターンが悪いものであると物事が上手くいかないことが繰り返し起きてしまうのです。
今回は、ビジネス心理学の人生脚本とは何かについてや、種類と特徴、書き換えるための方法まで詳しく紹介します。
ビジネス心理学の人生脚本とは?
ビジネス心理学の人生脚本とは、心理学者のエリック・バーンによって提唱された概念です。
人生脚本は、幼少期に形成された人生のシナリオについて大人になってもその脚本通りに行動することを指します。
例えば、以下のような経験はないでしょうか。
- いつも同じようなことで人と衝突してしまう
- グループでの役割は幼少期の頃と変わっていない
- いつも同じところで人間関係のいざこざが起きる
- あと少しで成功しそうなところでいつもうまくいかない
これらは、幼少期の頃に親や周囲の躾や対応によって形成された行動のパターンが繰り返されているといえるのです。
私たちは、最初に親と接することで自分のすることや何をすればよいかについて学んでいきます。
そして他の家族や、友達、先生などと徐々に交流を広げながら、自分が取る行動をつくる方法を学習していくのです。
これらは、大人になっても無意識のうちに思考や行動を繰り返し自覚のないままに私たちは人生脚本を描いています。
人生脚本が悪いものであれば、いつも同じようなところで悪い行動パターンを繰り返してしまうのです。
人生脚本は交流分析によって書き換えることができる
エリック・バーンは、心理療法の交流分析を開発した人物でもあります。
「交流分析」とは、自分の人間関係の癖のパターンを分析して、よりよい人間関係構築を目指すものです。
人生脚本は、この「交流分析」のなかで使用される心理学用語です。
私たちが幼い頃に形作った人生脚本は、この交流分析をおこなうことで変化させることが可能となります。
出典・参考:厚生労働省「e-ラーニングで学ぶ15分でわかるはじめての交流分析 1」
人生脚本をよりよいものにする目的は「自己実現」のため
ビジネス心理学において人生脚本を学ぶ目的は、「自己実現を達成するため」です。
自己実現とは、本来の自分の姿でやりたいことを実現することといえます。
交流分析では、幼少期に形成されたパターンをよいものに書き換えて、自律した関係を築き自己実現を目指します。
次に、そもそもの自己実現について深く掘り下げて確認しましょう。
人は「自己実現に向かって絶えず成長する」
心理学者のマズローは、人は「自己実現に向かって絶えず成長する」と唱えます。
マズローは、自己実現を欲求の頂点とした5段階欲求を提唱した人物です。
5段階欲求とは、具体的に以下に分かれます。上に記載されているほど、低次の欲求で、その欲求が満たされると下の欲求が満たされるように動きます。
- 生理的欲求
- 安全欲求
- 社会的欲求
- 承認欲求
- 自己実現の欲求
自己実現は人間の最も高次元の欲求
マズローの5段階欲求によると、自己実現は段階欲求の一番高次元にあるものです。ここで各欲求の意味と階層構造について見ていきます。
生理的欲求は、動物にある本能的な欲求のことです。例えば、食事や睡眠、排泄など普段の生活のなかで必ず行われるものを指します。
安全の欲求は、生理的欲求を満たすと表れるものであり、安全に暮らすことです。例えば、健康であったり、経済的に安全であったりすることを指します。
社会的欲求と愛の欲求は、安全の欲求を満たすと表れるものです。社会的に役立ちたいという欲求、どこかに所属したいという感覚を指したり、愛を求めたりすることを表します。
承認の欲求は、社会的欲求と愛の欲求を満たすと表れるものです。他者から尊重されたいという欲求であり、権威や賞賛、名声を求めます。
自己実現の欲求は、承認の欲求が満たされると表れるものです。自分の可能性や能力を活かすことを求めます。
自己実現を満たすと表れるもの
では自己実現の欲求を満たすとどうなるのでしょうか。人間に表れる5つの欲求を満たした人を「自己実現者」と呼びます。
ここでは、自己実現の欲求を満たすと表れる特徴について紹介しますので、参考としてご覧ください。
これら5つの欲求全てを満たした「自己実現者」には、以下の15の特徴が見られる。
Wikipedia「自己実現理論」より引用
1.現実をより有効に知覚し、より快適な関係を保つ
2.自己、他者、自然に対する受容
3.自発性、素朴さ、自然さ
4.課題中心的
5.プライバシーの欲求からの超越
6.文化と環境からの独立、能動的人間、自律性
7.認識が絶えず新鮮である
8.至高なものに触れる神秘的体験がある
9.共同社会感情
10.対人関係において心が広くて深い
11.民主主義的な性格構造
12.手段と目的、善悪の判断の区別
13.哲学的で悪意のないユーモアセンス
14.創造性
15.文化に組み込まれることに対する抵抗、文化の超越
人生脚本の種類は3つ
「何をやってもうまくいかない」と思う傍ら、「なぜ何をしても結果を出したり上手くやったりする人がいるのだろう」と感じた経験はありませんか。
これも幼い頃に形成された思考や行動の癖が重要な選択や決断をする際に作用している可能性があるのです。
幼い頃に形成される人生脚本には、3つの種類があるといわれています。
それぞれの意味について見ていきましょう。
勝者の脚本
勝者の脚本とは、自分自身が設定した目標ややりたいことを達成するなど自己実現に向かって行動しやり遂げることです。
先述した通り、自己実現は私たちの最も高度な欲求です。そして、私たちの自己実現のあり方はそれぞれ異なります。
例えば、「生まれ育った街の地域貢献をしたい」「自分の得意なことをして、社会に大きな影響を与えたい」「家族と楽しく幸せな家庭を築きたい」などさまざまなものがあるでしょう。
自己実現の項目がどのようなものであっても自分自身がそれを達成できていて納得していれば、それは勝者の脚本であるといえます。
平凡な脚本
平凡な脚本とは、その人にとって成功や失敗したという感覚がない平凡な人生を歩む人生脚本のことです。
具体的には、成功したり失敗したりなどをして総意で見るとどちらでもないという状態であるといえます。
人生脚本において平凡な脚本であると感じる人は多いと思われます。
敗者の脚本
敗者の脚本とは、その人にとっていつも失敗している感覚をもつ人生脚本のことです。
具体的には、「何をやってもうまくいかない」「同じところで躓いてしまう」というのを繰り返している状態といえます。
敗者の脚本になってしまっている人は、自分自身の人生脚本の癖を分析することでその部分を書き換えることが可能です。
ビジネス心理学の人生脚本で見られる敗者の脚本を作り出す特徴
ここでは、ビジネス心理学における人生脚本で見られる敗者の脚本を作り出す特徴を紹介します。
ここで紹介する項目は、あなたがビジネスで物事に取り組む際によい選択を阻害する可能性がある項目です。
まずはこのような特徴があることを知ることで、人生シナリオの癖を見つけて、書き換えるきっかけをつかみましょう。
ドライバー
人生脚本における「ドライバー」とは、「~をしなければならない」と無意識に思い込むことです。
具体的には、人生脚本によって形づくられるドライバーには5つの種類があるとされています。
それは、以下の項目です。
- 完全でいなければならない
- 努力しなければならない
- 人を喜ばせなければならない
- 急がなければならない
- 強くあらなければならない
次に、それぞれの項目が作られる幼少期の経験とそのパターンによってビジネスの場面で起こり得る弊害について確認します。
完全でいなければならない
「完全でいなければならない」という思い込みは、幼い頃にしっかりすることや物事を妥協しないことについて躾されたことが原因です。
例えばビジネスでは、部下の少しの失敗やミスに寛容になれない、自分の仕事にも完全さを求めて疲弊するなどが考えられます。
努力しなければならない
「努力しなければならない」という思い込みは、幼い頃に頑張ることを躾されたことが原因です。
例えば、ビジネスでは努力を続けなければ周囲に認めてもらないと思い込み、必要以上に頑張り続けるなどがあります。
人を喜ばせなければならない
「人を喜ばせなければならない」という思い込みは、自己を犠牲にして周りを喜ばせようと躾されたことが原因です。
例えば、ビジネスでは自己犠牲をして必要以上に周囲の手助けをしたり世話を焼いたりしまうことがあげられます。
急がなければならない
「急がなければならない」という思い込みは、親に行動を急かされた経験が原因です。
例えば、ビジネスでは自分にも他人にもスピードを求め、それができていない人には必要以上に注意するなどがあります。
強くあらなければならない
「強くあらなければならない」という思い込みは、弱さを見せたときに怒られたり、強くあることを躾されたりした経験が原因です。
例えば、ビジネスでは弱みを見せてはいけないと思い込んで、他人にもそれを強要する可能性があります。また、必要以上に仕事を抱え込んだり、周囲に相談できなかったりするでしょう。
禁止令
人生脚本における「禁止令」とは、「~をしてはいけない」と自分自身に禁止令を出すことです。親や周囲の躾によりこの刷り込みが起こります。
具体的には、人生脚本によって形づくられる禁止令には12の種類があるとされています。
それは、以下の項目です。
- 存在するな
- 自分自身であるな
- 自分の性であるな
- 子供であるな
- 成長するな
- 成功するな
- 重要であるな
- 所属するな
- 近づくな
- 健康であるな
- 考えるな
- 感じるな
- (なにかを)するな
ここでは、大人になって自分自身に禁止令がだされることでビジネスで弊害になりやすい項目について3つ紹介します。
成功するな
「成功するな」という禁止令は、挑戦することを否定された経験や成功しようとしたときに足を引っ張られた経験が影響します。
例えば、ビジネスでは「うまくいかないだろう」と思い物事への挑戦を恐れることがあるのです。他にも、物事がうまく行き出すとそれを認めることができないこともあります。
重要であるな
「重要であるな」という禁止令は、放任されたり賞賛や行ったことに対して無関心だったり否定されたりした経験が影響します。
例えば、ビジネスでは目立つことを避けたり重要なポストに入ることを自ら否定して辞退したりすることが考えられるのです。
考えるな
「考えるな」という禁止令は、自分の考えを否定されたり親の言うことだけを聞くことを強要されたりした経験が影響します。
例えば、ビジネスでは上司から言われたことだけを行ったり自主的な提案や積極的な姿勢を避けたりすることが考えられるのです。
人生脚本を書き換えるためには交流分析から
人生脚本は、生きるうえで危機を回避したり避けたりと重要な役割を果たす側面もあります。
一方で、自分を縛りすぎている人生脚本は書き換えることでより理想的な自己実現が可能です。
人生脚本を書き換えるための一歩としては、まず自分を縛っているドライバーや禁止令などのパターンに気付いてください。
そして、自分を縛りつけている人生脚本をどのように書き替えたいのか具体的に考えてみましょう。
その後、自分を無意識で縛り付けている場面にあったらそのことを自覚して理想の人生脚本に近づける選択をしてみてください。
また、人生脚本は交流分析から生まれた概念であると先述しました。交流分析について詳しく学ぶことは人生脚本をよりよいものに書き換えるための近道です。
こちらの記事では、交流分析の概要や人生脚本によって私たちが無意識におこなってしまっているゲームについて紹介しています。交流分析を学ぶためのおすすめ本も紹介していますのであわせてご覧ください。
まとめ
今回は、ビジネス心理学における人生脚本について紹介しました。
時として私たちは、幼い頃の経験に基づいて無意識的に自分を縛りつけることがあります。
まずは、人生脚本の要因にはどのようなものがあるのかを理解するところから始めて徐々によいものに書き換えていきましょう。
人生脚本について知り、あなたのビジネスにおける意思決定がよりよいものになったり人間関係が円滑になったりすれば幸いです。
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